野望編 第二十話 可憐なるプルル

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  ダインとティアスを乗せたザガルバは王宮区画の広場に着陸すると、駆け寄った者達にティアスは何か色々と小言を言われている様だ、ダインには別に案内役と思われる女性が声を掛けて来る。

  長い水色の髪を持つ女性はとても落ち着いた感じで、美人秘書といった感じで、ダインとしては少し身構えてしまう、愛耶と似たタイプでは有るが、初対面が和かな接客だった愛耶と比べて、この女性には少し冷たい印象があるのだ。

  水色の髪の女性 「初めまして、ポロルグの勇者であるダイン様ですね、私は王家にお仕えする騎士のシアシスと申します、本来、私がダイン様をお連れするように申し使っておりましたが、ティアス様に先を越されてしまいました」

  ダイン 「変わった王女様でしたね、私も王女自ら出向いて来た事に驚きましたが、とても気さくな方で道中楽しませて貰いました」

  シアシス 「そうでしたか、ダイン様はティアス様に気に入られた様ですね、ティアス様に嫌われて山中に置き去りにされるかと心配しておりました」

  ダイン 「ティアス様を見る限りそういう事は無さそうに思いますけど、誰にでも公正な方だと印象を受けましたが」

  シアシス 「その認識は間違っていませんが、罪人にはとても厳しい方なんですよ」

  ダイン 「そうには見えませんでしたが」

  シアシス 「ダイン様が無事だったので有れば一先ず私も陛下にお咎めを受けずに済みそうです、今からお召し替えを頂き陛下との謁見をお願いしたいと思います」

  ダイン 「謁見ですか、私には荷が重い事ですね」

  シアシス 「ダイン様なら大丈夫だと思います、ダイン様も知っているアーキア様はあのまま陛下との謁見を済ましましたから」

  ダイン 「それは心強い言葉ですね、あのアーキアで大丈夫で有ったなら私でも何とかなりそうです」

  そうして、シアシスに連れられたダインはティアスと別れて王宮内に足を踏み入れる、煌びやかに飾られた王宮はダインには落ち着かない空間では有ったが、無事に謁見を済ませるまでは我慢するしかない。

  シアシス 「ダイン様は王宮が苦手な様ですね、少し表情が強張ってますよ」

  ダイン 「私は産まれも育ちも平民ですから、キラキラ光る装飾を見るだけで落ち着かないんですよ」

  シアシス 「私もそうです、ですが陛下は金の装飾を好んでおりますからね、ティアス様と仲良くされていたダイン様にはお辛いかもしれませんね」

  ダイン 「現国王とティアス王女は仲が悪いんですか?」

  シアシス 「それを聞かれてもお応え出来ませんよ、ですが、王位は在位期間が決まっており、現国王の在位は後一年です、ですから陛下の意向とは関係無く選定戦の勝者が次の国王に選ばれます」

  ダイン 「実力で王位に着く者が決まるんですか」

  シアシス 「はい、味方を集める能力も王としての資質ですから、そして今回の選定戦でティアス様が勝てば国が大きく変わると言われていて、貴族達は慌てていますね、下手すれば罪が暴かれてお咎め受けますから」

  ダイン 「私に対する脅しですか?」

  シアシス 「私はティアス様に理解有りますよ、ですからダイン様を無事にお護りするつもりです」

  ダイン 「有り難く思います、ですが、私もそれなりに心得が有りますので余り謀殺はお薦めしませんよ」

  シアシス 「それは心強いお言葉ですね」

  ダイン 「一応虚勢は張っておきませんとね」

  シアシス 「この国の法律では自衛の為の殺人は許されてますから、ですが確たる証拠を差し出して裁きの場に出たほうが有効ですね、例え王だとしても法を犯せば罪に問われますから」

