野望編 第十七話 遊魔期待の新戦力

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  屋敷に残った者達は、一階に有る広めの部屋に集まっていた、そこは教壇と個人用の机と椅子が6セット用意された部屋で、小さな教室といったた感じだ。

  この屋敷全体に言える事だが、何かしらの空調設備が完備されている様で、部屋の後方の壁の上に有る通風口からは涼しい風が流れ出ている。

  そして、それぞれのテーブルには使い込まれているが同じ本が一冊と、真新しい別の本、そして数枚の紙が用意されている。

  ダイン達はそれぞれ着座して、教壇のポーカを見ているとポーカが説明を始める。

  ポーカ 「取り敢えず、指導書とそれを写本する為の白紙本が基本的な座学の道具なんですが、皆さん文字も言葉も理解してますよね、正直ポーカやフェカトの知識が有れば写本も必要無いと思いますし」

  ダイン 「確かに、書いて覚えるのは効果的とは言いますが、多分、その必要は有りませんね」

  フェカト 「はい、いきなり実技でもいいんですけど、マギガントが足りないんですよ、午後には二体確保出来ると思いますので、それまでは勇者リエルへの対策会議ですね」

  ダイン 「その事ですが、既にアーキアの件はクガトに伝わっているんですよね」

  フェカト 「はい、メイドや学生から伝わってますね、フェカトもワザと情報を流す様に工作している人間がいますから、でも、リエルやルーフィンにまで伝わっているかは不明です、ですがレボト・クガトの性格を考えると伝えられていない可能性は高いです」

  愛耶 「気になるのはクガト側勇者の性格ですよね、アーキアみたいに仲間思いなんですか」

  ポーカ 「ルーフィンに関してはポーカもよくは知りません、ですがリエルに関してはある程度解ります、基本的に良い人みたいで対峙しているポーカの心配とかもしてましたよ、ポーカ的には馬鹿にされた様で怒ってたんですけど」

  ポーカの顔はその時の事を思い出しているのか悔しそうだ、名の通った女騎士としてはかなり屈辱的な敗北だったのだろう。

  フェカト 「フェカトの集めた情報でも、リエルが動く可能性は高いと思うんですけど、クガトは勇者達を殆どマギガントから遠ざけているんですよ、今回のアーキアは何処からかダイン様達の情報を得て、強引にフーフィアに乗ってテガスまで来たみたいですよ」

  ダイン 「だからこちらの誘いに乗ったんですか、勇者と言われていてもそれほど良い待遇を受けている訳じゃ無さそうですからね」

  ファービ 「こちらの朝食が凄いって言ってましたからね、何時もは豆スープとパンだけって文句言ってましたよ、ファービ達からすればここの食事でも質素ですけど」

  フェカト 「一応、一般学生より二品ほど増やしているんですが、シーベアーでの晩餐の様には行きませんね」

  ダイン 「食事の質はアレで十分ですね、量さえ問題無ければ、味は調整出来ますし」

  愛耶 「それも問題ですよね、愛耶も一度市場に行って食材の調達を行いたいです、日本と同じ物もある様ですから、出来る範囲で食事バリエーションは増やしておきたいですね」

  その訴えはかなり興味が混ざっている様だ、料理好きの愛耶には異世界の市場はとても興味を唆る場所なのだろう、そう、七実の工房の様な。

  ダイン 「まぁ、アーキアの行いによってリエルの来訪が阻害されているなら、私達には好都合ですね、まだ、地盤固めの終わっていない私達には時間が必要ですから」

  ポーカ 「正直、アーキアとポーカでリエルは倒せると思いますけど、多分、今のアーキアはリエル以上の使い手ですよ」

  ダイン 「空飛んで逃げるんじゃ無いですか?」

  フェカト 「天翔ける処女はそこまで万能じゃないですね、一度地上に降ろしてしまえば直ぐには飛び立てませんね」

  ダイン 「飛行装備も原理を解明しないと行けませんね、遊魔に処女は居ませんが学院生徒で何とか出来るでしょう、魔力で出来る事を見極めて私達の知識を使って応用して行けば、天翔ける処女以外の飛行方法も可能だと思いますから」

