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白綱街道、、、、鳴き浜への細道の入口にて、、、、
相見えるのは、、数百五十の破落戸共と、、、昇月の益荒男達
...いや女性も、、あ、今回は居ないのか、、、でも益荒男じゃない男もね、、、
「はて、、、どないしましょかねぇ、、、
あんなん雑魚相手に貴重な弾丸(たま)使うのも勿体無いし....」
そう岩の上で腹ばいで呟くのは、茶毛に覆われた丸々とした体の犬獣人、、黒田孝之助
その両手で構えるのは、、、一見すれば、只の火縄銃にしか、、、
だが、、撃鉄の辺りを見ればその違いは明らかに、、、、
"ぼるとあくしょん"の薬室に弾倉を備え、
当然、弾丸は前込め式の筈が無く、、、、薬莢式の長形弾丸
銃身に"らいふりんぐ"が刻んであるという、、どう考えても数十年、、いや百年先の代物、、
"咲月工房"謹製....十三年式昇月銃..."帝月"
有効射程:百六十丈(四百八十めーとる)
出処不明の技術情報を提供したのは孝之助だが、、、、形にしたのは紛れも無く五百枝咲月
の天賦の才、、、、、
そして此処は火山島、、、火薬の生成に不可欠な硫黄が存分に供給され、
え、、硝石?....うーん、、、まあ、此処は身元不明の遺体が多いみたいだから、、
後は、鉄斎先生か、、、、"一向衆"の人にでも聞いてみると色々勉強になると思いますよ(汗
だが、、、そんな困難を乗り切って作製されたとしても、、、最大の問題が、、、
此れは湯水の如く弾丸と薬莢と装填用火薬が生産されて、初めて戦力となる代物、、、
そんな物に、あの二人、、、五百枝咲月と獅子堂鉄斎の時間を此れ以上割く訳にもいかず、、
かくして、、、偉大な二人には、遠く及ばずとも、、その技の一端を学んだ宗吉に
作製した"空薬莢"五十に弾と火薬を装填し直すという地味な作業が押し付けられる事となった
孝之助が怠けてくれれば、そんな手間のかかる作業が減るというのに、、、
「何言ってるんすか!
ここ迄来て"面倒くさい"とか無しっすよ、、、もう、、」
生真面目な、、、多感なお年頃の十八歳童貞の虎獣人、宗吉が下から少々苛立った様子で
「判ってまんがな.....ほな、、始めまひょか」
飄々とした口調で、、、、別に口調が変わったわけではない...だが、、
いつも惣流文伍に男色艶物(びぃえる)の版権を任せてくれと頼み込んでは煙にまかれてしまう
面白可笑しい姿とは少し違う、、、岩の上で腹ばいになって構えたまま目を細め・・・・・・
破落戸共の中に紛れた、、、、天壊の手練の者が突如雷に打たれたかの様にビクリと
大きく体を揺らすと、、、そのままばたりと倒れ、、、少し遅れて銃声が...
下手な構え方をしていれば、鎖骨を骨折しかねない衝撃を銃床より肩で然と受け止め、なんで
もないという様子で淡々と横に置いてた遠眼鏡にて着弾を確認すると
「先ず一人でんな、、、」
握りを引いて煙を引く空薬莢を排出し、次弾を薬室へ送り込む、、、
その下で空薬莢を回収するのも宗吉の重要な役目である、、空薬莢といえど、此処では貴重品
....決して第二次大戦時の何処ぞの軍の様な貧乏臭い真似をなどと突っ込んではいけない
そうして岩の上の茶色い毛玉が次の狙いを定め・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
次に倒れたのも、、天壊の監視役、、、急に周囲の空気が浮き足立ち始める、、、
"将校狙い"、、、○ト○ム戦争以降、将校が己の身分が判る物(階級章等)を隠す様になったと
言われる戦術、、、相手の指揮系統のみを執拗に狙い、組織的な行動を困難にさせる狙撃、、
銃にこだわったのは、、、銃声を"鬨の声"と成させる事
常に"狙っている"のだと将官級に意識させる事、、、、ジワジワと意識させ、、、、
なんでもない音にさえ反応させて消耗させる事、、、、
だから、最初に何人か当ててしまえば、後は味方への誤射に気をつけるのみ、、、後は、
