008-019
花園内部の移動装置によって辿り着いた場所は、宗教施設の礼拝堂の様な場所だった、もっともお約束の様な大きな像は無く、代わりに葡萄の房の様な構造物が部屋の奥の真ん中に鎮座している、部屋の壁側にはダイン達が運ばれて来た様な大きな柱が何本も立ち並び、人が集まる為に作られた部屋の様だ。
ダイン 「ここは、会議の為の空間でしょうか、多くの人間を収容出来そうですね」
087-007 「私がここに来たのは初めてです、何の部屋なんでしょうか?」
087-007の憑き物は取れた様で、元の接し易い人柄へと戻った様だ、無機質な表情は消え去り物珍しそうに部屋を見回している。
オハナIII 「私もここは初めてですね、あの真ん中の大きいのがラグム・デムを司っている様です」
無論、この葡萄の様な構造物はラグム・デム三思考の本体では無いが、人と会談する為にラグム・デムの意思を具現化したモノでもある。
ラグム・デム統合思考 「お越し頂きありがとうございます、単刀直入に申しますがラグム・デムは貴方との協力関係を構築したいと思っています」
ダイン 「それはお互い様ですよね、私もこの大陸北部の掌握の為に其方の力を欲してますから」
ラグム・デム統合思考 「思惑が一致している事は理解しています、両者が協力すれば失った力を取り戻す事も可能で、地の王の侵攻にも対抗出来るでしょうから」
ダイン 「やはり地の王の侵攻は間近に迫ってますか・・・」
ラグム・デム統合思考 「十日以内には開始されると思われます、今のラグム・デムには地を割る力も失われて阻止する事は不可能です」
ダイン 「やはり私が直に訪れて正解だった様ですね、地に王の侵攻は今のディグランでは防げないでしょうから・・・」
ラグム・デム統合思考 「地の王は密かに坑道を掘り進めて此方の動きを探り、ディーラル内部に協力者を作っていますから、準備はほぼ整っており、遊魔の北部戦力では侵攻を阻止する事は不可能でしょう、ですが遊魔とラグム・デムが結び付けば対抗は可能です、087-003と同程度の魔力保有体が後五名居れば、ラグム・デムの機能は72%まで回復可能との試算がなされてますから」
ダイン 「今居る087から五名私に譲渡して頂ければ容易い事です、問題はラグム・デムが私を信用出来るかですね」
ラグム・デム統合思考 「ユニット087-003、個体名称オハナIIIは完全にラグム・デムユニットとしての能力を失い、貴方の指揮下へと編入されてますね、不安は当然払拭出来ませんが共通の敵が居る限り、共闘は可能だと判断します」
ダイン 「それは私も同じ意見です、私達が協力しないと共に敗北するだけですから、ですが私には人類大陸という逃げ場が有りますからね」
ラグム・デム統合思考 「その点に置いての貴方の優位は認めます、だからこそ087ユニットの譲歩を認めますし、ラグム・デム構造体を遊魔が使用する事を認めます」
ダイン 「そこまで譲歩して頂けるのですか、想定以上ですね」
ラグム・デム統合思考 「無駄な交渉に時間は掛けられませんから、ラグム・デムの機能回復が速い程、此方にとって有利です、先ずそこに居る087-007をお使い下さい」
087-007 「007はどうなるんですか、003みたいに変に成っちゃうんですか?」
オハナIII 「007は初めから変ですよ、ですが遊魔に成れば叡智と自由が与えられます」
オハナと087で変な会話が行われているが、ダインは疑問をラグム・デムに問うてみる。
ダイン 「魔力を求めている様ですが、どの様に使うんですか?」
ラグム・デム統合思考 「ラグム・デムは数名のオペレーターを配する事で本格的稼働が可能、専用の席に着座して貰う、ユニットとしての知識が有れば問題ない」
オハナIII 「ダイン様の様な酷い事は無いですよ、本当にただ座って操作するだけです、魔力は抜けて行きますけど今なら幾ら抜けても直ぐに満ちて来ますから、心配は無いですよ」
087-007 「あの、007はこれから酷い事されちゃうんですか?」
オハナIII 「痛い事は有りますよ、でも直ぐに気持ち良くなって生きる事の素晴らしさを実感出来ます、ユニットでは得られない事ですね」
087-007はマイペースな様だ、そしてラグム・デムとダインは構わず会話を続ける。
ラグム・デム統合思考 「ユニットには本来不要な情報は与えていない、情報が邪魔をして判断が非合理になる可能性を生じるから、だが、ラグム・デムが感知していなかった僅かな時間のみで003にここまで自由意思を与えたのは不可解」
ダイン 「ラグム・デムは人を道具としているからですよ、遊魔は人と同族なんですよ、同族ならばより価値が高い者を望みますよね?」
ラグム・デム統合思考 「ラグム・デムには同族という概念が理解出来ない、確かに同型は存在していたが、個としては別の存在」
