展開編 第十五話 遊魔美意識の普及計画

  005-015

  ダインは普段から眠そうで欠伸も多いが今日は特にその頻度が高い、朝方四人の耳長と共に学院へと戻って来ていたが、シノールとリノールが元の姿へと戻っていたところを見ると実験は成功した様だ。

  その後、耳長達は耳長宿舎へと戻り、ダインだけがユーマ王宮で一休みした後に朝食に出向いていた。

  七実 「シノールとリノールが戻るところを見て見たかったです、変身バンクってよく有りますけど戻る時は何時もハブられてますから、そもそもあの巨体にどう入っていたのかが気になります」

  ダイン 「セジアを安心させるには耳長だけの方が良いと思ったんですよ、魔龍から戻すところはちゃんと映像に残してますので、それで我慢して下さい」

  フェカト 「セジアも遊魔へと魔進化させたのですよね、これで耳長との関係は引き返せませんよ」

  ダイン 「元々その予定ですから、多くの耳長を遊魔に魔進化させるか、そのまま関わりを避けるかの二択ですが、耳長は使える素材ですからね」

  七実 「龍に変わっちゃうなんて面白種族過ぎますよ、見た目エルフなのに」

  ダイン 「完全に別モノですね、さっき教えて貰ったんですが、耳の角度で歳が解るそうです」

  真夏 「やっぱりそうだったんですね、フィセーリアとフォティーヌの年長そうな二人は大分拡がってますから」

  ダイン 「マナは観察力ありますね、私はそういう個性だと思ってましたよ、まぁ垂れてる方が可愛いと思いますけど、上向いてるとキツイ印象を受けてしまいます」

  フェカト 「セジアって娘が真面目過ぎただけでは、張り詰めた感じがしてましたし」

  ダイン 「若輩の身分でユーマを見極めろと言われれば硬くもなるでしょう、しっかりと慣らしておきましたよ」

  真夏 「ダイン様下品ですよ」

  フェカト 「いや、それを言っても許されると思う程に信頼して頂けているんです」

  ダイン 「まぁ私が素でいられるのは遊魔の中だけですから大目に見て下さい、耳長の登場でアーグル戦略も大きく変わりそうですから」

  フェカト 「魔龍を使えば、容易に戦力を増強出来そうですからね、正直言って魔鋼を集めるのが難しくなってます、ユーマが多く買ってるせいで価格も高騰してますし、そもそも産出量が多くないですから」

