005-021
エゴナ新王決定戦、第四射目、仕込みによって優位に立ったエリリナと後追うヒューリの戦い、三人は射撃姿勢を整えて射撃合図の銅鑼を待つ、仕掛けの施された弩弓を持つヒューリの失敗の可能性は高く、ダインの妨害が無ければ次の射撃でヒューリの敗北が決定してしまう状況だ。
ダインは前二射と同じくエリリナの射線に障壁を展開すると、自身は的を射抜く事に集中する、この競技のルールの穴を見付けたダインは何としてもヒューリを勝利させたいのだ。
そして四射目、一斉に矢が放たれたがダインの放った矢だけが、自分の的には飛んで行かずにヒューリの的を射抜く、ヒューリとエリリナは的を外して、ヒューリの的だけが射抜かれる結果になったのだが、この余りにも不可解な行動に会場が騒つく。
だが、裁定員の判定ではヒューリだけが成功となったのだ、この勝負では全ての矢が放たれて的に矢が当たった者が得点を得る訳だが、何も的に対応する本人が放った矢で無ければならないという規定は存在していなかった、そう、常識的に考えて相手の的に当てて得点を与えるなどという行為は全く想定されていないのだ。
ダインの行動にヒューリとエリリナの視線が向けられるが、ここでダインはヒューリに対してサインを送る、自分の弩弓の刻印が打たれた所を指差してみる。
ヒューリは最初その意味が解らなかった様だが、周りに置かれた射撃済みの弩弓を比べ、また、青ざめていくエリリナの表情を通信盤で見る事によって、弩弓に仕組まれた仕掛けに気付いた様だ。
そして、最後の弩弓の選択ではヒューリ、エリリナの両方が刻印の刻まれた弩弓を選んでおり、ダインの意図がちゃんと伝わっている事が証明された。
通信盤に映るエリリナは未だ平常心を取り戻していない様だが、最後の射撃の時間は近付き、三人全てが弩弓を構える。
ここでダインは自身の信念でもある、公正なルールに基づいた勝負をする事にする、丁度三人の得点は横並びの二回でもあり、ダインが動かなければこれ以上不正が行われる事も無いだろう、だからこそ最後の一射は三人の本来の実力で決めるべきなのだ。
全員が同点で迎える最後の一射に会場も静まり返り、その時を静かに待っている、そして打たれた銅鑼の音に三人がほぼ同時に矢を放つと、今度は全ての矢が自分の的へと向かって行く。
三本の矢は同じ様に的を射抜くと思われたが、エリリナの放った矢だけがずれて的の端に当たって落下する。
その瞬間、ダインとヒューリの同点での勝利が決定し、エリリナ一人の敗北が確定した。
裁定員 「ダイン王三、ヒューリ様三で共に勝利です」
裁定員が二人の勝利を告げるがヒューリの顔は思わしく無い、ダインにした約束が果たせ無かった為だ、そしてエリリナも絶望の中に有る様で、最初に浮かべていた子生意気な威勢など微塵も存在しない。
ダイン 「終わりましたね、ヒューリ新王の誕生をお祝いします、そして私からの贈り物をお渡ししましょう」
ダインの言葉に反応して、会場上空に浮遊していたビグ・ユーマの格納庫が開かれると、一機の白いマギガントが昇降装置を使って降下してくる、その見事な姿はダインが扱う実用的なダイオーンとは違って、正に芸術の様な出立ちでも有る。
ダイン 「このダイオーンをヒューリに相応しい様に飾り立ててみました、ユーマとエゴナ双方の友好の証ですね」
ヒューリ 「そんな、約束を果たせなかった私には貰う資格が有りません」
ダイン 「それは困りますね、新エゴナ国王への祝いの品ですよ、これを受け取って貰えなければユーマとは友好国では無いという意味だと受け取ってしまいます」
ヒューリ 「狡い言い方です、でも本当は凄く嬉しいんですよ、ダイン王と同じ機体が貰えるなんて」
ダイン 「ならば素直に受け取ってください、どうやら他の二戦は一対一の結果で引き分けの様ですから」
ダインはビグ・ユーマからの情報で、他の二会場の結果を把握している、耳長ルルティは勝利して、ピピカは敗北してユーマ騎士団入りを逃した様だ。
結果的にフェカトが提案した、協定戦興行は予想を上回る結果となった、目的としていたリサイクル魔鋼を手に入れた上で、ダインのお気に入りかつ遊魔として素養の高いヒューリが見つかったからだ、その上ヒューリはエゴナの新王としての地位を得てダインへの好感度も高い。
