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ワオーン
狼の遠吠えが聞こえた
白い狼たちはオルフィーを守るために命をかけ魔物を封印しようとしていた。だが次々と狼たちは倒れていく。
オルフィーの地を守る伝説の白い狼、その最後の雌の狼が息絶えた。
そばにはまだ目も開いていない産まれたての子狼。メスの白い狼はケガを負いながら最後の力を振り絞り命がけで我が子を産み落とした。
母狼の亡骸は少しばかりの初乳を赤子に与えたが、すぐにそれも出なくなり、身体は冷えていく。亡骸では小さな身体に温もりは与えられない。体温調節もできず産まれたばかりの赤ん坊もこのままでは死んでしまう。
その時、一頭の雌狼がその子狼を舐めた。
「くうぅん」
オルフィーには白い狼以外の普通の狼も群れを成していた。白い狼と狼は互いを認めていたが一線を引いていてふれあうことはなかった
だが傷を負った白い狼、しかも子を宿した雌を他の雌狼達は見捨てる事はできず子供が生まれるまで餌を運び最期を見届けた。
子を成したことがない年若い雌狼がその子を舐め横になると赤ん坊がすぐに乳に吸い付く。
不思議な事に乳が溢れ、子狼の腹を満たした。
その若い狼は白い狼の子の母になった
周りの狼達もそれを認め狼の群れに白い狼の子供は加わった。
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まだ産まれて三月程の子犬のような子供狼は誰に教わったわけでもないのに白い狼の使命を幼いながらに受け継ぎオルフィーに害を与える魔物を退治しようと戦いを挑む。
「何だ貴様らは、八つ裂きにしてやる!」
「ギャァアンッ!!」
だが反対に返り討ちに遭い大怪我を負う。
「キュゥ……ゼェ、ゼェ……。ヒィィ……」
「ハッハッハッ……。アオン!」
狼は我が子を助けたい一心で人間に助けを求める
「なんだおまえ? どうしたんだ」
「クゥン……」
目の前に咥えていた白い狼の子を下ろして
「おおっ、可哀想にこんな小さな子がケガをして、
痛いだろう辛いだろう」
小太りの人間は白い狼にそっと触れると街の中心に向かって大きな声を上げる
「頼む! 白い狼の子が大怪我を負っている。かなり熱もあるみたいだ」
何人かがぞろぞろと現れるのを見ると狼はその場を去っていく。
母狼が去っていくので熱とケガで動けないはずなのに子狼は追いかけようと暴れるが押さえつけられそのまま納屋へと運ばれた。
「ギャウ!! グアッ!!」
「そのケガが治るまで頼むから大人しくしてくれ!
熱が下がったら、すぐ外してやるからな」
「グウゥ……、ギャンッ!!」
「暴れたら余計につらいぞ」
「ガヴゥ゙ッ!!」
首輪をはめられ逃げようともがくが、慣れない首の締め付けに暴れまくる。
何とか鎖を走って引き千切ろうとするが、しっかりと壁に固定されたそれはジャラジャラと金属音を鳴らすだけでびくともせず、走った勢で跳ね返り体を打ち付ける
「ギャンッ!」
「アオオォーン!!」
街の外で母狼の遠吠えが聞こえる。
【私のかわいい坊や、お前のケガを治してもらうためなの。お願いだから少しだけ我慢して】
「アオーン!」
身体は熱いしキズも痛い。それでも一族の使命を果たしたい。
「我慢しておくれ、せめて熱が下がるまで。ケガを治して欲しいとお前の母さんも言ってるだろ」
子狼は目の前の男を見る。ぱっと見は普通の田舎の中年、なのに狼の言葉がわかるようだ。
「ガアォン!」
子狼は自分の知る事を何とか伝える。
「山の乱れは魔物のせいなのか。最近白い狼達を見かける事がなかったが、まさかお前を残して他は死んでしまったなんて。辛かったな……可哀想に 」
白い子狼の頭を抱きしめるとその目に涙を浮かべる。
「……がぅ」
しばらく治療に専念すると傷口は塞がり、体は ほぼ回復していた。
「もうすぐ解放してやるからな。よく頑張っ……」
「!?」
その瞬間身体に異変が起こる。元々違和感のあった首輪が首をぎゅっときつく締め付ける。
「ガハッ!!」
目の前にいたおじさんは牛の姿に、白い毛に覆われた自分の前足は毛がなくツルツルの人間になっていた。