  フェカト 「確かに、フェカトは他勢力との交渉もしてましたから、飛べるマギガントは重要だったんですよ、会えば解る事って有りますから」

  真夏 「遊魔と処女を両立出来ませんからね、でも、堕液で脳を堕とした牝なら使えそうですよね」

  ダイン 「元々異形から身を守る為の肉体改造ですからね」

  愛耶 「でもそれって凄く可哀想ですよ、心を堕とさせているのに抱いて貰えないなんて」

  ポーカ 「解ります、忠誠と奉仕は切り離せませんから、そして自ら純潔を捧げるのは忠誠の儀式ですから、それが出来ないとなると」

  ダイン 「私自身がそう変えてしまったとはいえ、問題ですね」

  フェカト 「むしろそれが遊魔達の安心ですから、誰もがダイン様を裏切る事が出来ないので遊魔なだけで仲良く出来るんですよ、現にフェカトは妹達よりアーキア信頼してますから」

  絶対に裏切る事無い組織構成は遊魔として明らかな強みだ、ダインもそれが解っているからこそ変える気は毛頭無い、だが人間を元とする思考を持つ以上、どんなに優れた環境に置かれていても何かしらの不満は見つけてしまう物なのだろう。

  そうして、自由な環境での打ち合わせが進んで行くと、フェカトが魔道時計を見てそろそろ遊魔用に用意したマギガントが到着する時間だと口にしたので、遊魔達はそれを見に行く事にする。

  城塞都市の様な学院の堀は運河として活用されており、重量の有るマギガントは水運を利用して移動させる事が一般的である、自ら歩く事も可能なのだが、長時間稼働させるだけでガタが出る代物なので水運を使うのが一番コストの掛からない移動方法なのだ。

