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【161】ボサ髪との知識交流からの推察。

  ボサ髪によると、魔法とは「身の内の魔力を[[rb:想像 > イメージ]]の力で具現化させる」事だという。

  魔力は放出する際、想像という膜を通り抜ける事で事象として顕現する・・

  一般的にはそういった「想像」を通して魔法を行使しているそうだ。

  想像だけで魔法が使えるというのなら「詠唱」や「魔術陣」は必要ないのではないか?

  だが聞くところによると、そう単純な話ではないらしい。

  まず、魔法が使えるのは生存に必要な魔力を残した上で、体外に放出しても問題ない程度に魔力を保有している者。

  これは極々小さい魔法も含まれる為、殆どの者が当て嵌まる。

  続いて一般的に「魔法使い」と言われるような者達。

  この者らは所謂生活魔法と呼ばれる小規模な魔法以上の攻撃や防御に優れた魔法を使えるが、魔法というのはしつこいようだが「想像」の力が重要だ。

  この「想像」は行使者の集中が途切れると途端に崩れ、その結果顕現する筈だった事象も顕現しない。つまり、魔法の不発に繋がる。

  固く守られた状況で集中して魔法がいつでも使えるなら心配する事はないだろうが、軍に所属する魔法兵なら兎も角、冒険者がそのように落ち着いて魔法を行使出来る状況というのは少ない。

  攻撃を躱しながら、仲間と連携をとりながらといった状況下でも魔法が使えなくてはならないのだ。

  それを実現するための補助が「詠唱」や「魔術陣」というわけだ。

  「詠唱」は「魔術陣」に使われる文言を元に考案された「[[rb:術言 > キーワード]]」を用い、顕現させたい事象の意味を込め、繰り返し口にする事で言葉と想像を結び付け、魔法の発動を迅速に行使する方法であると。

  例えば、火の攻撃魔法。

  想像だけで行使するならば「魔力を炎に変換」「的に向けて真っすぐに」「馬よりも早い速度で飛ばす」「焼き貫いて燃える」といった想像を込めて魔力を放出する。

  これが「詠唱」となると、ただ魔力を放出して「[[rb:炎の矢 > フレイムアロー]]」や「[[rb:炎槍 > フレイムジャベリン]]」といったような「術言」を唱える。

  勿論、想像と結果を結び付け、しっかりと発動出来るようになるまでに時間は掛かるが、慣れると都度想像するより発動は楽になり、無駄な魔力消費も抑えられる。という訳だ。

  因みに、「詠唱」の文言は基本自由なのだが、昔からあって広く知られている「術言」が数多くあるため、より細かく多くの想像を込める高威力の魔法以外はどの魔法使いも似たり寄ったりな詠唱となっている。

  そして「魔術陣」

  これは数千年前に滅んだ古代文明の技術を元にしており、文字の配列と意味を巧みに組み合わせることで注がれた魔力を直接魔法として発動させる事のできる古代の魔法技術だ。

  つまり、魔力さえ込めれば誰でも魔法が使える非常に凡用性の高い技術である。

  しかし魔術陣には金が掛かる。

  まず、魔術陣に使われる古代文字を習得しなければならないが、これがまず庶民には難しい。

  王都の王立学園等で教えてはいるが、特待生として入学し、古代文字を習得したとしても発動可能な魔術陣制作に必要な素材は高価なので、支援者でも得られない限り研究を続けることは困難だ。

