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・気怠げ系イケメンの秘密の趣味、美少女着ぐるみ 高飛車幼馴染との恋路
・着ぐるみショーのバイト中のカップル
・代役
ヒロキは隣のアパートの住人だ。親が亡くなって色々と困っているだろうと思うけれど、今ひとつ何を考えているか分からない。
私はと言えば、彼のアパートの大家の娘だ。
隣同士で同じ日に産まれたから、もうその頃からの付き合いになる。
腐れ縁だ。
親はアイツの母親のことをよく思っていた事もあって、「ヒロキくんに優しくしなさい」と言われていた。
そんな事を言われると、逆に何をしてやればいいのか分からない。
アイツはガキの頃から何考えているか分からない無愛想なクソガキだったが、大きくなって目鼻立ちが整うようになっても、イマイチつかみ所のない奴なのだ。
それでも親の言いつけだし、毎日の挨拶は欠かさない。
小中高と一緒で、大学まで同じになるとは思っていなかった。
両親の遺産と奨学金、あとバイトでどうにかしていると言うけど、ナンのバイトをしているか一向に教えてくれない。
ここ最近、アイツが忙しそうだ。
授業にはちゃんと出てきているけど、割とギリギリだし、空きコマを見つければさっとどっかに消えてしまう。
怪しいったらありゃしない。
そんなわけで「最近忙しそうじゃない。ちゃんと寝てるの? まぁ精々バイトを頑張りなさい」と言ってやったのだ。
すると、「ちょっと悪い。手伝えるか?」と、いつにない反応。
「な、何よ? 怪しい仕事だったら縁を切るからね!」
「怪しくねぇよ」
その日はそのあと授業がないので、彼に付き合って都心からちょっと離れた事務所に引っ張られていった。
「この前、会社の車が事故って、今、動ける人間が少ないんだよ」
そう言われて連れて来られたのは、着ぐるみショーのチームだった。それも魔法少女の着ぐるみである。
他のチームから融通して貰っているそうだが、それも限界で、一人でも多くの人員が欲しいのだという。
「へー、アンタ、こういうのが趣味なの?」
私が突いてやると「そうだけど、悪いかよ?」と居直られる。
少しは照れると思っていたから、この無愛想というか、やや怒りの籠もった返事にはたじろいだ。
「そういうのじゃなくって……」
と言ったけど、アイツはちょっと苛立っていた。
チームリーダーは、「何か運動とかした事ある?」と言うので、モダンダンスと体操を囓ったくらいだと答えると「即戦力じゃないか」と大喜びだった。
「それじゃぁ、すぐにレッスンだ。ヒロキくんよろしく」
私はやるともナンとも言っていないのに、勝手に引き込まれてしまった。
先ずはビデオを見せられる。
二人の魔法少女が舞台に現われて小芝居をして、そして怪人が現われて軽く戦い負ける。そして対策を考える小芝居をして、そして怪人と対決して勝つと言うシナリオだ。
「やれそう?」
リーダーが訪ねると、「え、どれ?」となる。
「勿論、魔法少女だよ」
そう言われて、「え、アイツも?」と言うと、「君がブルーで、ヒロキくんがピンクだね」とリーダーは微笑んだ。
ヒロキが魔法少女だなんて! ちょっと面白い事を知ってしまった気になった。
だが、自分もそれを着なければならない。
もしここで自分が無様な姿を見せたら嫌だなと思った。
「もう一度見せてくれる?」
私は人が思うよりも馬鹿じゃない。ビデオを三度も見れば大体の動きは理解できる――そのつもりだった。
ジャージを貸してくれたので、それに着替えて演技の練習を開始する。
「じゃぁ、音声流すから流しでやってみて」
先ずは小芝居だ。自分で思ったよりも動きが硬いなと思った。
恥ずかしさが先に立ってしまう。
しかも目の前でヒロキが仏頂面なのに可愛いポーズを決めているのを見ると、余計に頭に血が上る。
舞台の主人公は女子中学生だ。だから、女子中学生らしいきゃぴきゃぴした動きが求められる。
自分でもダメだなと思いつつ、通しなのでそのまま流されていく。
アクションシーンは怪人役の動きを見ていれば何となくどうすれば分かった――と言うか、完全に怪人のアシストで動いている。
これも反省点だなと思った。
そして、再び小芝居に入ると、さっきよりももっと真剣にやろうと思いきった動きをしてみる。
ああ、大袈裟すぎたかしら?
