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【121】火を消すには炎をぶつけるって聞いたことがあるんです!/大橋の上にて。
完っ全にイっちゃってる様相の[[rb:美人さん > お姉さま]]・・・
これはヒドイ。
何がって?
私の「やらかし」がだよっ!!
目の前でハァハァしながらクネりクネりと身を捩る友人の姉の姿に、特大のやっちまった感・・
・・・・・・うん。
これはもう、どうしようも無いNE☆
よし、開き直った所で美人さんを[[rb:落ち着か > クールダウンさ]]せるとしましょう。
その方法は・・こっれだぁ!
「クリスさん、クリスさん」
「はふぅ・・なんでございましょう魔女さん・・」
とろりとしたアレな表情の美人さんに「これ、なーんだ?」とトリップしている間にこそっと用意したブツをカメラに向かって掲げた。
するとモニター越しにソレを視認した途端、「そ、そそそそそそ、それはっ!!」と一気に挙動がバグる美人さん。
ガタタっ!と椅子を鳴らして立ち上がり、モニターに食いつくようにして顔を寄せる。
「これは「クリアファイル」という、書類や手紙なんかを挟んで保管できる物なのですが・・こちら、差し上げたいと思います」
「え、お譲りくださるのですかっ!?」
「勿論です」と頷き、今観たアニメの主役2人と、その使い魔が描かれたファイルを顔の横に持って来て続けた。
「クリスさんと「推し」を共有した記念。という事で、お譲りします。どうぞお受け取りください」
「おぉ・・なんという・・」
差し出したファイルを震える手で受け取った美人さんは感激した様子で目を潤ませ、大事そうにファイルを胸に押し抱く。
「誠に・・誠にありがとう存じます。ずっと、ずっと・・生涯の宝物にいたしますわ・・」
この場面だけを切り取れば、プロポーズで恋人から指輪でも貰ったのかと思われる程、純情乙女そのものな美人さん・・
実際はオタグッズを手にして感涙してるとか。マジ[[rb:混沌 > カオス]]。
けれど、お陰でヤバい感じの興奮状態からは脱せた模様。
別ベクトルに感情が振り切ってる感はあるけど・・さっきよか全然マシだから無問題!
と、いう事にしといてくれぃ。
・・ダメ?
〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇
王都を出発して3日。徒歩なら10日はかかるところ、旅の同行者全員が[[rb:劣竜種 > レッサードラゴン]]の牽く荷車か移動宿泊箱、または[[rb:鳥馬 > シュトラオス]]に乗って移動している為、早くも国境の関所へと到着した。
関所の門を通過しようと並ぶ人々の数は多く、とても時間が掛かりそうだ。
だが、こちらは貴人の多い集団であるので列に並ぶ必要が無い。
羨望の眼差しを受けながら、長々と連なる人々の横を通り過ぎ先頭まで進む。
そして然程待たずに案内、誘導されて貴族専用の門をくぐった。
中で受ける出国の手続きも配慮が行き届いており、同行する護衛も首に掛けた冒険者証を魔道具で確認するだけで特に問題なく手続きは終了した。
ただ、時折例の冒険者からあからさまに負の感情が込められた視線を向けられ、それがどうにも気になって落ち着かない。
こんな風に悪感情を向けられるのも久々だが、この感覚にはどこか懐かしさすら感じて、彼女との交流でとても癒されていたのだなと実感する。
・・あちらにとっては迷惑な話だろうが、その事に気付かせてくれた事と、つんつんと跳ねるような髪色が彼女と同じような黒髪なのもあって、どうにも愛着のようなものが湧いてきた。
睨む視線に対しじっと見つめて返すと、ばつが悪そうに視線を逸らして離れて行く・・
うむ。案外悪いヤツではないのかもしれないな。
そんな交流ともいえないようなやり取りをした後、関所を通過すると国の境目となっている大河に架かる大橋に足を踏み出した。
この橋は両国の友好の証として互いに協力して建設、管理維持していると聞く。
幾人もの魔法使いが土類操作や水操作の魔法で一気に土台を作り上げ、その上に人や[[rb:巌窟人 > ドワーフ]]等の職人たちが建設、装飾を施したとか・・
