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獣人猫くんの直腸検査

  「そろそろテレビ終わり、夜ご飯だよ」

  「もうちょっと…!」

  僕はテレビ番組でやっているアイス特集に釘付けだ。飼い主が呼ぶ声よりも、夜ご飯の匂いよりも、画面の向こうのアイス工場の映像に夢中だった。

  僕が猫から人間の姿になってから、もう3ヶ月くらいが経とうとしていた。人間の言葉もたくさん覚えたし、飼い主とも毎週のようにお出かけしている。もうすっかり人間の生活にも慣れた頃だった。

  「えぇ…、まずいな…」

  「何が?おいしいよ?」

  夜ご飯を食べながら、ぽつりと飼い主が呟く。飼い主が作ってくれた夜ご飯は今日もどれもおいしい。どうしたんだろう、と飼い主を見つめると、飼い主の目線はテレビ画面。

  夜ご飯の間は、僕がテレビに夢中にならないように、飼い主は難しいニュース番組を見ている。まだ文字の読めない僕には、ニュース番組なんて難しくて面白くないからだ。

  『獣人の体内から寄生虫が発見され、国は初回検診を終えた獣人を含む全ての獣人に対して、追加の検査要請を発令する意向です。なお、今回発見された寄生虫は人への感染リスクはなく───』

