四話

  宿の部屋に足を踏み入れた瞬間、そこは外界から隔絶された檻へと変貌した。

  ウォルカは逃げようとするティーガを畳に押し倒し、巨躯を組み伏せた。逃げ場はもうない。

  「……ウォルカ、悪かったって……」

  「黙れ。俺の前で見知らぬ男達に弄ばれておいて、よくも『スッキリした』などと言えたものだな」

  ウォルカの声は、深淵で燃える青い炎のように冷たい。彼はティーガの顎を強引に掴み上げ、強制的に視線を合わせさせた。

  「お前の過去は理解しているつもりだが……、あの腐敗した鳥籠はお前の心根まで腐らせたようだな。その堕落した性根を叩き直して……お前が誰のものなのか、骨の髄まで思い知らせてやる」

  ウォルカは一度ティーガの上から退くと、荷物の中から円柱型の魔導具を取り出した。ヴェルガルドの市場で、アリオスの不始末により買い取らされた忌々しい振動具だ。

  「おい、それ……」

  ティーガの顔が引きつり、本能的に後ずさる。

  その魔導具に心得があるらしい反応が、かえってウォルカの苛立ちを煽った。ウォルカは再びティーガに馬乗りになると、浴衣の襟を掴んで力任せに引き剥がす。露わになった黄金の毛並みからは、蒸処の湿った熱気と共に、男たちの卑俗な残り香が漂い、ウォルカの鼻腔を突いた。嫉妬はどす黒い衝動へと煮詰められていく。

  魔導具が起動し、低く鋭い唸りを上げた。

  ティーガの金色の瞳が、恐怖と、身体が記憶してしまっている屈辱的な快楽への期待に揺れる。

  「ちょ、待てって……ウォルカ……うっ!」

  ウォルカは魔導具をティーガの熱を帯びた後孔へと押し当てた。しかし、内側を埋めることはせず、陰嚢から会陰をなぞり、根元から裏筋、先端へと這わせる。敏感な毛並みをなぞるように、執拗で繊細な振動を往来させた。

  「っ…く…! ばか、やめろ……! ン……っ!」

  「お前のその『仕込まれた身体』がどれほど脆いか、この安っぽい玩具の刺激で自分で確かめてみろ」

  溢れ出した蜜が滑りを助け、ティーガの快感は更に増幅していく。ウォルカは絶頂の波が押し寄せるたびに魔導具を離し、再び敏感な箇所へ突き当てるという残酷な焦らしを繰り返した。

  「うぅっ、ぁ……ッ! もう、イかせてくれっ……ウォルカ! っ、あ……!」

  「ハッ……、そんなにこれが良いのか」

  ウォルカは亀頭の裏へ魔導具を無慈悲に擦り付けた。

  「お゛っ!? あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッッ!!」

  ティーガは激しい振動に抗えず、呆気なく白濁を噴き出した。しかし、ウォルカの手は止まらない。魔導具を振動させたまま、陰嚢から尻孔までの皮膚の薄い箇所を何度も往復させる。魔導具が尻へと滑るたび、男たちに中途半端に弄られた孔は、物欲しげにひくついた。

  「あっ……くっ、ぁ……ウォルカ……もう、中に……!」

  快感に曇った瞳でねだるティーガに、ウォルカは冷ややかに鼻を鳴らし、尻孔に振動体を押し当てた。

  「ふん。中に、なんだ。なにが欲しいんだ」

  「ふぁっ、ぅうう……な、なんでも良いから……もうっ……!」

  「――なんだと?」

  その答えが、再びウォルカの神経を逆撫でした。よがるティーガを冷たく見下ろしながら、魔導具を陰茎に押し当てれば、彼は再びあられもない声を上げて絶頂する。それでも続く振動にティーガは悲鳴を上げた。

  「ひっ!? あ゛ああっ! やっ! やめてくれっ! おかしくなっちまう!」

  過敏になった急所への追撃に、ティーガは身を捩って逃げようとする。しかしウォルカはその肉棒を握り締め、許さなかった。

  「ふ、……なんでも良いんだろ」

  「あっあっあっあああああ出る゛っぐう゛ううっ!!」

  ティーガの腰がガクガクと跳ね、ぷしゃ、と透明な液が噴出する。金色の瞳は虚ろに濁り、口からは力なく涎が垂れていた。

  「……さて。少しはお前のだらしのなさを自覚できたか」

  ウォルカは魔導具を床に放り捨てると、ぐったりとしたティーガの髪を掴み、自身の股間へと引き寄せた。腰帯を解けば、下着越しでも判る剛柱から、濃厚な獣の匂いと雄の熱気が立ち昇る。