  ダイン 「古いマギガントを集めて再利用した方が安上がりになるという試算でしたね」

  フェカト 「再利用という概念が人類圏には有りませんでしたから、ですが古いマギガントでも集め過ぎると各国に過度な警戒心を与えてしまうと思います」

  七実 「もう、人類大陸の統一とかした方が早いと思います」

  真夏 「ユーマの国力は人類圏の1%ぐらいですよ、ククジアを入れれば20%を超えますが完全把握は不可能でしょうし」

  七実 「1%でも、魔龍投入すれば十分だと思います」

  ダイン 「戦力的には可能かもしれませんが、統治する事が不可能です、抑圧は私が好みませんから、むしろ人口の少ない耳長の方が私の理想の達成が可能かもしれません」

  七実 「処女の騎士が三百人もいますからね、クフィカールも三百機ですし」

  ダイン 「ですが三百人を処女のまま遊魔には出来ないでしょう、となると飛行装備の増産が欠かせません」

  七実 「そこは発想の転換ですね、ナナにいい案が有りますので後で新工房で説明させて貰います」

  ダイン 「ナナの事ですから、新しい技術ですよね?」

  七実 「それは秘密です、でもイメージボードは出来てますから見て貰った方が解り易いです」

  ダイン 「他にもユーマの為になるアイデアが有る者は遠慮無く言って下さい、余り資金を使わない事であれば直ぐにでも実行しますよ」

  フェカト 「それ、ツェリに言って上げましょう、ツェーリア領の作物でかなりの結果を上げている様ですから」

  ダイン 「意見のある者は直接私を訪ねて下さい、有益なアイデアにはその場でご褒美も有ります」

  七実 「でも下らないアイデアだと罰もあるんじゃ無いですか?」

  ダイン 「なら誰かに相談して下さい、二人が良いと思えば多分使えるアイデアです」

  真夏 「ナナに意見を求められても、マナには解りませんけど・・・」

  七実 「ナナは直接ダイン様に報告するから心配有りません、首を傾げられたり、解ったフリされるのって辛いんですよ」

  真夏 「変態は変態を知るってやつですよね」

  ダイン 「そうかも知れません、ですがナナが私を落胆させた事など有りませんからね」

  フェカト 「変態って羨ましいです」

  真夏 「それ、絶対に間違えてるから、フェカトはそのままの方でも十分にユーマに貢献出来てるから」

  ダイン 「まぁ自分の活きる事で結果を出せばいいんですよ、各々の遊魔にそれが可能な事は私が保証します」

  七実 「遊魔は自ら変わっていける存在ですからね、今は無理でも経験を積めば何とかなりますよ」

  報告を兼ねたちょっとしたミーティングはここで終了となる、ダインは勿論、遊魔達には出来る事が数多く存在しているのだ。

  その後ダインは七実に導かれて、新工房の七実研究室を訪れる、創作活動をしていた七実は自らの思い付きを絵にする事が得意で、研究室の壁一面に数多のアイデアを記したイラストが掲げられている。

  ダイン 「確かにこれだけのアイデアが有れば、有効なモノも有るでしょうね」

  七実 「大体はイケてると思いますけど、でも今回推すのは人類圏ユーマ化計画の初手と言える物です」

  ダイン 「人類圏ユーマ化計画ですか、確かにそれが一番手堅いかもしれません」

  七実 「はい、そこで一番重要なのは遊魔を知って貰って、憧れを抱いて貰う事だと思うんです」

  ダイン 「理想的だと思いますけど、ザキトス魔族と近い見た目の遊魔はその姿だけで嫌悪の対象だと思いますよ」

  七実 「果たしてそうでしょうか、確かに魔族は恐ろしい存在だというイメージが根付いてしまってますが、果たしてそれだけでしょうか、恐ろしいは強いに繋がりますし、美しい物は美しいんですよ」

  ダイン 「確かに美には怖いや尊いなどは関係有りませんね、美しいは美しいです」

  七実 「そこで七実が提案したいのはコレです」

  七実は先に研究室に入って準備したイラストをテーブルに拡げた、そこには正座して尻尾を後ろにした遊魔のティアスの姿が描かれているが、同じイラストに描かれたロゥディ・ゾッフォから換算すると、浮遊母艦よりも巨大なティアス像の様だ。

  ダイン 「これは、遊魔ティアスの浮遊母艦ですか?」

  七実 「はい、この浮遊母艦を使ってダイン様の美意識を民衆に植え付ければ、きっと民衆もその美を理解出来る筈です」

  ダイン 「そう上手く行くでしょうか、それにこの造形の浮遊母艦はかなり手間ですよ」

  七実 「外装を似せるだけですから、それに左右が対象ですので、片側を作ればクラフト・ゾッフォで反転コピーが可能です」

  ダイン 「なるほど、ナナ自らが造形を担当するわけですね、正座の下半身と太い尻尾の部分でかなり広いペイロードを確保出来そうですね」

  七実 「はい、そしてこの浮遊母艦最大の売りは下からスカートを覗ける事です、この機能は必ずや多くの殿方を魅了する筈です」

  ダイン 「確かに、美しい女性のスカートの中は魔性の誘惑ですからね、ですが、着色しては像としての美観を損ねますし、色の無い下着は魅力を失わせますよ」

  七実 「流石、ダイン様は着眼点が違いますね、ですがこの巨大ティアス像はこれで良いと思います、確かにスカートの中身は覗きたくなりますが、巨像にエロスは抱きませんよね」

  ダイン 「確かに、生だからこその下着ですね、像の下着には欲情出来ないでしょう」

  七実 「このユーマ・ティアスはあくまで人類圏住人の美意識を変化させる物で、エロスを煽る物では有りません、遊魔の姿が美しいという認識さえ与えれば目的は達成されます」

  ダイン 「美で恐怖を塗り潰すわけですか、で、実現性の方はどうなんですか?」

  七実 「新たに着手する、三番艦から実行が可能です、スカイベアーとビグ・ユーマの実績から、外装の変化の与える影響など軽微な事は判明してますから」

  ダイン 「確かに巨人形態のビグ・ユーマの飛行性能は、飛行形態に比べてそれ程劣ってませんでしたね、それに馬鹿をやって民衆を驚かせるのは必要な事です、楽しみが産み出せない人間も多いですから」

