002-022
丁度ダインが王都に到着した頃、テガス魔動力学院に来訪したモノが有った、恐るべき速さで空よりやって来たそれは、訓練中の闘技場の中央に華麗に降り立つとマギガントが持つ通信能力を使って、訓練中の生徒に向かって自らの要件を簡潔に伝えた。
アーキア 「え、リィがここに来たの、それでアキを呼んでるって」
マギガントによる魔鋼打ちを終えて休憩中だったアーキアに、闘技場から伝達に来た生徒が告げる、慌しい生徒の動きに異変を感じた七実も生徒の動きを追って同じく報告を聞いてアーキアに静止を促す。
七実 「ダイン様が不在の時に来るなんて、確実に狙ってますねダイン様が居なければ勝算が有ると思ったのかも知れません」
アーキア 「リィに限ってそういう策謀は無いと思うけど、単純にアキの事が心配なんだよ、でもレボトが御膳立てしてるのは間違い無いね」
七実 「なら、どうします、リエルに会って説得しますか?」
アーキア 「それは避けられないよね、でも、ダイン様が居ないとリィを堕とせないよね」
七実 「確かにそれは有りますね、七実達の堕液でも効果は有るでしょうけど催淫効果ぐらいですから、ダイン様みたいに洗脳までは不可能なんですよ、そして今問題なのはダイン様が戻って来た時にフーティアに乗ったリエルが居ればダイン様に危険が及ぶ可能性が有るという事です」
アーキア 「ああ、七実凄いなぁ、アキはそこまで考え無かったよ、確かにダイン様は天翔ける処女を付けたマギガントは使えないから他の人の操縦って事になるのか」
七実 「はい、ですからリエルにはフーティアを降りて貰わないと」
アーキア 「でも、確実に警戒はしてるね、まぁアキのせい何だけど」
七実 「幸い、闘技場のマギガントの中じゃ工房の中までは解りませんので、フェカトさんとポーカ学長に合流しましょう、格納庫が良いですね、念の為にアーキアはフーティアに乗って通信盤を使ってリエルとコンタクトして貰います、その時にポーカさんも居た方がいいですよね」
アーキア 「確かにアキだけじゃ心配だからね、ポーカ学長いた方が心強いよ」
七実 「真夏ちゃんとファービは念の為にゾッフォで待機して貰いましょう、いくら個々の魔力で負けていてもあの二人が連携すればそう簡単に倒されないと思いますし」
七実は息の合った動きで魔鋼を打ち上げている真夏とファービのゾッフォに目を向けていう、最初に魔鋼を打ったアーキアとニアと交代で今は真夏とファービに代わっているのだ。
七実達が対応を話している間に異変を感じたニアも七実達の元にやって来て、三名は真夏とファービを工房に残して格納庫に向かうと生徒に伝令を頼む。
七実 「リエルにはまだ動きは無い様ですね、この格納庫の位置なら真夏ちゃん達とも範囲に入ってますし、リエルとも通信可能でしょう、ここはリエルが何かをしない内にアーキアとニアさんにマギガントに乗って貰いましょうか、二人ならリエルも躊躇しますよね」
格納庫に着いた七実は、ポーカの居る学長室やら、フェカトが居る国賓屋敷の距離を考えて先にリエルとの交渉を始める事にする、アーキアの顔を見ればリエルが安心する事は間違い無いだろう。
アーキア 「それが無難かも、リィは何とかアキが誤魔化してみるよ」
七実 「いや、下手な嘘は止めた方がいいですよ、アーキアって嘘付くの向いてませんから」
ニア 「確かにアーキアもニャアもそういうのは駄目にゃ」
七実 「かと言ってダイン様の事を話しても、絶対に理解されないですからね、ダイン様の愛に満たされている遊魔達ならその素晴らしさを共有してますけど、人間の頭には理解出来ないでしょうから」
アーキア 「うん、アキも解って貰えないと思う、むしろリィなら激怒しそうなんだよ」
七実 「そうなんですか?」
アーキア 「うん、リィって向こうに将来を約束した相手がいるんだよ、帰れるかどうかも分からないのにそれが支えになってるみたいだし」
