昔々、とある山間の村に、たいそう働き者の雄猪がおったそうな。
他の猪に比べて体はそれほど大きくはなかったけれど、力はそんじょそこらの雄たちが束になってもかなわないほど強かった。気立てはいたって優しく、まじめに田畑を耕すほかに何も知らない、それはそれは素直な雄だった。
雄の名前は瓜蔵(うりぞう)といった。父母を早くに亡くした瓜蔵には、祖父の仙八(せんぱち)のほかに頼る身寄りがなかったものだから、瓜蔵は仙八を親の代わりとして今日まで暮らしてきた。仙八は瓜蔵よりもずっと体が大きく、特に腹回りはでっぷりとして、まるで相撲取りのようだった。仙八は瓜蔵に「なるべく人を助け、悪いことをせず生きていれば、きっといつかいいことがある」と常日頃から言い聞かせ、とにかく食うものにだけは困らないようにとせっせと田畑を耕し、山ほど飯を食わせて育ててきた。それで、瓜蔵はたいそう素直で、たいそう力のある、立派な雄になった。
瓜蔵が二十歳になったころ、仙八は病を得て床に臥せった。七十二歳ともなれば、少々の病もたちどころに大病に化けるもので、仙八はすっかり弱って、畑にも出られなくなってしまった。瓜蔵は二人分の食い扶持と、仙八を町の偉いお医者様に診せるためのお代を稼ぐために、畑仕事の合間を縫って山へ行き、山菜採りや木こり、果ては獣狩りにまで手を出すようになった。ただでさえ休みのない百姓暮らしに山狩りまでするのは、いくら元気が取り柄の瓜蔵とはいえなかなかに大変だった。けれど瓜蔵は、育ててくれた仙八への恩返しのためにと、それはもう一生懸命に働いた。
「すまんのう、瓜蔵。わしが病んだばっかりに、おまえにこんな苦労をかけて」
「気にせんでええだよ、じっちゃん。偉いお医者様に診てもらえば、じっちゃんはきっとすぐよくなるだ」
瓜蔵が垂れ目を細めてにっこりと笑うと、仙八も長い眉を揺らして弱々しい笑みを返した。食い扶持の割にはたいそう肥え太っていた仙八も、病に臥せった今はすっかり瘦せてしまった。福の神のように膨れていた頬はこけ、太鼓腹もたるんで張りがなく、太く逞しかった腕もすっかり萎びて弱っている。それでも仙八は、心配してくれる瓜蔵のためにどうにか元気になろうと、強い気持ちだけは絶やさずにいた。いつか、もう一度孫といっしょに畑に出て鍬を振るのだと、それだけを望みにして、毎日を寝て暮らした。
仙八が病に倒れてから、半年ほどが経った頃のことだった。
その日も瓜蔵は、いつものように野良仕事を済ませてから山に出て、めぼしい獲物はいないかとあちこち目を光らせているところだった。しかし、茸も山菜も、果ては獣の影もまるで見つからず、いたずらに時が過ぎてゆくばかり。そろそろ日も暮れようという頃になり、瓜蔵が仕方なく村へ引き返そうとすると、すっかり冷たくなった風の音に紛れて、慌てふためく男の声が聞こえてきた。
「お、お助けください、後生ですから……」
「俺たちに出くわしたのが運の尽きだ。大人しく金目の物を渡せば殺しはしねえよ」
声を辿って茂みに分け入ると、大きな箱を担いだ雄狸が、見えるだけでも六人ほどの雄どもに道を塞がれていた。棍棒や鉈を得物にした彼らのいかにもあくどい人相を見て、瓜蔵は近頃このあたりを根城にし始めた野盗の噂を思い出した。もっとも、彼らが盗人であろうとなかろうと関係はなかった。一人を相手に寄ってたかって脅しをかけるような、誰がどう見ても悪いと思えるような行いが罷り通っていること自体が、瓜蔵は何よりも気に食わなかった。
「なしてこんなことするだ。人が困ることをしたらいけねえって教わらなかったか」
瓜蔵は腹の底から大声を張り上げて、野盗たちと狸の間に割って入った。おどおどと震える狸を背中に庇うと、野盗たちのぎらついた視線が突き刺すように押し寄せる。ほんの少し竦む心を一生懸命に奮い立たせて、瓜蔵は背負っていた鍬を胸の前に構えた。静まり返った夕暮れの森が、張り詰めた雰囲気に満たされる。
「なんだ、薄汚え百姓風情が。俺様たちの気が変わらねえうちにとっとと消えろ」
頭領らしい豚が鼻を鳴らして言い放つと、続けて野盗たちが口々に瓜蔵をののしる。どちらを向いても強面揃い、体格も瓜蔵よりずっと大きな者ばかりだが、瓜蔵はまったく動じなかった。自分は正しいことをしているのだから、何を言われても耳を貸す必要はない。言い返す言葉の代わりに髪を逆立たせ、大きく胸を張って野盗たちを威圧していると、背後から狸のおびえた声が呼びかけてきた。
「君、あんな大勢相手に逆らったりしたら危ないよ。私のことはいいから、逃げなさい」
「困ってる人がいたら助けろって、じっちゃんが言ってただ。おらは逃げねえぞ」
茶色い毛並み大狸は、見たところ瓜蔵よりも年上で、狸特有の黒い模様が入ったいかにも温厚そうな丸顔をしている。突き出た腹を中心にぽってりと膨れたふくよかな身体つきは、どことなく元気だったころの仙八に似ていて、瓜蔵の心に懐かしさがこみ上げる。おびえた瞳をわななかせ、滝のような汗を流して青ざめる狸の姿を見るにつけ、瓜蔵はかえって勇気が湧いてくるようだった。こんなにもこの人を怖がらせるやつらを、何としてもやっつけてやらねばと、固く決心した。
「生意気なやつだ。やっちまえ!」
だらしなく垂れ下がった顎肉をたぷたぷと揺らしながら、豚の頭領が指先を瓜蔵に向ける。偉そうな指図の声に合わせて一斉に飛び掛かってくる野盗どもを、瓜蔵は大きく振りかぶった鍬で横になぎ払った。腕に跳ね返る反動をこらえ、思い切って振り抜いた長物の一撃は、前方から襲ってきた三人の賊をいとも容易く吹き飛ばす。まるで荒れ狂う嵐にでものまれたように、散り散りに吹き飛んだ三人はそれぞれ周囲の木に頭をぶつけ、その場に倒れ伏した。
直後、不意打ちを狙う残りの二人が背後から短刀を振りかざしたが、瓜蔵はすかさず身を翻して避けた。振り返って構えた鍬を槍のように突き出して追撃をいなしつつ、相手がひるんだ隙に鍬の先端を思い切り脳天に一つ、二つと叩きつけると、悪漢どもの見開いた目から火花が飛び散る。刃を伏せた峰打ちとはいえ、鉄の塊で頭を打たれてはたまらない。あっさり叩きのめされた二人は、たんこぶのできた頭をふらふら揺らし、へなへなと地に臥せった。
「こ、こいつ……百姓のくせに、強すぎる……」
先程までの威勢はどこへやら、頭領はその場に尻もちをつき、手足をばたばたと動かして慌てふためいた。なんとも情けない姿だが、舐めてかかった相手にこうもあっさりと手下を蹴散らされてしまったのだから、無理からぬ話ではある。
「まじめに田んぼを耕して、飯をたんと食ってるやつが一番強えんだ。覚えとけ」
恐れおののく豚面に向けて、咄嗟に考え付いた啖呵を切ると、瓜蔵は鼻を鳴らしてから鍬の柄先を地面に突いた。袖まくりの腕にうんと力を込めて膨らませ、鋭い牙を剥き出しにして睨みを利かせると、頭領は尻込みするように背を向けて一目散に逃げ帰る。目を回しながらもどうにか立ち上がった手下どもも、それに続いて去ってゆく。林の中に消えてゆく背中を遠く見送ってから、瓜蔵は大きく息を吐いた。慣れない大立ち回りに張り詰めた肩の力がさっと抜けて、厳めしく吊り上げていた眼が普段通りの垂れ目に戻る。