  七実 「やっぱりダイン様は解ってくれました、ご褒美に値しますよね?」

  ダイン 「当然ですね、ナナには魔力ブースト能力とDコアを追加で授けましょう、現状では魔龍化は不可能ですが、Dコアに蓄積された魔力を一気に使用する事が可能です」

  七実 「それ、使い道あるんでしょうか?」

  ダイン 「確か、ディアーナから魔術の訓練を受けていましたよね、新しい機能で魔術ブーストの可能性を試してみて下さい」

  七実 「それってかなり危険な気がします、でも興味は有りますね」

  ダイン 「個体飛行魔術がマギガント搭乗時でどうなるか試して欲しいんですよ、魔鋼不足の為に飛行装備の製造が難しくなってますから」

  七実 「確かにマギガントで飛行魔術を行使出来るなら戦術の幅が拡がりますね、なんか格好良いですし」

  ダイン 「天翔る処女を起動している時などは二つの魔導具が同時に起動しているんですよ、だから魔導具と魔術の同時起動も不可能では無いと思います、要はアーグル人に二つを同時に発動させる魔力が無かっただけだと思います」

  七実 「耳長の魔龍化という特技が発見された以上、私達人間ベースの遊魔も特技を見出すべきですからね、正直体術を鍛えた所で向上する戦闘力は限られてますから、魔術に伸び代を見出すのは正しい判断だと思います、ディアーナから良い教え手になる人物について訪ねてみましょう」

  ダイン 「いいですね、私達はマギガントの戦闘力の高さに目を奪われて、魔術に対する情報の収集を怠っていたと思います、今後新たな技術開発を行う上でも魔術的な知識は得るべきでしょうね」

  七実 「要は美人で処女の優秀な魔術士を遊魔にするわけですよね、クガトも魔術系譜の家ですけど、他にも魔術が栄えている国が有りましたよね」

  ダイン 「ベヨルト魔術領ですか、魔術評議会が国家運営をしているという学術国家ですね、ちょうどテガスの魔動力を魔術に置き換えた様なところだと聞きましたが」

  七実 「生存圏を確立する為にククジア近辺でしか活動出来ていませんでしたからね、確かに遊魔の魔力を使えば魔術面は劇的に進歩しそうです」

  ダイン 「単体戦闘力は幾ら高くても問題ないでしょう、最悪、全人類を敵に回す可能性も無いとは言えませんから」

  七実 「そういう不吉な言動ってある意味フラグですよね」

  ダイン 「そうならない様に努めてますけど、私の築いた遊魔の社会構造自体が男には不愉快でしょうから」

  七実 「ブスや非処女にもそうですよ、選ばれた者は最高なんですけどね」

  ダイン 「手加減はしているつもりなんですが」

  七実 「まぁアーグルではまだ常識的ですね、魔力の優れた男性が多くの子を残すのは当たり前の様ですから、でも、ダイン様は子供残せませんし」

  ダイン 「やろうと思えば作れますよ、ですが、成長させる必要がある子供よりも既に優れた人材を遊魔にした方が有益ですから」

  七実 「でも女は愛の結晶を望む物ですよ、確かに今のナナ自体が愛の結晶と言えますけど、子供はまた別なんですよ」

  ダイン 「才能で私を超えられない子孫に価値は無いと思いますが、遊魔が多分、永遠の寿命を持つ以上、次世代に繋ぐ必要は無いんですよ」

  七実 「理屈は解りますけど、本能は違うと思います、ダイン様を超えられなくても二人の血が混じり合った子供が欲しいと思うんですよ、ダイン様だって理屈ではない好きがたくさんあるじゃ無いですか」

  ダイン 「私は理想的な父親には成れませんよ」

  七実 「別に家庭を求めてはいませんから、言うならば更なる絆ですね」

  ダイン 「正直言って、ナナが子供を望むなんて予想外でしたよ」

  七実 「けど、殆どの娘がそう思ってますよ、多分状況の安定で繁殖のスイッチが入ると思うんですよ」

  ダイン 「その理屈は解る気がします、遊魔の絶対数がまだ少ないのも影響しているんでしょうか」

  七実 「何にせよ、生殖で遊魔を増やす事も考えるべきだと思います、多分ダイン様にこんな事を言えるのはナナぐらいですから」

  人の頃にダインと親しく接していた七実は、ダインに対する絶対的な崇拝を抱いていない、この事はダインにとってかなり心地良い関係なのだが、現状の安定を維持する上で七実以外の遊魔が同じ様な行動を取る事はない、そう、七実自身もこの様な事はダインと二人だけの時にしか行わないのだ。

  おまけ

  マギガントスペック ロウディ・ゾッフォ

  

  運動力       15

  機動力       15

  腕力        13

  耐久力       12

  搭載力       16

  運用力        9

  対応力       10

  ユーマ騎士団の主力マギガント、上級機や決闘機と張り合えるスペックを持つが、最大の特徴は兵装の交換が容易に出来る事で、飛行形態で移動させた後に数時間で戦闘形態への換装が可能で有る、戦闘形態では銃撃戦用のガドリングガンを標準装備している。