  ダイン 「それは凄い、私の居た世界では権力者が罪に問われる事など殆ど有りませんでしたから」

  シアシス 「こちらより進んだ文明の世界から来たと伺ってましたが意外ですね」

  ダイン 「それはお互いそう思っているでしょうね、私の世界で王制が一般的だった時代では、王が裁かれる事は殆ど無かったと思いますから」

  シアシス 「ダイン様とはまだまだお話し続けたいですが、一先ず目的地に着きました、後はメイド達にお任せして下さい、謁見の場にも彼女達が案内してくれます」

  そう言って、シアシスは大きな扉を開けると、中に居並んでいたメイド達が一斉に二人に対してお辞儀をする。

  ダイン 「何だか照れますね、私は普通の人間なのに」

  シアシス 「ダイン様の魔力がずば抜けていて、勇者だという事は私が保証しますよ、だから普通に接してあげて下さい、余り威張るのはどうかと思いますけど」

  ダイン 「ご忠告感謝します、ですが私の長所は女性に優しい事ですから、特に美しい女性には下心も加味されますから」

  シアシス 「変な冗談仰いますね、なら此処のメイド達は大丈夫ですね」

  ダイン 「それは疑い有りません、皆さんお美しいので私が照れてしまいます」

  シアシス 「では、お楽しみ下さいね、私は先に謁見の間でお待ちしております、プルルも失礼の無い様に」

  プルル 「はい、お任せ下さい、陛下の客人に失礼が有っては陛下にお叱りを受けてしまいます」

  シアシスに紹介されたメイドのプルルは幼い顔立ちではあったが、可憐という言葉がぴったりの美少女だ、正に二次元コンテンツの様な少女の登場にダインは優しく応える。

  ダイン 「別に畏まらなくても結構ですよ、女性に優しくされる事は好きですが、命令とかは嫌いですし」

  プルル 「優しそうな方で安心致しました、凄い魔力の持ち主というお話でしたから」

  ダイン 「魔力と性格に関わりが有るモノなんですか?」

  プルル 「変わった方が多いのは確かです、ティアス様などがその良い例ですね、あの方は私達メイドにも友人の様に接してくれますから」

  ダイン 「解りますね、あの方は凄く楽しい方でしたから、緊張が解れて無いと人と会話していて楽しいとは感じない筈ですから」

  プルル 「道中お楽しみ頂けたようで良かったです、陛下がいきなりダイン様の召還を言い出した時には私共も驚きましたから、勇者様がお怒りになっていると心配しておりましたから」

  ダイン 「私の召還はいきなりだった訳ですか、ティアス様はそれで私が機嫌を悪くすると考えて損な役を引き受けた訳ですね」

  プルル 「多分ティアス様はそう考えたと思います、シアシス様は賢い方ですが使命に忠実過ぎますから」

  ダイン 「話した感じそれ程堅物な感じはしませんでしたが」

  プルル 「それはダイン様の人となりではないでしょうか、私も始めてのお客様とこれ程話した事はありませんから」

  ダイン 「そうでしたね、私と話すよりもプルルにはプルルの仕事が有りましたね、どうぞ気にせずに続けて下さい」

  プルル 「そうでした、ダイン様と違って陛下はお厳しい方ですから、私がダイン様と長話していては叱られてしまいます」

  ダイン 「ならば急ぎましょうか、私は取り合えず下着以外を脱げばいいですね」

  プルル 「お気遣い頂く無くても大丈夫です、私共に任せて下さい」

  ダイン 「いえ、私がやった方が速いですから」

  そう言ったダインは既に下着以外を脱いでしまっている、そして晒された裸体にメイド達は少し驚きを見せている、何故ならダインの股間の膨らみはこの世界の男の物に比べて数段大きいのだ。

  そして、視線を感じたダインが股間を腕で遮りながら恥ずかしそうに話す。

  ダイン 「流石にその反応は恥ずかしいですね、男の身体に興味を抱くのは理解出来ますが」

  プルル 「ダイン様が凄いからですよ、私達も見慣れてるぐらいに男性の身体は見てますが、そのダイン様の様にご立派なモノは初めてですので」

  ダイン 「持ち上げないで下さい、皆さんが魅力的なので」

  プルル 「そんな事言われると期待しちゃいます、ダイン様が囲っている女性達はみんな凄い魔力だって話ですから、特にポロルグのフェカト様やポーカ学長は魔力が三倍になってるって話ですよ」

  ダイン 「その事が王宮にまで広まっているんですか」

  プルル 「はい、そもそも魔力の高い男性って凄く魅力的です、高い魔力を持った子供が期待出来ますから、それにダイン様って男性では桁違いの魔力の持ち主ですから、みんなお近付きになりたいんですよ」

  ダイン 「まさか魔力がモテる基準だとは」

  プルル 「だって魔力高いだけで人生約束されてますから、例え平民でも魔力高ければ騎士の道も開かれて貴族階級の仲間入りです、騎士じゃ無くても魔導工房勤めならお給金いいですからいい暮らし出来ますし」

  ダイン 「王宮のメイドなら生活は良さそうですけど」

  プルル 「確かに生活は安定していますが、ここだけの話、貴族に見初められるのを狙っているんですよ、だからさっきダイン様が魅力的って言ってくれて皆んなドキドキしてますよ、勇者の子供産んでみたいじゃないですか」

