CheMoleCule World-of-Chemistry 1話 ようこそZn島
1話 ようこそZn島
ボクらはモフモフ‥‥PANちゃんに連れられて、Zn島の集落に辿り着いた。
そこには先程見たよりもたくさんの二足歩行の兎‥‥‥亜鉛ウサギ族が居た。
亜鉛ウサギA「いらっしゃい、PANちゃん。一緒に居るのはZnと……来訪者かな?」
PANちゃん「こんにちは!早速だけど悩み事があって、この子なんだけど‥‥今朝ここの海岸に流れ着いていたんだっ。何か知ってる?」
亜鉛ウサギA「PANちゃんに似てるけど‥‥この子は初めて見るなぁ‥‥」
Znくん「やっぱり知らないかぁ‥‥とりあえず集落内を案内したら?」
集落内の建物は波打った金属板で囲っただけの質素なもので、まさにウサギ小屋だ。この亜鉛ウサギ達は原始的な暮らしをしているのだろうか?
広場では亜鉛ウサギたちが二人一組になって寝転がっていた。
一組の亜鉛ウサギがこちらに向かってくる。息切れしており汗だくだが、激しい運動でもしたのだろうか?
亜鉛ウサギB「あっ、PANちゃんだっ」
亜鉛ウサギ達はこちらに気づいたようだ。あの、君たちは何をしていたのかな?
Znくん「えーっと‥‥‥これは‥‥‥キャベツ畑で‥‥‥‥‥コウノトリが‥‥‥あわわ‥‥‥」
亜鉛ウサギB「これはね、僕たちの仲間を作る儀式をしているんだっ。」
‥‥えっ。
亜鉛ウサギB「亜鉛ウサギは個々の力は弱いから、赤ちゃんをいっぱい作って仲間を増やさなきゃねっ」
‥‥この小説の全年齢レーティングが危ぶまれる直接的な表現だ。今昼間だぞ。ここ屋外だぞ。
亜鉛ウサギC「生物にとって繁殖は文字通りの死活問題なんだから、繁殖が恥ずかしいようでは滅びちゃうよ。」
‥‥なるほど、彼らは見た目だけではなく、動物的な本能も持ち合わせているようだ。
PANちゃん「うん‥‥。初めて亜鉛ウサギの生態を知った時にはびっくりしたけど‥‥‥生殖を重要視する姿は、いかがわしい、やましいものではなく、次世代へ命をつなぐための生命体としてあるべき姿のように思えてきたんだ。」
‥‥ということは、さっきCheMoleCuleって言ってたこの子達は生命体なのか。
Znくん「‥‥確かに大事だけど‥‥ここは来訪者も来るから、ほどほどにしてよね‥‥‥‥‥///」
PANちゃん「Znくん‥‥‥顔がめっちゃ赤くなってるけど‥‥‥‥大丈夫?」
‥‥大丈夫じゃなさそうだが、ここは触れないであげておこう。
その後も島中の亜鉛ウサギに聞いて回ったが、シロりるさんについての情報は得られなかった。
PANちゃん「日が暮れちゃったね、今日はここでゆっくりしていこうかな。」
亜鉛ウサギB「初めての来訪者が居るし、ご飯ができるまでの間、Zn島に伝わる踊りを見せてあげたら?」
PANちゃん「そうだね、シロりるさんにZn島を気に入ってもらえたら嬉しいしね。実はボクも見たことはなくて‥‥」
Znくん「わかったよ、亜鉛ウサギたちを用意して準備してくるね」
日没後、松明に照らされた広場でZn島に伝わる踊りが始まった。
盾を持った亜鉛ウサギたちが奥から現れてくる。そろそろと音を立てずに忍び足で、こちらにゆっくり近寄ってくる。
よく見ると、この亜鉛ウサギは灰色と黒色のボディペイントを施しており、一見して骸骨のようだ。
次に広場の袖から、全身白色で股間を葉っぱで覆った人影‥‥‥もといウサギ影が早足で現れてきた。この子も亜鉛ウサギなのかな?
