007-010
メファティは村の外から現れた奇妙な格好をした二人組を見付けて好奇心を抑えられなかった、村に人が訪れる事など余り無く、来たとしてもよく知る行商人ぐらいだからだ。
だが、村に近付く二人組は明らかに異質だ、見慣れぬ衣装に大きな荷物、そしてフードを被っていない方は見た事の無い髪の毛の色だった。
結果、メファティは好奇心に駆られて家を飛び出すと、初めて見る旅人の元へと駆け寄っていった。
メファティ 「こんにちは旅の人ですよね、村に滞在する予定ですか?」
ダイン 「そう願いたいのですが可能ですかね、一応対価となる様な物を持っておりますが」
メファティ 「なら村長の家までご案内しますね、旅人なんて珍しいから」
そう言って、フードを被ったレ・ミュウの顔を覗き込んだメファティは驚きの声を上げる。
メファティ 「貴女は天人様ですよね、わざわざこの様な村にお越し下さるとは」
ダイン 「私の妻は確かに耳長と言われる種族ですが、天人などとは聞き覚えが有りませんね」
レ・ミュウ 「ミュウもです、確かに耳長はクフィカールを駆って空から舞い降りる事も有るかも知れませんけど・・・」
メファティ 「やはり天人様ですね、その昔リデェイヤの地の王から救ってくれた天人様の翼がクフィカルという言伝えですから」
ダイン 「地の王とは岩喰いの事でしょうか、私達は遠方より旅をして来たのでこの地域に関しては詳しく無いんですよ」
メファティ 「そうなんですか、あ、夢中になって申し訳有りません、直ぐに村長の家へと案内しますね、天人様を粗雑に扱ったと咎を受けてしまいます」
レ・ミュウ 「身に覚えの無い事で崇められるのも変な気分なので気にしないで下さい」
レ・ミュウは謙遜して言葉を返すが、この村での耳長の扱いはやはり特別な様だ、他の家よりも大きい村長の家に到着する頃には、大勢の村人が表に出て、レ・ミュウに対して頭を垂れている。
そして、天人来訪の知らせは既に村長の元へと伝わっていた様で、老いても気迫有る戦士の様な老人が深々と頭を下げてダイン達を迎え入れてくれた。
村長 「遠路はるばる訪ねて頂きありがとうございます、天人様を迎え入れる事が出来るとはこの村にも自慢出来る事が出来ましたわい」
レ・ミュウ 「そんなミュウはちょっと変わった耳長なだけですよ、変わってるから人間の方の夫にしたんです」
村長 「天人様を娶るとは、貴方様の中々のお人の様ですな、一つお手合わせ頂きたいものです」
レ・ミュウ 「それは無理な話です、主は知略には優れていますが武勇は持ち合わせていませんから、とても貴方と武で渡り合えるとは思えません」
村長 「それは失礼を、此処では強い男が必要とされますから」
ダイン 「この土地では余り魔術は使われていないのですか、魔術が有るなら女性優位な社会になり易いと思いますが・・・」
村長 「呪いの類いは天人様が使ったという話しか有りませんな、もしかすると二人とも使えるのですか?」
レ・ミュウ 「ミュウも主もそれでここまでやって来ましたから、でもこの地には魔術が無いのですか・・・」
村長 「いえ、王都には天人様がおりますので」
ダイン 「この地に耳長種族が居るんですか、この大陸の耳長国家は滅びたと聞いていたんですが」
村長 「百数十年前にお越しなされて今も王都で暮らしております、ワシも何度か目通りを許されてますが、肌の色以外はミュウ様にそっくりですわい」
ダイン 「ミュウと同じなら間違いないでしょう、最も岩喰いの女性の可能性も有りますが」
村長 「岩喰いというと地の王の一族という事ですか、幾らワシ等でも天人様とは間違いますまい」
ダイン 「男からは想像出来ませんが、岩喰いの女性は耳長とよく似てますよ、穴の奥から出て来ないので他種族が見る事は殆ど無いとの話ですが」
村長 「なんと物知りな貴方様は正に賢人様ですな、天人様に賢人様、まさかこの様な方々がこの村に訪れてくれるとは」
ダイン 「いや、私の事はダインと呼び捨てて下さい、いやならさんとか殿ぐらいでお願いします」
村長 「いえ、名称とは敬意の表れですから、賢人様とお呼びさせて貰います、村には数日滞在して下さりますな、急ぎ宴の準備を始めます、メファティは人を集めてご寝所の用意を、それまでは我が家で御寛ぎ下さい」
ダイン 「そう気を使ってくれなくとも、馬小屋などで結構ですよ」
村長 「そうは行きませぬ、収穫時期に役人が泊まる宿舎が有りますのでそこでお過ごし下さい、良い酒も用意しておりますから」
