レブナン島編 第一話 怪魚の丸焼き

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  ククージアでラフォリアを魔進化させてから一週間後、ビグ・ユーマは人類大陸の東側の海域上空を航行していた、目標は言うまでも無くレブナン島で後少しビグ・ユーマで近付いた後は、遊魔能力の飛行で島へと潜入する予定で有る。

  今回の潜入班は五名で、ダインの他には、案内人のラフォリアとクガト一族に詳しいリレッタ、対人戦闘に長けいざとなれば魔龍化でマギガントすら圧倒する戦闘力を発揮する、リノールとシノールがそのメンバーだ。

  ダイン 「初めに一週間の予定で潜入しますが臨機応変に対処して下さい、延びる時は連絡か使いを送ります、ビグ・ユーマは一週間後にまたこの辺りまで進出して下さいね、流石に生身で人類大陸まで飛ぶのは大変ですから」

  七実 「ビグ・ユーマの通信能力ならば、携帯通信機程度でも十分に拾えると思います、ですがダイン様がちゃんと予定を守ってくれるのが一番ですから」

  ダイン 「そこは十分に理解していますが、今回は敵地ですからこちらの予定通りとは行かないでしょう」

  ラフォリア 「早くてもいいという事ですよね、マギクランの遊魔候補の選定は終わってますので期待して下さい」

  リレッタ 「私も知らないクガトの氏族がこんなにも有ったなんて驚きですよ、ラフォリアもクガトだったなんて」

  ラフォリア 「レブナン島の占領時前からマギクランは存在してますから、クガト血族以外の魔術士も大勢加わっているので、魔術水準は人類大陸よりも上です、そして中には魔族化を研究している者達もいるんですよ、岩喰いの作った坑道は複雑で今でも潜伏魔族が居て共同で研究している者がいるという話ですから」

