暗躍編 第十八話 ルゥ来訪

  003-018

  丁度遊魔会議が終わった頃、王都のクガト屋敷ではルーフィンとリレッタが顔を合わせていた。

  ルーフィン 「変わりましたね、でも良いと思います、ルゥはザキトスの意思でリッタを乳魔にしましたが、誰かに指示されたのと自分の意思で行った行為とでは愛情が違うんですよ、その事でリッタには冷たかったかも知れませんが、リッタが自分で生きる道を見つけたのならルゥは何も言いません、むしろ応援しますよ」

  リレッタ 「ダイン様の言った通りですわ、ルゥ様は許してくれるって」

  ルーフィン 「色々有りましたが嫌ってる訳じゃ有りませんよ、でも自分で創造した娘の方が大事に感じちゃうんですよ、ルゥのやり方では上書き出来ませんから」

  リレッタ 「魔族の力でも同じでは無いのですね」

  ルーフィン 「正直今はダイン君の方が上だよね、こんなに簡単にリッタ取られちゃうなんてルゥも想定外でしたよ」

  リレッタ 「ダイン様は人の心の根源を理解している様です、自分でも理由は解らないんんですが、今はダイン様をとても愛おしく感じています」

  ルーフィン 「女にはされて無いのに堕としてしまうとはダイン君は恐ろしいよね」

  リレッタ 「ですがルゥ様とは敵対する意思は無い様です、ルゥ様がいた方が面白いと言ってました」

  ルーフィン 「ルゥもそうですよ、変な事するモノがいた方が面白いですよね、リッタの事も気に入ってくれてるみたいですし」

  リレッタ 「それで直接会いに行かれるんですよね、リッタもお供します」

  ルーフィン 「なら直ぐに行きましょうか、テガスのザガルバは使えますよね夜なら直接飛んで行ってもいいですけど、昼ならザガルバを使うべきでしょう」

  リレッタ 「リッタのフーティアはまだしばらく時間が掛かりますからね」

  ルーフィン 「ダイン君を試す為にリッタには危険な事をさせてしまいましたね」

  リレッタ 「リッタ自身に怪我は無かったですから、でも貴重なフーティアを壊してしまって申し訳ありません」

  ルーフィン 「ですがそのおかげでダイン君の実力がよく解りました、彼はこの世界の戦力を上手く使う事で自分の価値を高めているんですよ、生身の実力も凄い筈なのにマギガントに執着していると聞きましたので」

  リレッタ 「買い被りかも知れませんよ、ダイン様はただああいうのが好きなだけなんですよ」

  ルーフィン 「そういうモノですかね」

  リレッタ 「ルゥ様も一度じっくりとお話になって下さい、絶対に気が合うはずです」

  ルーフィン 「そういう予感はしているけど逆に会うのが怖いんですよ、ルゥが気に入っちゃう初めての異性になると欲しくなっちゃうかも知れません」

  リレッタ 「逆も十分有り得ますね、ダイン様って面白い事する人が好きでルゥ様って処女ですから」

  ルーフィン 「処女は良い事じゃ無いですか、ルゥは真に通じた相手としか交わりたく有りません」

  リレッタ 「ダイン様もそうなんですよ、だから女性を自分を理解出来る存在へと作り変えてしまうんですよ、リッタも頭弄られてダイン様をある程度理解出来る様になりましたが、ルゥ様は弄られなくてもダイン様と同質な存在だと思います」

  ルーフィン 「頭を弄って人間を変えてしまうんですか、魂を変質させるわけではないんですね」

  リレッタ 「それがダイン様の力の根源だと思います、人を従わせるのに魂への干渉は必要ないと、むしろダイン様は魂の存在を否定してました、魂は人の自尊心の現れで只の願望だとも」

  その余りに常識外れの考えにルーフィンはしばし考えて口を開く。

  ルーフィン 「魂が存在しないですか、思いもしない考え方ですね、ですがダイン君が実際に女の子をはべらせているのを見ると現実味が有りますね」

  リレッタ 「リッタも以前から見知ってる二人がダイン様の遊魔へと堕とされたんですが、とても楽しそうなんですよね、ですから遊魔へと上書きされる事を楽しみにしてしまってます」