そして最後のアクションシーンだ。
激しい動きの連続で、ついていくのがやっとだった。
ああ、もどかしい!
一通りの動きが終了したら息は絶え絶えと言う状況だ。
リーダーは、思ったより動けているねと褒めてくれた。
まぁ、ここで私がやる気をなくして逃げられると困るからだろう。
さっきの動きをビデオで確認する。
一つ一つだめ出しをされながらも、まぁ初めてにしては凄いよと言うのだ。
自分の動きのいい加減さに恥ずかしくなりながら、アイツの動きは完璧だった。
演技も可愛らしく、アクションにも優雅さがあった。
くそ、こんなんじゃ、アイツを笑えない。
いつの間にか私は真剣にこの仕事に取り組むことになっていた。
学校が終わったらレッスンに行き、そして寸暇を見つけては、アイツと練習を繰り返した。
そう言えば、お面をつけた状態で練習していないな……と言うと、事故の時に壊れてしまったらしく、次の仕事になんとか間に合うと言う。
相当に大きな事故だったのだなと思うと、その場にいたヒロキが無事で、しかもそんなことをおくびにも出さなかったのが驚かれる。
「アンタ、少しは言ってくれたって良かったでしょ!」
私が怒ると、「お前には関係ない」と突っぱねた。
「関係あるでしょ!」
私が益々ヒートアップすると、リーダーが「仲がいいね」と笑うのだ。
恥ずかしいったらありゃしない。
そして仕事の日がやって来た。
先ず肌色のタイツを着る。上下セパレートになっていて、下着の状態でそれを着る。
ヒロキと同じテントで着替えるけど、流石に仕切りのブルーシートがある。
それから割とピッチリしているエナメルの衣装を着付ける。光沢があってアニメみたいに輝いていた。
お面はやや大袈裟な造形に思えたが、人間が被る事を考えたら丁度良いデフォルメなのだろう。
頭の後ろで紐を縛り、持ち上げた髪の毛を下げれば私は魔法少女のブルーになっていた。しっかり者ではっきりした性格の子だという。
着替えが終わって仕切りを外すと、ピンクの方もできていた。
「これがヒロキ?」
思わず口走ったが、ピンクは可愛げのある動きで口に人差し指を当てた。
ああ、着ぐるみは黙っていなくちゃいけないか。
姿見を見ながら動きをチェックする。
もう大丈夫と言う気持ちになったところでピンクに向き合う。
ピンクは私の手を握り、しっかりと頷いて見せた。
私の中で、ピンクの声で「大丈夫だよ」と言われた気がした。
時間になって舞台に立つ。
子供たちがいっぱいいて声援が上がる。
ピンクもブルーも人気だ。
私はキャラクターに合わせて上品に手を振り、ピンクは元気いっぱいに手を振っている。
可愛い――至近距離で見るピンクが可愛い!
