004-037
選定戦の終わったククジア王都では、お祭り騒ぎが既に始まっていた。
国民の多くは気さくなティアスを支持しており、革新的技術を次々と披露しているユーマのダインとの婚約もその人気を後押ししている。
ククジア王国は東方地域のクガト領の勢力が強大である為に、西方の併合地域ポロルグの王家の血を引くティアスが王位に着く事は、新しい国家体勢への刷新を大きく期待させていた。
ユーマ駐屯地に設けられたティアス私邸の一室で、ティアスは勝利したラファメを迎え入れてその労を労っていた。
ラファメ 「ティアス様に勝利で王都中心部は大賑わいでした、リボルト殿下ではまたクガト領優遇の政策が行われる事が目に見えてますから」
ティアス 「ククジアの西方地域はまだまだ発展の余地が有りますからね、ザキトス戦役時の廃墟がまだ残ってますから」
ラファメ 「クガト領は色々と優先されてます、ですがこれからは西方ユーマ共栄国との国境地帯が繁栄して行きますよね」
ティアス 「国境だけじゃ有りませんよ、ユーマには圧倒的な輸送手段が有りますから、テガスの労働力だけでは浮遊母艦の建造が難しいので、王都ククージアの労働力提供という話で、三番艦の建造を誘致出来たんです、もっとも三番艦はティアスの船になる予定ですけどね」
ラファメ 「確かにダイン王は人類圏でも飛び抜けた傑物だと思いますが、女性関係も突出してますよね、ティアス様が本当に幸せになられるか心配です」
ティアス 「そう言ってくれるラファメは貴重な友人です、確かにダイン王の周りには女性が多いですが、そもそもダイン王の愛というモノが、普通の常識から掛け離れたモノなんです、だから心配しないで下さい」
ラファメ 「確かに婚姻の感覚が普通とは違いますよね、あれが異世界式なんでしょうか?」
ティアス 「ダイン王独自の考えの様です、通常の婚姻というより家族契約ですね、そしてダイン王は何より家族を大切にしていて、その家族達も個人より家族の利益を優先しているんですよ」
ラファメにはティアスのいう遊魔の社会が理解出来ていない、人間として生きている者には理解出来ない感覚でもあり、遊魔に魔進化しない事には理解出来ない価値観でも有る、そしてラファメの功績はダインにして、魔進化に値するとのお墨付きを受けている。
ラファメ 「異世界人とは難しいモノですね、ですがティアス様が家族ですか」
ティアス 「ラファメが望めばダイン王は迎えてくれますよ、ラファメはそれだけの功績も立ててますし、それにダイン王的には最初自分に敵対的だったラファメは魅力的な様です」
ラファメ 「確かにアーグルでダイン王を邪険に扱った女性は殆どいないでしょうから、でもそれが魅力となるのも変な話ですね」
ティアス 「殿方は逃げる者は追いたくなる性分なんですよ、まぁ、ラファメの意思を最優先してくれますけど」
ラファメ 「私には意中の殿方なんていませんし、ダイン王は恐れ多いです」
ティアス 「それは謙遜し過ぎですプルルなんて、上手くやってますよ」
ラファメ 「あの娘は機転が効きますから、私は駄目ですよ」
ティアス 「まぁ、その気になれば言って下さい、ですが純潔だけは大事にして下さいね、幾ら絶世の美女でも非処女はダイン王に受け入れて貰えませんから」
ラファメ 「解りました、十分に留意しておきます、ラルクルクの家はまだどうなるか解りませんので」
ティアス 「リボルト兄様が何か出来るとも思い難いですが、ダイン王は東方勢力とも交渉する様です、これは早期にユーマを国家として独立させた事が上手く行っている様です」
選定戦後のちょっとした交流で、東方勢力の思惑も少し解ってきていた、今回の東方騎士達はユーマ共栄国の武力偵察の性格を帯びており、本心でリボルトに組みしていた訳では無いのだ、ただ、リボルト勝利の暁にはククジア国力を背景にした優位な交渉も想定していた様で、なかなか気の許せない相手の様だ。