  ルーフィン 「それはルゥも興味有りますね、乳魔の中に派閥が出来ているみたいで極端に仲の悪い娘達がいるんですよ、遊魔の仲の良さの秘密が知りたいです」

  リレッタ 「でも遊魔の仲の良さって、ダイン様だけが男性なのが大きいと思います、それにダイン様は恋愛感情が無い様で遊魔の眷属達を作品として愛しているんですよ、ですから愛が失われる事も無いし、順位も無いんですよね」

  ルーフィン 「ルゥも恋愛感情は持った事有りませんけどね、でも同性と異性ってやっぱり大きいモノなんでしょうか、でも、男ははべらせたく無いですね」

  リレッタ 「ルゥ様はそのモテたく無いんですか?」

  ルーフィン 「ルゥは子供を作る気が有りませんから、良い母親に成れる自信も有りませんし、それに乳魔は皆んな女の子ですから」

  リレッタ 「やっぱりダイン様と似てますよね、ダイン様は自分を超えられない子孫を残す意味は無いって言ってました、まぁ遊魔が不老の存在で命を繋ぐ必要が無いのが大きいとは言ってましたけど」

  ルーフィン 「なるほどルゥもそうなのかも知れませんね、子供を産んでもルゥを超えられるとは思っていませんから」

  リレッタ 「でも、ルゥ様とダイン様の子供ならばどっちに似ても凄い子が産まれて来ると思いますけど」

  ルーフィン 「リッタはルゥとダイン君をくっ付けたいんですか」

  リレッタ 「そうですねリッタの感じてる幸福をルゥ様にも知って貰いたいですけど、多分、ダイン様はルゥ様を今とは違うルゥ様にしちゃいますからそれはそれで複雑な気持ちです」

  ルーフィン 「十分注意する必要がありそうですね、でもリッタを魔へと引き込んだ以上ルゥには幸せにしてあげる責任が有るんですよ、ですから怖くてもダイン君に会わないと行けません、人伝ての言葉では信じてくれないかも知れませんから」

  リレッタ 「リッタの為にそこまでしてくれ無くても」

  ルーフィン 「無論、ルゥも興味が有るからですよ、何せダイン君を呼んだのはルゥですから」

  ルーフィンは決意を露わにして自身の逃げ道を塞ぐ、どの道ダインとの接触は必要不可欠で、ルゥがダインの立場なら強硬手段は行わないという目算もある、だが、絶対的な自信を持つ程ルゥはダインの事を知ってはいないのだ。

  そして、既に用意の整っていたクガト所有の実験用ザガルバに二人で乗り込むとリレッタの操縦でテガスへと飛び立って行った。

  ルーフィン達が不安な空の旅を耐えてテガスに近付いた時、ダインは自室に七実を呼んで計画書の作成を行っていた、尻尾を繋げてより明確にイメージを送る事で七実はダインの思い描く世界を紙へと表現する事が可能になっているのだ。