『こうして実際に目にすると圧倒されるな・・』
ごごん、と。重厚な音を響かせて閉じた扉を背に、鳥馬の手綱を引きながら右手に連なる欄干を眺める。
石造りの欄干には精巧な作りの石像が立ち並び、それを支える壁には細かな装飾が彫られていて見る者を飽きさせない。
また、壁の装飾には所々透かしが入っているので、その隙間から覗けば下を流れる川面を見ることが出来た。
逆に、左手には馬車と同じくらいの高さの壁があるが、装飾は殆どない。
これは橋を中央で区切る仕切りとのことで、こちら側は貴族等ある程度身分がある者専用。あちら側は庶民用という事だ。
これはただ貴族を優遇しているという訳ではなく、いらぬ問題が起こらぬよう分けているのだとか。
貴族側は素早く移動出来、庶民側は貴族に気を遣う必要が無い・・
互いの為という訳だな。
ただ、こちら側は右手の欄干以外は特に見る物もないただの石畳が続く道なのだが、あちら側は馬車が通れる幅限界まで両端に露店が出ているそうで、どちらの国からの店も橋の上なら出国分の税しか掛かっていない為、自国で買うより安く他国の物が手に入るらしい。
実際、壁の向こう側からガヤガヤと人や獣の生み出す賑やかな喧噪が聞こえて来る。
今回は難しいが、いつかの機会には是非あちら側も通ってみたいと思う。
『帰りに向こう側を通ることが出来るだろうか?』
そんな仄かな願望を思い描いていた時、何の前触れもなく後方で壁が大きく崩れ轟音が響いた。
「警戒態勢っ!!」
崩落の音に悲鳴や子供の泣き声が重なる中、良く通る騎士の号令に護衛の冒険者は移動宿泊箱を守る隊形を組み、御者は手綱を振るって劣竜種を走らせる。
私も鳥馬の手綱を放し、背後に控えた半精霊の「C」と共に崩れた壁に向かって武器を構えた。
砂埃の中から、ぞろりと姿を現したのは蟻型の魔物。
両腕で抱える程の大きさの奴らは、カシゃカシゃと大顎を鳴らしながら空いた穴から次々と這い出て来る。
「[[rb:暴食蟻 > ハンガーアント]]だ!攻撃する時は体液に注意!付着すると生きたまま食われちまうぞ!」
「栄光への導き手」の誰かが注意を促す為に叫んだ。
その声に向かって「対抗策は?!」と問いかけると、「熱と寒さに弱いぞ!」と返される。
それならば、と崩れていない壁に向かって走り駆け上がって、壁の上に立つ。全容を把握する為だ。
丁度そこへ傍仕えも駆けつけ「アド様!」と声を掛けてくる。
「カルセ!動ける範囲で人々の救出を頼む!私は魔法で魔物の流入を防ぎ時間を稼ぐ!!」
控える「C」にちらと視線を向けた傍仕えは、直ぐに「了解しました」と言葉を残し姿を消した。
壁の上から下を覗くようにして見れば、崩れたのは橋の中央付近という事が分かる。
仕切りの壁の真下辺りだ。
被害は庶民側の方が大きく、通路である石畳は大きく崩れ落ち、幾人もの人が下の川へ落ちたであろう事が窺える。
暴食蟻は下の川から橋げたを支える石造りの太い石柱の中を食い破る形で登って来たらしい。
むき出しになった石柱の天辺からぞろぞろと出て来る蟻らは今も重なり繋がって、自らの体を足場に大穴をものともせず次々と通路に移り数を増やしていく。
何体も寄り集まり、細い足や触角がわさわさと動く様は著しく嫌悪を抱かせた。
ぷつぷつと肌が泡立つ感覚を振り払うようにして、川面に向かって魔力を放出!
石柱と同程度の大きさで水柱を操ると、這い出そうとした蟻もろとも石柱の中に流し込んだ。
石柱の内部が水で満たされたところで、崩落で空いた大穴を塞ぐようにして水を広げると一気に凍結させる!
途端、石柱は内部から氷に押される形で崩壊し、内部に蟻が閉じ込められた氷柱に置き換わった。
ひゅうと冷気の風が広がると、目の前には閉じ込められ、氷漬けになった蟻らが。
「好機だ!打ち漏れたヤツを叩け!」
誰かの叫びに呼応して、各所から「応っ!」と声が上がる。
暫くして、後続の途絶えた蟻は冒険者と騎士の手により全て討伐されるのだった。
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