そして、ビグ・ユーマの艦橋ではダインが東方騎士派遣隊のフィセーリア達を迎え入れて、会談を行おうとしていた。
騎士の鎧を脱いで、耳長独特の民族衣装を纏ったフィセーリア、フィリッカ、フォティーヌの三名は落ち着かない様子でダインと対面する席に着いていた。
ダイン 「異種族が存在するとの話は聞いていましたが、話が通じる相手で良かったですよ、私は高等生物とは話し合いが可能だと信じてますから」
フィセーリア 「高等生物ですか、妙な言葉ですね」
ダイン 「そうでしょうね、私は人間の全てを高等生物とは見なしていませんから、その意味では貴女方は交渉に足る存在だと思っています」
フィセーリア 「私としても、知性的な会談の方が助かります、この会談は人類法の下での会談となるのですか?」
ダイン 「とやかく言うつもりは有りませんよ、東方には東方の理があるでしょうから、ですがユーマにもユーマの理も有りますよ」
フィセーリア 「それは当然でしょうね、なら先ず先にお詫びをしないと行けません、この度は貴方方を試す様な行動を行ってしまって申し訳有りません」
ダイン 「その事は目を瞑りましょう、実際に戦って戦力を確かめた方が相手の実力を判断出来ますから、実力の解らない相手とは対等な交渉など不可能ですし、で、我々ユーマをどの程度と判断されましたか」
フィセーリア 「予想以上でした、実際、我々はククジア国力を背景にした優位な交渉を目論んでいましたが、見事に覆されてしまいました」
ダイン 「手の内を明かしてくれるのは喜しいですね、私にはすべき事が山積みですので、交渉は簡潔にお願いしたい物です」
フィセーリア 「ダイン王の足跡を追うとよく解ります、難題も知恵で解決されてますから」
ダイン 「アーグル技術の根底が私と相性が良いからですね、魔力の多い私達はここの人間以上に魔鋼を上手く利用出来ますし、強力な魔動力を発揮させる事も出来ます」
フォティーヌ 「人類圏のマギガントは、東方より四百年は遅れている物でしたが、ユーマの機体は総合力で匹敵する仕上がりだと思います、特に遠距離からの攻撃方法は対処を誤ると一方的に此方が敗北していました」
ダイン 「あれは私の戦略ミスでしたね、もっと引きつけてから全機に対して銃撃すべきでした」
フィセーリア 「それを実行されていれば、巨人の出番は無かったでしょうね」
ダイン 「いえ、あれは今日披露する予定でしたから、リボルト殿下がムゥディを持ち出した以上はより強大な力を示した方がティアスの求心力も強まります」
フィセーリア 「正直、東方はククジアの繁栄を警戒してます」
ダイン 「それはティアスに対する褒め言葉ですね、本人も喜ぶでしょう、まぁ前置きはこれぐらいにして、こちらとしてはそちらのクフィカールを一機頂きたいですね」
フィセーリア 「素直にそう言ってくれるのは助かります、ならこちらは浮遊母艦を望みます」
ダイン 「想定内の要求ですが、浮遊母艦を運用するには七万以上の魔力を持つ人間が必要ですよ、耳長騎士達はアーグル人よりは魔力が高い様ですが、多くても三万ぐらいですよね」
フィセーリア 「魔力七万ですか、確かに私達では不可能です、なら協力をお願いしたいです、我々東方大陸の耳長族は亜人大陸への帰還を悲願としています、ダイン王にはそれに協力して頂きたいのです」
ダイン 「こちらで言う混沌大陸ですね、魔王ザキトスの放った魔獣や魔族が支配する土地という話ですが」