「ああ、何とお礼を言えばよいのか……君は私の命の恩人だ、本当にありがとう」
「おらはじっちゃんの教えに従っただけだ。お礼なんていらねえ」
その場にへたりこんでいた狸が、合羽や股引に纏わりついた泥を払って立ち上がる。狸が大きく頭を下げて謝辞を述べると、瓜蔵は少しうつむいて、気恥ずかしそうに首を横に振った。仙八の教えに従って、村でも何かと人助けに勤しむ瓜蔵ではあったが、気心の知れた村人同士ではここまで大仰に感謝されることは滅多にない。狸が恐縮して体を揺らす度、股座でゆさゆさと左右に振れる両拳大の膨らみを見るにつけ、瓜蔵は何やらむずむずとした心地になって、後立褌の食い込んだ尻をやけに強く掻きむしった。
「私は薬師(くすし)をしているのだが、君のために何か役に立てることはないだろうか」
百鼓(百鼓)と名乗った雄狸は、ずり落ちた小さな眼鏡をしきりに直しながら訪ねた。役に立てること、戸問われたところで、瓜蔵自身はすこぶる健康で、薬の世話になるような兆しもない。しばらく考え込んでから、瓜蔵は思い切って仙八につける薬がないか相談してみることにした。目に付いた切り株に並んで腰掛け、ひとしきり事情を話すと、百鼓は突然どんぐり眼から大粒の涙を流し始めた。
「お爺様のために身を粉にして……うう、君はなんて素晴らしい若者なんだ」
「薬師さまが泣くほどのことじゃねえだよ。おらはじっちゃんに育ててもらったから、恩返しがしてえだけだ」
「しかも、ご両親もいらっしゃらない中で……こんなに、こんなにまっすぐ育って……お爺様もさぞ、君を誇りに思っていることだろう」
びしょ濡れの眼鏡を袖で拭きながらすすり泣く大狸を、瓜蔵は慌ててなだめた。しかし、よほど感銘を受けたのか、百鼓はなかなか泣き止まない。困り果てて首を傾げながらも、肩を抱いて背中をさすってやると、声の震えも徐々におさまって、ようやく泣き止む兆しが表れる。まるで赤ん坊みてえだ、と瓜蔵が心の中で密かに呆れていると、立ち直った百鼓は懐から紙束と矢立(携帯式の筆記具)を取り出して、瓜蔵に向けて姿勢を正した。
「もしよければ、お爺様の詳しい症状を聞かせてもらえないだろうか。手持ちの材料から、できるだけ効き目のある薬を調合してみせよう」
「そりゃありがてえけんど、生憎おらにはお代の持ち合わせがねえだよ」
「君がいなければ、今頃私は命か、命より大事な薬の材料を奪われていたところだ。君のために尽くすのに、お代なんて必要ないよ」
そこまで言われてしまうと、断る方が申し訳なく思えてくるのが人情である。根負けしたとばかりに、瓜蔵は仙八の症状を思いつく限り詳細に話した。すると百鼓は、そのすべてをすらすらと紙束に記し、背負い箱に備え付けられたいくつもの引き出しをてきぱきと開ける。中から草や木の葉っぱ、大きく膨れた茎や根、果ては何やら得体の知れない色に光るすり粉まで取り出して、うんうんと唸りながらすり鉢の中へ放り込み始めた。もちろん、瓜蔵には薬の知識などないので、何が何やらさっぱりわからない。呆気に取られたまま、まるで手品を見せられているかのような心地でそれを眺めていた。
「さて、こんなところかな」
「もうできただか。薬師さまはすげえなあ」
「いやいや、これが仕事だからね。ひとまずこれで、症状がいくらか和らぐはずだ」
やがて薬が完成すると、百鼓はその粉を小さじと一緒に丁寧に袋に包み、大きな掌に載せて瓜蔵にそっと手渡した。およそ半刻もかかっていないであろうその手業に、瓜蔵は思わず感嘆の声を上げる。幼い頃から体が丈夫で、せいぜい軽い風邪程度しか引いたことのない瓜蔵にとっては、初めて手にする薬である。あまりの物珍しさに、思わず包みを開けてじっくりと眺めたくなってしまうが、それでは仙八に飲ませる前に風一つで吹き消えてしまうと思い直して、瓜蔵はうずうずと動く右手をぐっとこらえた。
「完治まではもうしばらくかかるだろうから、その薬を飲み終えるまでには君とお爺様のところを訪ねると約束しよう」
「ありがとな、薬師さま。これできっと、じっちゃんも元気になるだ」
頭を深く倒してお辞儀をすると、瓜蔵は喜び勇んで帰路に就いた。祖父の言い聞かせてくれた通りになった、と喜びに小躍りしながら、まさしく猪突猛進の勢いで麓へ駆けてゆくその背を見送ろうとした一瞬、百鼓はしまった、とばかりに小さく口を開いた。みるみる小さくなる背中に向けて、腹の底から絞り出した声を張り上げる。
「あ、そうだ。強めの精力剤を加えてあるから、くれぐれも容量を守って……」
木々の間を軽やかに蹴りながら村へと帰ってゆく瓜蔵の耳に、その声は届かなかった。これを飲ませれば、じっちゃんは元気になるかもしれない。また一緒に畑を耕し、おいしい飯をたらふく食べて笑い合えるようになるかもしれない。そう思うと、いてもたってもいられなかったのだ。期待に胸が膨らむほどに、駆け降りる足も勢いを増す。まるで地滑りのような速さで斜面を下り、瓜蔵は病床の祖父が待つ家へと一直線に走り抜けていった。
※
激しく息を切らし、足をもつれさせながら、瓜蔵はようやく村に帰ってきた。夕暮れの中で寝床から上体を起こした祖父に事情を説明すると、仙八は何よりもまず「ええことをした」と瓜蔵を褒めたたえた。嬉しさに小躍りしたくなるのをこらえて、瓜蔵は早速夕餉の用意をし、いつものように仙八に粥を飲ませる。
(一度にいっぱい飲んだ方が、きっと早くよくなるだ)
そう判断して、瓜蔵は包みの中に同封されていた小さじを三、四回に突っ込み、匙に山盛りにした粉薬を薄い懐紙に乗せて祖父に渡した。あまりにたくさん粉が盛られているものだから、仙八は思わずむせそうになったが、どうにか白湯を喉に流し、薬をすべて飲み干した。良薬口に苦し、とはいうが、薬は苦いというより香ばしい独特の風味を宿しており、少なくとも仙八にとってはそう悪くはない口当たりであった。
「少しは効き目があるとええけんど……」
「なあに、おまえと薬師さまの真心のこもった薬じゃ。きっとたちどころによくなるわい」
優しい声でそう言うと、仙八は花が咲いたように温かく微笑んだ。その笑顔を見ているだけで、瓜蔵はとても嬉しかった。祖父の教えに従い、誰かを救って得た成果が、その祖父を喜ばせる。もし薬に少しの効き目もなかったのだとしても、今こうして祖父に笑顔をもたらしているだけで、自分の働きは決して無駄ではなかったと思える。久方ぶりに心の底から幸せな気持ちに包まれながら、瓜蔵は先に寝息を立て始めた仙八の横で静かに眠りについた。
それからの数日は、あっという間だった。
「瓜蔵、おかわりじゃ」