「そろそろ、、次の所へ行きましょか」
手早く岩の上を片付けて、宗吉を促す....今居る場所を悟られない様にと、、、
予め確かめておいた獣道へ歩を進める
「あ、はいはい、、」
と地面に下ろしていた道具箱を再び背負うと、後に続く
二人で歩きながら宗吉が、しみじみと
「でも、、なんつうか、、意外だよな、、」
振り返らずに、そそくさと歩を進めながら
「何が?」
「だって、、孝さん、こういう事やらない人だと思っていたから...」
「.....がっかりしましたんか?」
皮肉交じりの問いかけに
「いや、そういうんじゃなくて、、、、
こう、、、傍観者の立場を貫くのかと思っていたから、、、
ほら、こないだ見せてもらった"石"の事もあるからさ....」
石とは『分家の石』の事、、"そろそろいいか"と思い閲覧させたのだ、、
...まあ、あれを観たばかりやと、、そんな"記録"ばっかりしとる連中と思われてもしゃあ
ないかな、、、
そんな思いに肩をすくませ、しかし飄々と
「まあ、うちも不義理なモンやからね、、、ほんまに他人事やったら、ぼーっと記録だけしと
るんやけど、今度のは、、、うちの問題でもあるしね」
「へ? どういう事?」
素っ頓狂な声を上げて聞き返してくるのを
「うちが此処に来た経緯、、聞いとるやろ、、、、
下手打って、、天壊に睨まれ追っかけられて、、、海に落ちて、、、此処に流れ着いて、、
藤兵衛はんの話やと、うちは海に落ちて死んだ事になっとるそうや」
「でも、それなら、、、どうにかあっち(本土)に帰れれば、、後はどうでも...」
まだ納得行かない様子で食い下がる宗吉に
「そう簡単にはイカンやろねぇ、、、
なんせ此処の事、色々知ってもうたし、、
良くて天壊側に抱き込まれるか、、、
また、いろんな理由こさえられて此処に戻されるか、、、
一番有りそうなんは、、、うちが本当に事故死する事やろね」
歩を緩め並んで歩き始めると、鉄砲を抱えてない側、、左手で頭を掻きつつ頭を振って答える
「せやからうちとしても、、諸々考えると....天壊に居られたままやと困るんよ、、
ま、うちが加勢してもしなくても大勢に影響あらへやろうけど、、うちにも関係ある事を
藤兵衛はん達に解決を御願いするだけちゅうのは、虫が良すぎる気ぃしてね、、、、
納得した?」
「うーん、、、
ひょっとして、、、此処に来た最初の目的って、、、藤兵衛さん達がこうする事予想して
それを記録する為に此処へ来たんじゃ?」
悪戯っぽい笑みを浮かべて問いかけてくる若虎に
「やっぱり、ばれた?
そう、、最初は物見遊山のつもりで来たんやけど、、、、、事が始まる前に色々知りたい事
あったんで調べとったら....どうも庭番衆と勘違いされたみたいでねぇ、、、」
ぷぷっと吹き出す若虎に、
「今度はホンマに呆れた?」
ちょっと不安な顔に対して
「いや、、なんか、孝さんらしいなぁ~って、、」
ニッコリ笑う若虎に、茶色の毛玉が
「なんや、、その"らしい"ちゅうのは、、、」
少し不満気に頬を膨らます様は、どちらが年上なのかと、、
「ごめん、、
でも、、、それで今、こうやって話をする事が出来る訳だし...」
しみじみと返され、
「ま、、そやね、、、」
「でも、、、その、、
やっぱり、、想像出来なかったな、、、、銃を構える孝さんって、、」
「此れが初めてではないんよ....そうやね、、
次の所行く間、、うちの昔話聞いてくれる?、、、あんま面白い話やないけど、、、」
「うちが、、、二番目に殺めた奴の話.....」
[newpage]
「そうやね、、十年前までいかんかな、、、
うちはちょっと用事を言い遣って、西域へ行ってたんや、、、
あっちは広いからねぇ、、、商隊(キャラバン)での移動であっちこっち回って、、だんだん
隊の連中の事を家族みたいに感じてきて、、、そんな時に新入りが入って来たんよ」
遠くを見る様に、昔を思い出しながらポツリポツリと語り始める
「歳は十六くらいやろか、、、小柄な白犬の愛想の無い奴でなぁ...