ダイン 「なら、代金として荷の食料を提供します、貰ってばかりでは心苦しいので、南の大鳥を干肉にした物です」
村長 「それは酒が進みそうですな、ワシは酒が生き甲斐でして」
ダイン 「ここの人間は人類大陸の人間と大分違いますね、あちらでは酒が普及していませんでしたから」
村長 「身体を暖めるには酒が一番ですわ、賢人様には天人様がおられますからその必要は有りませぬか」
田舎の集落の長らしい粗暴なこの男に対してのダインの印象は悪く無い、こういうタイプの人間は自分よりも目上と見た者に対して従順な事を理解しているのだ、それ故にこの村での滞在で厚遇される事は間違いなく、暫くはここで北部人類の情報を収集するのが良いだろう。
そして、ダインは軽い雑談を通してこの地の情報を集めて行く、どうやら北部人類には統一王国が存在していて、この村も当然その一部で有るらしい。
正確な人口などはよく分からない無いが、この村と同規模の集落が数十は有り、もっと人口の集中している都市も十はある様だ、中でも最大規模の王都は数万人規模の人口を誇る様で、ダインの想像よりも遥かに北部人類は栄えている様である。
雑談の後に村長宅で食事を頂いたダイン達に対して、宿舎の用意が整ったとの報せが入る、村長は良い男だが、他人の家で余りくつろげないダインは直ぐに宿舎に移る旨を伝えて村長宅を後にする。
村長宅から歩いて数分の位置にあった役人用の宿舎は村長宅よりも大きく豪華な作りで、この国の国家権力の強さがそこから伺い知れる。
ダイン 「本当にここに私達が泊まってもいいのですか、村長宅よりも豪華に出来てますが」
村長 「王都の役人共には勿体無い作りですが、賢人様と天人様にお泊り頂くにはこれでも不相応でしょう、ですがこの村にはここより上等ば家など無いので許してくだされ」
ダイン 「厚遇ありがとうございます、私達も何か村に役立つ事を考えて、この扱いに対して報いましょう」
レ・ミュウ 「主の料理は美味しいので、それを伝えるだけで十分だと思います」
村長 「異国の料理ですか、メファティを側仕えとして使用人部屋に遣わせておりますので自由にお使い下さい、何なら仕込んでやっても結構ですぞ」
村長は豪快に笑いながらとんでもない事を口にしている、男尊女卑の北部人類の社会の中では女性を宛てがう事は当たり前に行われているのかも知れない。
メファティ 「お世話させて頂きますメファティです、何卒よろしくお願い致します」
ダイン 「堅苦しい挨拶は不要ですよ、同じ家に住むなら家族も同然、楽しく行きましょう」
ダインはメファティを宛てがわれた事に上機嫌だ、メファティはこの村で見た女性の中でも一番の上玉で純粋魔力を保っている、即ち遊魔に迎え入れる資質を持つ美少女で有り、メファティを堕としてしまえば北方人類の情勢を容易く得られる筈で有る。
レ・ミュウ 「主の顔が綻んでます、メファティも嫌ならちゃんと言って下さい」
メファティ 「嫌な筈有りません、賢人様からは今まで会ったどんな人よりも魅力を感じています、こんな事言うと迷惑かも知れませんが一目惚れというモノでしょうか」
村長 「メファティは勘が優れてますから、賢人様の力を感じているのでしょう、村で言い寄る男も多いですが、メファティが乗る気になったのは初めてですわい」
村長の言葉が嘘で無い事は、様子を伺っている村の若者達の表情から見て明らかだ、いわゆるBSS状態というヤツの様で、ダインの中のメファティの価値が益々上昇する事となる。
ダイン 「メファティが嫌で無いのならば私も拒みませんよ、もっとも妻のミュウが許してくれるか解りませんけど」
レ・ミュウ 「耳長のミュウは主の子を産めませんから、主がメファティを抱く事を止める事は出来ません、主の血筋が途絶えるのは人にとって大きな損失ですからね」
もちろん遊魔であるレ・ミュウはダインがメファティに子を産ませる気がない事を十分に理解している、ダインの子供と言える存在は今のレ・ミュウの事でもあり、メファティも直ぐにその仲間に加わる運命なのだ。
村長 「名残り惜しいですが、今日はこれぐらいにしましょうか、賢人様と天人様は長旅で疲れておるでしょうから、皆の者も今日はこれぐらいで家に帰るのじゃ」
ダイン 「ではまた明日話を伺いましょう」
ダインはそういうと、メファティが開けた宿舎の扉から中に入って行く、レ・ミュウも続いて姿を消すと、集まった村人達も一人一人とその場を後にして行く。
