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【45】竜退治とな?!え?そのTRPGなんてタイトル?
「水中で竜に勝つ方法~?」
夕食も食べ終え、のんびりとアニメを観ていたところで鏡の向こうから声を掛けられた。
青年は開口一番に「相談があるのだが・・」と切り出し、何事かと詳しく聞いてみれば水没した遺跡に調査団の護衛として赴く事になったという。
相談というのは、そこに住み着いた水竜を倒さなければ調査が出来ないので、何か良い案はないか?という事らしい。
「え。何それ危なくない?断れないの?」と言ってみたが「どうしてもその遺跡で調べたい事があるのだ」と首を振られた。
切り分けた苺のタルトと、香りがお気に入りのペットボトルの紅茶をレンジで温めて添えて出す。
自分の分も同じように飲み物を用意して、青年が持ってきてくれた菓子に舌鼓を打ちながら話を聞いた。
「普通は縄付きの銛などで陸上に引き上げて討伐するのだが・・今回はその討伐方では対処出来ないのだ」
「へぇ~。水に沈んだ古代都市・・ロマンだねっ!推測するに、遺跡を壊さないように退治しないといけない感じ?」
「そういう事だ。理解が早くて助かる」
そこでパクリ、とタルトの苺を一つ口にした青年が目を見開いてぱぁっ!と表情を明るくした。
わかる~!美味しいよね!
しかも夜遅くに食べると背徳感も相まって益々美味しく感じるよねっ!!
頼子は内心で「うんうん」と頷きながら色鮮やかな木の実?と砂糖漬けの花が乗った異世界の焼き菓子を口に運んだ。
うわぁ。美味しい!
ややずっしりとして重い食感だが、鼻に抜けるお花のさわやかな香りがその重さを包み込み、後味が軽く感じられる。
もぐもぐと咀嚼すると、混ぜ込まれていたらしい何かの種だか実だかがカリッ!と砕けて面白い。
一方、いそいそとタルトの中身をフォークで掬う青年に「器も一緒に食べると食感が楽しいよ!」と好きな食べ方をお勧めして、自分は紅茶を啜った。
う~ん素晴らしい!
お茶とも相性抜群ですな!
「このお菓子美味しいね!」
「気に入ったか?それは重畳」
「次は別の種類も持って来よう」と、口元に笑みを浮かべて続けた青年に「やった!楽しみにしてるね!」とウキウキしながら答えた。
「しっかし「良い案」かぁ・・。その水竜とやらのスペック・・身体能力?が解らないと対策の立てようがないんだけど、普通に火魔法とかでやっつけられないの?」
「水竜については調べてある。読めないだろうが、絵もあるから先に目を通してみてくれ」
「は~い。どれどれ?」
青年が差し出した紙?の束を受け取ったが、見た感じの通り硬くてゴワゴワしていた。
あ、これやっぱり紙じゃなくて羊皮紙?とかいうヤツかな?
筆ならともかく、ペンなんかだと引っ掛かってすごい書き辛そう。
「水中は水竜の支配領域だ。魔法による風は無論の事、火も使う事はほぼ不可能・・唯一有効な手は土、というか岩なんだが、今回は周囲に影響が出ないように討伐せねばならんからな・・」
「岩を使うと確実に遺跡に被害が出る」とまた難しい顔をした青年。
だが勧められた通りにタルトを口に頬張ると、幸せそうに頬を緩めてもくもくと口を動かす。
「ふ~ん。風と火と土がダメとなると・・あれ?水は?」
「・・ん。相手は「水の化身」とまで言われる水竜だぞ?それこそ無謀な話だ」
タルトを飲み込み、答えた青年は難しい顔で「水魔法では水竜に敵わん。どころか、逆に乗っ取られるぞ」と紅茶を傾けた。
手元の資料に視線を落とし「なる~」と相槌を打って、ペラりとページを捲る。
そこには精緻な描写で水竜らしき生き物が描かれていた。
・・どう見ても凶悪な顔したウツボです。角とたてがみ生えてるけど・・
う~ん。顔は怖いけど、あまり強そうには見えない。
というか、絵から読み解くに水竜はエラ呼吸の可能性が高いのでは?