うちが世話任されたんやけど、まあ、、一々楯突く、何かと一人でやろうとして失敗する、
もお、、何度も放り投げそうになったんやけど、、うちもなんか意地になってきて...
とうとうあっちが根負けして徐々に言う事聞くようになって、、、そっからは皆と打ち解け
んのも早かったんよ....」
いつもと違い、しみじみと語る茶毛の太犬に
「孝さん....その、話したくなければ、、、、」
「いや、うちが聞いて欲しいんねん、、
その、、迷惑や無かったらやけど、、」
若虎へニィと笑いかけるその顔には何処か寂しさが漂っており、、
「別に迷惑なんて、、」
「あんがと、、
それで、、、その新入りなんやけど、、皆と打ち解けて、仕事も出来るようになって、、、
只、、ある頃、、ちょうど大きな商都に近づいた頃から、妙にそわそわし始めて、、
そう思ったのはうちだけみたいで、だから、、気の所為なんかなぁ~って、、」
「それで、、、?」
「結局、うちの勘が当たっとったんよ、、、、
うちらの隊、随分前からその都で極秘の商談が決まっとってね、、、、何処にも漏れてない
筈やったんやけど....商都を出て直ぐに賊に襲われてな、、、勿論護衛は居たんやけど
真っ先に片付けられてもうて、、、その後は一方的に殺されていって、、
うちもやられたんやけど、まあ、、、どうにか死ぬほどの怪我じゃないまま死体のフリして
様子伺とったら、、物陰から出て来たのが、あの新入りで....」
間が空いて、、、問いただしげな若虎の視線を受け
「新入りが手引きしたんや、、、初めっからその目的で隊に入って来たんよ
それで、賊の連中と一緒に目的の物と金目のモン全部掻っ攫ってどっかに行ってもうて、」
「孝さんは、、、その後、どうしたの?」
「運良く、別の商隊に拾われて、、商都に戻って、、、後は西域の"親戚"頼って、、
そん頃から、銃の稽古をかなり必死にやっとったなぁ~」
「それは、、復讐の為?」
恐る恐る聞いてくる若虎に、溜息吐きながら
「いんや、、復讐なんて果たせないモンが殆どなのは知っとったからね、、"石"の記録で..
相手も見つけられんまま、一生を終えてまう話ばっかりよ....
それよか、あん時なんも出来んかったのが何となくやね、、
西域に来た用事が済んだ後も、別の商隊で西域まわっとたんやけど、、」
不意に太犬が、、、暗い笑みを浮かべ
「皮肉なもんやね、、そしたらアイツから現れたんや...うちが居る隊への新入りとして」
若虎が驚いた様子で
「え、、その、、、相手は、、孝さんに気が付かなかったの....?」
「二年後位の話やから、、お互い色々変わっとったし、、、
アイツは名前も身分も違う触れ込みで、、最初から人当たりの良い感じで、、、
うちも、、あん時は割と内気やったんやけど、、
あの後、なんか、、、一人で落ち込んだりしてるのが癪やから、努めて明るくしとったら、
どうもそれが板についてきて、、"地"になったんかな、、、
名前も使い分けしとって、別の名前やったしね、、、
うちかて、最初は他人の空似思うたくらいやし、、、」
「それじゃ、どうして、、、?」
「どうしても腑に落ちんかったんで"親戚"に、アイツをうちの隊に紹介した斡旋所を調べて
もろうたら、、、まあ"ホコリ"が出る出る
結局、結構大掛かりな話になって、、、、結局、証拠抑える為の偽の商談でっち上げる事に
なって.....」
興味深そうに
「それで?」
何だか昔の自慢話をしている様で、少し恥ずかしそうに頬を掻きながら前を向いたまま
「まあ、本当に上手い事引っ掛かってくれて、、まあ、賊として襲ってくる連中なんて下っ端
ばかりやから、、少々撃ちあった程度で、直ぐに向こうは白旗上げて、、、、
アイツも取り押さえられとったし、、、捕物が無事に終わったって皆安心しとったら
物陰から一人、、物凄い勢いで飛び出して斬り込んで来てな、、
考える間もあらへん、、、咄嗟に撃ち殺してたんよ....」
再び顔が曇る
「何者だったんか確かめよう思うて、顔を覆っていた布を取り払ったら
少し幼い感じの白犬の顔が現れて、、、なんか見た事ある顔やなって思ってたら、、
そしたらアイツ、、急に叫びだして、、、"殺してやる!!弟を殺りやがって!"って」
「それって、、、」
「孤児の兄弟やて....盗賊に育てられたんだと、、、
多分、アイツを助ける為に必死で斬りかかってきたんやろね....