  ダイン 「確かにそういうものでしょうね、私も肩書きでグッと来ますから」

  プルル 「あ、お喋りし過ぎですね、速くダイン様を案内しないと怒られちゃいますね、着せるのは私達に任せて下さい」

  プルルに言われるまでもなく、ダインにはどう着て良いのか解らない服だった、服自体は着る事が可能だろうが、細かい飾りをたくさん付ける必要がある様で、正直何処に付ければいいのかも解らない。

  メイド達にされるがままに派手な衣装に着替えさせられたダインは、プルルに連れられて部屋を出て、王宮内部を連れられて行く、衣装部屋から目的地まではかなり距離がある様で奇抜な姿のダインはジャラジャラと音を立てて通路を進んで行くが、道中誰にもすれ違う事も無かった。

  そして、巨大な扉の前にたどり着いたプルルが、扉のドアノッカーを鳴らすと大きな扉が内側に開き、広大な空間が現れる。

  まるで学校の体育館、現代で一番近い感覚の建物が正にそれだった、ただ、彫刻の施された石材を使った空間の豪華さはダインに圧倒的な威圧感を与え、此処の主人の権力を示している。

  左右の壁側には疎に人が点在しており、全体では百人ぐらいは居そうだが、その誰もがダインと似た様な煌びやか衣装を纏っている事から、この派手な衣装は王と謁見する為の正装なのかも知れない。

  正面奥の壇上にも王座を中心に十名程が左右に展開しており、多分あの中にティアスも居る事だろう。

  プルル 「ダイン様をお連れしました」

  プルルは大きな声でそう言ったが、多分奥の壇上の王座に座っているであろう男性にはよく聴こえて居ないかもしれない、そう、それぐらいにこの空間は広いのだ。

  そして、比較的動きやすそうな服装をした男が、奥の壇上より何かを告げられて早足でこちらに歩いて来ると、自分に続く様にとダイン達に告げてくる。

  ダインとプルルは男の指示に従って後に続いて広間の真ん中を通って奥を目指すと、部屋の壁側に居る人々の視線がダインに集中している。

  奇妙な服装で晒されるダインは見せ物にされている様で不快では有ったが、距離が近くなって壇上に居並ぶ人の中にいたティアスが意味深に微笑んでいるのを見ると、何故だか不快感は薄れて行き、逆に自分もおかしくなって来た。

  ゆっくりとした歩調で男の後に続いていたダインだったが、壇の手前で男が止まって、ダインにはさらに先に行くようで手で指示している、ここまで来ては従うしかないダインは一人で前に進み出るが、一段が広い階段状の段差の途中で衛兵の持つ長物が交差されて、そこで止まる事を指示される。

  王座の男 「其方が異世界から来た者か、以前にも同じ様な少女達に会ったが真に黒い髪とは」

  そう、ダインには不思議に感じるが、確かにこの空間に黒髪の人間はダイン以外には存在していない、黒以外には地毛かと疑いたくなる様な髪の持ち主が多数いてダインから見ればおかしく思える、だが、この場の人々からすればダインの黒髪こそおかしく思えているのだろう。

  ダイン 「失礼ながら、私の居た国では黒髪の人間が普通でした、実際、私の居た世界では頭髪は、金、黒、茶、白ぐらいでしたね」

  王座の男 「なるほどのぉ、その髪が正に異世界の証じゃな、遠路はるばるご苦労じゃった、余は黒い髪の男に興味があったのだ」

  ティアス 「父上はそれを確認する為だけにダイン殿をお呼びになったのですか?」

  王座の男 「色々と話題では有ったからのう、この後宴も用意しておるので興味ある者は直にダイン殿を尋ねるとよいじゃろう」

  その余りに素っ気ない態度にダインはククジアの王が別段自分を危険視していないと確信する、ダインに興味の無いこの王は多分誰かの嘆願を受けて、ダインを王都に呼び寄せたのだ。

  そして、王は役目は終わったと言わんばかりに立ち上がって王座を離れると、そのまま奥に退いてしまった、この態度は居並ぶ者達にも予想外だった様で広間はざわめきに包まれてしまった。

  おまけ

  ククジア王国 かつて魔王ザキトスの勢力範囲にザキトス討伐の功労者達に領地が与えられて建国された国家、王家はザキトスを討ち取った英雄の血筋で騎士の家系だが、二代目国王が他国への侵略を行った為に元老院による選定が行われる様になった為に、騎士によくある好戦的な人物が王になる事は今ではまず無い。

  王家に次いで権力を持つグガト家はかつて魔術師の一族で研究の為に魔王城を与えられたが、こちらも魔術師として目立った活躍をする人物を輩出出来なくなっている。

  大陸東部に位置する強国では有るが、侵略戦争を行った過去から他国より警戒されている。