展開編 第十話 卵からリノール

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  閉じた顎の前に佇むダインは、すっかり忘れていた卵の前に移動するとその殻を軽く叩いてみる、すると少し遅れて中から応じる様に音がする、どうやら中からも殻を叩いている様だ。

  ダイン 「自力で割って出て来て下さい、多分出来る筈ですが・・・」

  ダインの言葉に応じて中から衝撃が起こると、殻の表面にひびが入って行く、そして拳が突き出ると次は中からからが破られて、全裸のリノールが姿を現す。

  リノール 「中、気持ちよかった、護られる安心感が有った・・・」

  ダイン 「なるほど、興味深い感想ですね、私も卵の中は未体験ですから、参考になります不安感からのインプリンティングというわけですかね」

  フォティーヌ 「また解らない単語が・・・ダイン様よく自分だけの世界に入ってしまいますから」

  リノール 「それ困る、シノールも戻して欲しい、シノール居ないと寂しい」

  リノールの悲しい言葉にダインは現実に戻されるが現実はそう上手くは行かない様だ。

  ダイン 「申し訳ありません、シノールの方はまだ時間が掛かってしまいます、私の尻尾が今使用中なんですよ」

  フォティーヌ 「そろそろ独り立ちする時なんですよ、先に目覚めたという事は先に楽しめるわけですよ」

  ダイン 「私としては、セジアの魔進化を楽しんで欲しいですが、人恋しいならフォティーヌに慰めて貰って下さい」

  リノール 「ダイン様が忙しいなら我慢する、それにコレの中には興味有る」

  リノールもダインが生み出した顎に唯ならぬ気配を感じている様だ、魔龍化出来る同種として創造主のダイン以上の何かが解るのかも知れない、その身体を小刻みに震わせてセジアの魔進化に恐怖を感じている様でも有る。

  ダイン 「同じ龍種として感覚が鋭いのかも知れません、仕込みは終わりましたので様子を見て見ましょうか」

  顎は緩やかに振動するとその口が開き始めて行く、中のセジアは変わらない姿で横たわっているが大きく膨らんでいた腹部は縮小していて、全身が紅刺青で飾り立てられているのだが、よく見るとただの模様では無く、紅く光を放つ宝玉の様な球を中心に模様が刻まれている。

  フォティーヌ 「アレがDコアですか、かなりの数が埋め込まれてますね」

  ダイン 「全身十箇所に埋め込んでいます、額、喉、腹、尻に一つずつ、他にも手足と背中に対になる様に配置しています、額のDコアは頭蓋と一体化していますので、効果を発揮しない時は皮膚で覆われるんですよ」

  リノール 「でもまだこれからみたい、セジアはまだ遊魔じゃない」

  ダイン 「その通りです、Dコアを取り込んだ上で魔進化して貰います、リノールとシノールは増大化した魔力で魔龍化してしまいましたから、私は自身の望む美の表現に拘っているんですよ、まぁ色んなパターンも有りだとは思いますが、龍の姿では愛でる事も出来ませんし」

  フォティーヌ 「ダイン様でも失敗するって事ですね、そしてリノールとシノールは失敗作ですね」

  ダイン 「予想外でしたが失敗では有りませんよ、魔龍化について学べましたから、それに身体も元の姿に戻せましたし二度楽しめるという事ですよ」

  ダインは死亡しない限り、どんな姿でも復元出来るという自信が有る為、リノールとシノールの魔龍化でも、それ程焦りを感じていなかった、そして次に魔進化させてセジアでは魔龍化すら制御下に置いて、個体戦闘力を充実させた遊魔の実験を始めている。

  これは今後の展望を考えた動きでも有り、魔龍化を上手く使って個体戦闘力を高めた遊魔が導入出来ればマギガント以上の戦闘力となる事を期待しているからだ。

  何より耳長がダインに接触して来た背景には、高性能なマギガントであるクフィカールでも、魔龍に対してそれ程有効的では無かった為だ。

  セジアに近付いて、触れる事で状態の確認を行ったダインは、今度はリノールを呼び寄せて、同じ様に触れて何か確かめている。

  ダイン 「リノールの身体には何かの魔力集積器官が存在していますね、背骨の一部が変化している様です、鶏の首を落としても動き回るというアレでしょうか、でも魔力は関係無く肉体の構造だったと思いますが」

  リノールもダインが触れていた部分を触って変化を確かめている、見た目では殆ど解らない程だが、確かに小さな突起が出ている様だ。

  リノール 「触ると変な感覚が有る、塞がれたところの感覚が鈍くなる」

  ダイン 「新しい感覚器官の様ですね、魔龍の状態で周囲を確認するレーダーの様な器官でしょう」

  フォティーヌ 「ああ、確かに魔龍って魔力の流れを読んでる様な動きをしてましたよ、雲に入って振り切ろうとしたんですが同じ速度で追跡していたんです、雲の厚さを考えれば眼では見えなかった筈なのに」