うちが最初に居た隊で手引きしたのが、アイツの初仕事やったそうや
その後も同じ様な事彼方此方でやっとったみたいやね....」
沈黙する若虎を横目で見、歩を進めながら再び語り始める
「あんまり、自分の事ばかり言うもんやから、、こっちも頭にきて、、
"うちの事なんて覚えてないやろけどな、こっちもお前に隊の仲間殺されてるんや!"って
言い返したら、、、、アイツ、なんて言ったと思う...?」
「・・・・・・」
「急に思い出して、、、
"畜生!!お前だったのか!!見逃してやるんじゃなかった!!"って、、、
あん時......アイツ、うちが死んだフリしとったの、知ってたんよ」
「・・・・・・」
「こっちが何も言い返せなくなった後も、ずっと罵倒し続けてな
終いに、、ニィって嗤って、、、"次は必ず殺す"て、、、
次が無い事なんて判っているのに....間違いなく首斬られるのにな、、」
長く続く沈黙に
「それで、、、、、」
「何やか、、うちがお終いにさせなアカン気がして、、、
周りが止める間に....アイツの顔に三発撃ち込んだんよ、、此れで」
腰に差した連発銃(りぼるばー)を手で指す
「本当は咎めを受けにゃならんのやけど、、、色々事情が複雑やったんで有耶無耶になって
その件はそれで終わりや、、、
只、、あの捕物、、どうにも他の誰か偉いさんの不興を買ったんやろな、、
しばらくの間、刺客みたいなの相手にせにゃならん事が続いて、、
何人か殺めとるんやけど、、、そいつらの顔を思い出そうとすると、、、どうしてもアイツ
の顔しか思い浮かばんのよ....」
「孝さん、、、ごめん、、変な事聞いて、、、」
「うちが勝手に話した事や、、、その、、うちはこんな奴やさかい、嫌やったらこれ以上は
付き合わんでもええんよ」
若虎が静かに首を振ると、、
「いや、、、聞いた以上は最後まで付き合うよ」
太犬がほんの少しだけ、、表情を緩めて、、
「さよか、、、なら、早う終わらせんとね」
[newpage]
茂みを抜け、ちょうど白綱街道を一望出来る場所に出ると
「さて、、、、」
腹ばいになり、遠眼鏡で様子を伺い、的を絞る
見れば、明らかに他の破落戸共と違う、、見事な槍を振るう熊と見間違えそうな大狸の姿が
「あれにしよか、、、」
狙いを定めると・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
箏雪が槍を奮って、足を上げた刹那、、、足元の土が跳ね上がると同時に銃声が聞こえてきた
「な!」
本能的に危険を察知して、更に咄嗟に横へ大きく跳躍すると、、、、
先程よりも更に奥、、、恐らくは箏雪の胴を貫通する軌道で弾が着弾して土を跳ね上げる光景
が目に焼き付く
...鉄砲!? しかし、、、近場には狙えるような場所なんて、、、、
飛んできたであろう方向を推測して目を向けるが、そこには百丈(300メートル)以上まで
何もない開けた場所があるのみ、、、勘違いかと別の方角を探そうとした時、、その先の茂み
でキラリと何か光ったのを見逃さなかった
...遠眼鏡、、、まさか、本当にあの距離から!?
追うかどうか逡巡する、、
...此処であの鉄砲を撃ってきた奴を追いかけたら、、運良く捕まえる事が出来れば良し、
手ぶらで帰れば、、、、此処(戦場)を放棄したと見なされかねない、、、
く、、と唇を噛み締めて、、
...どうしたら良い?、、、あのまま放って置いたら、次に狙われた時、、、、
あれで命を落とす様な事になったら、何の為に幕命に従っているのか、、、
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