それから演技が始まった。
もう頭の中は演じるモードに入っていく。何度も何度も繰り返した事だ。間違えないこと、きちんとやる事を第一に考える。
格闘も小芝居も可愛さを忘れずに、でもやることはきちんとやる。
要求水準が高い。
子供だましだと馬鹿にはしてられない。皆真剣だ。
舞台はあっという間に終わった。
怪人に勝ってはしゃぐピンクを目の前に、私も胸から湧き上がる気持ちが言葉にできない。
私も彼女に合わせてはしゃぎ、そして子供たちに手を振って退場する。
退場した瞬間に息が荒くなるのを感じた。酸欠だ。ヤバイ、酸欠だ。
汗だくのお面を外し、酸素ボンベを吸う。
「すぐに握手会だよ」
リーダーが急かす。
司会のお姉さんが魔法少女再登場を告げる。
私は酸素もほどほどに再び面を被り表に出る。
ああ、この瞬間私は魔法少女だ。
輝くピンクの衣装を見ながら、そして子供たちの笑顔に見守られながら舞台の前に立つ。
色紙を買った子供が次々にやって来るけど、常に一言二言声が掛かる。私はそれを真剣に聞きながら頷きそして握手をする。
ピンクと一緒に撮影も頼まれる。
遠のく意識の中、最後までブルーに徹した積もりだ。
列がハケてテントに戻ったときには酸欠で死にそうになっていた。
スポットクーラーの冷気を浴びつつ息を整えた。
ヒロキはいつの間にか着替えていた。
「お疲れ」
「あんたもよくやるわよ」
お互いをたたえ合い、そして午後に備える。
一日二回のショーをやる体力が残っているだろうか?
そんなことを思いつつ、夏の暑い日は終わらない。
午後のショーが始まった。
ピンクは相変わらず可愛かった。
ああ、ピンクが可愛いと言うのに支配されてしまう。
実際、このアニメ、ブルーがピンクのことを密かに思ってたりすると言う。
登場の時の高揚感は、一度目の緊張を差し引いた分大きかった。
それ以上にピンクの姿をよく見る事が出来たのが大きい。
アクションも小芝居も終わり、勝ったポーズで私は思いきって抱きついてしまった。
ピンクもぎゅっと抱きしめてくれた。
何かしらない脳内物質がドバッと分泌された気がした。
握手会でもピンクは可愛くて、そして私は写真撮影の時にピンクの腰に手を回したり、手を握ったりしていた。
ああ、役得だ。
私の過度なピンクへの接触は得に咎められなかったけど、ブルーはピンクのことが本当に好きなんだねと、にこやかに言われて赤面した。
何処となく、ヒロキに近付いた気がした一日だった。
アイツと一緒に変える道中、言葉は少なげだった。
「結構上手くいったじゃん」
私が高揚して言うと「うん、そうだな」とぶっきらぼうに答えた。
「ピ、ピンクも……その動きがよくって……」
私がなんとか褒めようとすると「お前もしっかり動けてたぞ」と笑った。
「そうでしょう!?」
得意気になってみたものの、私の脳裏に浮かぶのはあの可愛いピンクだった。
私は急いで二つのモノを検索していた。
先ず、ピンクとブルーのお面。
次に衣装である。
衣装は簡単に見つかった。人気の衣装なので割と量産されているみたいだ。通販ですぐにやってくる。
タイツも規定サイズなら割とすぐに送ってくれるらしい。
よし、あとはお面だ。
実はこれも個人工房の作ったものの写真がセットで出てきたのだ。
工房主の希望で別々の納品はしたくないらしい。
写真を見る限り、かなり出来の良いものだった。ショーに使っていたモノは舞台向けに大味な表情だったが、こちらは繊細な表情をしていて、何というか少し色っぽかった。
私は貯金とか一切合切を投じる気で工房に問い合わせた。
そして今までにない情熱を込めた文章をしたためたのだ。
それは、自分がショーを体験してピンクの可愛さに目覚めてしまったと言う事だった。
今読み返すとかなりキモイ文章だ。
だが、工房は私の気持ちを汲み取ってくれた。
勿論、お金はお金で結構したけれど、私のこの止まらない気持ちに比べたらどうでも良かったのだ。
何だかんだでモノはすぐに揃った。
その間にもショーの仕事は入っていく。
週に二日、合計四回のショーをこなす事もあった。
疲れる。だかピンクが目の前にいて幸せ。
その狭間で、私は徐々にキモイオタクになっていったのだ。
気が付けば、ピンクの情報ばかり拾っていた。
可愛いイラストから――エッチなイラストまで。
私は着ぐるみを揃えたのは、純粋に目の前でピンクを見たいと言う事だけだった。
でも、でも、こういう世界に触れてしまうと、もっと、もっとと言う気持ちが止まらない。
久し振りに仕事のない週末、アイツに「今日、親いないんだけど」と言ってしまった。
「あ、違う、そういうのじゃない! あの、練習とか、そう練習したいから!」
早口で捲し立てる私にヒロキは「しょうがねぇな」と面倒くさそうに答えたのだ。
取り敢えず部屋に上げるミッションは達成した。
あとは衣装を着せて、面を被らせるだけだ。
「あ、あのさ、お面被ったとき、カメラ目線って難しくない?」と適当な話題を振ってみた。
アイツは懇切丁寧に「スタッフから指示があるから、それで合わせて、次回から同じ方向見るようにすればいいよ」と教えてくれる。
「でさ……ちょっと実践してくれない?」
遂に言ってしまった。
「実践って、面はないだろ」
「それがあるんだ……」
ああ、もう雪崩のように言葉が溢れてしまう。
「あるって、お前!」
「違う! 普通に個人で作ってる人から買ったの!」
さっきから早口ばかりだ。
彼から逃げるように私は面を取りに行った。
落ち着け、落ち着け、お面を被らせるだけだ。お面を被っただけならまだヒロキ!