  「ティーガ。それだけイっても、後ろが物足りないのだろう。お前が本当に欲しがってるのは誰なのか、言ってみろ」

  「う、あ……っ……」

  ティーガは朦朧としながらも、その本物の熱と匂いに鼻をひくつかせた。そのまま吸い寄せられるように、下着越しの熱源に鼻先を擦り付ける。

  「……っ、はぁっ……はぁ、……ウォルカ……。これが欲しい……っ、お前のが、欲しい……ッ」

  ティーガは許しを請うようにウォルカを見上げながら、熱い舌で布地の上からその形をなぞった。温泉街の男たちの卑俗な残り香などはもはや微塵も無く、この圧倒的な雄の香気だけが鼻腔を通って脳を支配していた。

  「……良いだろう。そのまま、咥えろ」

  ウォルカが下着を押し下げると、猛り狂った肉棒が弾むように現れた。ティーガは喉を鳴らし、乾いた大地が雨を求めるような切実さで、自らその熱を口内へと迎え入れた。

  「っ、は、ぁっ……んむ……ン……」

  ​湿った水音が密室に響く。ティーガが自ら喉を開きウォルカを受け入れようとする献身が、ウォルカの独占欲を満たしていく。ウォルカはティーガの黄金の髪を強く掴んで固定し、容赦なくその喉奥へと昂りを叩きつけた。

  ​「っ、ぐっ、ぅっ……んぅ……ッ!! ぐぉっ、……ンン……!」

  ​「どうした。見知らぬ男たちに媚びるより、こちらの方が苦しいか? ……だが、これがお前の欲しがっていた『本物』だ。一滴残さず、その魂に刻み込め」

  「んぶっ……ん゛っ……ンっ……!」

  喉の奥を執拗に突くうちに、ティーガの嗚咽が甘い喘ぎへと変わっていく。

  ​「……ッ、はぁ、……ティーガ……ッ!!」

  ついには​ウォルカの低い呻きと共に、ティーガの喉の最奥へと滾る雄汁が叩きつけられた。

  ​「ん゛っ、ぐぅ゛っ……っ、ン゛ッーーーッ!!!」

  それはティーガの喉を灼き、臓腑まで届かんばかりの勢いで流れ込んだ。​内側から全てを蹂躙される快感に、その陰茎から白濁を勢いよく噴き上げる。口を塞がれたまま喉を震わせて絶頂するティーガは、その腹と畳を汚し、力なく肢体を跳ねさせていた。

  ウォルカはゆっくりと自らを抜き去ると、口周りをべとべとに濡らし、焦点が揺れたまま見上げるティーガを昏い情愛を湛えた瞳で見つめた。

  「……仕上げだ。お前の心も身体も、すべて俺の熱で塗り潰してやる」

  ウォルカはティーガを仰向けにひっくり返すと、自らの体液で濡れてひくつく尻孔へと、その猛りを一気に根元まで叩き込んだ。

  ​「がっ、ああぁぁぁ……ッ!!! お゛、ぉ……っ!!」

  ティーガが仰け反り肉棒からまたしても白濁が飛び散る。内部の強い収縮に抗うように、ウォルカはさらに奥へと捩じ込んだ。

  「くっ……! 玩具なんかとは比べ物にならないだろう? 言え、ティーガ。お前が求めているのは、お前の『つがい』は、誰だ!」

  肉がぶつかり合う重い音が室内に木霊する。ウォルカはティーガの喉元に牙を立て、誰にも消せない深い傷跡を残すように強く噛み付いた。

  「ぐっ、お゛っ……! う、ぐぅ……っウォルカ、お前だけだ……! 他は……いらねぇ……っ! お前がいいっ……ぐぁっ! ちくしょうっ、熱くて、壊れちまうっ……があ゛っ!!」

  「ああ、壊してやる。俺以外の男は二度と受け入れられぬようにな……!」

  ようやく自分を満たした「本物」の熱に、ティーガは歓喜の叫びを上げながら崩れていく。ウォルカの動きはさらに速度を増し、重く深い一撃がティーガの理性を完全に粉砕した。

  ティーガの巨躯が大きく痙攣し、喉の奥から咆哮が漏れる。それは娼婦として取り繕った喘ぎではなく、快感のままに迸った雄叫びだった。

  「お゛っあっ、あ゛ぁッ!!! イぐっ……、イぐっ、ウォルカっ……ウォルカっ、ぐあ゛あぁぁっ!!」

  ウォルカは一突きごとにティーガの脳内にある他人の記憶を消し飛ばし、己の存在だけで塗り潰していく。

  ウォルカはティーガの最奥を容赦なく暴き、何度もその怒張を抉り込む。その度にティーガの歓喜が轟き、密閉された室内を揺らした。

  「ガァァッ!!ぐ、お゛っ!う゛ぐぅっ!グァァッ……!!」

  「っ……俺のすべてを!お前の中に、永遠に刻んでやる……!」

  二人の何度目かの絶頂が重なり合った瞬間、ウォルカはティーガのすべてを呑み込むように深く口付けた。舌を絡め取りながら、熱い奔流を体内に注ぎ込んでいく。

  ティーガもまた、全身を震わせて愛する者のすべてを受け入れていた。