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【25】心躍る「あにめえいが」

  青年とアニメ映画を観る前に、事前情報として映画の内容はその[[rb:ほ > ・]][[rb:と > ・]][[rb:ん > ・]][[rb:ど > ・]]が「空想上の産物」として描かれた作品であることを説明した。

  それでも、実際に映画を観ていると登場する諸々が実在するかどうかがどうしても気になるらしく、何度か「あの乗り物は在るのか?」「あの道具は?」「食べ物は?」と質問された。

  まぁ仕方ない。

  自分としては作品に集中して欲しいところだったが、青年も疑問をそのままにしては気が散って集中出来なかったのだろう。

  時折映像を止めながら知ってる範囲は説明したが、それも後半に差し掛かると殆どなくなったので、その辺りからは映画の世界に没頭してくれたようだった。

  やがて話が大団円で締めくくられ、主人公の二人が空賊たちと別れるシーンの後、美しいエンディング曲が流れ始める。

  うん。久々に観たが、何度観ても楽しい映画だ。

  流石、世界中から愛される作品である。

  そんなアニメ映画を初めて観た青年の様子が気になった頼子は、手にした杏リキュールの入ったタンブラーに気を付けつつ、ベッドの上から隣の鏡台をチラと覗き見た。

  互いの部屋の明りを落とした闇の中、タブレットの明りで浮かび上がった青年はやや前のめりで僅かに口を開け、高揚に目をキラキラとさせている。

  それを確認した頼子はウムウムと同意する様に頷いて、余韻を邪魔しないように静かに体勢を戻した。

  やがて曲が終わり、画面にも「おわり」の文字が表示されると、頼子は少し待ってから手元のリモコンで部屋の明りを付ける。

  そうして鏡台の前に移動すると優しく青年に話し掛けた。

  「これにて映画はお終い。どうだった?楽しめたかな?」

  頼子の言葉にタブレットからゆっくりと視線を上げた青年は、ぽつりと一言「すごかった」と感想を述べた。

  〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇

  「あにめえいが」なる物を初めて体験した。

  前日に見た「ぱらぱらまんが」の「あにめ」も大変素晴らしい物だったが、それに色が付き登場人物たちがしゃべり始めると予想以上の物・・いや、想像すらしていなかった衝撃体験となった。

