「ぐぐ……離すのだ……!」
吾輩は今、暗い天井を見つめるようにして大の字に伸びながら後悔している。
古い書物があるという情報を聞き付けて意気揚揚と忍び込んだはいいものの、中にいた蛸のような、妖怪とも似つかぬ何かに動きを封じられてしまったのだ。
「だ、誰か居らぬか!」
助けを求めても、吾輩の声が虚しく木霊するだけ。万事休すかと思案を巡らせていたところ、吾輩と似たような風貌の獣人が、宙にふわふわと浮いて顔を覗き込んできた。
「うるさいなあ、ねてたのに」
「す、すまぬ。だが吾輩、このように身動きが取れぬ状態で――」
「静かにしてよ……」
彼は心底面倒そうに顔を歪める。その圧に吾輩は口を噤むことしか出来なかった。
「ん〜?」
怪訝な顔をしながら、獣人は顔を覗き込んでくる。
「な、なんだ……?」
「キミ、もしかしてボクと一緒?」
「一緒……というのは?吾輩はただの書生であるが故、売ったとて金にはならぬぞ」
「違う違うっ。なんだかイヌみたいだからボクと一緒なのかなって!」
吾輩は困惑した。彼の言っている意味が理解できなかったのだ。それに吾輩はイヌなどではなく、れっきとした獣人だというのに。
「キミがイヌなら……興味湧いてきたなぁ」
「ええっと…?状況が読めぬのだが……まずはこれをどうにかしてもらえぬか」
「ヤダ!」
「何故!?」
ニタリと笑いながら、彼はこちらに向かってくる。
「だってキミみたいな変な色のイヌ、みたことないもーん」
「なっ!?変とはなんだ!それに吾輩はイヌなどではないぞ」
彼ははいはい、と少し呆れたような顔で辺りを見回し、掌をこちらに向けてきた。
「キミの知ってること、全部もらうねっ」
「え……?」
ゴゴゴゴ…………
屈託のない笑みをこちらに向けてきた彼。その顔は、無邪気なようで、獲物を狩る獣の目をしていた。
地響きは収まる気配を見せず、アハハッ、と笑う子供の声が、吾輩の精神を揺さぶってくる――。
ドゴォッ―。
視界がぐらぐらと歪む。地響き……?これなら、誰か助けに来るやもしれぬ――。
首を振り、辺りを見回す。吾輩の体は相も変わらず床に縛り付けられたままで、磔にされているような形だった。
磔……?もしや、吾輩は、ここで殺されるのか……!?心做しか、触手も先端を尖らせて吾輩の体を穿つ準備は万端と言った様子にも見える。
「は、離せ!まだ吾輩には成し遂げねばならぬものがある!!!」
「だいじょうぶだよっ死なないから」
「なっ……」
「食べる?美味しいよ、これ」
「食べっ……こんなもの誰が…むぐぅ!」
妙にズレた彼の問答に然と答えようとした時、口をぬるりとした感触が覆った。見れば、触手のようなものが口に来ているではないか……!
「それじゃ、いっただっきまーすっ」
「むっ!?むぅっ……!」
まるで今から楽しみにしていたスウィーツを食べる子供のような、そんな無邪気な声を響かせながら、彼は恍惚の表情を浮かべる。触手はといえば、こちらの布越しに吾輩の性器を舐めまわすようにゆっくりと扱きあげていく……。
「むぅっ……!むーーーっ!!!」
「えへっ、えへっ……あれぇ……もう全部知ってるなぁ……」
喜びを見せたのも束の間、彼の顔から笑みが消え、退屈そうな表情が浮かぶ。吾輩には何故か、その顔が恐ろしく感じられた。その間も、触手は局部を愛撫しつづけていて、気が気でなかった。あっ…くるっ……。
「―ッ!!」
ビュルル……。
股間の濡れた感触が絶妙な不快感を齎した。
「あ、もうイッちゃったんだ。いいよぉ、全部吸ってあげるから」
「ふっ、ふーっ……」
疲労を回復する暇もなく、触手はまた刺激を加えてくる。冷えたはずの体が、また火照り、すぐに沸騰して、気持ちよくて――。
解放。爽快。気持ちいい。
ピキッピキッ……ピシッ……
からだがうごかない。きっときのせいだろう。きもちいい。もっと、ほしい。
「えへっ。かわいいっ。イク度に君はどんどん石になってく。だからずっとずっと気持ちよくしてあげるねっ」
かわいい…? うれしい。もっとほしい。
グチョグチョグチョグチョ………
あっ、くる。くる。くるっくるっきもちっ――
ビュルルッ!ピキピキピキ……
「どお?気持ちいい?って言っても、まぁ、気持ちいいよねっ。こんなにおっきくしてさ……それじゃあ、キミが欲しかったこれ、見せてあげる〜。特別だよ〜?」
きっきもちいいきもちいいあああきもちっいくっいくっ……
「あ、壊れちゃったかな〜。まぁいいや。別に元に戻すこともないと思うし。登録しとこ〜っと♪」
パタンッ。
「ふわぁ〜っ。つかれたぁ……本に入れるのほんとうに疲れるんだから……まぁいっか〜。変なイヌのおにいさんと遊ぶの楽しかったしっ」