フィセーリア 「人類圏の認識ではそうでしょうが事態はもっと深刻です、ザキトスの放った魔獣は食したモノに魔力を与えます、ザキトスは己の眷属で有る魔族を亜人大陸へと導く為に行った様ですが、亜人大陸には魔族をも凌駕するモノが既に存在していました、そしてそれは魔獣を喰らって更に力を付けてしまったのです」
ダイン 「ザキトス魔族以上の脅威がこの世界には存在していたのですか」
フィセーリア 「はい、私達が魔龍と呼ぶその存在は、大きなモノではこのビグ・ユーマに匹敵する程の巨躯を持っており、魔力も数十万単位です」
ダイン 「それはナ○ック星に行ったら、フ○―ザ様が居た様な衝撃ですね」
フィセーリア 「全く理解出来ない例えですが、事の重大さは認識して貰ったと思ってよろしいですよね」
ダイン 「はい、人類大陸で最も先進的だと思っていた私達が、実はこの世界ではそれほど強く無かったという事ですね」
フィセーリア 「はい、ビグ・ユーマは大きさでは魔龍に匹敵していますが、魔龍の力は桁違いです、今は魔龍同士で抗争していて他の大陸に注意が向いていませんが、抗争が終われば必ず飛来する事でしょう」
ダイン 「つまりその抗争が終結する前に、魔龍を打倒出来るだけの力を持つ必要があるという事ですか」
フィセーリア 「その通りです、東方の魔導技術は新たな発想が芽生えずに閉塞していましたが、ダイン王の浮遊母艦は私達に新しい可能性を示してくれました、ですから何卒お力をお貸し下さい」
ダイン 「私も美しい女性に頼られては悪い気はしませんね」
フィセーリア 「そう言って貰えると有り難く思います」
ダイン 「困難は成長の糧ですから、困難を乗り越える事で大きな成長が果たせます、それに何も知らないまま食べられるのは嫌ですからね」
フィセーリア 「魔龍の力なら数日でこのククジアすら壊滅させてしまうでしょう、その意味では魔王ザキトスよりも遥かに強大な存在です」
ダイン 「なら魔王ザキトスへの畏れが未だに根付いているこの地では、魔龍の存在は秘匿すべきですね、住民がパニックに陥れば軍備に必要な資材が確保出来ません」
フィセーリア 「確かにその通りです、魔龍の事はリボルト王子には伝えておりませんので安心して下さい」
ダイン 「それは賢明な判断です、私も対応に脳をフル回転させますから、出来れば知る限りの情報を出して頂きたい、より正確な情報を得ていないと対応が難しいでしょうから」
フィセーリア 「なら、東方派遣団のユーマへの滞在をお許し頂きたいです」
ダイン 「勿論、大歓迎しますよ、私の居た世界に料理で存分にもてなしましょう、耳長という種族には私も興味が有りますから」
フィセーリア 「なら、私達が全員処女な意味も理解出来て頂けているでしょうか?」
ダイン 「耳長の魔導技術でもまだ処女以外を飛行させる事は不可能なのですね、その点、我がユーマは穢れた私でも空を飛ぶ事が可能ですよ」
ダインは敢えて惚けて、フィセーリアの口から覚悟を聞き出そうとする。
フィセーリア 「また、おとぼけになって、私達は既に心を決めております、お気に入りとなった娘がおりましたら、遠慮せずにお呼び付け下さい」
ダイン 「それは嬉しい申し出ですね、ですが覚悟はして下さい、私と寝所を共にするという事はそれまでの自分を捨てる事と同義ですから、ですが新しい自分は確実に見出せる筈です」
フィセーリア 「面白い言葉ですね、既に齢四百を超える私に新しい自分などあるのでしょうか?」
ダイン 「その言葉、今日にもお誘いしちゃいますよ、実はここビグ・ユーマの艦橋は私の寝所でもあるんですよ」
フィセーリア 「そう言われればダイン王の玉座はまるでベッドの様に広いですね」
ダイン 「ちゃんとフラットになって、寝心地も抜群です、おまけに私も先程の戦いで昂っておりますので、三人のお相手ぐらいどうという事はありません、おまけにこのビグ・ユーマでは私の過去の営みを鑑賞する事も可能なのです」