変な気合いを入れて部屋に戻る。
彼は大人しく待っていた。
そしてこっちを見ると、「凄いな……」と言葉少なげだった。
「俺が着るならお前も着ろよ」
彼は私に着る事を要求した。
「え?」
私は尋ね返してしまった。
「一人でピンクになるのはちょっと恥ずかしい」
彼は相変わらずのぶっきらぼうな返事をした。
それって! それって!
頭の中がピンク色に染まっていくのが分かる。
私は彼に衣装とお面を渡し、私は私の分を持って隣の部屋に逃げた。
落ち着け! 落ち着けって! 自分に言い聞かせながら、そして相当に急ぎながら衣装を着付けた。
違う、ヒロキが着替え終わらないとダメだろう!
私はお面まで被った状態で、部屋をうろちょろした――まるで盛りの付いた熊だ。
頭の中に出てくるのはピンクのことばかりだ。
ああ、ダメだ、ダメだ。変な妄想しか出てこない!
私が一人で悶絶していると、部屋の扉を叩く音がした。
扉を開けると、目の前には太陽のように明るい笑顔のピンクがいた。
「可愛い、可愛い、可愛い、可愛い、可愛い、可愛い、可愛い、可愛い、可愛い、可愛い、可愛い、可愛い、可愛い、可愛い、可愛い!」
着ぐるみを着ると声を出さない習慣が成立していたから、私の頭の中でその言葉だけがグルグルしていた。
私――ブルーはピンクの胸に飛び込み、そして抱きしめ、それからはもう動けなくなった。
ブルーは暴走していた。
そのまま身体を弄っていた。
胸、脇、首筋――そして股間まで。
ピンクの股間が徐々に硬くなってくるのが分かった。
情熱的なアプローチは、ピンクの手を掴んで、胸だの股間だのを触らせるにまで至る。
ああ、ヤバイ。
このままだと一線を越えそうだ!
ブルーの意志と私の意志が衝突していた――それは斜め進行方向側同士なのだけど。
ブルーはピンクをソファに押し倒し、その上にのし掛かり、股間を摺り合わせるようにしていた。
二人して呼吸が荒くなるのが分かる。
お面の隙間から呼気がフーフーと吹き抜ける。
二人して興奮しているのが分かる。
腰を振りながら私は遂に絶頂した。
声は出さなかった。でも身体の震えが止まらない。
ピンクはそんなブルーを抱きしめた。
事が終わり、面を脱ぎ、衣装も脱いだ。
「ヒ、ヒロキ……ごめん……」
「いや、俺こそ……なんかごめん」
「で、でも……ピンク可愛いから……」
「お前こそ……ブルー可愛いだろ」
二人のためのブルーとピンクは、それから何度も"二人"の前に現われた。
私もヒロキも頭の中でキャラクターが遊離していた。
それはとても幸せな気分にさせてくれるのだ。
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