  ダインはその言葉を聴いて実験を思い付く、リノールの背中に回って右手に魔力を込めて問い掛けてみる。

  ダイン 「どちらの魔力をより感じますか?」

  するとリノールは後ろに手を伸ばして正確にダインの右手を掴むと解答を口にする。

  リノール 「こっち、ダイン様の魔力が高まっている」

  ダイン 「やはり魔力感知してますね、遊魔の魔力感知は視界の変化で認識されていますが、ここでは目に映らない、つまり第六感としての魔力を捉える器官で間違いないでしょう」

  フォティーヌ 「でも、そんなに意味が有る様には思えませんけど」

  ダイン 「魔龍の巨体ならば有益なんでしょう、私もビグ・ユーマの巨人形態では後方の操作をティアスに任せてましたから」

  フォティーヌ 「あの合体にはそういう意味もあったんですか」

  ダイン 「機体を動かす事は出来ませんが、後方機銃はティアスが制御してました、マギガント相手なら機銃で対応可能でしたらね」

  フォティーヌ 「魔龍同士の戦いだと、全周囲の感覚が必要とされるのですかね」

  ダイン 「単純にサイズの問題でしょうね、大きくなると敵に囲まれやすい筈ですから、魔龍形態を手に入れたとしても、最適解を求める為の修練に時間が掛かりそうです」

  リノール 「大丈夫、リノールもシノールも慣れて見せる」

  ダイン 「期待してますよ魔龍は未知数の力ですから、ですが人間サイズに戻れるという確証も得られたので、十分に戦力化が可能な様です、私が愛でられない遊魔なんて作る意味が有りませんからね」

  フォティーヌ 「愛に満ちたお考えです、幾ら力を得られても愛を失っては意味が有りませんから」

  ダイン 「その通りです、遊魔とは私の求める美が反映されないと行けません、幾ら強大な力が有ってもただの怪物なんて惨めなだけですからね」

  リノール 「ダイン様の愛は最高のご褒美、それが無いなら力の意味も無い」

  ダインの変わらぬ方針が宣言された事で、魔龍化したリノールも安堵している、そして魔龍の力を授けられていないフォティーヌも、魔龍の力を得る為の憂を捨て去っている。

  ダイン 「Dコアの状態も正常なので次に移りましょう、フォティーヌの魔力を使わせて貰いますよ」

  フォティーヌ 「私の魔力まで、それだけでセジアの魔進化が特別な事が良く解りますね」

  ダイン 「魔龍が活用出来れば、遊魔絶対圏の確立が約束された様な物ですから、現状の遊魔の戦力は耳長に対して明らかに劣ってますから」

  耳長勢力の出現はダインに焦りを与えていた、生物の本能が生存圏の確立で有る以上、生半可な力を持ってしまえば排除の対象となってしまう事をダインは危惧しているのだ。

  その為の戦力強化は現在の急務といえ、比較的手間の掛からない魔進化の改良で強大な力を得られるで有ろう魔龍化技術の獲得は今のダインの一番の重要案件で有る。

  フォティーヌ 「耳長を籠絡して、戦力にしちゃうなんてダイン様は恐ろしいお方です」

  ダイン 「引き換えに愛情を与えていますが、それでは不満ですか?」

  フォティーヌ 「不満なんてある筈が有りません、ダイン様と離れる事でその尊さより実感しています」

  ダイン 「フォティーヌにそう言って貰えると遊魔へと迎えれた事を嬉しく思います」

  リノール 「リノールも同じ、もう愛の無い耳長には戻れない」

  ダイン 「これも嬉しい言葉ですね、ならセジアを受け入れる事にも異論は有りませんね」

  フォティーヌ 「勿論です、早く芸術的な遊魔の姿を与えて上げましょう、今の状態でも美しくは有りますが、少し物足りませんから」

  ダイン 「確かに、尻尾が無いと遊魔とは言えませんからね、先ずはそこからですね」

  ダインが全身も魔力を活性化させて尻尾から魔力を送ると、セジアの身体がその強大さに身震いしている、新たな器官で十分過ぎる程感じてしまうセジアは全身でその凄さを表現してしまうのだ。

  そして、フォティーヌの魔力も尻尾を通じて顎に流れ込んでおり、セジアは今まで行われた事の無い強大な魔力を与えられながら、魔進化が始まる事となる。

  魔力量の多さと魔進化の進行には余り関係が薄い様だ、これまでの遊魔と変わらない形でセジアの変容が進んでいる。

  フォティーヌ 「魔力量が多くても劇的な変化は無い様ですね」

  ダイン 「Dコアが制御している筈です、未だ身体が馴染んでいない状態ですからね」

  リノール 「それは感じる、でもセジアの身体の十箇所に魔力が蓄えられている」

  リノールは新たに与えられた能力でダイン以上にセジアの状況を読み取っている、遊魔の思考を得た事でリノールも魔進化の過程を楽しめているのだ。

  ダイン 「魔進化段階で急激な魔力を与えてしまうと、リノールの様に魔龍の姿に変わってしまう様ですから、女体に対して徐々に変化を与えて行く事が魔進化の醍醐味ですからね」

