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【20】事実、カレーはめっちゃ優秀なんだぜ!!

  カレーを食べた友人は先日描き上げた私の原稿を読んで、鼻息荒く帰って行った。

  『萌を補充したから明日からの仕事もダイエットも頑張れるっ!砂おじのコスしたいからもうちょっと搾らないとなんだよね!オンリーまでに!』

  『売り子は任せな!』と言い残した無駄にカッコイイ背中は男気に溢れていた。

  おい。ダイエットなんて聞いてないぞ?カレーがっつり食べとったやないかい!

  あ奴め。急に来たと思ったら・・

  さては今回、製本まで待てずに私の原稿を読みに来たな?

  や、ファンでいてくれるのはめっちゃ嬉しいんだけど・・そんなに?

  言ってくれたらデータぐらい送ったよ?

  まぁ、わざわざ見に来るのは会いたかったって事なんだろうけど・・

  どんだけ私の事好きなんアイツ。

  私も好きだが?

  激細キャラのコスプレをするという親友に「無理して倒れんなよ~」と見送り、その後はアニメ観たりネサフしたりしてまったり過ごした。

  で、本日。

  アド君との約束まであと僅かとなったのでカレーを温め直している所でございます。

  トッピングの納豆は流石にハードルが高すぎるだろうと、代わりにチーズを用意しました。

  後は昨日も準備したから揚げとウインナー。

  福神漬けは・・一応別皿で添える予定。

  サラダと、汁物・・コンソメスープか味噌汁でも出そうかな?レトルトだけど。

  もうそろそろ来るだろうと思い、鏡のタオルをひょいと捲り上げる。

  と、向こう側では既に青年が椅子に座って待機しているではないか。

  「おわっ!びっくりした!」

  「・・何故驚く・・」

  「いや、もう居るとは思わなくて。来てるなら声掛けてくれても良かったのに」

  言いながら、青年の顔を見た頼子はその様子が昨日とは違う事に気が付いた。

  目に隈こそないものの、何と言うか・・疲れた、荒んだ雰囲気を感じる。

  「・・アド君どした?なんか疲れてる?」

  「・・・早朝から[[rb:迷宮 > ダンジョン]]に潜って来たからな。それでだろう」

  「へぇ。迷宮なんてのもあるんだねぇ。やっぱモンスターがうじゃうじゃ出て来る感じ?」

  「概ねそのような感じだ」

  「怪我は?大丈夫だった?」

  「あぁ。回復薬すら使わずに終えてきた」

  「おぉ。それは凄い事なのでは?アド君て強いんだねぇ」

  「・・そうでもない」

  腕を組んでいた青年は、ふいと視線を斜め下に逸らす。

  そしてやはり・・態度に違和感があった。

  何故そんなに居心地悪そうにしているのか・・

  『私、何かしたっけか?』

  思い当たる節は無いが・・

  内心で首を傾げつつ、会話を続ける。

  「・・回復薬って、魔法的なやつ?」

  「あぁ。損傷した肉体を魔力で補い変換、修復する魔術が組まれた液体だ」

  「おぉうファンタジー・・病気とかも治るん?」

  「いや、怪我だけだな。体を正常な状態に回復させる・・解毒も出来るが、病や生まれついての体質や奇形は回復薬では治らない」

  「ふうん・・あ。じゃあ寝不足や二日酔いは?」

  効くのなら凄いなと思い質問してみた。

  青年は虚を突かれたようで「は?」と驚きの声を上げる。

  「どうだろうか・・そのような事で使うなど聞いたことがないが・・効くのではないか?寝不足は見当がつかぬが、二日酔いは解毒と同じで酒精を抜くことが出来る、と思う」

  「恐らくだが」と小難しい顔で答える青年に「反動とか、リスクはあるのかな?」と更に突っ込んで訊ねる。

  「言ったろう、魔力で補うと。組み込まれた魔術式が正常であれば反動はない」

  「え・・スゴ・・魔法じゃん」

  「魔術は魔術式を組み上げた魔術陣で魔力を消費、現象を引き起こす。魔法とそう変わらん。何だ?回復薬、欲しいのか?」

  「ノーリスクってんなら、欲しいかな・・修羅場で役に立ちそうだし」

  「・・・分かった。幾つか融通しよう」

  「え?マジで?!」

  『本気か?』と頼子は青年をマジマジと見つめる。

  「あぁ、約束しよう」

  「やった!ありがと!」

  成り行きだけど『魔法のお薬ゲットだぜっ!』と拳を握る頼子。

  そのはしゃぐ姿を見て、青年はふっと目元を緩めた。

  「アヤ、すまないが今日は・・」

  「あ、ごめんね!?お昼直ぐに用意するよ!今日のは私作でっす!」

  「―?!アヤが?!」

  「料理を作ったのか?!」と驚く様子に逆にびっくりする頼子。

  「いや、簡単なヤツだけどね?こっちには料理するにも便利な物が沢山あるし、そんなに難しくないんよ」

  「そうなの、か?・・そう言えば複雑な香りがするが、これが?」

  「そだよ~「カレー」っていうんだ。具材は色々だけど、今日のは根菜と鶏肉を使った定番のやつ」

  「・・美味そうだ」

  「美味しいよ!こっちでは子どもから大人まで大人気なんだぜ♪」

  そこまで言って「ちょっとだけお待ちを~」と、頼子はキッチンに向かい準備を始めた。

  途中から青年の雰囲気が幾分、柔らかくなったのを感じて安心感から気分が上向く。