「すげえな、じっちゃん。臥せる前よりよく食っとるんでねえか」
「長らく食っとらんかった分だけ、腹が空いとるのかもしれんのう」
翌日、少量の粥をすするのがやっとだった仙八の食欲が戻り、朝飯からいきなりお椀を三杯も平らげた。あまりに食べる量が急に増えるものだから、貯えた米の計算が狂い、粟(あわ)や稗(ひえ)を混ぜて炊かなければならないほどだった。瓜蔵は嬉しくなって、山に出稼ぎに行く代わりに近所の川へ行き、鮎を魚籠いっぱいに釣り上げて焼き魚を作った。仙八はそれも三尾まるごと平らげて、骨に肉の一つも残さなかった。食べれば食べるほど、しおれていた仙八の頬に、福の神を思わせる柔らかな膨らみとりんごのような赤みが戻りつつあるのを見て、瓜蔵はたいそう喜んだ。喜びのあまり、昨日よりも薬を多く盛って、仙八にどんどん飲ませた。仙八は、物には限度というものがあると内心思いつつも、かわいい孫の好意を無碍にはできなかった。
「瓜蔵、わしも手伝うぞ」
「じっちゃん、もう起きても平気だか?」
「今まで寝とった分動かんと身体がなまる。働かざる者食うべからずじゃ」
その翌日、仙八は布団を出て歩けるようになった。背中に文鎮を乗せられているように重かった体がすっかり軽くなり、家の中から庭の端まですたすたと歩き回ってもまったく苦にならない。気を良くした仙八は、伸び放題の白髪と白髭を括って動きやすい姿になり、それまで任せきりだった掃除や飯炊き、果ては草むしりまでやってのけた。瓜蔵は祖父の早すぎる回復に首を傾げたが、めでたいことだとすぐに思い直して、また少し薬の量を増やしてやった。てきめんに表れた薬効にすっかりのぼせあがっていた仙八もまた、山盛りの薬を喜んで飲み干し、体の芯から脈打つように湧き上がる活力に胸を躍らせていた。
「じっちゃん、さすがにまだ鍬を持つのは早えだよ」
「いや、もう大丈夫じゃ。自分の体のことは自分が一番よくわかる」
さらにその翌日、仙八の体にはますます活気がみなぎり、とうとう畑仕事に出かけるまでになった。分厚い掻巻(袖のついた寝具)を脱ぎ捨てて、半年ぶりにつぎはぎの着物に袖を通すと、瓜蔵と並んで畑へ向かい、てきぱきと仕事をこなす。その働きぶりといったら、病に臥せる前よりもずっと立派なもので、働き盛りの瓜蔵でさえ見劣りしてしまうほどだった。祖父に負けじと、瓜蔵も普段よりなお気合を入れて鍬を振り、額に汗して一生懸命に働いた。
二人並んで畑を耕す中、瓜蔵はふと鍬を構えて身を屈める仙八の姿を横目に盗み見た。短い裾から見え隠れする尻や太もも、でっぷりと膨れて飛び出した腹もすっかり元に戻り、うっすらとかいた汗に濡れた毛皮が日差しを浴びてどこか艶めかしく輝いている。手の甲で額の汗を拭い、軽く一息をつく祖父の様子を見るにつけ、瓜蔵は言葉で言い表せない昂ぶりに襲われるのを感じた。思わず飲んだ生唾に、喉がごくりと音を鳴らす。生まれてこの方、村とその周りしか知らず、色事に親しむ暇もないまま日々の労働に励んできた瓜蔵には、今この胸でどきどきと音を立てる激しい高鳴りの意味が、どうしてもわからなかった。
「まさかこんなに早くよくなるなんて、驚いただ。これも薬師さまのおかげだ」
その日の夜、瓜蔵は村の者から快気祝いに分けてもらった獣の肉を取り出すと、いくらかの野菜と共に鍋で煮て、仙八に振る舞った。畑仕事の疲れも見せず、大口を開けて肉にかぶりつく仙八と共に囲炉裏を囲んでいると、自然と笑みがこぼれてくる。
「今日は久しぶりにじっちゃんと畑に出られて、嬉しかっただよ」
「わしもじゃよ。薬師さまとやらが村に来た時には、たいそう恩返しをせねばいかんのう」
白眉の下の目が見えなくなるまで瞼を細め、絵に描いたような満面の笑みを浮かべた仙八を見ていると、瓜蔵はなぜか気恥ずかしくなって目を逸らした。病を得る前は毎日当たり前のように眺めていたはずの笑顔が、今はまるで違うように思える。そわそわと胸を騒がせる違和感の理由を考えれば考えるほど箸は鈍り、気が付けば玉杓子を手にしたままじっと動きを止めてしまっていた。食い意地の張った瓜蔵が、普段はとても食べられないようなご馳走を前にして手を止めるとなれば、おおらかな仙八も流石に訝しむというものである。
「どうした瓜蔵。手が止まっとるぞ」
「ああ、いや、なんでもないだよ」
心配げに首を傾げる仙八に促されて、瓜蔵は慌てて鍋から汁をすくった。勢いあまって飛んできた汁の熱さに手を下に振ると、その様子を見かねて、仙八はまたもからからと笑う。囲炉裏に揺らめく炎を前に苦笑いを漏らすと、瓜蔵は獣鍋の汁を高く掲げて飲み干した。喉奥を熱いものがくぐる間も、揺れる白髭に引き寄せられた視線は決して逸らせなかった。
胸の内を巡るもやもやとした気分の正体を突き止められないまま、瓜蔵は仙八と共に鍋をすっかり平らげた。両足を伸ばして美味の余韻に浸る仙八をよそに、後片付けのために厨へ行って戻ると、納戸に仙八が布団を敷いておいてくれていた。久方ぶりに二つ揃えて並べた布団に身を差し入れると、すぐ隣に祖父の大きな顔があることに深い安心を覚える。
「おやすみ、じっちゃん」
「うむ、おやすみ。瓜蔵」
布団から出した首を向かい合わせて挨拶を交わすと、二人は瞼を閉じた。布団の温かさと程よい満腹感に包まれて、瓜蔵の意識はすぐに遠のいていき、やがて突き出た鼻腔の奥から静かな寝息が漏れ始める。胸に込み上げた昂ぶりも、食事の席で覚えた違和感も、すべてが眠りの淵に押し流されて意識の外へと掻き消えてゆく。
だが、その隣に身を横たえる仙八は、一向に眠れなかった。どれほど瞼をきつく閉じても、体のあちこちがむずむずと落ち着きなく動き回り、夢の中へと落ちてゆこうとする意識を四方八方から阻む。体の内側からじわじわと炙られるように、正体不明の熱気が萎びた肌の奥に込み上げる。それはまるで、内奥に滾る青い欲望を持て余していた若き日のようで。
「うぅ……ん、む……ぅ……っ」
あまりの寝苦しさにもがくように布団を捲り、仙八は夜の冷めた空気に寝巻一枚の肢体を晒した。それが、長い夜の幕開けとなった。
※
(……これは、いったいどうしたものか)
障子越しに差し込む月明かりに照らされた自分の体を見やって、仙八は驚いた。丸く膨れた腹の下にひっそりと息衝く逸物(いちもつ)が、うっすらと硬さを帯びていたのだ。
仙八の肉棒は病を得るより前、かれこれ十年ほど前から萎えて久しい。その衰えぶりといったら、用足しのあとに腰を振っても枯草のようにへなへなと折れ曲がるばかりで、先立った妻の女陰(ほと)はおろか、柔らかい絹豆腐にすら押し負けるほどだった。特別性欲が強いという方でもないし、老いさらばえた身で逸物がどうだと騒ぎ立てるのも年甲斐がない。枯れてゆく雄のしるしを惜しむ気持ちを胸の奥にしまい込んで、仙八は今日まで生きてきた。息子夫婦を流行り病で失ってからは、二人の忘れ形見である瓜蔵を育て上げることにかかりきりになって、自分の逸物が使い物にならないことさえもすっかり忘れていた。