そして、宿舎に入ったダイン達はメファティから間取りの説明を受ける、王都から来る役人達は女性を伴って来る事も多く、ちゃんと二人で宿泊出来る部屋も用意されており、そこがダイン達の寝所として用意されていた。
メファティ 「他に部屋は有りますが今は清掃が済んでおりません、夫婦で過ごせる部屋を優先しましたがよろしいでしょうか」
ダイン 「問題有りませんよ、ミュウさえ居てくれれば寒い夜を過ごさずに済みますからね」
処女で有るメファティにもダインの言葉の意味は十分に伝わった様だ、メファティの顔は直ぐに紅くなって、ダイン達の夜の営みを想像している様だ。
レ・ミュウ 「主、ここの村長みたいです、何時もはそん事言わないのに・・・」
ダイン 「メファティに教えていないと、交わりの最中に来てしまうかもしれませんから、まぁ別に見られて困るモノじゃありませんけどね」
メファティ 「あの、それってお二人の交わりを見学しても良いという事ですか?」
ダイン 「別に構いませんが覚悟はして下さいね、ミュウが疲れてしまえば私の性欲がメファティに向くと思いますので」
レ・ミュウ 「主は激しいですから、ミュウだけで満足して貰えない事も有るんです、その覚悟があるならミュウも歓迎しますよ、主に満足して貰える事がミュウにとっての喜びでも有りますし」
レ・ミュウの赦しも貰ったメファティは暫く考えた後口を開いた。
メファティ 「ならメファティもご一緒させて下さい、賢人様と天人様の交わりを見る事が出来るなど、金輪際有るとは思えませんから、そして賢人様にこの身を捧げられるならば最高の栄誉で有りましょう」
魔術が用いられていない北方人類圏でも、圧倒的な魔力を持つダインの存在は女性を惹きつける魅力があるのかも知れない、レ・ミュウの天人という立場に釣られて魅力的に思われている可能性もあるが、メファティがダインに対して欲情している事は明らかで、上気した顔はかなり紅い。
ダイン 「メファティは嬉しい事を言ってくれますね、なら私もちゃんと応えないと行けませんね」
レ・ミュウ 「主が抱くという事はミュウとメファティは姉妹になるのと同じですよ、気になる事は何でも尋ねて下さい」
メファティ 「あの、今じゃなくて良いんですが賢人様が居た土地の事を聞かせて下さい、ここには面白い事が少なくて・・・」
ダイン 「メファティは男性にモテてると言われてましたが・・・それに私の面倒をみるように言われて落胆している者も大勢いましたよ」
メファティ 「村の男はメティの好みとは違うんですよ、やれ獲物が取れるやら力が強いなどと迫って来ますが、メティが望むのはそういうのじゃないんです」
ダイン 「メファティは変わり者という事ですね、村の男のアピールは十分に理解出来ますし村での暮らしにとても有益ですよ」
レ・ミュウ 「この村で生涯を過ごすならそうかも知れませんけど、メファティはここで過ごすのが嫌なんですよね?」
メファティ 「流石、天人様です、メファティは村から連れ出してくれる人を待っていたんです、賢人様に付き従うなら誰も文句は言いませんし、村の誇りにもなります」
メファティの言葉はダインにとってとても有難い物であった、北部人類圏を知る者を遊魔に加える事が出来れば、情報を楽に入手出来る事が出来る。
ダインの見立てではメファティは知的欲求が強い様なので、北部人類圏の情報も多く得ている筈で、処女であり美しいメファティは遊魔としての条件を全て満たしている。
おまけ
混沌大陸北部人類圏 不毛な砂漠地帯を越えた混沌大陸北部の人類の生息域で、何故か魔獣すらも砂漠を越えて進出する事は無い。
人類大陸人類とは違い、金髪碧眼の容姿の者しか存在していないが、黒髪のダインを見ても同じ人間だと認識はしていた。
魔術、魔導の文明が発達しておらず、人間で使える者はいない、だが、三天人と言われる耳長が存在しており魔術を使う為に魔術の存在自体は認識している。
魔術文明が無い為か魔力は人類大陸人類よりも少なく、魔術適性が高いという女性の優位さが無い為に、男性優位な社会が形成されている。
北部人類圏全てがディーラル王国という統一国家の国土であり、他の国は他種族のモノを含めて存在していない、三天人という耳長達はディーラル王国の救国の英雄で、王国の生き神の様に扱われているが、あくまでディーラルの国民や貴族では無い。