  楕円形の皿に炊飯器から米をよそい、空けたスペースにカレールーを注ぐ。

  その境目にトースターからから揚げと、フライパンから大き目のウインナーを二つずつ乗せた。

  冷蔵庫に入れて置いたサラダと、福神漬けを小皿に用意。

  お椀にレトルトの調味みそを入れ、フリーズドライの具を入れたら電気ケトルからお湯を注ぐ。

  軽く混ぜ、調味みそを溶かしたらそれらをランチトレイにセット。

  手前にキッチンペーパーを敷いて、先割れスプーンを置いたら準備は完了だ。

  「はいお待たせ~」とトレイを青年に向けて差し出す。

  「飲み物は冷たい「麦茶」ってのがあるけど、それで良い?」

  「ああ。ありがとう」

  トレイを受け取った青年は嬉し気に微笑んで礼を言った。

  何となく違和感を覚えるも、それが何かは分からないまま「はいよ~」と返事する。

  食器棚からタンブラー、冷蔵庫から麦茶パックを浸したピッチャーを取って鏡台に戻り、先にタンブラーを渡した。

  「はいどうぞ」と麦茶を注ぐ。

  「先食べてて良いよ?あ、カレーは熱いから気を付けてね?」

  「・・・・わかった。では先に頂くとしよう」

  青年が麦茶を一口飲んで先割れスプーンを手に取ったのを確認して、自分のカレーを準備した。

  青年よりご飯もルーも少なめ、でもから揚げとウインナーは同じく二個ずつ。

  ルーに調理用チーズを適当に散らして完成。

  タンブラーに麦茶を注いでピッチャーを仕舞ったら、自分も鏡の前の椅子に座って「いただきます」と手を合わせた。

  スプーンで軽くお米とルーを混ぜ、チーズを絡めてパクリ。

  「ん~!やっぱ一晩置いたカレーは美味しいなぁ!!」

  咀嚼して飲み込むと、つい感想が口を衝いて出た。

  青年はというと、無言でスプーンを皿と口とで往復させ、がふがふとカレーを頬張っている。

  「ははっ!美味しい?気に入ってくれたんなら嬉しいな」

  もぐもぐっ!と口を動かしながら、青年は目をキラキラさせて頷いた。

  そのまま飲み込むと、麦茶を呷り勢いよく話し出す。

  「―っは!アヤ!この「かれー」とやら、見た目に反して凄く美味いぞ!?アヤは料理の天才か?!」

  「や~。そこまで手放しで褒められると照れちゃうな~」

  「まぁ実際、カレールーが優秀なんだよね」と言ってスプーンでウインナーをカットしてルーと一緒に口に運ぶ。

  「その「るー」とは?」

  「ん?見て見る?ちょっと待ってね」

  興味を引かれたらしい青年の為に、冷凍室に保存してある余りのルーを持ってきて渡してやる。

  受け取った青年は冷蔵用のビニール袋に入った箱を見て「開けても?」と聞いてきた。

  カレーを食べながら頷き了承する。

  「この中にある・・茶色の塊が「るー」か?何で出来てるんだ?」

  「ん。確か箱に書いてあったと思う。貸してみ?」

  青年から箱だけを受け取り「えーと」と原材料を読み上げた。

  「・・とまぁ、色々入ってるね」

  「・・・呪文か?」

  「まぁ、簡単に言うと、小麦粉と油脂とスパイスを混ぜ固めた物だね。カレーは味付けほぼこれだけだから」

  「味付け・・と、いう事は・・この「るー」があればいつでも、どこでもこの味が食べられるのか?!」

  驚きに目を見開く青年に『期待通りの反応だなぁ』と思いながら頷く。

  「そ。野外料理の定番だしね。自然に囲まれた中で食べるカレーもまた美味いんだなぁこれが」

  「・・これは凄い・・凄い事だぞアヤ!!」

  「ね!企業努力に感謝!」

  「素晴らしい・・」と言いながら、ルーにじっと視線を注ぐ青年。

  見れば、彼の手元の皿は空になっていた。

  「え、もう食べ終わったん?お代わりいる?」

  「いるっ!!」

  ばっ!と顔を上げて、間髪入れずに返事をした青年を微笑ましく思いながら、会話を続ける。

  「了解。あ、もうお肉は無いんだけど、代わりにチーズ入れる?ちょっと味がまろやかになって、これはこれで美味しいよ?」

  「ではそれで頼む!」

  「はいはーい。じゃ、お皿くださいな」

  「あぁ!」

  差し出された皿を受け取って台所へ向かう。

  背中越しに「量はどうする?減らす?」と訊けば「同じくらいで!」と返って来た。

  それに「はいよー」と返事して、お米とルーをよそい、チーズを散らして鏡台へと戻る。

  「はい。お待たせ」

  「ありがとう!!」

  嬉しそうに皿を受け取った青年に笑い返しながら「どういたしまして!」と返す。

  「どんどん食べてね!その赤い「福神漬け」も一緒に食べると、また味が変わって美味しいよ?」

  「そうなのか?・・・うん!これも美味いな!」

  「ね?合うよね~!昨日来た友だちもそれ好きでさ!」

  「私も結構好き!」と続けて、食事を再開する。

  カレーを口に運んで、次はから揚げ。

  飲み込んだら、スパイスに染まった舌をタンブラーを傾けてリセット。

  またスプーンでカレーを掬い、口に運ぼうとしたところで・・

  青年の様子がおかしい事に気が付いた。

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