そんな役立たずのなまくら刀に、しなやかな芯が入っている。ゆるんだ褌を押し上げてこんもりと小山を作るその姿を見るにつけ、体を包む熱気はさらに勢いを増してゆく。胸の中で太鼓のように心拍が荒れ狂い、次から次へと湧き出す汗が額を湿らせる。体中を駆け巡る血の滾りが求めるものが、仙八にはすぐにわかった。だが、凝り固まった躊躇いがそれを阻む。
(い、いかん……わしは病み上がりの身じゃ。それに、隣には瓜蔵もおる……)
逡巡に激しく首を横に振りつつ、仙八は隣で大きないびきを立てる孫の寝顔を盗み見た。一日たりとも休むことなく、祖父のためにと懸命に働いてくれた孫の愛らしい姿を見つめていると、一抹の後ろめたさがよぎり、徐々に下腹部へ向かいつつあった仙八の手を止めさせる。孫が危険を承知で人助けをし、ようやく手に入れた薬を惜しげもなく飲ませてくれたおかげで、今こうして自分は生きている。病が治り切ったかどうかも定かではない体で一人遊びに興じ、万一また調子を崩しでもしたら、孫の努力と温情を台無しにしてしまう。考えれば考えるほど、伸ばした腕はひとりでに進み、板挟みの心情をかき乱す。
「はぁ……はぁ……っ、ぁ、はぁ…………はぁ…………っ」
ぼんやりと開いた口の中がからからに渇き、ためらう指先がわなわなと震える。たまらず横に視線を流すと、瓜蔵の腹が布団の下で大きく上下するのが見えた。獣の鳴き声にも似た大いびきは、なおも途切れることなく響き渡っている。寝返りを打ったそばからだらだらとよだれを垂れ流すその様子は、孫が深く寝入っていることを如実に示していた。
一度だけ、ほんの一度だけ。
孫にばれないように、一度だけなら。
「ん……っ、お……ぉ……っ、んんっ」
大きな腹をよけて脇から臍(へそ)の下へと手をくぐらせ、寝巻きの間からまろび出た古い布の膨らみに指を添えると、長らく忘れていた感覚が蘇り、甘やかな痺れとなって膨らむ。下腹部にじわじわと広がる、快い感覚。たまらず腰を持ち上げた途端、垂れ下がった尻肉が重々しく震え、小波のようにもどかしい刺激が背中を撫で上げる。
一撫でだけでここまで昂るのなら、その先に歩みを進めればいったいどうなってしまうのか。恐る恐る結んだ掌が褌越しに男根を握り締めると、喉元までせり上がった声がきつく結んだ唇から零れ落ちる。長らく味わっていなかった悦楽の味はあまりに刺激的で、一度求めだすと止まらない魔力に満ちていた。少しずつ背筋を炙る稲妻に急き立てられて、仙八を戒める理性の箍が一つずつ外されてゆく。
「ふ……ぅっ、く、ぁ……あぁ……っ」
懸命に息を殺しながらも、まるでせんずりを覚えたての小僧のように夢中になって弄ぶうち、熱を帯びた布の内側はこんにゃく玉ほどの硬さに育っていた。芯の硬さは未だ半ばとはいえ、十数年ぶりの勃起。齢七十を過ぎ、老い衰えてゆく体の奥に封じ込めていたはずの雄の本能がふつふつと沸き立ち、股間をまさぐる指は次第に激しさを増す。
そのうちに、まとわりつく二重布の重ささえ鬱陶しく思われて、仙八は六尺褌の前袋を脇へずらした。夜の外気に晒され、障子から差し込む月の薄明りが、体格の割に小ぶりな仙八の逸物を照らし出す。勃ち切らないままとはいえ、指で尺を取れる程度の長さしかない小刀。掌を窄めて握る程度の太さも業物には程遠く、加齢に黒ずんだ包皮は亀頭の半ばまで余り、芋虫のような覇気のない姿をさらしている。しかし、その先端につつましく開いた鈴口からは、ありあまる欲情の丈を示すかのように、粘り気のある透き通った汁がとろとろと流れ出す。月影に鈍く光るその汁を指先にすくって、年の割に綺麗な桃色の先端に塗り付けると、それだけで気をやってしまいそうなほどの快感が迸った。
(うむ……もっと、もっと硬くならんかのう……もっと……)
勢いに任せて、仙八は揉みつぶすように亀頭をまさぐり、柔らかいままの竿を握り締めて思い切り前後させた。老体に似つかわしくない激しい擦過に、玉裏がきゅう、と縮み上がり、噤んだ唇の奥からかすれた喘ぎが零れ落ちる。空いた片手で太腿をさすり、ふてぶてしくぶら下がった金玉を握って引き絞ると、閉じた瞼の裏側を煌めく星が走る。
蒸し風呂のようになった布団の中、じっとりと汗ばんだ巨腹が波打ち、女人のようにたわわに実った胸が震える。自慰に興じれば興じるほど、押し寄せる快感は留まるところを知らず、老いたる身に蘇った雄の情動はますます昂っていく。それなのに、逸物だけが一向に硬くならない。行き場を失った放精への渇望ばかりがふつふつと煮え滾る中、仙八は果てへと至る一手を求めて股座のあらゆる場所を探り、ついに手をかけた。雄を狂わせる、最奥の扉に。
「おっ……!? ほぅ……っ、う、おお……なんじゃ、これは……」
初めは、完全に不本意だった。汗と先走りにまみれた指先が太腿を這い回るうち、いつの間にか尻奥のすぼみに引っ掛かり、滑り気の導くままに肛門を貫いていたのだ。更なる興奮を求めるあまり、強く押し付けていたその指が、幾重にも重なる尻穴の襞を奥まで一気に貫いてしまったのは、仙八にとって不幸だったのか、それも幸運であったのか。長年の農作業に鍛えられ、逞しく節くれだった老農夫の指が、雄を啼かせる急所を掠め、内側から撫で擦る。尻穴に蠢く異物感も、次第に性感を引き立てる調味料と化し、仙八をじわじわと骨抜きにする。
「ああ、いい……気持ちいい……」
尻穴に差し込んだ指先を強く押し込みながら、仙八は恍惚とした表情で呟く。決して隣に聞こえないようひそめた声で、それでも口にせずにはいられなかった。今宵まで知らなかった極上の悦楽、知るはずのなかった新しい領域。そこに足を踏み入れる背徳と、その先に至りたいと欲する好奇心がもたらす高揚を吐き出さなければ、どうにかなってしまいそうだったのだ。
「ううっ、くうっ……も、もっと、奥まで……おっ、んおおっ」
股座に沿えた右手を激しく動かしながら、仙八は尻に突き刺さった左手の人差し指を一心不乱に奥へと押し付け続ける。頭まで被った布団の中に荒げた息が充満し、籠った熱に耐えかねて全身から汗が吹き出すと、顎から伸びる白髭さえもその雫に濡れてしっとりと垂れ下がった。羽化を間近に控えた蛹のように、蠢く大判の布団の中で、一人の老爺が一匹の獣に姿を変えてゆく。
「ん、んんっ、おっ、おおっ、おぉ………………っ」
どれほど身を捩ったところで、太く短い仙八の指では尻穴を奥まで貫き通すことはかなわない。それでも、後背を震わす未知の衝動に浮かされて、仙八はひたすらに指を押し付ける。ねじを回すように回した指先が襞を押し広げ、わずかに感触の異なる『そこ』を抉り穿つ。その挙動に応じ、湧き水のように延々と垂れ流される先走りが、掌をどろどろに汚してゆく。
(尻の穴が、こんなに気持ちがいいとは……わしは、どうにかなってしまったのか……?)
