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パレードのオブジェ

  ※「第四回最初の三人分のお題で書く」より

  私はテーマパークのダンサーの仕事をやっている。

  テーマに沿った衣装や着ぐるみを着て踊りを踊ると言うものだ。

  主役の着ぐるみには着せて貰えないけど、色々とやれると言うので、重宝されている。

  勿論、それに見合った給料と評価をされているので何も文句はない――でもいつか主役をやりたいなとは思っている。

  クリスマスの企画と言う事で、クリスマスツリーの着ぐるみを着ることになった。

  このツリー、なかなかよく出来ていて、"静止状態"だとやや大柄なツリー状のオブジェなのだ。

  三メートルぐらいの高さがあり、手足を収納するとそういうオブジェだと納得できるぐらいには不自然さがない。

  勿論、その静止状態を維持するのは大変だけど、難しい事ではない。

  そして"動作状態"で手足を伸ばし、ダンスをする事が出来るのだ。

  ツリーはパレードの通る通路沿いに設置される。

  パレードは昼前に一回と、昼過ぎに一回あり、開園から第一回のパレード、そしてパレードが終わってから二回目のパレードは静止状態をする必要がある。

  季節柄涼しいので暑さに苦しみそうでもないが、大変であるには違いない。

  試しに事務所で静止状態を続けてみた。

  そんな時は、色々と考えてしまう。このままでいいのかとか、このあとどうしようとか。

  振付師や担当者は時々私の様子を見に来たけど、取り敢えずの三時間、事情を知らない人にはオブジェに見えたらしい。

  そんなわけで、この企画はGOとなった。

  開園十分前にスタンバイして、そして開園後人が押し寄せてくる。

  立地条件が悪い割には検討しているテーマパークだ。お客さんは思い思いに撮影する。

  街並みの再現には腐心しているパークだから、インスタ映えするのは間違いない。

  ツリーもその"背景"として十分であり、子供から女の子まで次々に撮影する。

  ちょっと脅かしてやろうかと思ったけど、それはプラン外だ。

  静かにその時を待つ。

  パレードがやってきて、お客さんがツリーに注目する。

  そしてそのタイミング、その曲になったら私は手足を伸ばしダンスをする。

  パレードのテンポにやや遅れつつ、パレードが終わる頃には最後尾ぐらいまで移動する。

  そしてパレードの曲が終わると再びツリーになる。

  そこまで来ると、お客さんは印象を変える。

  「ねぇ、うごいてよー!」

  必死に揺すったりするけれど私は動かない。

  目の前のお客さんが飽きても、次が来る。

  絡まれながらも息を潜めて堪えるしかない。

  そうこうしているうちに二回目のパレードだ。

  再びダンスをしてお客さんに愛嬌を振りまいて、そしてパレードに付いていって退場する。

  数日間はこのルーチンで良かったけど、やっぱりツリーに動いて欲しいお客さんが多かったそうだ。

  十分ごとに動いてと指示されることになった。

  時間は通路脇のお店の時計が鳴るので、それで分かるらしい。

  なるほどねと言う訳で、試してみる。

  お客さんが群がり撮影をする。

  そして時間が来たタイミングで手足を伸ばしお客さんにちょっかいを掛けるのだ。

  お客さんは驚き、はしゃぎ、喜んでくれる。

  気付けば「○○パークのツリー」と言うハッシュタグが作られてSNSで大人気になっていた。

  私としてはちょっとばかし馴れ馴れしくしたつもりだけど、それがウケているらしい。

  グリの時間は延びて、二回目のパレード終了後もいて欲しいという事になったのだ。

  相変わらず静止と動作を使い分ける。

  お客さんはその緩急に微笑んだ。

  そろそろクリスマスが終わる。

  また普通のダンサーだ。

  もっとこういうのやりたいなと思っている。

  そんな時に言われたのが――門松のキャラクターである。

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