  ダイン 「やはり七実は器用ですね、私のイメージでは伝え辛いところもちゃんと補ってくれてます、ん、これはリッタですね、それと別の魔力も」

  テガスに近付く強大な魔力で、ダインは来訪者の存在を感じ取っていた。

  七実 「ダイン様を超える量の魔力ですね、という事はルーフィンがやって来たんでしょうか」

  ダイン 「そうで有って欲しいです、私を超える魔力の持ち主がルーフィン以外にいるのはチョット困りますね」

  遊魔以外の魔力の接近を感じて遊魔達に緊張が走る、直ぐにダインの元には遊魔達が駆けつけて来て主人を衛る体勢に入っている。

  ダイン 「皆の反応感謝します、何かある前に工房へと移動しますよ、ポナリアの準備は出来ていますよね」

  ポーカ 「はい、三機が稼働体制に有ります、ですがいきなり空からとは大胆ですね」

  ダイン 「まぁ変な余裕を与えて準備されるのが嫌なんでしょう、ルーフィンも私も歓待されるのが余り好きでは無いんでしょうね」

  フェカト 「本質を見極めたいダイン様にとって無駄な飾りは必要無いですからね、でも、ルーフィンも同じ考えなんでしょうか」

  ダイン 「解りません、ですが私に時間を与えないのは正解だと思いますよ、何せルーフィンに興味が有りますから」

  アーキア 「それってルーフィンも遊魔にしたいって事、アキはチョット不安だよ」

  ルーフィンを知るアーキアは完全に不安を払拭出来ない様だ、だが、その懸念に対してポーカが現状を報告して安心を与えようとする。

  ポーカ 「一応迎撃に関してはファナとニアが先に向かっている筈です、あの二人は素早いですからね、ポーカも迷いましたが、ダイン様がポナリアを扱った方が安全ですから」

  ダイン 「確かに動けるマギガントの方が安全だと思います、もっとも必要無いとは思いますが」

  真夏 「でも即応体制を見せる事は十分な意味が有ると思います、幾ら武装が有っても動かないと反撃も受けませんから」

  ダイン 「確かにそうですね、抵抗が無ければ侵攻を呼び込みますからね、その意味では武力の誇示は平和を護っているんですよね、初めから毛嫌いして無用というのは愚か者の発想ですよ」