七実 「そうだったんですか、なんの希望も無い様に思えますけど」
ニア 「何かの可能性があるならそれにすがるモノにゃ、ニャアも愛耶に昔言われた事を思い出してそこに希望を見出したにゃ、そして愛耶はそれに応えてくれたにゃ」
七実 「正確にはダイン様がですけど、ですが確かに迎入れたなら返す方法も有りそうですよね」
アーキア 「まぁダイン様に堕とされちゃえばそんなの必要無いけどね、それにアキはリィと戦いたく無いから、リィはこっち側にしたいんだよ、ルーフィンは別にどうでもいいけど」
七実 「三人は友人じゃ無かったんですか?」
アーキア 「ルーフィンはちょっと違うかな、アキ達はルーフィンの怪しげな呪術に巻き込まれたのが原因の様なモノだから、だからリィも本心では怨んでると思うよ、それにルーフィンはこっちでレボト・クガトと連んでアキ達とは接点あまりが無いんだよ」
七実 「そうだったんですか、仲良し三人組が一緒に召喚されたと思ってました」
アーキア 「だってルーフィンって七実みたいな感じだし、遊魔は通じ合ってるから七実とも仲良くなれたけど、ルーフィンは何考えてるか解らないし」
七実 「何か傷付く言い方ですけど、理解は出来ますよ、ですがダイン様も七実側ですよ」
アーキア 「そうだよね、でもさ、ダイン様はダイン様だから関係無いんだよ、まぁ遊魔に成って無かったら只の変な人だったと思うけど」
ニア 「ニャアもそうです、余り接する機会が無いタイプの人だったにゃ」
七実 「絶対体育会系の二人とは行動範囲が被ってませんから、正直お互いを毛嫌いしている者同士ですよね」
ニア 「はい、でもダイン様は遊魔にする事でそんなニア達を家族にしてしまうにゃ」
アーキア 「なら、ルーフィンも遊魔にすれば仲良く馴れるのかな、想像付かないけど」
七実 「ダイン様的には好ましい事ですね、想像力は遊魔の発展に繋がるって言ってますから」
アーキア 「でも今問題なのはリィだったね、あの娘生真面目だから、納得してくれないだろうなぁ」
七実 「普通にここの料理が美味しかったで良いんじゃ無いですか、何ならフーティアが壊れたとか」
ポーカ 「その言い訳は通じないと思いますよ、学院にはポーカも気付いていない間者が紛れ込んでいるでしょうから、フーティアが壊れていない事なんて直ぐバレますね」
ようやく格納庫にポーカが到着した、七実は頭は切れるが交渉事の場数を踏んではいないので、こういう時はポーカの方が適していると七実自身も十分に理解出来ている。
七実 「なら、どう対応すれば良いと思います?」
ポーカ 「素直にレボト・クガトが嫌いでここが気に入ったで良いと思います、アーキアの性格を考えるとリエルもそれで納得するんじゃないですかね」
アーキア 「それじゃアキが凄く我儘言ってるみたいじゃん」
ポーカ 「アーキアとリエルは友達なんですよね、なら、それで十分だと思います、あとアーキアが居ればリエルが来ると入れ知恵されたで十分ですよ、その辺りはポーカがマギガントに乗って説明しますから」
アーキア 「それで本当にリィが納得するのかな?」
ポーカ 「ポーカはアーキアが思ってる以上にアーキアの事知ってますから、リエルとも戦いながら話した間柄ですから説得出来ると思います、アーキアはフーティアでポーカとニアはポナリアで行きますよ、多分今ならアーキアだけでもリエルには勝てると思いますけど」
アーキア 「そうなの、リィに勝てるイメージ無いけど、確かに遊魔になってから動きが軽くて力強いからね」
ポーカ 「魔動力に二万四千の魔力が入ってますから、リエルより軽快に動いてる筈ですよ、それにアーキアの戦い方って型に嵌ってませんから単純に機体能力が活きるんですよね、ニアも同じですけど」