戦いの後、今後を話し合うユーマとエゴナの会談が開催される事となった、ヒューリの勝利が確定した事により、ちゃんとした決定権の有る外交が可能となったからだ。
ユーマ側からはフェカトを中心とした文官達、エゴナ側はヒューリを支えて有力貴族達が出席しているが、お飾りであるヒューリは余り発言権が無い様だ、そしてダインも余り興味の無い話が議題なので暇そうにしていた。
フェカト 「あのダイン様、余り退屈そうにされるとこちらのやる気が削がれます、興味無いならビグ・ユーマにお戻り下さい」
フェカトは敢えて気を利かせてダインに退場を促す、そしてそれに乗って来たのはエゴナ側一番の権力者である、リグノー公爵だった。
リグノー 「ならヒューリ様もお連れ下さい、日頃よりユーマの浮遊母艦に興味を持っておりましたから、両国の一方の王が席を外すなら、他方も外すべきでしょうから」
リグノーにすれば、形式上の最高権力者を外す事で自分達の思い通りに事を進めるつもりである、だが、フェカトの発言はそれを予測しての言葉であるのだ。
ヒューリ 「その様なご無理を言うのは迷惑です、確かにダイン王と語らう時間は欲しいですけど」
ヒューリは単純にダインにお礼が言いたいという意思が強い、仕組まれた罠を教えて貰い手助けまでして貰ったのだ、そしてその背景に有るのは敗北後に訪れていた不本意な運命を回避出来た事が大きい。
ダイン 「構いませんよ、見せて減る物じゃ有りませんし、寧ろユーマの力をちゃんと理解して貰った方がより良い関係を築けると思います」
ヒューリ 「同行をお許し頂いてありがとうございます、先ずは良好の国王同士が交友を深める事が、今後の両国関係に大きな益をもたらす筈です」
ダイン 「その通りですね、正直私がここにいてもお邪魔な様なので、後はフェカトに任せます」
フェカト 「はい、受けたわまりました、ダイン様もヒューリ新王に変な事しちゃ駄目ですよ」
リグノー 「私としましては二人が結ばれる事に大賛成ですぞ、ヒューリ様の任期は四年、つまり四年後にはダイン王に嫁ぐ事も有りましょうや」
エゴナの国家体制では、王は四年の任期制でヒューリも四年後には王位から解放される、そして、元王という箔の付いたヒューリをダインに差し出せばエゴナはより多くの譲歩をユーマから引き出せる事だろうとリグノーは画策していた、だが、ダインの魔の手は他人の思惑など全く考慮などしないのだ。
黒幕達の了承を得たダインはヒューリを伴ってこの場を速やかに退場する、ダインは基本男嫌いであるばかりだけで無く、この場にいるエゴナ側の人間の様な種類の者はダインがとても嫌っているのだ。
そうして、ダインはヒューリを自分の手の中とも言えるビグ・ユーマに誘い込む事に成功する。
ダイン 「ヒューリも大変ですね、お若いのにああいう手合いの相手をしないといけないなんて・・・」
ヒューリ 「そういう話は私だけにしておいて下さい、この国を動かしている方々ですから、エゴナの王なんて本当に飾りなんですよ」
ダイン 「不自由な国なんですね、ですがここでは遠慮は無用ですよ、このビグ・ユーマの中はユーマの国と同じで私の理が支配する場所ですから、何を言っても大丈夫です、それが例え私に対する憎悪で有ったとしても」
ヒューリのユーマの自由な気質は耳にしている、ダインの寵姫達は公衆の面前でも軽くダインへの不平を口にするそうだ。
ヒューリ 「ダイン王には感謝の言葉しか有りません、もし敗北していたなら私は箔付けの為に王都から遠く離れた貴族に娶られる事になってましたから」
ダイン 「その言いようではヒューリが望まぬ婚姻だったのですね、私としてもその状況を避けられた事を嬉しく思います」
ヒューリ 「実際その通りですそして王となる私は四年後、次の娘に王位を譲った後にダイン王に嫁ぐ事を許されたんです」
ダイン 「確かにエゴナの国王の任期は四年でしたね、多くが女性が国家の友好を示す象徴となると」
ヒューリ 「はい、先王チアキシス様もリエバス王国に嫁ぐ事が決まってます、そして今回予定より早く王の代替わりが行われるのは、ユーマとエゴナの友好を深める為です」
ダイン 「つまりヒューリを私に嫁がせる事が目的だったという事ですか?」
ヒューリ 「はい、私はその為に担ぎ出されたのです、でも、私を含めてダイン王に嫁ぐ事は今アーグルの若い女性の多くが望む事ですから、エリリナもそれを望んでいた様ですし」