白いウサギ達は灰色ウサギ達に近寄ると、回りながら広場そでに追いやっている。
灰色のウサギ達は、盾を構えて白ウサギ達に突撃し、応戦している。このウサギ達は争っているのかな?
膠着状態になったところ、突然広場奥から大きな音が聞こえてきた。
松明に照らされたZnくんはラッパのような楽器を持っており、全身金色になっていた。
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Znくんの楽器の音に合わせて、灰色亜鉛ウサギ達が一斉に動き出し、白ウサギたちを追い払った。観客席に居るボクらにも襲いかかってきた!‥‥もちろん踊りなので、寸止めだったけど。
松明が暗くなった後、金色のZnくんの両端に灰色と白色のウサギ達が並び、握手していた。その後は2種のウサギ達が入り混じり、仲良く全員で踊って舞踏は終わった。
PANちゃん「なるほど、この踊りは大昔にZn島で起きた部族間の戦いを元にしてるんだね。‥‥‥白い子はアルビノ種って言って、Zn島の隣にあるブリムストーン山に棲む炎の精霊たちの影響を受けて体が白くなったんだって。一方で灰色のボディペイントをした子たちは純粋な亜鉛ウサギ族で、余所者を恐怖で追い払うために怖〜いボディペイントをしてるんだって。でもこのボディペイントをすることで体が丈夫になり、実際に攻撃から身を守るチカラもあるんだって。‥‥このボディペイントはZn島の古い言葉で"トタン"って呼ぶみたい。」
‥‥‥ふむふむ。伝統のある踊りだったのか。
PANちゃん「その後、純血亜鉛ウサギ族と混血亜鉛ウサギ族は体色の違いなどがきっかけで対立してしまい、島中をまきこんだ争いが起きてしまった。荒れ果ててしまった島に平和をもたらしたのが、Znくんが演じていた精霊・ブラスで、カッパー族の力を手にした亜鉛ウサギの一人だった。美しい黄金ラッパの音を聞いた2つの部族たちは、争っているのがバカバカしくなって、仲良くするようになったんだって。そして今の平和なZn島に至る、‥‥‥‥で、合ってる?」
Znくん「合ってるよ、まあ、この金色のボディペイントは楽器演奏とか、儀式のような特別な時に塗るものだけどね。‥‥あくまで金色だから、Auさんのような本物の輝きじゃないけど‥‥‥」
‥‥‥トタン‥‥‥ブラス‥‥‥亜鉛‥‥‥‥何か引っかかる‥‥‥‥
………亜鉛ウサギ…………灰色はトタン……金色は真鍮‥‥
‥‥‥‥亜鉛は生殖に関わる‥‥‥ということは‥‥‥‥
…………この亜鉛ウサギ達は「亜鉛」の元素の性質を有している…………?ということは‥?
PANちゃん「シロりるさん、そんなに考え込んでどうしたの?」
‥‥‥はっ、ボクは一体‥‥‥‥今の知識は‥‥‥‥?
亜鉛ウサギD「PANちゃん、ご飯ができたよ。その子の口に合うといいんだけど。」
ボクらの前にご飯のようなものが運ばれてきた。貝が入った炊込ご飯のようだ。
ボクは食べる前に、さっき気になったことを亜鉛ウサギに聞いた。
‥‥‥亜鉛ウサギって、食べ物の味にもうるさかったりする?
亜鉛ウサギD「そうだよ。料理が不味いと食事中に帰っちゃうから、おいしさには気を配ってるんだ。」
‥‥‥合っていた。亜鉛は代謝や味覚に重要な役割を担っている。
ということは……この貝は……牡蠣……?