今や四方八方から責め苛む暴力的な快楽に耐えかねて、仙八は布団の中で蹲った。朦朧とする意識を絡め取るのは、遠く褪せた思い出の中にある手慰みとはまた違う、体の芯から湧き出るような快楽。それは、短いうちに上り詰め、放出してしまえばそれまでの雄の悦びとは全く異なるもの。水面を広がる波紋にも似た、寄せては返す感覚の連鎖は、人生の黄昏に差し掛かった仙八の精神を激しく揺さぶる。未だかつて味わったことのない蹂躙に戸惑いながら、それでも手指は止まらない。心のどこかで芽生えた恐怖心を押し流すように、白濁の鉄砲水が竿の内側にせり上がる。
「はぁ……はぁ……っ、はぁ……はぁぁ……っ! うっ、ぬうぅ……っ!」
必死に引き絞った唇の奥に、断末魔のような絶叫が響く。それと同時に、硬くなりきらない仙八の逸物から、雪解け水のように薄い種汁が溢れ出た。鈴口に指先を押し付けてもなお、膨れた先端から零れ落ちる絶頂の証。わずかに粘り気を帯びたその雫に寝巻と布団を汚しながら、仙八はゆっくりと意識を手放した。やっとの思いで布団から突き出した顔に、夥しい量の汗を浮かばせたままで。
※
それから、一週間ほどの時が流れた。仙八はすっかり元通り、いやそれ以上の健康体となり、瓜蔵に引けを取らない働きぶりで野良仕事に明け暮れた。雨風にも負けず田畑に立ち、朝昼晩と大盛りの飯をたいらげ、時には瓜蔵の案内で山仕事にも精を出した。ある日には川釣りで釣果を競い、魚を焼いてたらふく食べて、心地よい疲れの中で眠りに就いた。
青い空を流れる浮雲のように穏やかで、何事もない日々。夢にまで見た、祖父と過ごす幸せな毎日。しかし、そんな和やかな日常の中で、瓜蔵にはひとつだけ気にかかることがあった。
「こんなに元気になったら、もう薬もいらねえんでねえか」
「いやいや、薬というのは一度出されたら最後まで飲み切るものなんじゃ」
その日の夕食後、瓜蔵の問いかけに仙八はそう答えた。仙八が自由に動き回れるようになった今となっては、瓜蔵が飲ませてやる必要もない。仙八は毎食後にせっせと摺り切り一杯の薬を飲み下し、器に移し替えた薬は、初めにもらった量の半分ほどまで減っていた。
「では、今宵はもう寝るとするかのう」
「おう。おやすみ、じっちゃん」
いつものように挨拶を交わして布団に入ると、瓜蔵は静かに目を閉じる。しかし、瓜蔵には眠るつもりはなかった。湧いて出る眠気を物思いでふさぎ、うつらうつらと宵闇に沈みかける意識を懸命に保つ。路傍の石のように身を固め、狸寝入りを決め込みながら、来るべきその時をじっくりと待つ。
瓜蔵の気がかりは、近頃仙八が夜中に一人で布団を抜け出しているらしいことだった。事の発端は一昨日、ふと夜中に目を覚ました際に祖父が隣にいなかったこと。最初に気付いた時には用を足しに行ったものかと思ったが、それにしてはやけに帰りが遅かったのだ。心配に胸が引き絞られ、探しに行こうと身を起こそうとした矢先、戸が開いて月明かりが差し込み、仙八は何事もなかったかのように戻ってきた。いそいそと布団に潜り込んで眠りに就いた祖父を起こす気にもなれず、その日の瓜蔵はそのまま眠りに就いた。
翌日になって問い質してみても、仙八の答えは「厠に行っていた」の一点張りで、妙に手間取っていた理由までは話してくれなかった。瓜蔵も一度は自分の考えすぎかと思ったが、それにしてはやけによそよそしい祖父の態度が気にかかり、寝入ったふりをして待ってみることにした。しばらく寝息を立てていると、祖父は昨晩と同じように寝床を抜け出してどこかへ行ってしまい、月の傾きが変わるまで帰ってこなかった。ただ厠に行っていたにしては、あまりに長すぎる間である。
一晩だけなら何かの気まぐれと思えたことも、二晩にわたって続いてしまえば疑らずにはいられない。ひょっとしたら、祖父はまだ本調子ではなく、夜の間に自分に隠れて苦しんでいるのではなかろうか――そんな心配さえ湧いて出て、瓜蔵はいてもたってもいられなくなった。今晩こそは、仙八の行先を突き止めねばならない。そう決意して、瓜蔵は今宵もその身を横たえた。祖父の域が静かになる頃を見計らい、いびきを装って鼻を鳴らせば、布団が擦れる音と共に、祖父の気配が隣から消える。わけもなく緊張に震える胸を押さえて立ち上がると、瓜蔵は被った布団をすぐさま剥ぎ取り、半開きになった障子戸をくぐって仙八の後を追った。
厠や囲炉裏、台所を覗いてみても、仙八の姿はどこにもない。家の外に出たのかと勘繰ったものの、そもそも祖父が起き上がってからそう時間は経っておらず、庭先に真新しい足跡も見受けられない。となると、仙八が向かった先として考えられるのは、農具を収める蔵だけだ。得物を狙う狼のように身を屈め、忍び足で蔵に近付くと、閉じた扉の向こう側から、小さく苦しげな声が聞こえてくる。
「……ぅ、ふぅ……はぁ、はぁ……ぁ……」
わずかに開いた扉の隙間から漏れ聞こえる声は、間違いなく祖父のものだった。やけに間の空いた吐息の連なりは、病床の傍らで聞いた呻き声にも似て、瓜蔵の胸の奥に不安の渦が押し寄せる。やはり、祖父は自分を心配させまいと隠れて苦しんでいるに違いない。そう確信して、瓜蔵は扉に手をかけた。
「じっちゃん、大丈夫だか。今おらが助けにいくだよ」
「う、瓜蔵! い、いかん、こっちに来ちゃいかん……っ、んんぅっ」
やると決めたら迷わず進むのが、瓜蔵という雄である。慌てふためく仙八の制止など聞く耳も持たず、音が立つほどの勢いで扉を左右に開け放つと、そこには予想だにしない光景が広がっていた。
まず目に飛び込んでくるのは、蔵の床に布を敷いて横たわる仙八の姿。寝巻の帯を緩めて左右に広げ、茶褐色の毛皮に覆われた裸体を薄暗い蔵の中に晒している。肌寒い夜には似つかわしくない汗を毛先の一本一本から滴らせ、股座には薄汚れた褌を締めただけの心許ない装いがやけに艶めかしく見えて、瓜蔵は思わず目を細めた。しかし、視界を狭めても、視線そのものを逸らすことは決してできない。荒い息に上下する大きな腹、中身をこんもりと詰め込んだ土嚢のように膨らんだ股間。そして、尻に一直線に突き刺さった鍬の柄。
瓜蔵自身、物わかりのよい方ではないという自覚はある。しかしどれほどの智者であったとしても、この異様すぎる光景を目の当たりにすれば言葉を失わずにはいられないだろう。二人きりの家族として長らく共に暮らしてきた二人の間柄にさえ沈黙をもたらす、理解の範疇を飛び越えた景色。互いに唖然としたまま、深夜の蔵中に心音だけがやけにうるさく響く。やがて沈黙を破り先に口を開いたのは、瓜蔵だった。
「じ、じっちゃん……何やってるだか」
「こ、これは、その……じ、実は……」
尻の谷間に深々と突き刺さった木製の柄をいそいそと抜きながら、仙八は毛皮の奥の頬を激しく赤らめて語り始めた。一週間前の晩から、自分の体に起こり始めた著しい変化を。
※
「それでじっちゃんは、尻の穴をほじるのがくせになっちまって、隠れてこそこそ尻をいじってたってことか」
「そ、その通りじゃ。ううむ、改めてそう言われると、なんともこそばゆいのう……」
そう言いながら、仙八は照れ臭そうに長く伸びた白い後ろ髪をたくし上げた。太いうなじをおもむろに掻き毟ると、俯いたまま視線だけを上げて孫のぼんやりとした顔を見つめる。
初めの晩は、どうにか布団の中ですべてを済ませることができた。しかし、次の晩からは、噴き出す汗も零れる喘ぎも布団の中には収まらなくなり、やむなく閨を出て蔵に身を隠して自慰に興じた。そうして隠れて尻穴弄りに興じるうち、蔵に収めた農具の数々が目に入ってしまったのが運の尽きであった。仙八は、自分の指よりもずっと太く長い鋤や鍬の柄を己の秘所に挿し入れて、より深く激しい快楽を追い求めるようになってしまったのだ。