ダイン 「あのやり方は私には逆効果ですよ、まぁ、あの容姿の処女に迫られると拒めないかも知れませんが」
ヒューリ 「本当に噂通りの人ですよね、今や大国女王でダイン王をお慕いしているヒューリの前で、平然とそういう事が言えるなんて」
ダイン 「私は自分が美しいと思った者を望んでしまうんですよ、だからこそ下手に隠す事などせずに堂々と口にします」
ヒューリ 「本当に不思議な方です、寵姫の方々は大変ですよね」
ダイン 「どうでしょう、みんな新しい娘が増える事を喜んでくれてますよ」
ヒューリ 「ダイン王はそんな嘘も平然と言っちゃうんですね、軽蔑しちゃうかも」
ダイン 「普通の女性の感覚では無理でしょうね、ですが私のモノになるという事は私の思想を共有する事でもあるんですよ」
ヒューリ 「それが可能だとは思えませんが、ダイン王の寵姫には高度な教育を受けていない者もいると聞き及んでいます、それに他人の心は理解出来ない物でしょう」
ダイン 「まぁ、普通の生を生きるなら不可能ですね、ですが私と共に歩むのなら、それは可能なのですよ、私は寵姫達を私を理解出来る存在にする事で強固な結束を作り出していますから、ユーマの発展の根幹は間違いなくその繋がりです」
ダインはそういうと、ヒューリを自身の広い玉座に座る様に促す、そしてこの玉座は巨大なベッドとしても使える様になっており、ここに座ってダインに抱かれていない者は存在しない。
ヒューリもこれから自分に起ころうとしている事をちゃんと理解しているのだが、躊躇無く座ると、今度は自分からダインを迎え入れる様に手を広げた。
ダインも当然それに応じてヒューリの腕の中に身を寄せると、近付いた二人の唇は当然の様に交わされる。
アーグル世界においてダインの魔力が高いという特徴は、優秀な雄の解りやすい現れなのだ、その上ヒューリはくじに込められた残り魔力を引き当ててしまうぐらいにダインの魔力と相性がよく、ダインの魔力に接しているだけで至極の幸福が与えられているのだ。
そして、エスカレートするダインの行為をヒューリは全く拒まない、既に新王の座を得たヒューリには、純粋魔力を維持する必要も無く、ダインに抱かれて純潔を奪われても、退位後の嫁ぎ先が確定してくれる様な感覚である。
ダインもそんなヒューリの思惑を感じて、より大胆になっていく、元よりこのビグ・ユーマにいる限り、ダインの意思が妨げられる事など考えられない。
大胆に絡み合うダインの舌が長くても、ヒューリには疑うだけの知識など無い、ダインの魔力に抱かられる感覚は正に夢心地でこのところ気苦労が多かった少女の心を癒している。
だが、ダインが最高の素材を前にして手を出さないわけが無い、文字通りヒューリの舌を絡め取ったダインは、その更に奥深くに舌先を侵入させて行く。
普段、男と殆ど接しないヒューリはそのダインの行為を疑問には思わなかった、むしろダインに身体を探られる感覚に身悶えていたのだ、そして感じる僅かな痛みもヒューリには絆の証明だった、ダインの行為の全てを受け入れる事が愛情表現と思っているのだ。
ダインの抱える寵姫の数は多く、ダインの全てを完全に受け入れる事で、自身の地位を高めようという計算もあるのだ。
おまけ
エゴナの女王 四年任期制で若くて美しい処女が選ばれる、女王に権力は無く祭事を司る巫女の様な物で国家結束の象徴として存在している。
任期後の女王は外交の道具として扱われており、その効果はエゴナを大国として維持させるのに十分な役目を担っている。
エゴナは国家として中立な立場を保っているが、個々の貴族はそれぞれ懇意にしている国家が有り、女王の後ろ盾の貴族の意向によって他国との距離感が変わる。
今回の協定戦でエリリナの参戦が認められた経緯には、ユーマの台頭によってマギガント輸出に大きな損害を受けたエディケスの大きな譲歩が背景に有り、エゴナ貴族がユーマとエディケスを秤に掛けた結果の産物でもあった。
一応ヒューリもエリリナもエゴナ王族という立場に有るが、エゴナ王族とはかつて女王を輩出した家の親者を加えて増大化したものであり、高貴な血統という訳では無い、実際、ヒューリなどは殆ど一般人と変わらぬ生活を行っていた。
エゴナ女王の候補は魔力の高さと容姿が重要視されており、優れた適正を持った人物に箔を付けて価値を高めて、有力者に送り込む事を意図した、エゴナの外交政策の一環でもあるのだ。