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【175】私、とうとうファンタジーの住人に?!・・いやもうとっくになってんだわ。

  総合異能互助組合。通称「組合」への加入条件とは。

  ①異能力を発動出来る者。

  ②霊力の有無に関わらず、異能力を持つものを使役、または使える者。

  ③加入判定の担当組合員、または3名以上の組合員からの推薦を受けた者。

  ①~③何れかの条件を満たし、判定員との面談で合格した者を組合員と認める。

  ・・といった感じらしい。

  え~・・私、どれにも当て嵌まらなくね?

  そう思って訊いてみたけど、「俺ちゃん判定員だから!面談も今したし、問題無いよ!」って・・

  いやいや、何の説明にもなってないから!

  良く解らないまま謎の組織に加入なんて出来るかっ!恐ろしいわっ!

  こっちが納得出来るまできっちり話さんかいっ!

  精一杯虚勢を張って訴えると、おっさんは「え~」とさも面倒臭そうに唇を尖らせた。

  そんな無神経な態度にキレかけた時、大きく息を吐いたオネェさまに「アタシから説明するから落ち着いて」と宥められる。

  「コウちゃんが占い師なのは知ってるかしら?」

  「はい。まぁ、一応・・」

  「コウちゃんの異能力は占い。つまり「勘」ね。自分にとって都合の良い運を引き寄せるって言った方が良いかしら・・「勘」に従って行動することで、最終的に最良の結果を得る能力なのよ」

  「それは・・例えば怪我をするって解ってても「勘」に従って行動したら、その怪我をペイ出来るくらいの結果になる、と?」

  「そうね・・概ねその解釈で間違いないわ。大げさに言えば、「運命改変能力」って感じかしら?」

  「運命改変・・」

  それって・・かなり最強なのでは?

  驚きのまま中年男性に視線を向けると、へらりと笑って「そんな凄いもんじゃないよ~」とひらひら手を振った。

  「おいちゃん1人で動いたって物事には限界があるし、他の組合員の協力が無いと何も出来ないザコよ?戦闘能力は皆無だし、色々制限もあんのよ」

  「そうなんですね・・」

  「コウちゃん自身に戦闘能力が無くても、占いで組合に貢献してるの。ちゃんと結果を出してるし、だからこそ発言権もあって能力に対する信頼は高いのよ・・人間性に対する信頼はあんまりだけど」

  オネェさまの言葉に「ヒドイっ!ヒドイわっ!」とどこからか取り出したハンカチの端を噛んで引っ張るおっさん・・

  多分、真面目な場でそういうふざけた事してるからこその評価なんだと思うなぁ・・

  シラーっと眺めていたが、オネェさまの「こっちは適当に流しちゃって、続けるわね」の言葉に背筋を伸ばす。

  「つまり、コウちゃんの「勘」に従って行動すると関係者全員ベスト、悪くてもベターな状態で丸く収まったり、解決したりといった結果になるのよ」

  「・・という事は、私が組合に加入する事で五味さん、黒峰さんにも何かしらプラスになる事が起こる?」

  「そうね。勿論、頼子ちゃんにもね。悩み事が解決したりとか、トラブルを回避できたりとか、希望が叶ったりとかね」

  「悩み事・・」

  ちら、と思わず足元のカゴに視線を向けかけ・・そのまま何気ない感じでカップを持ち上げ誤魔化した。

  しかしオネェさまにはお見通しだったらしく、「あら、何かあるのね?」と突っ込まれてしまう。

  「是非話して!と、言いたいところだけど、頼子ちゃんがアタシたちを信頼出来ないと難しいわよね。もうちょっと仲良くなって、信じられると思ったら「いやぁ、今すぐ話した方が良さそうよ?」・・」

  こちらを安心させるように語るオネェさまの言葉に割り込み、カウンターに肘をついて顎を乗せた行儀の悪い姿勢で中年男性は言った。

  私とオネェさまの『どういう事?』と問う視線に、持っていたフォークを魔法の杖のようにくるりと回しそれまでの軽薄な笑みを消して一転、感情の抜け落ちた声音で淡々と告げる。

  「でないと、絶対に後悔する事になる」

  しん、と静まり返った店内に弦楽器の余韻だけが淡く響く中、混乱する頭で考える。

  どういう、意味?

  後悔?

  ここで話を・・金貨の事?

  異世界の事?[[rb:友人 > アド君]]の事?