ダイン 「この世界にはまだラグム・デムの様な存在が有るというのですか?」
ラグム・デム統合思考 「同型は全て機能停止している、そもそもラグム・デムはこの惑星の文明の産物では無い」
既に、オハナIIIと087-007はダイン達の世界から弾き出されている、何を話しているのかも検討がつかないので、取り敢えずオハナIIIは 087-007に仕込みをする事にする、なるべく準備が整っている方が、ダインも087-007も楽しめる事は間違いない。
オハナIII 「全く解らない話が始まったので、オハナⅢはⅦに遊魔に成る為の手解きをして上げましょう、ラグム・デムも早く遊魔を欲しがってるみたいですから」
087-007 「007でも大丈夫なものなのですか、ラグム・デムの評価が低いと感じています」
オハナIII 「御姉様達の言葉だと、遊魔に人の頃の能力は余り関係無い様です、遊魔の身体とは元の能力に対しての足し算ですので、人の頃の能力は誤差でしか有りません」
087-007 「遊魔というモノは、素体の優劣が影響しないのですか?」
オハナIII 「個体によって優位なところは有りますが、全体を見て劣った者はいませんね、どこに優れた能力を与えるかはダイン様の見立てで決まります、だから気にする必要なんて有りませんよ、Ⅶは美しい処女ですからね、それだけで遊魔としての資質を十分に満たしてます、だからダイン様の特に好む乳から行きますね、乳は遊魔にとって誇りとなる重要なところですから」
一気に距離を詰めたオハナIIIが背後から087-007の胸を持ち上げる様に鷲掴みにする、087-007の胸は他の087ユニットに比べて大きめなのが、オハナIIIにとっても気になるのだ。
087-007 「え、そんな事を、仕事の邪魔になる無駄な肉ですよ」
オハナIII 「ラグム・デムの認識は遊魔とは違います、オハナIIIもより良いモノへと作り変えて貰いましたから・・・そうですね、味わってみるのが一番の近道です」
オハナIIIは尻尾を実体化させると、自分と 087-007の股の間を通して尻尾の先端を087-007の顔の前へと持って来る、そして皮を剥いて尾ニプルを露出させると辺りに甘い乳の香りが漂う。
087-007 「凄く良い匂いがします、その突起をどうするんですか?」
オハナIII 「Ⅶが口に含んで吸い出すんですよ、嫌とは言いませんよね?」
087-007 「はい、何だか口に含む事が当たり前だと感じます、栄養摂取と違って心が望みます」
栄養摂取とは、ラグム・デムにおける087ユニットの食事の事である、肉体の維持だけを考えたラグム・デムの食事は美味しいものでは無く、ある種の苦痛を食べる者に与えたりもする。
オハナIII 「なら遠慮無く吸い付いて下さい、遊魔の乳は自慢の味なんですよ」
087-007は右手で尻尾を掴むと、躊躇無く尾ニプルを口に含んだ、初めて味わう甘美なる味にその表情は緩み、さっそく量を求めて吸う力を強めて行く。
オハナIII 「気に入ってくれて何よりです、人に美味しく飲んで貰えるのは私にとっても幸福なんですよ」
オハナIIIは話し掛けながらも乳を弄る動きは止めない、よく揉み込んだ方がこの後の乳の出が良くなる事を遊魔知識が教えてくれているのだ。
そしてダインは未だにラグム・デムとの会話に夢中な様で、空中に映像が投影されたりして、より話の複雑さに拍車が掛かっている様だ。
その様な状況下、部屋には新たな動きが起こる、壁際の大柱が開いて087-002が現れたのだ、だが、室内の異様な状態に気圧されて後ずさっている。
しかし、絶対者たるラグム・デムが許す筈が無く、渋々オハナIIIの元へと近寄って行く、そう、087-007の次の獲物として087-002が呼ばれたのだろう。
恐る恐る近付いた087-002は、007に接触している異形体が003だと気付き困惑している、今の003の姿は昨日003を連れ去った異形体と通じる様な特徴もある。
087-002 「貴女は087-003と顔の特徴が一致しています、まさか003本人なのですか?」
オハナIII 「見て解りませんか、同時にカプセルを出た時からの仲なのに、よく解らずにお互いの姿に怯えましたよね」
087-002 「その記憶の共有は003の証です、ですが貴女はラグム・デムのユニットでは無い・・・」
オハナIII 「003は遊魔に迎えられてオハナIIIへと魔進化したんですよ、自由と生きる悦び、愛する方までも手に入れて、個としての存在を手に入れたんです」
087-002にはその意味が解らない、087の存在とはラグム・デムの命に従う為にあり、それ以外の事が存在するなど考えられないのだ。
087-002 「003の言葉は不可思議、087はラグム・デムの命に従う為に存在する」
オハナIII 「まぁ今は仕方ない無いですよね、取り敢えずは乳でも飲んで下さい、今の002や007には何を言っても無駄ですから、007はもうミルクの時間は終わりですよ」
