地固め編 第三十話 コンビ対双子

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  ダイン達の隣、第四会場の戦いは全会場の中で一番動きが速かった。

  近接接近戦を狙った東方騎士達は連れ立って地を這い、ファービと真夏に襲い掛ったのだ、だが、対する真夏は初撃から容赦が無かった、対峙する一方に狙いを定めると銃弾の嵐を見舞って相手を土煙の中に沈める。

  真夏 「やりましたかは禁句ですよね、優位さを見せて逆転されるのはセオリーですから」

  ファービ 「でも、考えられるマギガントの性能じゃアレで終わりですよ、あ、コッチにも来た」

  ファービは言葉を返しながらも応戦して、東方騎士の斬撃を弾く、躱すよりも受けた方が相手の力量を測れるという判断だ、そして導き出された結果は想定を超えていた、相手は機体は確かに弾かれたのだが、何かの攻撃がファービのジノ・ジーカを後方に弾き飛ばしたのだ。

  ファービ 「何が」

  ファービは上体を倒して、背中からの転倒を防いだが、攻撃の正体は掴めない、何故なら弾いた別のところから攻撃を受けたのだ。

  真夏 「縄です、二機の間に縄が張られた様です」

  攻撃を受けた当事者よりも、離れたいた真夏の方が状況が見えていた、真夏の攻撃で一方の脚が止まった為に威力が削がれたが、二体のマギガントの間にはワイヤーが張られて、それがジノ・ジーカを吹き飛ばしたのだ。

  ファービ 「流石先輩、よく分かりましたね」

  東方騎士1 「その通りですよ、初撃で気付かれたのは初めてだと思います、人類圏なんて遅れていると思ってましたが中々侮れないですね」

  語り掛けて来たのは銃撃を受けた方の騎士だ、銃弾の嵐で戦闘不能になった可能性が高く暇になったのだろうか。

  真夏 「お褒め頂いてありがとうございます、貴女が存命していて真夏もホッとしています、余り手加減出来ない武器なんですよ」

  東方騎士1 「その様ですね、このクフィカールで無ければ死んでいましたよ、耳長は数が少ないので大切にして頂きたいです、あ、申し遅れました、私はシノールと申します」

  東方騎士2 「私はリノール、シノールとは同じ時に産まれてずっと一緒だった、だからシノールが死ななくて良かった」

  真夏 「ダイン王より犠牲者を出さない様にと仰せつかってますが、手を抜ける方々では無い様なので」

  シノール 「正直恐ろしい攻撃でした、ですが私のクフィカールはまだまだ戦えますよ」

  確かに視界はまだ晴れていないが、ファイディ・ゾッフォの魔導レーダーはクフィカールがまだ形状をちゃんと留めている事を映し出している、そして視界が晴れた時に映し出されたクフィカールは予想よりもダメージを負っていない。

  真夏 「驚きましたね、魔鋼を鎧にも使っているんですか、それでもダメージが少ない様な」

  シノール 「クフィカールは人類圏で知られていない機構を幾つか搭載してますから」

  そのシノールの言葉の正しさが現在進行系で発現している、銃弾の直撃で変形したであろうクフィカールの鎧の陥没が元の形に修復されつつ有るのだ。

  真夏 「自己修復するなんて凄い鎧です、ダイン様が欲しがりますよ、もっとも全てを手に入れたいと思うでしょうけど」

  リノール 「それには先ず勝利すべき、勝者には権利が有る」

  真夏 「東方大陸の理は解りませんが、ここでは人類圏の法からは逸脱出来ませんよ」

  シノール 「はい、それは私達の心の問題ですから、少し中断してしまいましたが、戦いを再開しましょう」

  シノールはそう言うと、クフィカールの左手に持っていた円形の盾を捨て去る、そしてリノールの方も右手に持っていた同型の盾を捨て去り、長剣を抜き放つ。

  真夏思考 『向かい合う盾の状態を解除したという事は、あの盾がワイヤーを巻き取っていた様ですね、連帯を捨てて個々の技量で戦うという事ですか』

  真夏の見立ては間違ってはいない、だが、連帯を解除した訳ではなく、解除せざるを得なかったのだ、見た目こそシノールのクフィカールは復元したが性能面では修復出来なかった事も多い。

  特に防御に使って銃弾を受けた盾は機能を喪失し、防御障壁を展開した飛翔装置も沈黙してしまっている。

  シノール思考 『相手に虚を見せるよりも、実質的な方を取りましょう』

  シノールのクフィカールは背部に装着した飛翔装着も排除して、機動戦能力を向上させる、だが、本体にもダメージの残る機体ではリノールの機体の七割程度の動きしか見込め無いだろう。