  ダイン 「この水路を使えばシーベアー号も移送可能なのではないでしょうか、アレの発電機が使えれば計算は楽になりますよね」

  ポーカ 「ダイン様達が乗って来た船ですよね、停泊池も有りますから、学院に移動させて管理するのは出来ると思います」

  フェカト 「あの船には結構良い部屋が有りましたよね、他にも何かあるんですか」

  ダイン 「重要なのは電力です、スマホを充電出来れば計算機が使えますからね、今後、私の世界の技術を応用する為には計算が必要になると思います」

  真夏 「そうなんですか、なんかイメージ沸きませんけど」

  ダイン 「工業製品を作るには回転が重要なんですよ、車も車輪を回してますし、ヘリなんかが一番解り易いですよね」

  真夏 「確かにヘリって色々と回ってますよね、後ろに小さいプロペラも回ってますし」

  ダイン 「まぁアレにもちゃんとした意味があって回っているんですよ、ヘリと同じ飛行が再現出来るかは解りませんが、挑戦するには計算が必要ですよね」

  真夏 「確かに回転速度が重要だと思えますね、何を計算していいのかは解りませんけど」

  ダイン 「先ずは装輪式で自走するのが目標ですね、この時代の道でも自動車レベルは走れそうですから」

  愛弥 「道が重要なんですか?」

  ダイン 「交通インフラは重要ですよ、まぁインフラ関係ない飛行が最強ですけど、自動運転よりも無人機飛行機の方が先に実用化してますからね」

  真夏 「確かに自動車の方が一般的な乗り物ですけど、無人自動車ってそんなに無いですよね、ドローンは家電量販店でも売ってるのに」

  ダイン 「空には障害物が無いからですよ、有っても高度を上げる事で回避出来ます、ですが地上走行だと避けないと当たりますし、上にも逃げれない」

  愛弥 「なるほど、技術的に安易な車を試してから、ヘリを目指すんですね」

  ダイン 「まぁそれもこの世界の技術次第ですけど、回転動力以上に安易な方法が有るならそちらを試してみますよ」

  フェカト 「天翔ける処女の浮遊原理はちゃんと解明されてませんから、魔素を多く含ませた魔綱はだんだん軽くなっていって、処女の魔力を流すと浮く様になるんですよ」

  ダイン 「むぅ、異世界特有な都合の良い材料ですね」

  ファービ 「女の子を言いなりに堕としちゃうダイン様も似た様なモノだと思うけど」

  フェカト 「楽しくお喋りはいいんですけど、船が来てますよ、あと、ポナリア・ジーカの飛行音も聞こえてますから直ぐに見えると思います」

  確かに辺りにはヴィーンという低い音が聞こえている、それはダインがシーベアー号の上で聞いた音と同じで、この音が天翔ける処女の駆動音なのだろう。

  そして、ダイン達に影が差し、三体のマギガントが連れ立って飛来してくる。

  ポーカ 「妹さん達はフェカトより才能有りますよね、真ん中は誰も乗って無いでしょうに」

  ポーカの言葉が示す様に、真ん中のポナリア・ジーカだけは魔光の光を発していない、それは騎士が動かしていない証の様だ。

  フェカト 「降りて来ますけど、近付かないで下さいね、真ん中無人ですから着地が難しいと思いますから」

  ポーカ 「でも、ポナリアなら転けたぐらいで壊れませんよ、ジーカなら解りませんけど」

  フェカトの言葉に、遊魔達は着地する様な姿勢を見せる三機から遠く離れる、転けて弾き飛んだ装備が直撃するだけで、最悪死亡も有り得るだろう。

  だが、警戒と裏腹に両脇二機は器用に動いてすんなりと着地してみせる。

  ポーカ 「あの二人はジーカも乗りこなしてましたからね、でも腕が上がった様ですよ」

  ダイン 「確かに滑らかな着地でしたが、さすが学長の教え子ですね」

  ダイン達がその場で見物していると、工房から大きな台車を押したゾッフォが出て来て、ポナリア二機が器用に機体を操作して、無人のポナリアを台車に乗せる。

  そして、作業員の固定作業が終わると、ポナリア二機もゾッフォを手伝って台車を工房へと運び込んで行く。

  また、ダイン達がポナリアの作業に目を向けている内に、水路に有った運搬船も工房の内部へと移動した様で、辺りに稼働するマギガントの姿は見えなくなってしまう。

  フェカト 「工房に移動しましょうか、ダイン様達にも機体を見て欲しいですから、それに妹達にも会ってあげて下さい」

  愛耶 「いいんですか、堕とされちゃいますよ」

  ダイン 「今はやりませんよ、妹達はフェカトの仕事を肩代わりしてくれているんですよね」

  フェカト 「はい、フェカトが居なくてダイン様に不自由させるわけには行きませんから」

  ダインはその返答に満足すると、工房の中へと移動する、高い天井の工房の中は、巨大な機械が多数存在していて、丁度、巨大なガントリークレーンが運搬船に積んでいたマギガントを吊り上げているところだ。

  ダイン 「凄い光景ですね、木造船から巨大クレーンで巨人を吊り上げているなんて」

  真夏 「進んでるのか、遅れてるのか判断し難いですよ」

  フェカト 「船はシーベアーほど洗練された無いですよね、手漕ぎ式ですし」

  ダイン 「確かにこの方式ではマストは立てられませんからね、クレーンに引っ掛かってしまいますね」

  ポーカ 「水路移動する時は魔動力使って移動してますから、帆を張らなくても運河は移動出来るんですよ、各停泊地の労働者が櫂で船を移動させてますから、学院はそういう労働者がいないのでレールを中まで引き込んでますけど」

  フェカト 「力仕事は男の役目ですからね、処女だらけの学院には入って貰っては困ります、それにこちらの方が効率的ですからね」

  ダイン 「何だか私が全てをブチ壊している様ですが」

  ファービ 「ダイン様はぶち込んで堕としてますよね」

  ポーカ 「責任者のポーカが認めればいいんですよ、それに優秀な娘には報いないと」

  真夏 「酷い教育者ですよね」

  そして、数時間後、今日届けられたマギガント五機が横一列に並べられて、その前にダイン達遊魔一同が集まっていた。

  フェカト 「取り敢えず訓練用の数は集まりましたね、技師達にチャックして貰って明日から訓練開始です」

  ポーカ 「はい、五機二種ですから手間掛かりますね、特にポナリアはテガスじゃ殆ど整備してませんし、それにしても高性能なウウル・ジーを三機なんてよく用意出来ましたね」

  フェカト 「エディケスがザラケアに売って奴です、エディケスは安価でウウル・ジーを売るんですが、ちゃんとした技師が居ないと治せなくて代わりの部品も高いんですよ、機体価格より整備で金取るつもりだったんですね、ですがテガスならウウル・ジー運用してますし、ククジア規格の予備部品も作ってますから、同数のジノ・ゾッフォと交換したんですよ、ジノ・ゾッフォならザラケアでも運用し易いと評判良いですから」

  ダイン 「プリンター商売みたいなモノですね、本体安いがインクが高いみたいな」

  フェカト 「エディケスとしても友好国を増やす為にやってるんでしょうけど、逆に詐欺だと思われてました、トータルで考えればザラケアの方がかなりお得なんですけど」

  ポーカ 「そして、それを利用してポロルグが一番得したわけですね」

  フェカト 「動かないウウル・ジーより、動くジノ・ゾッフォですよ、ポロルグの黒豹はジーカに切り替わってますから、ジノ・ゾッフォ余ってましたし」

  ポーカ 「それでポロルグ独立の準備って陰で言われてますからね」

  フェカト 「結果的にポロルグで作ってるジーカに変えた方が安上がりなんですよ、ジーカだと騎士の腕も一流ですし、それに協定戦は壊れようが勝てる機体を使った方がいいですからね」