「心配をかけてすまんのう。体の方はなんともないが、こんな恥ずかしいこと、いくら孫にも大っぴらには話せなんだ……」
顔から火が出る、を地で行くほどの赤面を両手で隠しながら、仙八は震える声で弁明した。恥じらいに首を振りながらも、袖を通しただけの寝巻は変わらずはだけたままで、あぐらをかく股座は未だ冷めやらぬ興奮に膨らんでいる。それどころか、愛する孫に痴態を見られてしまった事実が、かえって仙八の昂ぶりを更に増しているようにも見受けられた。
一方の瓜蔵も、初めて見る仙八のあられもない姿に興奮を禁じ得なかった。無論、一つ屋根の下で暮らしているからには、祖父が裸でいる姿など今更珍しくもない。仙八が病に横たわっていた頃は、着替えや身拭いも手伝っていたのだから猶更である。しかし、今こうして見下ろす上気した肢体は、これまで瓜蔵が眺めてきた祖父のそれとは一線を画す。熟して地に落ちた果実の裂け目から覗く瑞々しい果肉のように、なぜか心にこびりついて離れない鮮烈な印象。それが官能的であるということさえ知覚できない初心な若者の胸を、返しのついた楔が深々と突き刺す。その楔がもたらす抗いがたい衝動のままに、瓜蔵は頭に浮かんだ言葉を祖父に向けてそのまま投げかけた。
「尻の穴って、そんなに気持ちいいだか?」
「あ、ああ……しかし、自分で触るだけではどうにも飽きが来てな。こうして、いろいろと差し込むものを工夫しておったんじゃ」
もちろん瓜蔵の使う鍬には手を出しておらんぞ、と後ろ手を組みつつ弁明する仙八のはだけた腹を、瓜蔵は色付いた瞳でまじまじと見つめた。なだらかな丘陵に視線を這わせ、舐めるように見回せば、胸の奥にぎらついた灯が宿る。躊躇いに震える喉奥をどうにか鎮めて、瓜蔵は祖父に向けて更なる問いかけを放つ。
「……おらが触ったら、じっちゃんはもっと気持ちよくなるだか?」
「おまえが? い、いや……しかし、孫のおまえにそんなことはさせられん……」
脳裏をよぎる期待を即座に放り捨てて、仙八は大きく首を横に振った。自分の手指だけでは足りず、はしたなくも器具にさえ頼った仙八にとって、願ってもない助力の申し出。しかし、その相手が瓜蔵となれば話は別である。一つ屋根の下で暮らし、雄一人の力で懸命に育て上げてきた目に入れても痛くない愛孫を、自分の淫らな欲望に従事させるなど言語道断。白髭を激しく振り乱し、精一杯の拒絶を示すも、瓜蔵はかえって瞳を深い鈍色に輝かせた。
「でもおら、じっちゃんの尻に触りてえ。そんなとこ、汚えはずなのに……」
吸い寄せられるように祖父の裸体に手を伸ばす瓜蔵の鼻先に漂うのは、はためく白髭に扇がれた仙八の体臭であった。老身に漂う加齢臭に加え、体中から分泌された汗と、発情に伴って醸し出される雄の臭気が混ざり合い、常人なら鼻先を背けて顔をしかめてしまうほどの強烈な臭いを醸し出す。だが、その悪臭と称して余りある臭いが、瓜蔵にはなぜか魅力的に思えた。突き出した鼻を幾度も鳴らし、淀んだ大気を体内に取り入れる度、頭が蕩けそうになる。
「じっちゃんのくっせえ臭い嗅いで、じっちゃんの恥ずかしいとこ見てたら、おら……なんだかむずむずしてたまらねえだ」
快復した祖父を見る度に感じていた、一言では言い表せない高揚感が、瓜蔵を骨の髄まで篭絡する。横たわる祖父へ向けてわななく手を伸ばし、一歩また一歩とにじり寄る若い肉体。褌につかえる逸物は、寝巻の上からも容易く見て取れるほど大きく膨れ上がっていた。薬の効能もあってのことか、年の割には張りの出た祖父の胸元がやけに眩しい。高まっていく鼓動に合わせ、息を荒げれば荒げるほど、ますます体に取り入れられる臭いが、祖父と孫を隔てる境界を侵してゆく。
「じっちゃん……おら、変になっちまっただか……?」
何かをねだるように切なげな表情で、瓜蔵は仙八に問いかけた。やけに熱を帯びた唇を開いては閉じる間に、牙の奥から染み出る唾液が口腔を満たし、糸を引いて隙間から垂れ落ちる。ずっと胸の奥で渦を巻いていた、形容しがたくもどかしい気持ち。注がれた水が器から溢れるように、自分一人だけではとても扱いきれない感情が瓜蔵の中から延々と垂れ流される。気が付けば、大きく見開いた眼の端から温い雫が溢れていた。
「……そうじゃな。雄が雄に熱を上げるのはおかしなことじゃ」
なだめすかすように頷きながら、仙八は瓜蔵の頬に手を伸ばした。頬を伝う涙を広い指腹でそっと拭うと、きょとんとした孫の顔を両側から掴み寄せ、ふくよかな腹へと迎え入れる。思えば、こうして孫を抱き締めるのは何年ぶりだろうか。胸元に押し付けられる顔は記憶の中のそれよりもずっと大きく、背に回した腕には野良仕事で鍛えられた筋肉の隆起が絡まる。猪にしては小ぶりの体に、確かな強さと逞しさが備わっていることが触るだけでわかる。腹を押し返す胸筋の弾力に、孫の成長を図らずも実感させられ、仙八は鼻腔を大きく膨らませた。周囲に広がった自身の臭気と、瓜蔵の体にこびりついた土埃と若さの臭いが、胸の奥に湛えた欲情の水面に新たな興奮の石を投げ入れる。
雄同士のまぐわいについては、昔馴染みとの四方山話の中で耳に挟んだことがあった。聞けば、仏門や武家にはごくありふれた風習らしいが、貧乏暇なしの農民にはいずれも想像もつかない世界の話で、無論仙八も自分とは無縁のものだと思い込んでいた。だが、尻の疼きを抱えたまま、こうして孫を胸にかき抱くこの一時を、仙八は確かに好ましいものと感じつつあった。それが『おかしなこと』とわかっていながら、求めずにはいられなくなっていた。たとえその相手が、自らの血を分けた孫だとしても。
生唾を一つ呑み込んで、仙八は覚悟を決めた。顎に手を当てて持ち上げた孫の顔に真正面から向き合って、淀みなく言葉を紡ぐ。
「じゃがな、瓜蔵。そういうわしもおかしくなってしまったんじゃ。……この際、二人揃っておかしくなってもええじゃろう」
「じっちゃん……」
仙八の腰にしがみつく瓜蔵の両腕に力がこもる。喜びにほころぶ表情とは裏腹に、大きな腹を潰さんばかりに引き寄せてくるその強さに、仙八は瓜蔵の胸に宿る渇望を改めて思い知らされた。肉親同士、雄同士の障壁を叩き壊し、禁忌の向こう側へ踏み込むために必要な決意を補って余りある情熱が、仙八の巨躯に埋もれた瓜蔵の体からひしひしと伝わってくる。こうなれば、もう後戻りはできない。
「瓜蔵。このことは、村のみんなには内緒にするんじゃぞ」
「わかった。おら、絶対に誰にも言わねえだ」
指切りの代わりに、仙八は間近に迫った瓜蔵の口吻に己のそれをずい、と近付けた。大きく突き出た鼻頭を互い違いに掠めて、その下で潤む唇を重ね合わせる。初めての感触に目を白黒させる瓜蔵の頭を左右から優しく押さえつけながら、仙八はぬめる舌先を孫の厚い唇に這わせ、隈なく唾液を塗りたくる。瓜蔵は苦み走ったその味わいに戸惑いながらも、仙八の粘つく舌による歓待を受け入れ、徐々にその身体を祖父の上へと横たえてゆく。
こうして、先程まで祖父と孫だったはずの二人は、瞬く間に一組の番いへと化した。親愛と肉欲に絡め取られ、互いの体臭にまみれて夜の向こう側へと溺れる二匹の猪。その艶めかしい姿を、蔵の格子窓から覗く月だけが、静謐のままにじっと見つめていた。
※
「どうすればええ、じっちゃん。さっきみたいに柄でほじくればええか?」
「ああ……すまんが、乱暴にはせんでくれ。優しく、おまえの思うようにゆっくり動かせ」