  だが、シノールとリノールには勝ち筋が見えていた、二人で前衛に出たファービのジノ・ジーカに近接すれば、真夏からの銃撃は封じられる筈なのだ。

  ジノ・ジーカが真夏の射線上に入ってしまう位置に走り込んだシノールは、方向転換してジノ・ジーカに迫る。

  リノールはファービの動きを封じる様に素早い剣撃を繰り出して足止めさせると、シノールの来援を待つ、そう、百年以上も連帯して戦ってきた二人に掛かれば動きの劣る人類圏のマギガントなど容易い相手の筈なのだ。

  だが、事態はそう思い通りには行かない、ファービの繰り出す双剣の早さは東方の一流騎士にも匹敵するもので容易に致命打など届かない、そしてシノールの来援が届いてリノールの手が緩んだ瞬間、驚くべき事が起こった。

  ジノ・ジーカの背部が変に動いたかと思うと、左右の脇腹から刃が突き上げられ、リノールのクフィカールの左腕を切り裂いたのだ、その衝撃でクフィカールは大きく後ろに跳ね飛ばされると、運の悪い事にシノールのクフィカールに直撃してしまう。

  そして、ジノ・ジーカは大きなサイドステップでその場を離脱すると、射線の通ったファイディ・ゾッフォから銃弾の雨が降り注ぐ。

  ファービ 「奥の手、使っちゃいました、でも会場別々だから解りませんよね」

  真夏 「もう一機のジノは王宮闘技場ですから大丈夫でしょう、でもこれで二人を射界に捉えましたよ、念の為に多めに撃って起きましょう」

  本来なら、ファービと真夏の連携作戦が勝利したと言える状況で有ったが、シノールとリノールに関しては大きな誤算が生じていた。

  一卵性双生児である二人の魔力資質は同じであり、ファービが突き飛ばして激突した二人分の魔力が合わさった状態で飛翔装着の障壁が展開されたのだ、つまりシノールの時の倍の魔力量の障壁が二機のクフィカールを覆う事となり、銃弾の殆どを無効化させてしまう。

  だが、そんな状況が解らない真夏は念入りに攻撃を加えてしまい、自身の継戦能力を著しく縮めてしまったのだ。

  先程より数倍激しい銃弾の嵐を見舞った真夏は勝利を確信していた、幾ら銃弾の威力を弱める障壁を使用しても、撃ち尽くす程の銃弾に見舞われてはクフィカールも動けるわけが無い筈だ、だが、通信盤に映るシノールとリノールには大きな動揺は無い様で真夏も状況を訝しんでしまう。

  そして、その不安の矢面に先に立ったのはファービだった、まだ収まらない土煙の中から飛び出したクフィカールの一撃を避けると、すぐさまもう一機が接近して斬撃を見舞って来る。

  ファービは双剣を上手く使いこなして、二機目の斬撃も回避するが、直ぐにもう一機が隙をついて襲い掛ってくる。

  真夏 「そんな、あの攻撃で無傷だなんて」

  真夏はシノールに叩き込んだ数倍の火力をほぼ無効化されている事に理解が追い付かない、だが、今は理解する暇などないのだ。

  ファイディ・ゾッフォは両腕を使って保持していたガトリングを投げ捨てると、腰の鞘から剣を抜き放って、ジノ・ジーカの元へと向かうが、元々射撃戦を想定した機体の移動は遅く、到達にはまだ暫く掛かりそうだ。

  素早いリノールの一撃が、複腕の一つを捉えて切断すると、今度はシノールが脚を狙った斬撃を繰り出す、ファービは接近戦に長けており、相手が熟練騎士二人でも抑え込める程の技量を持っているが、長年培った双子の連携された攻撃はそんなファービすら圧倒し始めている。

  残った複腕も斬撃で切断されると、不意打ちの警戒の無くなった二人の攻撃は更に苛烈になって行く、元々ファービの技量でも複腕を含めた四本の腕を同時に使っての攻撃など不可能なのだが、物理的に不可能になった安心感は攻撃思考の比重を高めてその力量を遺憾無く発揮させている。

  そして、リノールもシノールのクフィカールの状況を上手く把握して、出来うる限りで最高の一撃を繰り出した。

  ファービは咄嗟にその一撃を右の剣で逸らしたが、リノールの技量はそれを見越した上でジノ・ジーカの右前腕を捉えた、籠手を貫いて内部フレームへと達した攻撃で、ジノ・ジーカの手首の動きは奪われ、続くシノールの攻撃で右手の剣が弾かれた。

  流石にこうなっては、ファービも状況の悪さを認めて、大きくバックステップして距離を取ろうと下がる、だが、リノールはすかさず喰らい付いて前に出てファービに休息を与えない。

  だが、逃げる様なこの移動もちゃんとした意図は有る、万全なリノールは喰らい付いて来たが、シノールのクフィカールは追従出来ていないのだ。

  ファービはそれを確認すると、数度に渡ってバックステップを繰り返して、二人の距離を広げて行く、そして四度目の移動で側方に大きく飛ぶとファービの居た位置に真夏のファイディが飛び込んで来る。