亜鉛ウサギD「その通り、牡蠣。精がつくから亜鉛ウサギに大人気なんだ。この島でも養殖してるんだよ。これから言おうと思ったのに、よく分かったね。」
‥‥‥‥やはり、ボクの仮説は間違っていなさそうだ。
………名前すら覚えていないボクが、なぜ化学の知識を知っているのかは謎だが。
………しかし、自分についての知識は相変わらず思い出せない。何かきっかけがあれば思い出せそうな気もするが……
ともかく、ご飯はとても美味しかった。
その後、ボクらは寝床に着いた。‥‥‥PANちゃんの毛皮はとてもモフモフしていて‥‥‥ぐっすり眠れた。
‥‥‥自分は何者なんだ、何故化学の知識だけはあるのか、そんな疑問を懐きながら眠った。
その日、ボクは不思議な夢を見た。
‥‥‥誰かが、ボクの名前呼んでいるような‥‥‥‥
あれ、ボクの名前‥‥‥‥? なんだっけ‥‥‥‥‥‥‥?
‥‥‥‥何か思い出せそうな所で、眩しい日差しで目が覚めてしまった。 何だったんだ‥‥‥‥?
翌朝、ボクらはZn島からCheMoleCule世界各地をめぐる旅の準備をした。
ここZn島はエレメンタル保護区と呼ばれる、自然保護地域の一角にある島らしい。
ボクの正体について調べるには、この島を抜けた大陸に降り立って、奥地にある研究施設へと向かう必要がある。
その為にはブリムストーン火山を抜けた平原を経由するのが近道らしい。
Znくん「直接向かった方が早くない?」
PANちゃん「そんなに長い時間は飛べないよ、それにあちこち寄り道した方がこの世界のことをもっと知れるだろうから!」
確かにそうだ。特に急ぐ理由もない。
Znくん「じゃあ僕も一緒に向かおうかな、PANちゃんは方向音痴だから一人だと不安で‥‥‥」
PANちゃん「そんなぁ、この前はたまたま勘が外れたから迷っただけなのにっ」
‥‥若干不安だ‥‥‥‥乗り心地は良いんだけどね‥‥‥。
こうしてボクら、PANちゃんとZnくんは沢山の亜鉛ウサギたちに見送られながら、
次なる目的地、ブリムストーン火山を目指して飛び立った。
‥‥‥‥そこではどんなCheMoleCuleに出会えるのだろう?
次回、「ブリムストーン山の破落戸ども」
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登場CheMoleCule紹介
PANちゃん
モフモフな羊。CheMoleCule世界のアイドル。
炭素繊維でできた翼を持ち、CheMoleCule世界各地を飛び回っている。
みんなの悩み事を解決するのが仕事。
Zn島にはよく遊びに来ており、お気に入りの場所。
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Znくん
亜鉛ウサギ族の青年の一人。
亜鉛ウサギ族は生殖力と回復力が高く、カスリ傷程度ならすぐに治ってしまう。
代謝が活発なため体温が高く、Zn島が亜熱帯気候なこともあって褌一丁で暮らしている。
今作で同行する個体はZn島の親善大使であるため、Zn島周辺の地域や遠く離れた大陸へと出歩くことも多い。
それ故に生殖優先すぎる亜鉛ウサギ族の習性に思うところがあるらしい。
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亜鉛ウサギ(モブ)
名無しの亜鉛ウサギたち。Zn島にいっぱい居る。生殖重視なので、気がついたら増えている。
外見と能力は基本Znくんと同じだが、白いロン毛があったり、目つきがゆるかったりとそれぞれに個性がある。
食べ物の味にうるさい。
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アルビノ亜鉛ウサギ(酸化亜鉛・硫化亜鉛)
亜鉛ウサギの亜種。近隣の火山や平原に移住し混血した結果、全身が白くなった。
カキフライはタルタルソース派であり、それがソース派が中心であった原種との対立を招いた一員らしい。
現在は互いの能力やカキフライの好みの良さを認め合い仲良くしている。
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シロりるさん
PANちゃんに似た謎の存在。
記憶喪失らしく自分の正体に関しては何も思い出せないが、何故か化学の知識はある模様。
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