決心を固めてなお恥じらいを湛えた祖父の声に促されるままに、瓜蔵は仙八の分厚い尻肉を後立褌ごと片手でぐっとかき分けた。小刻みに揺れる脂肪の向こう側で、うっすらと襞をめくれ上がらせた肛門は、中心に開いた空白を埋める何かをねだるようにひくひくと蠢いている。生まれて初めて間近に観察する、他人の尻穴。それにもかかわらず、瓜蔵には仙八が何を求めているのか、今の自分がどうすべきかがすぐにわかった。まるで、本能に命じられるように。
「……こうか。気持ちええか、じっちゃん」
「んぁっ、あんっ……ぁ、あぁ……っ、気持ちええ……っ」
探り探り押し当てた鍬の柄が、ひとりでに肉穴に吸い込まれてゆくものだから、瓜蔵はたいそう驚いた。祖父の体内へ深々と歩みを進めた木の棒を抉り込むように動かすと、その度に祖父の上ずった声が響き渡る。その音韻は煮え滾る鍋の具のように熱く湿り気を帯びていて、聞き慣れた低く温かい声色とは一線を画している。やけに耳にこびり付き、むず痒く胸に残るこの響きが、いわゆる『喘ぎ声』と呼ばれるものであることを、この時の瓜蔵はまだ知らない。
「おぅっ、おっ……ほぅ、っ、おおっ……」
瓜蔵が右手に携えた鍬を緩やかに動かすと、仙八の腰はその律動に合わせて艶めかしく踊る。ゆっくりと円を描き、肉付きのよい腰を揺らめかせて舞うその動きに、瓜蔵は思わず息を呑んだ。右に突いてやれば右に、左に突けば左に。そして逸物の裏側を擦ってやれば、仙八は背を弓形に吊り上げて一際大きな嬌声を上げる。まるで祖父が自分に操られているかのような光景を目の当たりにして、瓜蔵の背筋に背徳の電流が迸る。だらしなく涎を垂らし、舌を突き出して尻穴の快感に浸る仙八を見れば見るほど、高鳴る鼓動は加速してゆく。
「あっ、あんっ……ち、乳、乳も、気持ちええ……」
身悶える仙八の瞳に、屹立する桃色の蕾が映る。小ぶりの西瓜が二つ並んだような胸の頂で、小豆大にまで膨れ上がった乳首。普段はまるで気にも留めないそれが、今の仙八にはなぜかやけに気にかかった。両脇に投げ出していた手を恐る恐る胸に沿わせ、指先で膨らみを撫でると、仙八の胸に切ない痺れが走る。尻から響く快感を引き立て、更に高めるようなその感覚に、仙八はなりふり構わず両乳首を摘まみ上げ、はしたなく声を上げる。その声に、瓜蔵が応えた。
「乳……? これか?」
「んんぅっ! おぉっ……お、ほお……っ、え、ええぞ……瓜蔵……」
大きな体によじ登るように寄り添って、瓜蔵は仙八の乳に手をかけた。片手で尻への刺激を絶えず与えながら、もう片方の手で肉の蕾を捏ね繰り回すと、仙八の声はますます大きく上ずり、蔵全体に反響する。おっかなびっくり、磨り潰すほどの強さで擦り上げてみても、仙八は痛みに叫ぶことはない。それどころか、ますます淫らに舞い踊り、饐えた汗の臭いを辺りに振りまく始末。そうして充満した雄の臭いが、仙八と瓜蔵を更なる興奮の渦へと巻きこんでゆく。焦茶の毛並みは噴き出す汗にじっとりと濡れ、鍬の柄で攪拌された尻穴はますますめくれあがる。縦に広がり、穴というよりは裂け目に近付いたその様相は、瓜蔵が未だ知らない雌の性器にとてもよく似ていた。
「ふぅっ、ふぅ……っ、じっちゃん、すげえ……すげえよ……」
額に滲む汗を拭って、瓜蔵は改めて祖父の媚態を見下ろした。土床に敷かれた布に横たわる仙八の寝巻はほとんど脱げ、肘に絡みつく袖だけが辛うじて老爺の裸体にしがみついている。今にも垂れ落ちそうに実った胸、でっぷりと突き出した腹。丸太のように太い腕を両脇に折り畳んだその先では、ふてぶてしく丸まった指がなおも乳首を弄り続ける。出臍の下に目をやれば、汗に濡れて肌に絡みつく黄ばんだ六尺が股座を飾る。二重布の奥で硬くなりきらないまま膨らんだ雄の徴は、失禁と見紛うほどの先走りでびしょびしょに濡れていた。
「ええぞ、瓜蔵……もっと、もっとじっちゃんを気持ちよくしとくれ……」
「はぁ……はぁ……じっちゃん……っ、じっちゃん……」
汗ばんだ全身に纏わりつく布地がもどかしく思えて、瓜蔵は寝巻の帯を引き抜いた。濡れて毛束に絡んだ片袖を抜くと、支えを失った古布がはらりと落ちて、褌一つの裸体が露わになる。鋭い一対の牙を天に向けた勇ましい風貌。祖父の並外れた巨体にはかなわないにせよ、猪らしく突き出た腹が主張する瑞々しい体。勇ましく隆起した腕脚の筋肉が毛皮越しにも見て取れ、生来の素質に加え日々の労働で自然に鍛えられた膂力の強さを物語る。そして何よりも、褌の中で大きく屹立した陰茎がその存在感を激しく主張している。今にもはち切れそうな膨らみの中にとぐろを巻いた業物は、祖父のお下がりの古晒などではとても押さえつけられない。痛みさえ伴う勃起に息を荒げて、瓜蔵は股間を戒める前袋に手を添えた。
「じっちゃん……おらのちんぽ、でっかくなっちまった……早く、せんずりしねえと……」
夢精に布団を汚した十といくらかの頃から、『溜まったものは出しておけ』と祖父に教わった身である。股間に集まる熱の理由もわからないまま、瓜蔵は股座に手を伸ばす。かつてないほどに大きく、逞しく勃ち上がった珍棒を前袋から引っ張り出そうとする瓜蔵の手に、ふと温かいものが触れた。
「じっちゃん……?」
「ん、はぁ……はぁ……瓜蔵ぉ…………」
いつの間にか背を起こしていた仙八が、瓜蔵の張りのある脚に縋りつく。まるで酒気に酔ったように赤らんでふやけた表情のまま、仙八は瓜蔵の手の甲ごと股座を握り締め、独占する。触れたそばから拡散する、汗と恥垢の臭い。祖父と孫、それに今は亡き父の残り香さえ内包した褌の布地から薫る熟成された雄の色香もまとめて吸い込んで、仙八は鼻を何度も大きく鳴らした。深く吸い込む息の一度ごとに、老猪の中にこびりつく理性の残滓がどろどろに溶け、獣の本性が顔を出す。
もう、我慢できない。布地を裂くような勢いで逸物を引きずり出すと、仙八は困惑する瓜蔵の見ている前で、匂い立つその先端を口にした。
「じ、じっちゃん! 何するだ! そんなとこ舐めたら汚え……っ! んんぅっ!」
「むぐ、んぅっ……う、っ……ん、くっ、ふぐっ……おぶ……っ」
仙八に口唇愛撫の知識はない。まだ妻が生きていた頃であっても、その口に自らの滾りを押し入れるなど、想像したこともない。それにもかかわらず、仙八は一切ためらうことなく孫の太竿を咥え込んだ。雄の臭いに痺れた鼻が、目の前にふてぶてしく鎮座する肉塊を何らかの美食と取り違えたのか。はたまた、仙八の中に眠っていた雄狂いの本能がそうさせたのか。もっとも、今の仙八にとってはどちらでもよかった。口内で塩味を垂れ流し、ひと舐めごとに小刻みに痙攣する逸物の威容を喉奥まで使って呑み込んだ時点で、すでに正常な思考は失われていたのだから。
「あっ、んっ! あっ、あぁっ! だめだ、じっちゃん、ちんぽ、ちんぽが焼けるっ!」
他人に秘所を触らせたことすらない瓜蔵にとって、温かくぬめる仙八の口の中は未知の
領域であった。鈴口から尿道の中身を丸ごと吸い出すかのような強烈な吸い上げと、唾液に濡れて竿にへばりつく柔らかな感触が、極限まで勃起した瓜蔵の逸物を表皮がちぎれんばかりに膨れ上がらせる。時折竿に触れる硬い歯の感触さえも、甘い誘惑に変わる一瞬。つい先程までせんずりしか知らなかった瓜蔵にとってそれは、恐怖すら覚えるほどの快感であった。いやらしい水音を立てて逸物を啜る祖父の頭を反射的に引き剥がそうとしても、腰にがっしりとしがみついた両腕がそれを許さない。元の半分程度の大きさにまで縮んだ陰嚢の下で、蟻の戸渡りが著しく痙攣し、どくどくと溢れる先走りの露が限界を知らせる。