  リノールも真夏のファイディの位置は把握して、追従していたのだが、今の移動はそれまでの倍以上の距離を移動しているのだ。

  重量の有るファイディは抱き抱える様にリノールのクフィカールを捉えると、そのまま押し倒して行く、選定戦の勝利条件も相手の背中を地に付ける事で、このまま押し倒してクフィカールを背中から倒すとリノールは戦闘不可能の判定を受けるのだ。

  リノールは自身の迂闊さに激しく後悔したが救いの手は現れる、シノールがギリギリ間に合って後ろから支えてくれるが、鋼鉄の鎧を纏った重いファイディ・ゾッフォはクフィカールを二機纏めて押し倒した。

  結果、シノールのクフィカールは盛大に後ろに倒れ込んで大地に背を付ける、だが、シノールが下に入ってくれたお陰でリノールの敗北は無くなり、転倒前に折り曲げた脚で蹴り上げる事で、今度はファイディ・ゾッフォを後ろ向きに突き飛ばす、そしてファイディは背を地に付けて脱落してしまう。

  真夏 「やられちゃいました、ファナ、後お願い」

  シノール 「相討ちですね、まさか人類圏でここまで苦戦するなんて」

  真夏 「魔鋼の鎧なんて狡いですよ、硬くて軽いなんて」

  シノール 「クフィカールは長い年月を掛けて作られてますから、この鎧を作るのに五十年は掛ってますよ」

  戦いの終わった真夏とシノールはお喋りを始めている、実際戦ってみてお互いへの興味が増した感じだ。

  だが、ファービとリノールはそうは行かない、特に機体ダメージの大きいファービは、手慣れた戦闘スタイルの維持が困難で、もはや攻勢に出る事が不可能だと感じていた。

  ファービ思考 『何か決めてを考えないと・・・いくらジノのフレームが厚いと言っても、腕であの斬撃は防げません』

  ファービは現状を打開する一手を思い付く、繊細な動きで刀身をコントロールする剣の使用は無理だが盾なら使えなくも無さそうだ、そして視界にはリノールが捨てた盾が映っている。

  ジノ・ジーカは相手を周り込む様に横に移動すると、クフィカールも同様に移動して距離と向かい会う態勢を保つ、下手な動きをされるよりも正面に向き合って監視した方が安心出来る相手なのだ。

  だが、その動きもファービの作戦で有る、丁度良い位置に移動したジノ・ジーカはそれまで見せた事もない大きな後方ジャンプで目的の位置に移動する、この大ジャンプを可能としたのはジーカのゼンマイ機構をダインなりにアレンジした装置のお陰で、先程のファイディ・ゾッフォが見せた急加速も同様の機構の使用により実現させたのだ。

  リノール 「その動き、撃ち合いの時にされれば危なかった」

  リノールはジノ・ジーカの加速機構に脅威を感じていたが、戦闘に使われなかった事に違和感を覚えて問い掛けた。

  ファービ 「ファナはまだこのジノをちゃんと使えこなせていないんですよ、撃ち合いで使える程特性を学んでいません」

  ファービは応えながら、リノールの捨てた盾を広い上げて右手に持たせる、だが、先端から出たワイヤーが盾として使うのに邪魔をしていたので、盾に仕込まれていた巻き取り機構を剣先で壊して排除する」

  ファービ 「これも魔鋼ですか、見た目より軽いという事は練度がかなり高い様です」

  リノール 「リノールの盾壊した、シノールとの絆の武器を」

  ファービ 「使える物は何でも使って勝つのがファナの役目です、それが敵の装備で有っても、でも、これ使えますよね、何で捨てたんですか」

  ファービの言葉にリノールは怒りを込み上げさせる、捨てたのでは無く壊さない様に置いたのだ、それほど大切にしていた装備をファービは勝手に拝借して破損までさせたのだ。

  怒気を増したリノールと、勝機を見出したファービの決着の時は着実に近付いている。

  おまけ

  シノールとリノール 現在存在する唯一の双子耳長、一卵性双生児で見た目の違いはほぼ無いが眼つきが悪い方がリノールである。

  天才型で奔放な妹リノールとそれをフォローする努力型の姉シノールという関係性で、戦闘に置いてもその位置付けは変わらない。

  シノールを左、リノールを右と位置付ける双子の連携戦闘術は、タッグ戦では耳長随一のコンビで、耳長騎士の一位と二位が組んで戦っても圧倒的な勝率を誇っている。

  本来なら、リノール機の左手、シノール機の右手に持つ双盾と間を繋ぐ柔魔鋼ワイヤーを使った変速的な攻撃により対戦相手を圧倒するのだが、その攻撃を封じられると戦闘力は半減以下となってしまう。

  個々の戦闘力はリノールの方が高いと思われているが、これはシノールがリノールに合わせる為に利き腕で武器を使わない様に訓練している為でもあり、シノールが二刀流で戦うと戦闘力の差は殆ど無い。