  フォティーヌ 「その感覚解ります、植物も徐々に成長して行くところに命の息吹きを感じますから、魔進化は欲望の息吹きですけどね」

  ダイン 「私の邪心の具現化ですから、私の思う生物的な強さが表現されています、爪や角がその現れと言えるでしょう」

  リノール 「解る、拳は殴ると痛い」

  ダイン 「そうなんですよ、人体の武器では有りますが力強くは有りませんからね、所詮肉で出来た物は強度が強く有りませんから」

  ダインの思考は自身の姿に現れている、鋭い爪や、尻尾の背を覆う鱗は高い強度を誇っており鋼鉄を超える強靭さだ、反面、皮膚が残る部分は触ると凹むぐらいに柔らかく、遊魔の身体は剛柔合わせ持っているのだ。

  フォティーヌ 「その為の爪や鱗ですよね、自身の身体に武器と防具が付いているのは楽ですよね、重さとか感じませんし」

  ダイン 「魔導武具以外を上回る能力ですからね、魔力を込めると魔導武具さえ凌駕します、飛び道具も用意したいところですが、そこは魔術ですかね、棘を飛ばすとかゲテモノの攻撃ですし」

  フォティーヌ 「ダイン様は力だけを求めませんからね、遊魔は常に美を反映させていると思います、ユーマのマギガントは変なの多いですけど・・・でもそれを考えると魔龍化って美意識から外れてませんか、どう見ても化け物ですし」

  ダイン 「その疑問に対する解答としては、魔龍とは生体マギガントとも言えるモノだからですよ、魔龍リノールがリノールを産んで消滅したのはリノールからの魔力供給が無くなったからです、つまりこの魔龍の巨体も、翼や尻尾の延長というわけです」

  フォティーヌ 「この翼や尻尾が成長して魔龍の身体を形作っているという事ですか、つまり魔龍自体が巨大な魔法生物だという事ですね」

  ダイン 「はい、ですから中央大陸に生息している魔龍にも中身がいると思えます、それも耳長の中身が」

  ダインの推測はフォティーヌに衝撃を与えていた、実際に魔龍と対峙した事の有るフォティーヌには、魔龍が同族とは思えないのだ。

  だが、ダインがそれを証明する為の実験が現在進んでおり、その実験体でも有るセジアの身体には魔龍化の兆候が現れ始めている。

  フォティーヌは遊魔の自分と魔龍化したシノールを交互に見比べて、唸りながらダインに問い掛けてみる。

  フォティーヌ 「確かに魔龍の特徴は有りますけど、こうはならないですよね」

  遊魔と魔龍を見比べて、魔龍への変化を推測しても尻尾と背中の魔龍化は解るが手脚は上手く繋がって行かないのだ。

  ダイン 「なら、シノールの内部状態を示して見ましょうか」

  ダインは言葉と共に、空間にシノール魔龍の縮小した姿を浮かび上げると、その魔龍は徐々に表皮が無くなって身体を中央に割った切断図の状態になる、すると魔龍の背骨の胸側に手脚を縮めて丸まる人の姿が表示されている。

  ダイン 「この人型が今のシノールの状態です、人の肺の奥にあたる部分に存在しています、つまり、魔龍化する過程とは、大きくなった魔龍の服がそのまま手脚に変わる様なモノです、いや、何か違いますね」

  フォティーヌ 「言葉で表して貰えなくても大丈夫です、この図を見て理解出来ましたから、つまり肉の魔龍型マギガントを耳長が生み出しているという事ですね」

  ダイン 「まぁ、その通りなんですが、セジアの作業を進めて実際の魔龍化を見てみましょうか、多分見た方が早いですから」

  ダイン達が話し込んでいる間にセジアの魔進化はかなり進んでいた、既に魔族型遊魔の五箇所の部分に大きな水膨れが出来て、尻尾や背中が蠢いている。

  ダイン 「順調な魔進化です、リノールとシノールではここから流入魔力を取り込み過ぎて一気に魔龍化してしまいましたから」

  ダインが苦々しい表情をしている、死亡しない限り失敗では無いと言葉にするダインも、想定外の出来事に対しては失敗という認識をちゃんと抱いているのだ。

  マギガントスペック フーティア

  運動力       16

  機動力       15

  腕力        15

  耐久力        9

  搭載力       14

  運用力        3

  対応力       12

  クガトがムウディ・フーティアのテスト機として作った機体、大型化したムウディは失敗したが、こちらは十分に性能を発揮している、ただ、軽量化の為に高い操縦技術を必要とするのと生産性が悪い為に生産数は二十機程度である。