  ニュース番組で女の人が手に持った紙を読み上げている。

  ニュースってなんでこんな難しい言葉ばっかり使うんだろう?早口だし、何にもわかんないや。

  「最近、お腹痛いとかない?」

  「えー?ないよ!」

  飼い主が突然、心配そうな顔をしてそんなことを聞く。だから僕は、元気いっぱいだよ!と付け加えた。

  そんな僕を見て飼い主は、少し困った顔をして笑った。

  ──────

  それから数週間が経ったある日。

  今日は飼い主のお仕事がお休みの日。飼い主は朝早くに僕を起こすと、お出かけの準備をしてね、と言った。

  「お出かけの準備できたよ!」

  僕は一人で洋服を着ると、迷子になった時に使う携帯電話をポケットに入れて、飼い主の元に駆け寄った。

  「よし、お利口。じゃあ今日のお出かけのお約束ね。」

  「うん!」

  僕と飼い主はソファに座る。飼い主が僕の手をきゅっと握って、ゆっくりと話し始めた。

  「今日は、…検査を受けに行きます。」

  「けんさ……、検査!?っやだ…!!」

  僕は聞き覚えのあるその言葉を思い出して、ぶんぶんと首を振った。飼い主の手を振りほどいて立ち上がろうとしたけれど、すぐに手首を掴まれる。

  「大丈夫、今日は痛い検査はしないはずだから…。」

  「でもやだ!行かない…っ!!」

  「検査しないと、一緒に暮らせなくなっちゃうんだよ」

  「そんなのやだぁ…っ!!!」

  "一緒に暮らせない"と聞いて、僕はぶわっと悲しくなった。そのまま飼い主に抱きつくと、飼い主もぎゅっと抱きしめてくれて、頭を撫でてくれる。

  「飼い主もそんなの嫌だよ。だから、一緒に検査行こう?検査の間も、ずっと一緒に居るから、ね?」

  「でも…っ、でも…」

  嫌なものは嫌なのだ。僕は前回の検査を思い出して、痛かったこと、怖かったこと、気持ち悪かったことに震えた。

  「今日の検査ちゃんと受けられたら、帰りに好きなアイス5個買ってあげる」

  「5個も…っ!?なんでもいいのっ!?」

  「うん、何でもいいよ」

  すっかりアイスが大好物になった僕は、"アイス5個"にさっきまでの嫌だった気持ちがすぐに吹き飛んだ。

  「検査…がんばる…っ」

  「…!偉いね、お利口だね、一緒に頑張ろうか」

  飼い主が頭をたくさん撫でてくれる。それだけでも嬉しくて頑張れそうな気がした。

  僕は飼い主と手を繋いで、お外に出た。

  ──────

  前に検査をしたのと同じ建物に着く。

  飼い主が前と同じように誰かとお話をした後、僕たちは椅子に座った。

  周りには、びくびくしながら縮こまっている人、嫌がって暴れている人、泣き喚いている人もいる。この雰囲気が、なんだかとても嫌な感じ。

  「静かに待てて、君は偉いね」

  飼い主がそう言ってまた僕の頭を撫でる。

  本当は僕だって嫌がって暴れて逃げたいけど、飼い主と約束したから、アイスのためだから、じっと堪えた。

  少しすると、並んでいる部屋のひとつのドアが開いて、番号を呼ばれる。

  どうやら僕たちのことだったみたいで、飼い主が立ち上がって僕の手を引いた。

  僕はドキドキしながら、その後をついて行った。

  ──────

  『こんにちは、よろしくお願いします』

  「よろしくお願いします」

  部屋に入ると、白い服の男の人が挨拶をする。この人が今日の先生らしい。緊張して話せない僕の代わりに、飼い主が挨拶をした。

  いつもなら元気よく挨拶するのは得意な僕が、返事すら出来なかった理由。それは、部屋の真ん中に置かれたベッドだった。

  それは、普通のベッドの真ん中に柵のようなものが立てられていて、柵の間とベッドの端にそれぞれバンドがついている。

  どう見たって分かる、それは僕の体を縛り付けるためのものだった。

  『じゃあ、ベッドの上にうつ伏せになってもらえるかな』

  「…っや、…」

  「大丈夫だよ、一緒にいるからね」

  思わず後ずさりした僕の手を、飼い主が優しく握る。

  そして飼い主に誘導されるがままに、ベッドの上にうつ伏せになった。

  両腕は頭の上にぐっと伸ばすようにして、膝を折り曲げて腰を上げる。猫だった頃よくやっていた、伸びをするようなポーズだ。

  そしてそのポーズで、僕は腕をバンドでベッドに固定されている。腰は、ベッドに取り付けられた柵にバンドを括り付けて固定してある。これで上半身はすっかり動かない。

  『検査二度目となると、皆さん抵抗がすごくて、このような拘束になっていまして…』

  「そうですよね…」

  『ここまで連れてきていただくのも大変だったでしょう、』

  飼い主と先生が話している。心臓がバクバクしている僕は、そんな会話の内容なんて何も入ってこない。

  まだ足は自由だ。今から暴れたら逃げられたりしないかな…と考えていると、誰かが僕の腰の辺りに触った。

  『お召し物下げさせていただきますね。』

  「…っえ、…え…!?」

  「大丈夫だよ、今日はお尻の検査だからね。」

  "お尻の検査"なんて聞いてない!!僕は飼い主の顔を見上げた。

  人間になって洋服を着ることに慣れてから、最近の僕は洋服を着ていないことを恥ずかしいと思うようになった。

  お風呂に入る時、裸で鏡の前に立つことすらも少し恥ずかしいくらいなのに、知らない人にズボンを脱がされてお尻を見せていることはもっと恥ずかしい。

  嫌だ嫌だと思う度に、顔が熱くなる。足をばたつかせようとしたところで、するりとズボンとパンツが足から抜かれると、足首をバンドで巻かれてしっかりと固定されてしまった。

  『では検査の方始めていきますね。』

  僕の足元に立っている先生の声。

  飼い主は僕の顔の前に立っていて、僕の頭を撫でながら肩を抑えている。そのせいで後ろを振り返ることもできない。

  これから何をされるんだろう、そう思うと手のひらがじっとりと湿ってきて嫌な感じがした。

  『まず、お尻の中に長い綿棒を入れて、中の粘膜を採取させてね。少しムズムズするかもしれないけど、痛くないからね。』

  「えぇ、…っなに…」

  お尻の中に何かを入れられることと、痛くない(本当かは分からない)ことだけを聞き取れた僕は、いやいやと首を振った。

  しかしそんなことはお構い無しに、誰かの手が僕のお尻を押さえつけると、左右に引っ張るようにして開いた。丸見えになっているお尻の穴がスースーして、怖くて気持ちが悪い。

  パタパタと暴れるしっぽを、また別の手が背中に押し付けて抑えた。

  そしてすぐに、お尻の穴にぴとりと何かが触れる。少しごわごわしてて、あまり大きくないそれが、続けてずぶずぶとお尻の中に入っていく。

  「や゛!っやだぁぁぁ…!!」

  『ごめんね〜少し頑張ろうね』

  お尻の中に入ってきたそれは、細いけれど確かに入ってくる感覚がある。痛くないけど、知らない人にお尻の穴を見られている恥ずかしさと、触ったことなんてないお尻の中をもぞもぞと擦られる感覚に暴れだしたくなった。