七実 「そうなんですよね、だから今マギガントの魔力のリミッターを調整してるんですよ、優先的に防御力に振られる仕様なんですけど、ニアがポナリアの魔動力を全開で引き出せば、そもそも防御力はそれ程必要無いと思います、ニアのセンスなら十分躱せますからね」
ポーカ 「確かに、ポナリアより軽いジーカの方が上手く扱えてますからね、普通はポナリアの方が楽なんですけど」
ニア 「ポナリアは重い感じがして、ジーカの方が軽くていいにゃ」
七実 「重いフレームを軽快に動かす為に魔力が必要なんですよ、魔力が低ければゾッフォみたいに安定するんですけど、高くなればその分動きが早くなりますので」
ポーカ 「フーティアもポナリアも、人間では全性能を引き出せないんですけどね、確かに文献には魔力二万、三万といったレベルの人物の記述は有りますが、それでもポナリアやフーティアの全力は出せませんから、ですからアーキアの全力のフーティアの戦いは興味が有るんですよ」
アーキア 「ポーカ学長って戦い望んでいるよね」
ポーカ 「否定はしませんよ、リエルが敗北するところは見てみたいですからポーカもかなり強くなったので、以前の様に無様に負けないとは思いますけど、今でも魔力でリエルに劣ってますからね」
七実 「最悪、ダイン様が戻られる前にはリエルを無力化しておいて欲しいですけど、出来ればリエルもフーティアも無傷で手に入れたいですね」
ポーカ 「そうですよね、でもリエルが遊魔になると確実に今以上の魔力を得てしまうので、今が復讐のチャンスなんですよ、遊魔に成ったリエルには憎しみを抱けませんから」
七実 「プライド高いですね、そんなに負けた事が悔しかったんですか?」
ポーカ 「一矢も報いる事無く負けたのが悔しいんですよ、これでもこの国じゃ最高の乗り手って言われてましたから」
七実 「そこは張り合うのが間違いだと思います、でも、遊魔の七実達より高い魔力って何なんでしょうね」
ニア 「異形の可能性があるにゃ、ニアも異形と遊魔で魔力は変わって無いにゃ」
七実 「なるほど、その可能性は有りますね、遊魔化すると魔力は大体三倍ですから、異形も同程度だと考えると、七万のリエルは元は二万三千という事ですか、人間のアーキアが三万だったから元々魔力資質が高い世界だったのかも」
アーキア 「確かにルーフィンも二万だから、リィが突出しているのはそういう可能性もあるのか」
七実 「何にせよ、リエルは調べる必要が有りそうです、もし、ダイン様みたいに仲間を増やせる異形ならば障害になるでしょうから」
ポーカ 「ならポーカ達は行動を開始しましょうか、フェカトも多分文句は無いでしょう」
七実 「そうでしょうね、多分ポーカ学長が一番理解してると思いますから、でも、こんな事なら連携戦闘の訓練もしておくべきでしたね」
ポーカ 「どうでしょう、どの道同じ範囲に居るマギガントには通じていますので、味方だけのサインとかは必要なんですよ」
七実 「確かに、そういう事を含めてやっぱりポーカ学長は頼りになりますよ、ではお任せしますね」
アーキア 「あーいよいよか、リィに怒られるの嫌だから緊張するよ」
アーキアは不安を口にしながらフーティアに乗り込んで行く、ポーカとニアも後に続いてポナリア・ジーカに乗り込んで行き、しばらくすると個々に起動してマギガントが動き出す。
おまけ
マギガントの通信方法 外部の人間に声を伝える拡声機が装備されているが、マギガント騎士同士はコクピット正面の映像板の外周に通信板という他のマギガントの乗り手を映す小窓が追加されて行く。
これは特定の機体を選別するわけではなく、自機周囲の敵味方を問わないマギガントの乗り手が表示されて、上を正面として大体の位置関係上に小窓が開く為に周囲の状況確認にも使える優れ物でもある。
だが、個別の通信機能は備わっておらず、味方同士の連絡には申し合わせたハンドサインなどを使う事が一般的だ。