  ダイン 「魔族の研究は人類大陸では禁忌ですからね、それに人体実験は人類法から逸脱してますしね」

  ラフォリア 「その意味でレブナン島は魔術士の楽園なんです、何故だか地下に研究室を構える者も多くて、どんな研究が進んでいうのかも解りません」

  ダイン 「なら私の研究室が有っても問題有りませんね」

  ラフォリア 「岩喰い領域以外なら大丈夫です、坑道は無法地帯ですからね、魔族の仕業として報告されている犯罪も殆どは魔術士の仕業でしょうし」

  七実 「そんなレブナン島がよく統治されてますね」

  ラフォリア 「食料配給で統制されてますから、どれ程優れた魔術士でも食べないと死にますからね」

  ダイン 「そこは遊魔も同じですね、一応長期潜伏に備えて携帯糧食を開発しましたが」

  リノール 「あれ美味しいから好き、毎食でも大丈夫」

  シノール 「駄目ですよ携帯糧食は切り札ですから、なるべく現地で調達しないと」

  ダイン 「まぁ島ですから海産物は有ると思うんですよ、水の確保も魔術で可能ですから、最悪一ヶ月は何とかなるでしょう」

  シノール 「でも、ちゃんとリノールを見張っていないと駄目ですね、盗み食いの常習犯ですから」

  ラフォリア 「いざとなれば食糧倉庫を襲いましょう、警備の魔術士は配されてますが、遊魔なら圧倒出来ますよ、そこから地下に逃げてしまえば捜査も及びません」

  ダイン 「全く楽園とは思えない島ですね」

  ラフォリア 「人類法で流刑にされた罪人が集う島ですから、実際に混沌に送られる人は余りいませんよ」

  リレッタ 「そうだったんですか、レブナン島は何も無い島だと思ってました」

  ラフォリア 「クガトの中枢でも真実を知る者は僅かです、クガトの繁栄にはマギクランの影響も大きいですから、実際ラフォリアの仕事もそういった類でしたし」

  ダイン 「そのお陰で楽にテガスに呼び込む事が出来ましたからね、マギクランではテガスに潜入してると思っている事でしょう」

  ラフォリア 「マギクラン構成員の忠誠は万全ですから、まさか一晩で裏切るなんて思いもしないでしょう」

  ダイン 「その自信で足元を掬われるわけです、遊魔も気を付けないと行けませんね」

  七実 「いや、遊魔は不可能ですよ、遊魔を裏切るぐらいなら死を選びますから、遊魔は個人では成り立たない種族ですよ」

  ダイン 「確かに定期的に性欲を満たさないと行けませんからね、そして遊魔の性欲は遊魔じゃないと満たせません」

  リレッタ 「そこは恐ろしい枷ですよね、まぁ最高の時間なんですけどね」

  七実 「ダイン様の考える事って馬鹿げてるけど重要なんですよ、だから今回のレブナン島行きも許せてますし」

  ダイン 「遊魔の組織が万全だからです、私がいなくなって駄目になる様ではいけません、東方遠征はもっと長くなりそうですからね」

  七実 「解ってますよ、ナナは長女として頑張らないと」

  ダイン 「はい、後は任せます、潜入班は下に降りて準備しましょう、此処からなら島まで一刻程度ですよね」

  ラフォリア 「その筈です、ラフォリアが先導しますね」

  潜入班はそのままビグ・ユーマ下方の格納庫に降りて行く、格納庫に到着した潜入班は予め準備していた装備を身に付けると、艦橋へと通信を送る。

  七実はそれを受けて、格納庫の扉を開くと潜入班は夜の海原へと降下して行く。

  遊魔の飛行速度で一刻後、目的のレブナン島が視界に映る、大きな街明かりが見える事からレブナン島はラフォリアの言葉通りにかなり栄えた島でも有る様で、遊魔潜入班一行は街明かりから随分離れた所に着陸すると、持ち込んだ装備にシートを被せて偽装を済ませると辺りの探索を始める。

  ラフォリア 「有りました、ここが坑道の入り口です、状況から見て利用している者はいない様ですから、中は良い隠れ家になると思います」

  ダイン 「そうですね、リノールとラフォリアで中の探索を初めて下さい、私達はここまで荷物を移動させますよ」

  そうして手頃な坑道への入り口を発見した潜入班は、その入り口からかなり奥に入った空間を拠点とする事にして、ダインは早速秘密基地の建設を始める。

  そして夜が明け朝になると、異種族で目立つ耳長のリノールとシノールは坑道の基地でダインの警備に当たる事になり、ラフォリアとリレッタが変装して街の偵察に赴く事になる。

  街に出たラフォリアはその変容を感じ取っていた、街の中は人が増えた様で賑わっており、食堂で提供されている料理も以前より良くなっている、人類大陸との貿易が以前より盛んに行われている様で、島に逃亡したレボトの影響力が大きい事を実感させられてしまう。

  そしてラフォリアは自身がリストアップした標的が居るであろう屋敷に忍込む事にする。

  ラフォリア 「外でそれとなく見張っておいて下さい、この屋敷をアジトに使えれば動きやすいですから」

  リレッタ 「解りました、島の現状を知る協力者は直ぐにでも必要ですからね」

  ラフォリアは手慣れた手付きで扉の鍵を解除すると中に入って行く、いわゆる鍵開けという技術の様だが、ここまで手際よく出来る背景には遊魔の感覚の鋭さが有る、見た目こそ人間時と変わっていないラフォリアでは有るが、身体能力や器用さなどは格段に向上しており、その能力は地球の娯楽作品で創作された忍者の様だ。

  ラフォリア思考 『前に来た時と余り変わってませんね、上の階から魔力を感じますがもう少し近付かないと判別も難しいです、ちゃんと処女なのを確かめないとダイン様が無駄手間になってしまいます』

  ラフォリアは隠蔽の為の魔術を行使すると更に中に踏み込んで行く、強化された感覚は標的以外の存在を感じず潜入は順調で、壁一つを隔てた部屋に忍び込んでも察知された感じも無い。