  ポーカ 「確かに高い技量の騎士なら、ククジア主力のジノ・ゾッフォよりジーカの方が勝つでしょうから」

  フェカト 「そうなんですよ、ジーカが一戦でガタが来ても、代わりが有れば良いだけですから」

  ポーカ 「その意味ではウウル・ジーとジーカって似てる機体ですね」

  フェカト 「性能的にはそうですね、ですが、ウウル・ジーは騎士の負担が少ない代わりに機体の価格が高くなってます、対してジーカは騎士に慣れさせる機体です、ですから訓練には使えないんですよね、ポナリアはまた別ですけど」

  真夏 「ゾッフォはとても安定して、乗りやすかったですけど使わないんですか」

  ポーカ 「安定はしてますけど、無茶出来ないんですよね、壊してもいいぐらいで戦った方が協定戦は勝てますからね、ポーカも一戦毎にジーカを乗り換えてましたし」

  七実 「専用機とか無いんですか、ちょっと残念です」

  フェカト 「色とかバランスは個人用に合わせてますよ、予備含めてポーカ用ジーカ四機とか普通ですし、今は、ここぞという時にウウル・ジー使いますからジーカは三機ですね」

  ダイン 「なら、この五機は訓練用という事ですか?」

  フェカト 「いえ、ポナリアもウウル・ジーもジーカよりは頑丈ですから普通に使えば二戦は戦えます、無論予備機もまだ用意しますよ」

  ダイン 「なるほど、ですが訓練も明日からですよね、今日はそろそろ宿舎に戻りましょうか」

  愛耶 「はい、それがいいですよ、メイドに頼んで沢山食材買い込んで貰ってますから献立考えないと」

  ダイン 「それは面白そうですね、未知の土地の未知の食材ですか」

  ファービ 「そういえば、メイドが一人堀で大きな魚釣ってましたけど、アレも食材なんですかね」

  ポーカ 「揚げてソースと混ぜて食べると美味しいんですよ、堀の魚は共有財産ですから、釣ってる市民も多いですよ、そして釣れれば食事が豪華になります」

  ダイン 「合理的な世界ですよね、この世界の人間は全般的にそういう傾向が有ると思います、マギガントで戦争無くしてるぐらいですからね」

  七実 「確かに工房もそうでしたね、工房の生徒達は実際の作業をこなして給料も出てるみたいですから、それも出来高払いでした」

  フェカト 「え、それって普通じゃないんですか、幾ら生徒でも労働に対する対価は与えるべきですよ、それに工房の仕事で稼げなかれば辞めればいいだけですから、フェカトだって騎士の道は諦めて交渉官になってますよ、天翔ける処女を装備したポナリアは早く移動する道具でしたし」

  ダインは自分の居た世界とこの世界との違いに驚いてはいたが、戸惑ってはいなかった、こちらの世界の方がダインの性に合っている事は明らかで、ダインに与えられた力と相まって色々と楽しい事が出来そうなのだ。

  そして遊魔達の中にも自分也の楽しみを見つけた者も出始めて、遊魔達にとっては自由の効くこの世界の方が元の世界よりも楽しめそうな予感が有った。

  おまけ

  マギガント解説 03 ウウル・ジー

  エディケス王国がジーカを参考にして自国で製造されているマギガント“ウウル”をベースに作り上げた機体、ウウルは安定した操作性が特徴の高級機であるが、ウウル・ジーはジーカに習って大幅にフレームを軽量化している、その為、安定した操作性は失われたが、製造コストの低下と高い運動性を獲得している。

  エディケスはククジアに比べて魔鋼の製造技術は高いが、魔動力の製造技術は低く、その為ウウル・ジーは高い頻度での整備を必要としている。

  エディケスはウウル・ジーを大量生産して整備コストを下げる試みを行っており、その結果、自国以外の友好国にもかなりの数のウウル・ジーが出回っているが整備部品などがエディケス頼みになる為に導入後後悔する国家も多い。

  性能的にはポナリア・ジーカとジーカの中間の性能だが、整備面で大きく劣っている、だが高性能機の運用としては悪くない選択である。

  ポーカがテガスで運用していた機体は魔動力をククジア製に換装されて高い整備性を獲得しており、そのデータと引き替えに第三国経由という形でフェカトは3機のウウル・ジーを入手している。

  価格は18三乗貴族貨(18億円)、だが運用費が通常マギガントの三倍程度必要になる。