「……ング、ヴヴヴ……! グァア゙ッ!!」
人間になったけど慣れない身体では首輪を外す事も出来ずバタバタと暴れる。
ただその暴れたことで少しだけ隙間が出来たおかげで窒息は免れた。
「…………ハァ、ハァ。スゥー…………ゼェハァ……」
【 ガボ 】
狼が子の名を呼ぶ。
「が、うぅ」
ガサガサと母狼が納屋へと入り込み、ガボの首輪を外そうと牙を立てる。
「ガッ! ゴキッ」
かなり丈夫なようで壊れる気配がない。無理して壊そうとするとガボを傷つけると判断して狼は首輪から口を放す。
愛しそうに我が子の頬を舐めると素早く外へと走り去った。
山の方では禍々しい気配。母狼は他の雌狼たちと共にガボの産みの母や仲間を殺した魔物を倒しに向かった。
「がう!!」
ケガは治ったのに、この首の物が邪魔で追いかけられない。人間になった指で必死に外そうと爪を立てても柔らかい手では傷も付けられず指先から血が滲む。
「が……ぅ……」
熱でほとんど眠れてなかった身体は休息を求めてとうとう意識を手放した。それは数分か、1日なのか分からない。
あともう少しで運命の出会いが訪れる。
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『オマケ』 マリベルとガボ それとママちゃん
マリベルが ガボを説教している。
「ガボ あんた人間になったばかりのときは狼に乗っかるのはわかるけど、さすがにもういいかげん自分の足で歩きなさいよ!? ママちゃんも重いでしょ?」
ちなみにママちゃんとはガボが乗ってる母狼の事で、名前は内緒だと言うので皆でママちゃんと呼んでいる。
ちらりと顔を合わせ何か話す母狼と少年。
「大丈夫だって母ちゃん言ってるぞ。オイラが大きくなってきて嬉しいってさ!」
にいっと屈託のない笑顔を見せると隣の狼もアオーンと誇らしげに吠える。
「ママちゃん!? そうやって息子を甘やかしたら駄目でしょ! 自立を促すのも母の愛なのよ!」
「くうーん」
寂しそうに鳴く狼に少し申し訳なさを感じるがすぐに頭を振りマリベルはガボに再度説教を始める。
あんたはいくら元狼とはいえ あーだこーだ
「マリベルどのは本当に優しいお方ですな」
「本当にそうね、ママちゃんの事も心配してるからの事だし本当にいい子よね。ママちゃんも少しガボを甘やかし過ぎてるけど、ガボの成長が嬉しいなんて素敵だわ」
メルビンとアイラがガボたちを優しく見守っていると
「マリベル お母さんみたいだね」
「はあ!?」
アルスの謎の発言にマリベルがギロリと睨みつける。
「あたしが老けてるってこと!? どうなのよ、アルス! この世界の美少女マリベル様がお母さんなんてやめてよね!」
「しっかりしてるってこと……」
「しっかりしてるとなんでお母さんなのよ!?」
ドスドスと足音が聞こえそうなほどの勢いでアルスに詰め寄るとアルスは珍しく『しまった』という顔でメルビンに助けを求めるが、もうあとの祭り。
そそくさと狼に乗ってガボは退散、メルビンは何とかフォローしようと考え中。アイラは二人を見て微笑ましいなと笑っているのだった。
「いっつも何も考えずにハイハイ適当に答えて、そんなんだからトラブルに、すーぐ巻き込まれるんだから!
言いたいことも言わずに腹にためて、だからあたしが代わりに全部答えてあげてるんだからね?
分かった? あんたはホントあたしがいないと、ぜーんぜん駄目なんだから!」
青空澄み渡るフィッシュベルにマリベルの怒涛の毒舌が響き渡るのだった。
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「母ちゃんオイラいつまでも母ちゃんの背中に乗っていいか?」
ママちゃんは目をガボに向けてすぐに前へと戻す。
「やっぱ大人になったらダメだよな」
すりすりと頬を擦り寄せ母に甘える。
「でももう少しだけいいよな? 母ちゃん」
「アオーン!」
オッケーがもらえた。
やっぱり母ちゃんは、甘いのだ。
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