  ラフォリア思考 『人間の時には無理な芸当ですよね、標的のフェイベルは寝ているのか魔力に波が無いですね』

  壁一つ隔てた距離ぐらいまで近付くと、ラフォリアは魔力で相手の感情の起伏すら読み取れる事が出来る、遊魔に対しては余り有効ではない技では有るが、相手が人間ならば高い精度で相手の思考が読めてしまう、そしてフェイベルの思考に覚醒時特有の波が無い事から寝ているという推測が出来るのだ。

  だが、ラフォリアはこれ以上フェイベルに接近する事を避ける、ダインに相応しい獲物と解った以上は不用意な接近にはリスクが多い、そうマギクランの中ではラフォリアはユーマ共栄国で活動している筈でレブナン島に居るわけがないのだ。

  ラフォリア思考 『確認も出来ましたから撤収ですね、ここに居座るより他の候補者の確認を優先しましょう』

  その後ラフォリアはあの手この手を使って、遊魔候補達をなるべく確認した、若干一名は処女を失ってダインの選別から外れてしまう結果となったが、高い権限を持つ者では無かったので作戦に支障は無いだろう。

  そうして、ダインの潜む坑道に戻ったラフォリアとリレッタはその変化に目を疑う、入り口から数百メートル歩くと巨大な竪穴が出現しており、どうやらダイン達はその下に居る様だ。

  竪穴の深さは暗くて解らないが穴の直径は100メートルは有る、外壁は熱で溶かされてガラス状に変化しており、天井が丸い事からダインの作り出した高熱の球体が下へと沈下する事によって作られた空間の様だ。

  リレッタ 「これは遊魔になって降りた方が良さそうですね、わざわざ入り口が繋がってますのでそういう意図なんでしょう」

  ラフォリア 「飛べる遊魔で有るラフォリア達には苦は有りませんけど、人間じゃ探索出来ませんよね」

  リレッタ 「時間稼ぎの意味も有るんでしょうか、でも派手にやり過ぎだと思います」

  ラフォリア 「何かと戦った形跡かも知れません、ダイン様の意識に切迫感は有りませんでしたが、戦いさえ楽しんでしまう方ですよね」

  リレッタ 「そうですね、とにかく合流を急ぎましょう」

  リレッタはそのまま穴に飛び込むと、直ぐに遊魔形態へと変化して、浮遊しながら穴を降下して行く、ラフォリアも後に続いて降下して行くと下層部に何か有機物的なモノが拡がっている。

  ラフォリア 「肉の床の様ですけど降りても大丈夫ですよね?」

  リレッタ 「当然です、アレは多分ダイン様の尻尾が変化したモノでしょうから、遊魔なら慣れておかないと」

  リレッタは十分にダインのやる事に慣れているのか抵抗が無い様だ、ラフォリアは少し動揺しているが、リレッタが着地しようとした段階で床に穴が開いて中へと降りて行く、ラフォリアは少し抵抗を感じたが後に続くと、中はやはり巨大生物の胃袋の様に感じてしまう、だが、中は生臭いどころか、心地良い果実の様な匂いがして、不気味な見た目とのギャップに混乱してしまう。

  そして、次の床が開いた先にはダイン達の姿が見える、どうやら料理をしている様で、香ばしく魚が焼ける匂いに包まれてしまう。

  ダイン 「ちょうど良い所に帰って来ましたね、あと少しで食事の準備が整います、坑道下部は海中と繋がっていて、美味しそうな獲物の宝庫なんですよ」

  ダインが魔導具の熱で焼き上げている魚は怪しげな見た目をしているが、流れ出る脂の焦げる匂いはとても食欲をそそられてしまう。

  リレッタ 「美味しそうな匂いですが、食べても大丈夫なんですか、凶暴な口ですよね」

  ダイン 「海と繋がった洞窟を尻尾で調べていると噛みついて来たんですよ、逆に拘束して釣り上げてやりました生を尻尾で試していますので大丈夫ですよ、新鮮な海の魚は久しぶりなので早く頂きましょう、焼き魚と醤油の相性は抜群なんですよ」

  ダインは怪しげな焼き魚を歪な形の皿に乗せると、岩を加工したテーブルの上に載せる、テーブルには既に形態糧食として持ち込んだ麺が皿に盛られており、漬け汁も人数分用意されている。