乳の放出を止めた尾ニプルを、007は名残惜しそうにしゃぶり付いている、007は初めて味わった美味しい味を、心と身体の両方で求めてしまっている。
だが、オハナIIIは007から取り上げる様に尾ニプルを硬い外皮の中に戻すと、007もそれ以上啜る事など出来ない。
087-007 「もっと欲しいです、何故意地悪するんですか?」
オハナIII 「意地悪なんかじゃ有りません、乳は分かち合うモノですから、幾ら欲しくても我慢して下さい」
087-002 「002は構わない、007が望むなら望む者に与えられるべき」
オハナIII 「逃げようとしても駄目ですよ、ラグム・デムに問い掛けて下さい」
オハナIIIの言葉に、002は眼を閉じて額に指を当てる、ラグム・デムとの接触は意思だけでも可能だが、002にはこのやり方の方がしっくりとくる、そうこの仕草は元となった者の名残でもある。
087-002 「そんな・・・002も摂取しろとの命が下りました、007の変調から見るに危険なのは疑い無いのに・・・」
オハナIII 「ラグム・デムは087の事なんてどうでもいいんですよ、だからこそ087は自分の道を探すべきです」
087-007 「乳が与えられるなら、007は003に従います、こんなに満たされたのは初めてです」
オハナIII 「まだほんの入り口ですけどね、直ぐに出す悦びも体験出来ます」
087-002 「003はラグム・デムに対する脅威と認定、対処法を請う」
002は再び額に指を当てて指示を仰ぐが返答は残酷であった、003の好きにさせろというのだ。
そして、オハナIIIは強靭な翼の腕で087-002を逃げられない様に囲うと、尻尾の先端を口元に近付けて、皮を剥くと魅力的な甘い匂いが広がる。
オハナIII 「匂いに偽りは有りませんよ、美味しい匂いは美味しい証です」
087-007 「そうですよ、見た目はちょっとアレですけど味に間違いは有りません、世の中にはこんなにも心を幸せで満たせる物があったなんて・・・」
オハナIII 「ラグム・デムの駒のままなら一生粗雑な餌だけですからね、でも遊魔に迎え入れられるとオハナIIIの乳なんか比べ物にならない程の食の悦びが満ちてます」
087-002 「ラグム・デムは何故、この様な毒を受け入れたのか不可解」
087-002の言葉にオハナIIIが解答する。
オハナIII 「ラグム・デムはもう遊魔を頼らないと存続出来ないほど衰えているんですよ、ラグム・デムの力では087に強大な魔力を与える事も出来ませから、でも、ダイン様は087を魔進化させる事で、ラグム・デムの求める人材を容易に生み出す事が出来るんですよ、だから087はみんな遊魔にして貰えるんですよ」
087-002 「087はラグム・デムに不要なのか・・・」
オハナIII 「逆ですよ、必要だからこそ遊魔へと魔進化させて貰えるんです、087のままじゃ大した事は出来ませんしね、002がラグム・デムの為になりたいのなら、遊魔に魔進化する方法しか無いと思います」
087-002 「それがラグム・デムの意思なのか」
087-007 「あの、話の途中すみませんが、胸が変なんです、熱くなってムズムズしてます」
オハナIII 「それが遊魔への誘いですね、002も早く尾ニプルを啜って下さい、早く魔進化する事をラグム・デムも望んでますよ」
オハナIIIは遊魔母乳の効果が知られる前に、087-002に母乳を飲ませるつもりだ、087-007の胸を変化を知ってしまえば、渋られる事が予想されるからだ。
087-002 「ラグム・デムが望むなら・・・」
そう言って広げた087-002の口の中に尾ニプルが捩じ込まれる、散々渋っていた002だが、いざ尾ニプルの味を体験してみると、生物としての欲望が開花した様で、口を狭めて密着度を高めてから吸い出してしまう。
この刺激にオハナIIIはほくそ笑んで、より本能を掻き立てる甘い母乳を087-002の口内に放出して行く。
おまけ
ラグム・デム移動装置 水流エレベーターとでも言える装置である、ラグム・デム内部には水流官が張り巡らされており、水流エレベーターもそれを利用した移動装置だ。
球体のユニットは張り巡らされた水流官を開け閉めして、流れに乗る事によってラグム・デム内の目的地へと移動する事が可能だ。
移動速度はそれほど早くは無いが、比較的直線的に移動出来る為に、広大な構造物内を徒歩で移動するよりも早い、言わば小型の潜水艇による移動の様なもので、ダインは無重力空間での移動手段なのではと推測している。
ラグム・デムの科学力はアーグルの文面レベルから比べて遥かに高いが、魔術分野では遊魔に大きく遅れをとっている、この事もダインにアーグル外文明の産物との疑念を抱かせる理由の一つでもある。