  こちらでも舞台に役者が立って演じる「演劇」は存在するが「あにめ」はそれとは全くの別物。

  「たぶれっと」という道具の中で繰り広げられる冒険活劇に私は引き込まれ、驚きと感動と衝撃を体感して、いつしか手に汗を握り夢中になって「あにめ」を見ていた。

  美しい絵に魅了され、動き回る登場人物たちに共感し、その声に感情を揺さぶられて、場景を激しく、美しく伝えて来る音楽に聞き入った。

  もう、何もかもが素晴らしかった。

  敢えて言葉にするならば、それは正しく「感動」の一言だろう。

  「どうだった?」と感想を求めるアヤに、心躍る冒険譚の余韻に引きずられたまま、私は一言「すごかった」とだけ言った。

  しかし、その一言を切っ掛けに次々と言葉が溢れ出す。

  「素晴らしい、とても素晴らしい!こんなに心躍ったのは随分と久しぶりだ!!「あにめ」とは良い物だなアヤっ!」

  「おぅ!楽しめたようで何よりだよ」

  にっこりと笑う彼女に「あぁ!楽しかった!」とこちらも笑顔で答える。

  「空を行く「ひこうせん」に「ろぼっと」なる兵器、あれは良いな!格好良かった!また「くうぞく」たちが心良き者らで良かった!頼もしくて面白かった!!」

  「ねー!良い「きゃら」してるよね!またお母さんが強い強い!」

  「ああ!船長だな!勇ましくも凛々しくて見習いたいくらいだ!」

  「わかるっ!それなー!この作品の監督が描く女性は強く頼もしい「きゃら」が多くて、観てて気持ち良いんだよねー」

  「そこも愛されてる理由の一つだろうな」と語るアヤに疑問を投げ掛ける。

  「監督とは?この「あにめ」の監督か?」

  「そ。簡単に言うと、この「あにめ」を作った人。この監督の作品はこっちの世界ですっごい人気でね。世界中で有名なんだ!」

  どこか自慢する様なその説明に『それはそうだろう』と納得して頷く。

  「で、あろうな。大変素晴らしい「あにめ」だった」

  「うん。子どもの頃から何度も観てるけど、全然飽きない面白い作品ばかりだよ」

  「アヤが子どもの頃からあるのか・・ばかりとは、まだ他にもあるのか?」

  「ん?勿論!お勧めは幾つかあるけど、どれが良いかなぁ・・」

  アヤそう言って鏡の前に飲み物を置くと、奥の方の部屋へ歩いて行った。

  そして直ぐに箱を抱えて戻ってくると、絵が描かれた板状の物を幾つか取り出して広げて見せる。

  「はい。これが同じ監督が作った作品の内、アド君にお勧めなヤツ」

  「ほぅ・・」

  扇を広げるようにアヤの手の中で並ぶ板には成程、今観た作品の絵と似たような印象の絵が描かれている。

  色鮮やかなその絵の中で、私が真っ先に惹かれたのは空に浮かぶ乗り物と、豚鼻の男?と美しい女性が描かれた物だった。

  ・・アヤの話では、「ひこうせん」という乗り物は実在すると言っていたし、ならば、もしやこの乗り物も実在するのではないか?と思い、気になったのだ。

  「あにめ」は空想を描いた物だそうだが、全部が全部そうではないだろう。

  「どれも面白そうではあるが、一番気になるのはコレだな」

  そう言って、その品を指差すとアヤは「おっけー!」とその板を開いて中から更に薄い円形の板を取り出した。

  「じゃあこのまま観ちゃいますか!これは一時間半くらいかかるけど、大丈夫そうかな?」

  「勿論だ!」

  「んではせっとしまして、と・・あ、始める前に、アド君。飲み物のお代わりは?」

  「そうだな・・先日飲んだ「びーる」があればそれを」

  「おっ!お客さん、らっきーだね!沢山あるから飲みねぇ飲みねぇ!!」

  そう言って、アヤは調理場の方へ移動した。

  すぐに「びーる」の缶と、鈍い銀色のカップ。

  そして何やら薄いクリーム色のぐねぐねした細長い物と、黒い粒のついた濃い茶色で平たい物、オレンジ色をした三日月型の粒が入った透明な袋を盛った皿を手渡される。

  「はい!「びーる」と「おつまみ」ね!アド君は辛いのは平気そうだったし、これも気に入ると思うよ!」

  「あぁ、ありがとう」

  「へへっ。どういたしまして~」

  受け取りながら礼を伝えると、アヤはへにゃりと笑った。

  少し酔いが回り、頬を染めたその無防備な笑顔が胸の真ん中を打ち抜いて来て、体に衝撃が走る。

  か、可愛いっ!

  咄嗟に視線を下げ、皿と飲み物を手前に置くと膝の上で拳を強く握った。

  動揺を覚られまいと背筋を伸ばした所で、アヤは「ごめん、ちょっと席外すね~すぐ戻るよ~」と部屋から出て行く。

  その後ろ姿を「分かった」と見送り、見えなくなった所でこれ幸いと両手で顔を覆った。

  自分とは違う、少し濃い肌色が朱に染まって、黒縁の眼鏡の奥で潤んだ瞳がとても蠱惑的で・・

  さらりと流れる黒髪が幾筋か零れて、それを耳に掛ける様子といったら得も言われぬ色っぽさだった・・

  解っている。

  彼女はこちらを誘っているつもりなど毛頭ない事は。

  だが、酒に酔っていつもより無防備かつ、やや幼く見える彼女の行動のどれもが可愛らしいやら愛おしいやらで、いちいち心臓が反応して鼓動を早くするのだから仕方ない。

  好きだと想う気持ちが溢れて、吐き出す息に熱が籠る。

  その熱に煽られるようにして、彼女を大切に思う気持ちにじわりと情欲が混ざり込み性欲に火が付いた。

  前回、彼女の手によって吐精して以来、自慰をしていなかった事もあって、いとも簡単に股間の分身は固くなる。

  これは不味い。

  こうなってしまっては、一度出してしまわない事には収まりがつかないのだ。

  どうしたものかと、情欲に染まりつつある頭で思案しているところへ、アヤが戻って来た。

  「ごめんね、お待たせ~!じゃあ観ようか?・・・ん?アド君どした?」

  「あ、いや、その・・」

  「顔赤いね?急にお酒が回ったのかな?お水飲む?気分悪いなら、お手洗い行って吐いてくる?」

  心配そうに眉根を寄せ、覗き込むようにして顔色を確認するアヤの言葉に『それだ!』と思い追従するように頷いた。

  「あぁ、すまない。少し酔ったみたいだ・・暫く席を外して良いか?」

  「もちろん!お水は?」

  「いや、大丈夫だ。少ししたら戻る」

  「うん。けど、無理しないで。ゆっくりしてきたら良いよ」

  気遣う声に「あぁ。分かった」と言葉を返しながら平静を装い、股間の膨らみを気取られないよう気を付けて席を立った。

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