  故に学ぶのは資金力のある貴族が殆どである。

  しかし、未だ毎年のように新発見がある未知多き技術でもあるので、近年は我が国を始め各国が挙って研究に力を入れてきている。

  今なら庶民でも才能さえあれば、国の研究機関である魔術院に入る事も出来るかもしれない。

  魔術陣は遠い過去の遺跡を研究して。

  詠唱はその魔術陣を元に長年培われてきた魔法使いたちの研究と経験によりあらゆる詠唱形態が存在する、という話だ。

  魔法使いは秘密主義が多い。

  その知識を広くは派閥や血統。狭くは師匠から弟子へと相伝していく。

  そうして個々に培ってきた技術を他の魔法使いの技術を見て覚え、時には奪い己の魔法を磨くのだという。

  だが、これらの話は基本的に人種の魔法使いのことで、他種族となるとまた色々と違いがある。

  有名なのがエルフ。

  寿命は千年を超え、魔力保有量は人の5倍~10倍。

  しかもその魔力を惜しみなく精霊に与える事で、自身で操るより繊細な魔法を精霊を通して行使する。

  つまりは「精霊使い」

  続いて竜人。

  強靭な肉体とそれを支える豊富な魔力を持つ。

  人より強力な魔法を使えるが、肉体を強化する方へ多くの魔力を割いている。

  獣人や人魚、他の夜行種などの種族たちも、概ねエルフのような魔法特化となるか、竜人のように肉体強化をするかのどちらかへと魔力を割いている。

  そんな中、人種は本人が持って生まれた適性と努力により、魔法も肉体強化どちらもある程度使えるようになる。

  ある程度というのは、その威力がどうしても魔力保有量に左右されるからだ。

  魔力を支える魔力保有力は生き物全て個々で違うが、一般的に人種は様々な種族の中でも魔力保有力は弱く、保有量も少ない種族となる。

  時々私のような特異体質の者や、カルセ・・傍仕えのジャスのように血の混じった者も居るので一概には言えないが。

  ボサ髪が話す内容は所々既知の情報が混じったが、相槌を打ちながら話に耳を傾け、時折こちらが知る情報を添えるなどして有意義な知識交流となった。

  ボサ髪の話を元に思考を巡らす。

  つまり、生きる為、体の負担を抑える為に幼い頃から行ってきた体内の魔力操作の経験。

  異世界の知識による、水と風の在り方への深い理解。

  そこに豊富な魔力が合わさる事で、一般から隔絶した緻密な操作魔法となったと推察した。

  結論を言うと、私の使う魔力によって物体を操る操作魔法は、膨大な魔力によるゴリ押しだ。

  ボサ髪には異世界の事については伏せて話したが、私の魔法が魔力による力業だというのを察して「非常識な人外」認定されてしまった。

  「それは少し酷くないか?」

  不本意な認識に対し苦情を言うと、ボサ髪は呆れた様子で「これでも優しく言ったつもり」と目を眇める。

  「酷いというのは「バケモノ」とか「ヒトデナシ」とかに悪意を隙間なく込めた感じのモノ」

  「確かに悪意は感じ無かったが・・だからと言って何でも言って良いわけでは無いと思うが?」

  「それは言われるだけの事をしているアドが――イタイ!」

  言葉の途中で、死角から振り下ろされた赤髪の手刀がボサ髪の後頭部に当り悲鳴が上がる。

  どうやら必要なくなったと見た傍仕えが遮音の結界を解除したようで、最後の方の会話を聞いた赤髪がボサ髪の発言を止めに来たようだ。

  「また失礼な事言って!リルはもう少し相手の気持ちってのを考えて発言するようにして!でないといつまでもあたしが苦労する事になるじゃないの!」

  そう憤るパーティーメンバーの言葉に、ボサ髪は後頭部を擦りながら答える。

  「・・それはつまり、これからもずっとデラが傍に居てくれるって事?」

  ボサ髪の発言に、咄嗟に「違っ?!」と否定しそうになったものの、すぐに「・・わないけどっ!」と否定の否定をする赤髪。

  「これからも傍には居るけど!それならリルももうちょっとあたしの負担が減るように努力してくれても良いでしょ?!」

  顔を赤らめながら怒る赤髪に、ボサ髪はうれしそうに口元を緩めて「うん」と頷き答えた。

  「善処する」

  「それちゃんと努力するつもりが無い時の反応よね?!」

  「頑張る頑張る」

  「それも微妙!」

  「・・デラ、我が儘」

  「それはあんたでしょ?!」

  ぽんぽんと言葉を交わす2人を『仲の良い事だ』と微笑ましく眺めながら、門を守る見張りに片手を振って挨拶し、町へと足を踏み入れる。

  暫く連れだって歩き、人通りが多くなってくる通りの手前まで来た。

  このまま2人の掛け合いを眺めていたい気もするが、生憎彼女たちとは宿泊場所が違う為ここいらで別れなければならない。

  「それでは、わたくしたちはこちらですので。魔法使いはお返しします」

  「あっ!ごめんなさい!結局背負わせっぱなしで!」

  言い合いに夢中になっていた赤髪は傍仕えの言葉に慌てて半精霊の背中からボサ髪を引き取り、肩を貸して立たせた。

  「・・背負って?」

  「もう歩けるくらいには回復してるでしょ。甘えないの!それじゃあアド、今日はありがとうね?ほら、リルも」

  「うん。ありがとう。楽しかった。でも、次はわたしが勝つ」

  そう言って、ぐっと握った拳を突き出すボサ髪。

  そこに軽く拳を合わせ「機会があればな」と確約はせずに別れを告げた。

  手を振り、往来の流れに乗って歩き出した2人を見送ると、こちらも宿泊手続きをした宿へと足を向ける。

  「良き交流となったようで何よりでございました・・あの魔法使いは少しばかり礼儀がなっていませんが」

  「まぁそう言ってやるな。反省はしていたし、謝罪もあったからな。カルセは無理に許そうとしなくても良いが、許す気になったら殺気を向けるのは止めてやるといい」

  「・・お気付きでしたか」

  「ははっ。意外か?また魔力感知の質が上がったようでな。意識すれば手練れの気配も読めるようになってきた」

  「アド様の成長は喜ばしい事ですが・・これは、わたくしもうかうかしてはおれませんね」

  傍仕えの「一層精進致します」の言葉に『それ以上強くなるつもりか』と内心傍仕えの行く先が不穏に思えて少しばかり心配になった。

  「・・程々にな」と声を掛けたところで、丁度宿に到着する。

  軽く頷くだけの返答をした傍仕えに『処置なし』と諦めに近い心境を抱きつつ、宿の扉を開けた。

  この宿屋は宿泊と食事処を営んでおり、入り口からすぐのところに受付。その奥に食事をする場所がある。

  その食事場から、何やら声を掛けられた。

  「お。アド!戻ったか!待ってたぜ!」

  笑顔で手を振り、話し掛けて来たのは「栄光への導き手」に所属する黒髪の魔剣使い。

  セドリックであった。

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