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【130】(親友の)地雷の上でタップダンスをするのが趣味なんです?
「まさか神域の守護神レベルで強力なお方が個人に憑いてるとは思わなくてさ。マジ余計な事しちゃってゴメンね?おいちゃんの「勘」も万能じゃないって事なのよな・・でも、そちらのお方との「繋がり」は無事修復出来たみたいで良かった。ホント、申し訳ない」
両手の平を合わせ、拝むようにして謝罪する男性に「いえいえ。もう大丈夫みたいなので、謝罪はそのくらいで」と返す。
撫でているお狐さまからは不満そうな感覚が伝わって来るが、私が許すのなら渋々仕方なく・・と言った感じだ。
そして、親友はというと隣で「本当、迷惑、カッコ悪い」と小さく呟いている。
『らしくない反応だなぁ』と思いつつ「およしなされ」と窘めた。
ついでに耳元に顔を寄せ、こそっと訊いてみる。
「ねぇ、どうしたの?ずっと当たりキツイけど・・」
「・・空気悪くしてごめん。ちょっとね・・」
何か確執でもあったのかな?と内心首を傾げたところで、グラスを置いた男性が「あ、そうか!」と声を上げた。
「もしかして晶ちゃん、この前声掛けた時の事まだ怒ってるの?」
「ちゃんと謝ったじゃ~ん」と顎に両こぶしを寄せてキャピる男性に、親友が青筋を浮かべ、口元だけで笑った。
あ。
これはアカン。マジギレしとる。
「ほぅ。アレを謝罪と言いますか。そうですか。それならおじさんはこれから「五味」ではなく「ゴミ」と名乗ってください」
「あれれ~?音は変わらないのに何か蔑む空気を感じるぞ~?」
「黙れゴミ。人の領域に土足で踏み込みやがって恥を知れカスが」
言い放つ親友の背後に憤怒の鬼が視えそうです。
一体全体、男性は何をして親友をここまで怒らせたのか。
気にはなるけど、先ずは荒ぶる友を鎮静化させるのが先決!
「アキさん、アキさん、落ち着いて~?ほーら、さらさらふさふさですよ~」
親友の手を取り、膝の上のお狐さまに誘導して鼻先を撫でさせる。
途端、怒りに釣り上がっていた親友の目がとろんと垂れた。
今がチャンス!とばかりに席を立ち、お狐さまの隣を譲ると神がかった素晴らしい毛皮の誘惑に耐えられなかったのか、お狐さまのアゴ下にある胸毛に顔を埋め怒涛の勢いで話始める。
「御前にてくだらぬ愚痴を止められぬ私をお許しくださいっ!この男、コスプレイベントにひょっこり現れたかと思えば一発であたしだと見抜き、コスのキャライメージを崩さぬようクールに演じているあたしに本名で呼びながらウザ絡みしたんですっ!集まってくれてた若い女の子たちにまで絡むから本当に迷惑で!しかも帰り際に「びっくりさせちゃったから♪」って占いのタダ券を配って行ったんですっ!あんなのは謝罪とは言わないっ!ただの宣伝だっ!もぅ本っ当に最悪!マジで処したい!切実にっ!」
そこそこの長文をワンブレスで言い切った親友は胸毛に埋もれた顔を左右に動かし、尚もぐもぐもと唸り溜まった鬱憤を吐き散らしている・・
「おいちゃんの占いをロハで受けられるって、みーんな喜んでたんだけどなぁ~」
「・・五味さん。それは完全にアウト。一番やっちゃダメなやつです」
「え、そんなにダメ?」
「はい。アキの地雷を思いっきり踏み抜いてますね」
「マジで?」
「マジです」
そこからコスプレイベントでのマナーについて説明すると、自分が如何にやらかしたかを少しは理解できたらしい男性は気まずそうに視線を彷徨わせた後、改めて親友に頭を下げて謝罪した。
「大変申し訳ありませんでした」
「・・・一つ「貸し」にしてくれるなら許します」
「あ~。当然そう来るよね。ま、仕方ないか」
「おーけーおーけー。じゃ、一つ借りとくね」と軽い様子で承諾した男性は、グラスを持ち上げると氷を鳴らして中身を飲み干し・・
一転、真剣な様子で口を開いた。
「さてと、じゃあそろそろ本題に入ろうかな?」
「本題?」
「そ。あ、でも先にこれ、返しておくね」
「クリーニングしておいたから」と手渡された紙袋を覗くと、あの時現場に置き忘れたパーカーが入っていた。
おぉ。まさか戻って来るとは有難し。
外に着て行けるパーカー、これ一着しかなかったから助かるわぁ。
「ありがとうございます」
「いやいや。こちらこそありがとう。で、話の続きなんだけどさ」
「はい」
「あの時、どうやって俺を治したのかな?」
「えっ・・・」
「ははっ!何で驚くの?まさか訊かれないと思った?昔のと合わせて両目とも駄目になってたんだよ?普通ツっこむでしょ~」
確かにその通りだけど・・さっきまでそんな雰囲気皆無だったのに・・
『ど、どうしよう!?でも薬の事は話さない方が良いよね?!』
魔法の品である回復薬はこっちの世界では異質過ぎる品物で、ほいほいと他人に吹聴して良いものでは無い。
当然だ、そんな事をしたら自分も親友もどんな面倒に巻き込まれるか・・
どう誤魔化したものかと考えるも、思考が空転して焦りばかりが強くなる。
と、そんな絶対的なピンチに、親友が割って入った。
「おじさん。またそんな言い方して・・初対面なんですから手加減してください」
「アキ!」
「え~?言動が仄暗いと「いかにも」感があってカッコ良くない?」
サングラスのブリッジを押し上げ、楽し気に口元を歪める男性をあきれ顔で見ていた親友は、ふぅ。と小さく息を吐いて肩を落とす。
「ごめんアコ。この人、自分の言動で振り回される人を観察するのが趣味なの。意味深な事言ってるけど、深く考えたらダメ。おじさんも。わざと誤解するような言い方は止めてください」
えぇ~・・どゆこと?