もう少し詳しく話を聞かねばならないだろうが、もし予想通りなら倒すのはそう難しくない気がした。
「とりま、水竜の説明聞かせて貰おっかな!あと遺跡の調査?についても何かアドバイス・・助言できるかもだし、話せる事は話してみてよ!」
「すまない、恩に着る・・」
「ははっ!なーんで謝るかな、友だちでしょうに~頼ってくれて嬉しいよ。ありがとね♪」
「そう、か。そうだな」
一瞬キョトンと瞬きをした青年は苦笑して「助かる。ありがとう」と感謝を伝えて来た。
素直な言葉にちょっと照れて「どこまで役に立てるか分かんないけど、まっかせなさーい!」と拳で胸を叩いて見せる。
一瞬、眩しさに目を細めるようにした青年は、胸を強く叩きすぎて咳き込む頼子に再度苦笑して「大丈夫か?」と声をかけた。
〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇
一通り水竜の生態などについて説明をしたところ、彼女は僅かばかり思案しただけで何か思いついたようで淡々と語り始めた。
「生き物ってのはさぁ。呼吸しないと死ぬじゃん?」
「?そうだな」
何を当たり前の事を・・と思いながら、話の続きを待つ。
「陸の生き物は水中で呼吸が出来ない。逆に、水中の生き物は陸で呼吸が出来ない。よね?」
「そうだな、まぁ稀に水と陸。どちらでも平気なものはいるが・・」
「それはこっちにもいるなぁ・・兎に角。陸で呼吸できないのは水竜も一緒でしょ?だからそれで倒したら良いんじゃないかな?」
「確かに、その体のつくりを利用して本来は陸に引き上げる方法を取るのだが・・今回遺跡が発見された場所は湖等ではなく洞窟にある地底湖だからな」
「どうやって呼吸を出来なくさせるのだ?」と当然の疑問を投げ掛ける。
すると茶の入ったカップを傾けた後、彼女は少しばかり得意げに作戦を語った。
彼女の話は要約すると「水中に空気を持ち込み、それで窒息させよう」というものだ。
聞けば空気を圧縮?して持ち運べる道具があるそうで、それを水中で開いて空気を操り水竜のエラを覆えば窒息するだろう・・との事。
「今調べてみたんだけど、空気というより「にさんかたんそ」の方が重要みたいだから、そっちだとより確実、かも?」
「よく解らんが、どちらにせよ空気を操る術はどう・・・まさか・・」
「うんっ!「水」に続いて「空気」つまり風も勉強して、操れるようになってみようか!」
そう宣言した彼女は、困惑する私を余所に、にこー!と音が鳴りそうな笑顔を振り撒く。
「でもま、今日はもう遅いから勉強は明日、かな?あ。明日時間大丈夫?」
「あ、あぁ。昼までなら空いている」
「よぅしっ!じゃ、お昼まで勉強だ!あ、良かったら朝と昼、一緒に食べる?」
また新しく魔法を使えるようになるのか?と動揺と期待で揺れる中、魅力的な提案に一瞬遅れて「良いのか?!」と飛びついた。
「「良かったら」って言ったでしょ?勿論良いよ~!楽しみにしてて!」
「あぁ!楽しみだ!」
今食べた赤い果実の菓子も、茶も素晴らしく美味だった。
また新たな異世界の味に出会えるのかと思うと、今から期待でそわそわしてしまう。
「では明日、7時ごろで良いだろうか?」
「だね。準備が出来たらこのベルを鳴らして呼ぶよ~」
「ああ。分かった!」
傍仕えが取り付けてくれたベルを示して言う彼女に、頷き答えた。
・・残念だが今日の逢瀬はこれで終いだろう。
彼女の様子を注意深く見ていたが、気落ちした様子が見られなかった事に安堵して暇の言葉を告げる。
「では、また明日だな」
「だね!それじゃ、おやすみアド君。また明日!」
「あぁ。おやすみ」
ひらりと手を振った彼女が鏡に布をかけ、視界が遮られる。
独りとなった室内に、自分の吐いた吐息の音がほぅと寂しく響いた。
鏡の布越しに、片づけをしている様子が伝わって来る。
このまま鏡の前に座り彼女の気配をもう少し感じていたかったが、何だか後ろめたい事をしている様で申し訳なく、そっと立ち上がって静かに小部屋を後にした。
青年は約束の言葉を交わせた喜びを胸に、護衛の件の根回しを含め今後の予定を傍仕えと共に組み立てる。
これから暫くは忙しくなるな。
少し前まで暇を持て余していたのに・・
まさか自分がこんな風に時間に追われる事になるとは。
だが、嫌なものではない、な。
それはきっと希望に向かって動いているからだろう。
微かではあるが、道は繋がっている。
なら、後はただひたすらに進むだけだ。
青年は、強い決意と共に行動を開始した。
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