  「ふぎゃぁぁぁぁ゛!、やだ…っ!!抜いてぇ゛!」

  『もう少しだけ中をごしごしさせてね』

  お尻の中をぐりぐりされる感覚に、いてもたってもいられなくなる。

  飼い主は嫌がる僕の頭を優しく撫でているけれど、そんなこともよく分からないくらいにお尻の違和感が嫌で嫌で仕方がない。

  『はい、もう抜くよ〜』

  「んぇぇぇ゛ん、っぁ゛ぎゅ…!?」

  入れる時はゆっくりだったくせに、終わると先生はそれを勢いよく抜いた。そのせいで変な声が出てしまって、僕はまた恥ずかしくなった。

  『ワセリンお願いします』

  『はい』

  嫌で嫌で泣きそうになりながら俯く僕の後ろで、先生と別の人が話している。

  まだ何かするみたいだ…。怖くて僕は肩を縮こまらせていると、飼い主が優しく話しかける。

  「大丈夫だからね」

  「っ、飼い主───」

  『じゃあ次はお尻の中を少し触っていくね。力抜いてたら痛くないからね』

  お尻の中を触るって何…?と僕が恐怖に震えていると、先生は僕のお尻の穴にぴと、と指をあてた。

  そしてそこを指ですりすりと撫でるようにしている。くすぐったいような、気持ち悪いような感じがして、僕はまた首を振った。

  「やだ…っ、やだ…!」

  『はーい、息をふーって吐いてね』

  「ぇ…っ、え……う゛ぅぅう゛!?!?」

  お尻の穴を撫でていた指にぐぐっと力がこもる。そのまま僕のお尻の中をほじくるように入り込んできた。

  痛くは無いけど、気持ち悪くて恥ずかしくて、また僕は声を上げた。

  「いや゛ぁぁぁぁ゛!…ぅ゛うぁぁ゛ぁん!!」

  『ごめんね、腫れてる箇所がないか診るからね』

  嫌がって騒ぐ僕を無視して先生は、僕のお尻の中でぐるぐると指を掻き回した。こんな風にお腹の中の色んなところを触られるなんて。

  先生の指がまたずぶっとさらに奥に入り込む。

  「ひぐぅぅぅぅぅ゛!!…抜いて!もぉ゛ぬいてよぉ゛っ!!」

  『奥まで検査しないとなんだ。それに次の検査の準備でもあるんだよ。』

  次の検査…?まだこんな酷いことが続くの?僕はショックを受けた。

  先生はお構い無しに、今度は奥まで突き入れた指をお腹の中でぐちぐちと動かす。まるでお尻の中をもっと拡げようとしているみたいだ。

  お尻の中が少し痛いような気がして、僕はとうとう泣き出した。

  「ひぃぃぃ゛いた゛い…っ!、痛いよぉ゛っ!」

  『ごめんごめん、一旦抜くね』

  そう言うと先生は、またずぽっと僕のお尻から指を抜いた。抜かれる瞬間、お尻の中を引き摺られるような感覚がして、ぞわぞわとした変な感じがした。

  「ひぐ…っ、ぅぅ…うぇぇ…ん」

  『クスコはキシロカインゼリー使おう、準備お願いします。』

  ベッドに顔を突っ伏したまま泣いている僕の頭を飼い主が必死になでなでする。それよりもお尻がまだじんじんする感じがして、もう帰りたかった。けど、さっき次の検査って言葉を聞いていた僕は、きっとまだ離して貰えないことを感じ取っていた。