つまり、なに?・・焦ったらこの人を喜ばせるだけ?って事?
魔法薬とか[[rb:異世界 > あっち]]の話はしなくても大丈夫な感じ?
「ちぇ~。こんな色々と秘密があって、からかい甲斐のある人は珍しいのに~」
「おじさん?」
「・・はいはい。わかりました。真面目に、ね?了解、りょーかい」
自分がどのスタンスで動けば良いか判断がつかずに視線を彷徨わせていると、申し訳なさそうな顔をした親友が謝って来た。
「ぐだぐだになってごめんね。なんでこの人と引き合わせたのか、ちゃんと説明もするから」
「そ、だね・・うん。そうしてくれると有難いかな?」
「ほんとゴメン」
と、漸く話が進みそうになったのに「え?話してなかったの?」などと男性が口を挟むものだから、咄嗟に言い返そうと口を開きかけた親友は、しかし途中でピタリと止まり唇を真一文字に引き結ぶと、一つ大きく深呼吸をして気持ちを落ち着かせようと試みた。
あ、成程。これが正しい対処法なんだ・・う~ん。ストレス凄そう。
多分、悪い人ではないのだろうけど、一緒に居るとかなり疲れるねこれは。
なんて事を考えていると、ふさり。私と親友を囲う形で体を曲げたお狐さまの尻尾が、気持ちを落ち着かせる様にと膝に乗せられた。
誘われるまま、自然と白い毛並みに指を潜らせて梳く。
あ~~。ふあふあさら~で気持ち良いです・・
МP回復が捗るわぁ。
〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇
どうやら親友は、この遠縁の親戚である男性の前ではいつもより沸点が低くなるらしい。
まぁ、今まであったアレやコレやの話を聞けば「さもありなん」といった感じはする。
男性の方は遠縁とはいえ、一回り以上離れた親戚の子が可愛くてつい構ってしまうといった様子だが、三十路を過ぎても小さい姪っ子を可愛がるノリで絡まれる親友は堪ったものではない。
まぁその分、色々と助けてもらったりもするらしいが・・
しかし、だからと言って頻繁に係わりたい人ではないのだろう。
「とりあえず、あたしの事は置いといて・・今回おじさんを連れて来たのはアコがおじさんと直に接触したからなの・・この人と「縁」が出来るとね「悪いモノ」が寄って来る事があるから・・その対処を早くしたくて・・」
「そ!しかも今回は「命を救う」なんてかなり濃くて太い「縁」が出来ちゃったからね!おいちゃんの「勘」の力を狙う、良くない「モノ」が綾小路さんにも手を伸ばすんじゃないかと思ったワケ」
「あぁ、成程。だからうちの子の事を誤解したんですね?」
「そゆ事!早とちりだったけどね!」と笑う男性に、お狐さまは一度、不満気に尻尾をふさりと揺らした。
その気配を察して、男性は笑みの形にした口元を引きつらせつつ両手を上げ、「降参」の意思を表す。
労わりの気持ちを込めて『どうどう』とお狐さまの毛を梳き撫で、落ち着かせながら聞いた話を整理した。
人命救助そのものに後悔はないが、どうやらこの男性に係わった事で霊的?に良くないモノに襲われる可能性があったらしい・・
結果としては、狐印の護衛が居たのでその心配は無用だったのだが・・
親友も、お狐さまが強いことは解っていたが、余計な負担は減らした方が良いだろうと思っての行動だった。と・・
うん。そこまでは理解した。
では次。
一番の懸念である魔法薬については?
追及されたら話すしかないと思うが、それで良いのだろうか・・
それこそ男性の方が面倒事に巻き込まれる可能性があるのでは?
いや、知れば何らかの形で確実に良くない事が起こる気がする。
それはきっと男性だけでなく、私自身にも降りかかる面倒事に違いない。
殆ど妄想に近いと思うが、[[rb:回復薬 > モノ]]がモノなだけに注意し過ぎるという事は無いだろう。
『となれば、どうやって誤魔化すべ?』
唸れ!私の灰色の脳細胞!
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