  それをしないと、後悔する・・

  でも、この人たちの事を本当に信じていいのか、まだ分からない。

  勧誘された理由は一応理解した。

  私が組合員になることで、この2人や組合にとって良い事がある、らしい・・

  けれど。まだ信じきれない。何かの詐欺かも・・でもアキの親戚だし・・

  黙り込み、ぐるぐると悩んでいると中年男性が「な~んて、そんなん言われたらメッチャ不安になるよね!」と明るく声を上げた。

  揶揄われたのかと思い、ギッと視線を強くして睨みつける。

  「あ、後悔するって言うのは嘘じゃないし、ふざけてるワケでもないよ!ま、おいちゃんの事、ていうか今日の事はまだ全部信じきれてないだろうし!」

  そう言い当てられてしまい、失礼かとは思ったが恐る恐る頷いた。

  「平気平気!気にしてないよ!当然の反応だから!それに、そんな些細な不安は直ぐに[[rb:ど > ・]][[rb:う > ・]][[rb:で > ・]][[rb:も > ・]][[rb:よ > ・]][[rb:く > ・]][[rb:な > ・]][[rb:る > ・]][[rb:ん > ・]][[rb:じ > ・]][[rb:ゃ > ・]][[rb:な > ・]][[rb:い > ・]][[rb:か > ・]][[rb:な > ・]]?」

  またしても意味深な事を言われ、内心首を捻る。

  「凄く、心配してる事があるでしょ?思い当たる事ない?」

  『心配・・』

  無意識に、胸の契約紋を服の上から押さえた。

  瞬間。ぞわっと恐怖にも似た嫌な感覚が背筋を撫で、反射的にガタリと椅子を鳴らして立ち上がる。

  「あ、あの、すみません!お手洗いをお借りしても?!」

  「え?えぇ。後ろの木の影になってる扉よ」

  「ありがとうございます!」

  オネェさまが示した背後の観葉植物目掛けて、足早に移動。

  隠れていたドアを焦りながら開き、中に飛び込んで洗面台の鏡の前でTシャツが伸びるのも構わずに襟ぐりをぐっと引き下げた。

  鏡に反射して、契約紋の縁が僅かに見える。

  その色が元の赤銅色より濃い気がして、焦燥が増した。

  もっと良く確認しようと、更に強く下げ開いて鏡に顔を寄せる。

  胸の真ん中にある契約紋。

  その色が、上の方からじわりと黒ずんでいく・・

  確認して。さぁ、と血の気が引き、ぐらりと歪んだ視界が狭くなった。

  寒いのに、全身から汗が滲む。

  『アド君に、何かあったんだ』

  あちらの、友人の状態を契約紋の変化で知った。

  ただ、それだけ。

  知らされたのに、理解しているのに。

  私が出来る事は、何もない。

  怪我をしたのだろうか?

  それとも病気?もしかして事故?

  何も、何も出来ない・・

  『どうか無事でいて』と、祈る事しか、出来ない。

  こういう状況になるかもしれないと、解っていた筈だ。

  解っていたくせに。それでも、想像していたよりも、辛くて、苦しくて、とても怖い。

  彼を失うかも知れない恐怖で体が震え、立っていられずにタイル張りの床へずるずると座り込む。

  どうしよう!どうしよう!

  失う。消えてしまう。大切な人が、[[rb:ま > ・]][[rb:た > ・]]!

  10年前、見知らぬ番号の着信から始まった一連の記憶が甦って、心臓がギリリと引き絞られるような痛みに襲われた。

  ―警察です。ご両親が事故に合われて病院に搬送され―・・

  無意識に、契約紋を撫で擦る。

  皮膚が赤くなるのを気にする余裕も無く、『どうか、どうか』と無事の願いを込めて手の平で擦った。

  ・・

  ・・・・・・―

  どれだけそうしていたのか、コンコン。とドアがノックされて、心配そうな声が届く。

  「頼子ちゃん、大丈夫?」

  のろりと顔を上げ、暗い茶色の扉を見た。

  何をするでもなく視界に扉を映したままにしていると、「開けるわね?」と声がしてゆっくりと隙間が広がる。

  「どうしたの頼子ちゃん?!」

  途中、一気に開かれた扉からクーラーの冷気と共にオネェさまが飛び込んで来た。

  こちらの様子に慌てつつ、そっとしゃがんで背中を優しく撫でられる。

  「大丈夫?何があったの?」

  「・・ぁ・・う」

  答えようと唇を動かすも、かちかちかちと歯が鳴るだけで言葉にならない。

  混乱状態の私に、オネェさまは優しい表情でゆっくりと言葉を紡いだ。

  「頼子ちゃん落ち着いて。ゆーっくり、深呼吸しましょう」

  そっと、胸を擦り続けていた手を取って自分の手で包み込んだオネェさまは、優しく「大丈夫、大丈夫」と繰り返すのだった。

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