  ラフォリアのダインの手際の良さに困惑してしまうが、他の遊魔達は当たり前の様に席に着くとおしぼりで手を拭いて食事の開始を待ち侘びている。

  ダイン 「ラフォリアも早く席に着いて下さい、私の手料理はユーマでもなかなか食べれませんよ」

  リノール 「本当に美味しそう、こんな魚初めてだけど匂いで美味だと解る」

  ダイン 「多分、鍋で食べる方が美味しい魚ですが、魚の鍋には野菜が不可欠ですからね、この食べ方だと白米が欲しいですが、似た植物は見つかって無いんですよ、ですがサバイバル料理は有る物で作るのが鉄則で料理人の腕が試されるんですよ、食材が揃った環境でアイヤに勝てる気はしませんがこの状況なら負けませんよ」

  リレッタ 「確かに見た目の華は有りませんよね、そこがダイン様らしい料理ですけど」

  ダイン 「はは、料理は目で楽しむのでは無く、食べて満足するものさぁ遠慮は要りませんよ」

  ダインの言葉に反応したリノールは怪しい魚の頭を引きちぎるとそのまま齧り付く、鱗が無く弾力が有りそうな皮ごと身を齧り取ると咀嚼を始める。

  ダインは魔術で残った魚を四等分すると、個々の皿の分け与えてから自分の魚を箸で器用に身と骨を分けてから、醤油をかけて食べ始める、残りの三人もダインに習って箸で魚を解すと同じ様に口に運ぶ。

  リノール 「このままでも美味しいけど、醤油かけるともっと美味しそう」

  フライングしたシノールは魚の食べ方を学んで少し悔しがっている、そんなシノールにダインは醤油をかけたほぐし身を分け与える。

  シノール 「ちょっと狡いです、シノールもダイン様の魚が欲しいです」

  ダイン 「味は変わらない筈ですよ、頭は大きいですが食べれるところは少ないでしょうから、リノールの頭は私が貰いますので代わりに私のを食べて下さい」

  ダインは食べやすくした自分の魚を差し出すと、代わりに頭の皿を貰う。

  リレッタ 「ダイン様の分が無くなったんじゃ有りませんか?」

  ダイン 「いや、頭は慣れた人間が食べるなら結構身が有るんですよ、よく動いて美味しいところも有りますからね」

  その後、ダインは器用に魚の頭を解体して、自分で食べるより多くの身を他の遊魔に分け与えて行く、料理を作る立場になったダインは自分で食べるより、自身の料理で他人に満足して貰う事の方が喜びを感じる様なのだ。

  秘密基地造りとサバイバル料理とダインは初日から島での生活を満喫している様で、島行きを即断して実行したのは本人の息抜きの為かも知れない。

  おまけ

  レブナン島の坑道 レブナン島の地下には無数の坑道が張り巡らされている、この坑道は主に地下を生活の場とする岩喰いという種族によって作られた物で有る。

  岩喰いは元々混沌大陸に住まう種族であるが、その文化に置いて価値の有る宝石の産出が多いレブナン島に価値を見出して進出して来ている。

  岩喰いはザキトス戦役の遥か以前よりレブナン島に居住しており、ザキトス魔族の混沌大陸侵攻時に島を巡って争った歴史が有る。

  戦いの結果、レブナン島の地表はザキトス魔族の手中に落ちたが、張り巡らされた地下空間を制圧する事が叶わず、中途半端な状態が続いていた。

  その状態はザキトスの敗北と、それに伴う人間の島への進出、そして岩喰いと人間の同盟により、ザキトス魔族がほぼ壊滅した為に解消されている。

  坑道は直径3メートルの真円の形状で広がっており、この形状で作られているわけとしては、岩喰いが独自に保有する魔導具マギマイナーを使って作られている為だ。

  マギマイナーは全長4メートル程で手が異常に大きなマギガントの様な機体で、お尻に装着する削岩魔導具を前にして、上体を180度回転して四足歩行となる削岩形態に変型する事によって坑道を作る事が出来る。