  ティアス 「ダイン様は隙が有れば襲っちゃう人ですからね」

  ダイン 「ティアスの時はお互い様でしたけど、ああ、無駄な話をするよりも安全確保でしたね」

  ティアス 「ダイン様との会話は全く無駄じゃ無いのに」

  真夏 「時にもよりますよ、ダイン様が失われれば無くなってしまいますから」

  真夏の言葉に真を認めた一行は工房へ急ぐ、そして、途中で闘技場に降り立ったザガルバをポナリアの一機が羽交締めにして動きを抑える。

  ザガルバが一切の抵抗を見せなかった事から、合意の上の行動で、やはりルーフィンの来訪は攻撃目的では無かった様だ。

  ポーカ 「一先ずの安心は確保出来た様です、ファナの乗るポナリアは一番力強い機体ですから、輸送目的のザガルバではどうにもなりませんね」

  ダイン 「まぁリッタが居るなら私に危害を及ぼす事は無いでしょうけど、ですがルーフィンもザガルバで飛べるんですよね」

  リエル 「リィが最後に見た時は処女の魔力でしたからルーフィンでも可能ですね、ですがルーフィンってマギガントの扱いは苦手なんですよ」

  ダイン 「そうなんですか、アレは意思で動くじゃ無いですか?」

  リエル 「まぁリィやアキと比べてって事ですけど、そもそもルーフィンは剣術や武術を習得していない様でしたから」

  ダイン 「私みたいななんちゃってでも想像で何とかなりましたけど、そもそもの勘が無いわけですね」

  リエル 「そう思います、何時も書庫に籠っている様な娘でしたから、ですがそれでクガトで何か見つけたんじゃ無いでしょうか」

  ダイン 「リッタは魔王ザキトスにルゥが選ばれたと言ってましたが、ですがそれだと私の真理から外れているんですよね、魂は無いというのが私の考えですから」

  七実 「ならいっその事モノにして調べてみれば良いんじゃ無いですか、リッタって娘も堕液で堕としているんですよね」

  ダイン 「勢力が強大になり過ぎると面白みも無くなりますよ、戦国も三国志も群雄割拠の時代の方が面白いですからね」

  真夏 「なら後一勢力は欲しいですね」

  七実 「魔王宣言して人類と戦うのも面白そうですけど」

  ダイン 「それも有りかも知れませんが今は地固めの時ですね、足場を固めておかないと喧嘩なんて出来ませんから」

  真夏 「やり方的には秘密結社みたいですよね、権力層をたらし込んで裏で勢力築くなんて」

  ダイン 「何処でも出る杭は打たれますからね、ルーフィンも表立って無いですよね」

  七実 「どっちも陰キャだからでしょう、目立つの嫌いなんですよ」

  ダイン 「否定は出来ませんね、そうだルーフィンに他の世界の異形を召喚可能か聞いてみましょうか」

  フェカト 「アーグルの者としては止めて欲しいです、ダイン様みたいな話が解る人が来るか解りませんし」

  遊魔が談笑をしながら闘技場へと辿り着くと、既にザガルバから降りて少し不機嫌そうなルーフィンと妙にソワソワしているリレッタの姿が目に映る。

  七実 「アレが魔王ルーフィンなんですか、余り強そうじゃ有りませんね、放課後図書室で歴史小説読んでそうです」

  ダイン 「えらく具体的に好みを指定しましたね、根拠は何ですか」

  七実 「有りませんよ、ただナナのイメージなだけです」

  リエル 「魔導書の存在が無ければそうかも知れませんね」

  ダイン 「リエルもそう感じるんですか」

  リエル 「実際に読んでるところ見た事有りますから、まぁ使った人を調べると魔術の本質が解るって教えも有りますから」

  ダインはリエルの話に何処か納得した様で警戒感無くルーフィンに近付いて行く、そしてマジマジと顔を見ると軽く会釈をする。

  ダイン 「貴女がルーフィンさんですか、確か私達の召喚を取り仕切ってた人ですよね、見た目は何処か違いますけど、感覚が同じですよ」

  ルーフィン 「あの時はご挨拶出来ずにすみませんでした、ルゥもダイン君を測る必要が有ったので、不用意に近付いて何かされるのも怖かったですから」

  ダイン 「私としてもいきなりの接触は困ったと思います、ですがあの対応は正解ですね、私の思考なら先ず力のある適合者はモノにしようとする筈ですから」

  リレッタ 「ダイン様はやる時は手早いですからね、いつの間にかティアス堕としてましたし」

  ダイン 「アレは先にティアスが仕掛けて来たんですよ、私は慎重過ぎて機を逃すタイプです、最も遊魔の力を得てからはかなり積極的ですけど」

  ルーフィン 「なら今からルゥをモノにしてみます?」

  ダイン 「それは止めておきますよ、ルーフィンもかなり地盤を固めてますからね、個を頂点に置く組織の頂点が失われれば何が起きるか解りません、乳魔は遊魔より自由な様ですから」

  ルーフィン 「確かに乳魔の眷属達の行動は読めませんね、でもルゥを解放すると言ってダイン君を殺そうとする者は確実にいると思います」

  ダイン 「まぁそれとは別に張り合う相手がいた方が楽しいですからね、リレッタは私が欲しくなるほど魅力的でしたし」

  ルーフィン 「ルゥの作品では無いのが残念です、でも次は自慢の眷属もお披露目しますね」

  ダイン 「それは面白そうですね、ここで立ち話も何ですので私達の屋敷へと案内しますね、甘いお菓子も沢山用意して有りますねで楽しんで下さい」

  ルーフィン 「それはありがたいですね、この世界は甘味が圧倒的に不足してますから」

  既にダインとルーフィンの間には警戒心などない様だ、ルーフィンは自らダインの手を握って案内を催促し、後に控えるリレッタは非常に不満そうな表情で後に続いて行く、ダインとの再会を熱望していたリレッタでは有ったが、ダインの興味は完全にルーフィンに奪われてしまったからだ。

  おまけ

  クガト領 マギガントが主要産業で有るクガトでは、海運業、造船も同時に盛んでも有る、元々船舶を使ってマギガントを輸送しており、運河は船舶の運用を陸上に伸ばす事を主眼として整備されて行ったのだ。

  混沌大陸への流罪はクガトが全てを取り仕切っており、ザキトスの混沌大陸侵攻以前から、現クガト領の人間は混沌大陸へと渡航していたとも言われている。

  ザキトス魔王城もこのクガト領に建設されており、混沌大陸侵攻への後方拠点としての機能も合わせ持っていた。

  領内では魔鋼鉱山なども多数存在しており、クガト領内の生産物だけでマギガントの製造が可能でも有る。