そう言ってダインが玉座の手置きに有る文字盤を操作すると、艦橋正面のガラス部分が黒くなって完全な密室となる、フィリッカとフォティーヌは状況に戸惑いを見せているが、フィセーリアは意外と肝が据わっている様子で、ダインの行いに動じていない。
フィセーリア 「王がお望みでしたなら、私は一向に構いませんよ、この者達も騎士の責務として覚悟は出来ている筈です」
ダイン 「なるほど、偽りは無さそうですね、ですが私は小心者ですので三人を自由にしたまま抱く事など出来ません」
ダインは再び文字盤を操作すると、天井から二つの十字架の形をした吊り具が降下して来る。
ダイン 「フィセーリアが同胞の二人を拘束して下さい、使い方は見れば解ると思います」
フィセーリアは席を立って下がった吊り具を確認すると、頷いてフィリッカを招く、こういう怪しげな行為を強要するには身内の方がやりやすいのだろう。
姉妹の繋がりは確かな様で、なまじダインが拘束するよりもフィリッカは素直に従ってくれている、原理自体は単純な拘束具なのでフィリッカの拘束は直ぐに終わり、次の吊り具にフィセーリアが移動する前にフォティーヌは準備を整えている。
フィセーリア 「少し不自由ですがダイン王の言葉も当然です、二人は少し我慢して下さいね」
フィリッカ 「解りました、ですが姉様の初性交を鑑賞するなんて思っても見なかったです」
フィセーリア 「それはお互い様ですよ、フィリッカもフォティーヌも私の前で王に抱かれてしまうなんて」
フォティーヌ 「でもフィセーリアの夢は叶いますよね、純潔を捧げるなら英雄って言ってましたよね」
フィセーリア 「はい、でもまさか異世界人とは思っても見なかったです」
フィリッカ 「でも、姉様の納得出来る英雄なんて居なかったじゃ無いですか」
フィセーリア 「そうですよね」
アーグル世界の処女達はダインにとってはチョロい者ばかりの様だ、彼女達は自ら望んでダインに身を捧げてくるのだ。
そして、齢四百を超えるという最高のビンテージ処女は玉座に座るダインの前に立って衣服を脱ぎ始める、ゆったりとして野暮ったい民族衣装の中からは年不相応に若く引き締まった身体付きの牝の裸体が姿を現し、ダインの興奮は増して行く。
おまけ
耳長族 中央大陸(人類圏で言う混沌大陸)東部に棲息していた種族で、人類圏から距離が遠かったので余り交流は無かった、だが、三百年前のザキトス戦役では人類側に味方してマギガントの貸与や騎士の派遣を行ってくれている。
この行為は魔王ザキトスの存在を抹消する為で、ザキトス側も中央大陸侵攻を行っている事から両者の間に何らかの因縁があったと推測されている。
耳長族は敵対関係にあった魔王ザキトスが放った魔獣の勢力拡大によって中央大陸を追われて、中央大陸より東方に位置する東方大陸へと棲息地を移しているが、元々高い魔導技術を有している為に現在の中央大陸の状況の把握しており、その事がユーマとの接触を計るきっかけとなっている。
耳長の身体は人間に比べて小柄で、人間の十代半ばぐらいの容姿をしており、そこから老化する事は無い。
寿命も長命で千年以上は生きるとされているが、東方大陸へ脱出した耳長達は年齢が若い者達が中心であったので、東方耳長は八百歳以上の個体は存在していない。
耳長の年齢はその長い耳に現れ、若い個体は上に立っているが、歳と共にだんだん横に垂れて行く、現在四百歳ぐらいのフィセーリアは六十度ぐらいの角度で耳が垂れており、中央大陸に残った耳長の中には垂れて折れ曲がった個体もいた様である。
魔力は人間よりも少し高いぐらいであるが、長命故に見出された魔導技術水準は人類よりも高く、耳長が三百年以上前に完成させたクフィカールは人類圏マギガントよりも遥かに高性能である。