  『すみません、検査のために少し解したかったんですけど緊張もあって難しいようなので、麻酔ゼリーを使わせていただきますね。』

  「はい、お願いします…」

  飼い主に申し訳なさそうに何かを説明する先生と、それに返事をする飼い主。飼い主の声は、いつもよりも不安そうな声に聞こえた。

  『今度は冷たい器具が入るよ。危ないから動いたら駄目だからね。』

  「もぉ゛…っ、いやだぁぁ!…っやめて!!」

  『痛くないようにするからね。息をふーって吐いてね。』

  もうこれ以上は嫌だ、と首をぶんぶんと振る僕に、飼い主が目を合わせて言った。

  「お利口さんでしょ?…頑張れるよね?大きく息して?」

  「ひぅ…っ…ぅう、っすぅ、っはぁ…ぁあ゛ぐぅ!?!」

  飼い主が悲しそうな顔をして僕に話しかけるから、そんな顔しないでほしくて、僕は必死に言われた通りにした。

  大きく息を吸って、吐いた瞬間、お尻に冷たくて硬いものが充てられる。それはそのまま力を込めて、ぐぐっと中に入り込んできた。

  「いや゛ぁぁぁぁぁ…っ゛!!」

  『上手上手、偉いよー』

  冷たいものが僕のお尻をぐいぐいと拡げていく。それは入り込む度に太くなっているようで、僕のお尻の穴の周りはキツイくらいに口を拡げている感覚がする。

  それに、今までものを入れられたりした事ないくらいのお腹の奥まで入り込んだような感覚に、怖くてまた涙が出た。

  「そんなおぐ…っ゛!ぅぅ゛、ひっ…やだぁ゛ぁ」

  『全部入ったよ。少し中を開くからね、力抜いてれば痛くないよ。』

  「なに、!?や゛…っ゛!やめ゛ぇぇ゛ぇ!!」

  これ以上開くなんて無理だ、と思うくらいにもう既に僕のお尻の中はぎゅうぎゅうなのに、先生はさらに開くと言う。

  力を抜いて、と言われてもそんなのどうしたらいいのか分からなくて泣きわめいていると、お腹の中がメリメリと拡げられていく感覚がした。

  「やだぁぁぁ゛!!…っ゛ぉ゛!?、おな゛か…っへん゛!」

  『頑張ったね〜ちゃんと開けたからね、もう少しで終わるよ〜』

  お腹の奥までスースーする感じがする。今まで味わったことの無い変な感覚に、思わず背中が震えた。

  "もう少し"って後どれくらい?早く終わらせて、もう帰りたいよ…。

  『お腹の中に悪い所が無いか見ていくからね、たまにヒヤッとするけど、大丈夫だよ。』

  「っぅ…〜〜っやだぁ…っ゛」

  先生がいる方から、カチャカチャと金属音がする。また何かの器具を使うのかと、僕がびくびくしていると、広げられたお尻の中に、ぴと、と冷たいものが触れた。

  「んぎゃぅ゛っ!?」

  『ごめんね、冷たかったね』

  「〜〜〜ぅうぅ゛、…ふぅ゛ぅぅ…」

  触れた何かが、そのまま僕のお尻の中をぐりぐりと探っている。痛くは無いけど、気持ち悪くて嫌で、思わず耐える声が漏れてしまう。

  またそれに合わせて、先生が呟いている。

  『うん、充血箇所もないし、目視検査は異常なしで大丈夫そうかな。』

  「ひぅぅぅ゛〜〜〜っ゛、んぉ゛っ゛!!」

  『あぁ、ごめんね、少し奥に入れすぎたね。』

  僕のお尻の一番奥の、開かれていない場所をいきなり器具がずぶ、と突いたので、変な声を上げてしまった。

  『痛いところとかないかな?』

  「ない…っ゛!!もぉ゛、おわる゛!!」

  『本当かな?…こことかは?』

  「ぅう゛やぁぁぁ゛!!…っいたくない゛!っけど、きも゛ち、わるい゛ぃぃっ!」

  先生が僕のお尻の中をぐりぐりと器具で弄る。本当に痛いところなんてないから、意地悪しないで早くやめて欲しい。

  『そっかそっか、痛くないならいいんだ。もう終わろうね。』

  「うぇぇぇ…っおわる゛っ!」

  器具が僕のお尻から抜かれていった。そして、お尻を広げていた器具も、少しずつ小さくなっていく。拡げていた部分を閉じているみたいだった。

  『はい、抜くよー』

  「〜〜〜ぅ…、ひぉ゛っ!!」

  ずるり、とお尻から大きいものが抜かれて、その衝撃に僕はぺしゃりとベッドの上にお腹を付けて縮こまった。

  入れられるのも嫌だけど、抜かれていく時の感覚も嫌だ。

  『これで検査は終わりだよ、よく頑張ったね。』

  「ぅぅぅ、早く゛帰る゛…っ!!」

  『ははは、そうだね。では飼い主さん、目視検査は異常なしでしたが、生検の結果は後日郵送になりますので』

  「はい、分かりました。ありがとうございました。」

  手足に巻かれていたバンドを解いてもらった僕は、自分でパンツとズボンを履き直すと、すぐに飼い主の足にしがみついた。

  アイスを買ってもらえても、もうこんなこと二度としたくない!と心に決めるのだった。

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