森で寂しがり屋のクマ系獣人と鉢合わせしたら強制的につき合うことになる

  ある日の夕方……

  ふぁぁぁぁぁ。

  今日も平和だなぁ……

  大きな事件が起きないのはいいんだけど、

  なんもすることないっていうのもなぁ……

  他の子はみんなつがいとか見つけて、

  イチャイチャしてるっていうのに……

  あたしは相手もいないし……

  はぁ……

  つまんないの……

  ん?

  あれ?

  クンクン……

  (周囲の匂いを嗅ぐ)

  この匂い……

  もしかして……

  ニンゲン……?

  しかも……

  もしかして男の子?

  ふーん。

  ……チャンス到来。

  もしかしたら……

  あたしにもツキが巡ってきたのかも……

  (数分後……)

  あっ……ちょっと待って。

  そんな怖がらないで……

  びっくりさせちゃったよね……ごめんね……

  お兄さん……

  こんな森の中で一人なんて、どうしたの?

  なんか……

  この辺にニンゲンがいるなんて、珍しいじゃん……?

  なんかあったのかなって。

  え?

  狩り?

  獲物を追いかけて、ここまで来たの?

  へぇ……

  そう……

  随分と深入りしてきたのね……

  ねぇ、お兄さん……

  ちょっとだけ、お話していかない?

  ね、お願い……少しだけでも……

  あ、その目……

  もしかして……

  ラッキーって思ってる?

  獣人っていう、捕まえたらメチャクチャ

  お金と名誉が手に入る獲物を見つけたって?

  でもそれはやめた方がイイわ。

  あたし……クマの獣人よ?

  そっちから攻撃してこない限り、

  あたしはあなた達に危害は加えない。

  でも正面からぶつかったら……

  わかるでしょ?

  お兄さんの持ってる武器じゃ、ちょっと厳しいかな。

  あ、あと……

  断るって言ったら……どうなるか、わかってるよね?

  この森……広いけど、逃げ場なんてないんだよ?

  あたし、こう見えても足、速いんだよ?

  ふふっ、かわいい……

  その困ってる顔、もっと見せてよ……

  でも、もういいでしょ?

  ねぇ……

  観念して……?

  もう、あたしのものになっちゃって?

  今日から、あたしの「彼氏」ね……

  ふふふ……覚悟して?

  寂しがり屋のクマの獣人って、一度つかまえたら、絶対離さないから……

  ねぇ……嬉しくないの?

  あたしに、見初められたんだよ?

  こんな深い森の中で偶然出会えて、しかも気に入られたの……

  奇跡だと思わない?

  ふふっ、運命……なんだよ、これは。

  ねぇ……お兄さんもそう思うでしょ?

  ……黙ってたら、肯定と受け取るから。

  それに……

  もうお兄さんの匂い、全部覚えちゃったから。

  仮に逃げられたとしても、

  どこに逃げても、見つけられる。

  どれだけ遠くに行っても、あたし、必ず追いつく。

  森の中で生きてきたんだよ?

  足跡ひとつでわかっちゃうの。

  ……そういうの、得意なんだ。

  あたし、執念深いから。

  あたしさ……

  気に入ったものはさ、他の誰にも、渡したくないの。

  だから……

  (男が剣を抜く)

  ……ふふっ、なにそれ。

  逃げることなんて許さないけど?

  ここまであたしに言われても、

  まだ逃げる気?

  まぁ……

  あたしは何も武器を持ってないけど……

  お兄さんは一応狩人……

  武器は一式持ってるからね……

  そういう気分になっちゃうのは分かるけどさ……

  お兄さんが今使える武器は剣だけ。

  こんな至近距離じゃ弓矢は使えない……。

  素手の獣人相手にそんな安っぽい剣1本じゃ無理だよ……

  ねぇ……

  諦めてさ……

  素直にあたしのモノになろうよ……

  無駄な争い……したくないんだよね……

  (男が女に襲い掛かろうとする)

  ……そっか。

  残念。

  お兄さんとは仲良くなれると思ったんだけどな……

  ん!

  (女が男のことを押し倒す)

  ……アッッハハハハ!

  ホント……

  ニンゲンって弱い。

  だから言ったじゃん……

  剣1本じゃ無理だよ。

  そもそも、お兄さん、あたしにビビリすぎ。

  震えたてたもん。

  そんな状況のお兄さんを押し倒すのなんて簡単。

  剣もどこかにとんでっちゃったね。

  残念。

  じゃ……

  あたしに負けちゃったから……

  今日からお兄さん、あたしのね。

  そういうことだから、あたしのそばで、生きて。

  眠るときも、目覚めるときも、息をするときも、ずっとあたしの気配を感じて?

  あたしがどれだけ、キミを欲しがってるか……

  これから、たっぷり教えてあげる。

  骨の髄まで、あたしに愛されるってどういうことか……

  これからたっぷりわからせてあげる。

  あたし……

  ずっと寂しかったの。

  この森で1人で生きていたからさ。

  でも……

  今日でその生活ともお別れ。

  お兄さん……

  これからよろしくね?

  2人で楽しく生きて行こう?

  絶対楽しいからさ……