「だ、めだっ……じっちゃん、じっちゃんっ! あっ、うぁぁぁっ!!」
「んむぅっ! んぐ、ふっ、んむ……ふ、ぐ……むぐ、んぬぅ……」
顎を上げて絶叫しながら、瓜蔵は祖父の口内に精の迸りを射ち放った。びくびくと震える金玉袋から送り出された夥しい量の種汁は喉奥にとどまらず、太竿と頬の間から鉄砲水のように溢れ出して仙八の顔面を汚す。大蛇のように暴れ回る逸物が、仙八の喉を目掛けて白い濁流を打ち放つこと、都度八回。ようやくすべてを放ち終えた瓜蔵が茫然のままに祖父の口から陰茎を引き抜いたころには、仙八の唇はすっかり真っ白に染まっていた。顔面の毛皮に絡みつき、白髭を固めて束にするその粘性は、汁というよりは塊のようであった。
「じっちゃん、大丈夫か。すまねえ、おら、我慢できなくて」
「へ、平気じゃよ、瓜蔵。どうにも生臭いが……なんだか、癖になりそうな味じゃ……」
口元をなぞった指先にまとわりつく汁を突き出した舌で舐め取ると、仙八は目を細めながら答えた。開いた口に橋をかけ、唇を潤す濃厚な種汁を、貪るようにすくっては舐め、舌を転がしてこそげ落とす。地に這いずった低い姿勢のまま、芋虫のように丸々とした指をしゃぶり続ける祖父の姿を、瓜蔵は呆気に取られて眺めていた。見てはいけないものを見ているような感覚が背筋を過っても、何故か視線を逸らせない。それどころか、もっと見たいとさえ思ってしまう。そして、その欲望に煽られた血流が、逆流する川水のように股座へ押し寄せてくる。
「じっちゃん、おらやっぱり変だ。あんなに出したのに、ちんぽが収まらねえ」
脳天を突き抜けた絶頂の果て、へなへなとその場に両足を投げ出しながら、瓜蔵は自らの股座を心配げに眺める。軽く開いた太腿の間で、種汁と唾液に光る太魔羅。普段なら一度出してしまえばへたり込むはずのその姿が、一向に縮む様子を見せないのが、瓜蔵には何よりも不安だった。まして、祖父を手伝わねばならないこんな時に。
「じっちゃんを気持ちよくしねえといけねえのに、これじゃあ、おら……」
不安げに腕を抱いて嘆く瓜蔵をよそに、仙八は孫の股間にそびえる業物から目が離せない。喉につかえるほどの汁を放ってなお、未だ萎える気配を見せない巨根。竿ぶりは鍬の柄よりも太く、包皮の剥けた亀頭は笠が広く、まるで松茸のような形でふてぶてしく反り立っている。
あれを尻に入れたら、どうなるのだろうか。
ふと脳裏に過ったその考えが、仙八をどうしようもなく突き動かした。
「……そういえば、瓜蔵は筆下ろしがまだじゃったのう」
「筆下ろし……?」
「雄が初めて雌とまぐわうことじゃ」
首を傾げる瓜蔵に、仙八は四つん這いでにじり寄りながら答える。村に若い雌はおらず、輿入れを望む親類もいない中、瓜蔵に雌の抱き方を教えてやる機会は長らく訪れずにいた。それが口実になるとは、当の仙八自身も思ってはいない。それでも『筆下ろし』という名目を掲げてしまうのは、孫に嫁をあてがえなかった負い目が、知らず知らずのうちに滲み出るからか。
「まぐわう……って、なんだ。じっちゃん、おら……よくわかんねえだ」
「若い雌っこが相手でなくてすまんがな、まあやることは同じじゃ。ほれ」
戸惑うばかりの瓜蔵の上を跨いで、仙八は大きく股を開いた。蹲踞の姿勢で孫に肉薄し、飛沫を垂らして頭を振る逸物に向けてゆっくりと腰を落とす。飲み干した種汁の雄臭に酔い痴れて、今や鍬の柄などでは到底満たしきれないほどに広がった肉穴が、瓜蔵の先端を捉える。赤々と張り詰めた亀頭にほんのわずか襞を抉られただけで、瞳が裏返るような快感が仙八の脳天まで一気に突き抜けた。
これを奥まで突き入れたら、もう後戻りはできない。事態を理解し切れていない瓜蔵を置き去りにして、仙八は大きく生唾を飲み込んだ。
「そのまま、動くでないぞ。では……」
軽く曲げた膝をゆっくり沈みこませて、仙八は自らの臀部を瓜蔵の股座へ向けて下降させる。拭いきれない白濁と、未だ止まない先走りの雫が亀頭を滑らせ、穴を隈なく塞いだ亀頭を雄穴の奥目掛けて呑み込んでゆく。
「んぐぅぅっ! んぉっ、おぉっ! んおおぉぉっ……お、ほぉ……っ」
真っ先に感じられるのは、指も、鍬の柄も、その他に試したあらゆる器具をも上回る太さ。続けて込み上げてくるのは、感覚に乏しいはずの腸壁をも貫通する、著しい熱さ。山のような巨躯の重みに、腰が自然と下りてゆくにつれ、孫の肉棒はひとりでに祖父の肉穴を貫いてゆく。異物の侵入により自ずから閉じてゆく内側の襞が、じわじわと押し上げてくる亀頭の雁に擦られて、肛門の悦楽に目覚めてしまった仙八の全身を更なる快楽の境地へと誘う。
「嘘だ、そんな……おらのちんぽが、じっちゃんの尻に……」
尻穴を逸物に押し当てられた時点で、うっすらと想像はできていた。だが、それでもなお、瓜蔵にはとても信じられなかった。使うあてもないのに臍まで伸びた、独活の大木のような自分の肉棒が、まさか祖父の肚の中に収まるなどと。
歯を剥き出しにして力む仙八の表情と、半ばまで呑み込まれた太竿に伝わる万力のような圧迫感が、祖父の尻穴の狭さを如実に物語っている。よもや裂けてしまうのではないかと心配して、瓜蔵は仙八に呼びかける。
「痛くねえか、じっちゃん。早く抜かねえと……」
「ぬ、抜かんでくれ……わしは、だ、大丈夫じゃから……ぁあぁぁっ」
だらだらと脂汗を垂れ流しながら答える仙八の頬が歪み、快哉とも苦悶とも取れない凄絶な表情を描き出す。絶えず変化しながら、次第に快楽に引きずられてゆくその有様から、瓜蔵は目を逸らせない。毛むくじゃらの巨体を前後左右に揺さぶりながら、孫の肉棒を体内に迎え入れる祖父のあられもない姿。優しく温かい祖父が見せる、欲望に溺れた淫らな姿。拒絶と渇望が入り混じる混沌とした思いのまま、瓜蔵はのしかかる仙八に身を任せた。祖父の尻穴深くまで突き刺さった逸物が、蕩けそうなほどの快楽にいななく。
「ま、孫のちんぽ……瓜蔵、おまえのちんぽが、わしの中をほじっとる! 気持ちええぞ!」
淫らな言葉を進んで口にすればするほど、仙八の心は昂ぶり、ほぼ根元まで呑み込んだ孫の肉茎も激しく打ち震える。汗と種汁、若き雄と老いたる雄の臭いが、重なった二つの肉体を挟んで攪拌され、この世のものとは思えない媚香へと変わる。
見えるもの、聞こえるもの、臭うもの。
そのすべてがぐちゃぐちゃに乱れ、猪どもを見る影なく狂わせる。
「ああっ、んぁぁぁっ! じっちゃん、だめだ、止め……んおぁぁぁぁっ!!」
「ぬぁぁっ、あっ、あぁぁっ! ま、孫のっ! 孫のちんぽぉっ! ん、むおぉぉっ!!」
仙八の尻たぶが瓜蔵の太腿にぶつかり、破裂のような音を立てた次の瞬間、瓜蔵はたまらず二度目の放精を迎えた。内側で爆ぜる孫の陰茎の瑞々しい脈動を感じ取って、仙八の褌の中にも薄い白濁がとぷとぷと溢れ出る。そぼ濡れた布から周囲へ拡散される栗花の臭いに、とっくに閾値を超えた二人の鼻はびくびくと震え、ふごっ、ふごっ、と汚い鼻音が溢れ出す。
「んぅ、んぐうぅぅっ! まるで、ご、おぉ、極楽じゃあ……っ」
「あぁ、じっちゃん、じっちゃん……こんなに気持ちいいの、生まれて初めてだあ……」
尿道に残った精液を絞り出し終え、仙八は脱力感のままに上体を倒した。重たく圧し掛かる祖父の体を、瓜蔵は両腕を広げて強く、深く抱きしめる。二回りほどの体格差も気にせず、二人は雄臭い汗と生臭い汁に塗れた互いの腹肉を擦り付けて睦み合う。祖父と孫の尋常ならざる交わりを終えた後にもかかわらず、二人の心には満たされた心地が溢れていた。そしてその奥に、更なる欲望の萌芽が鎌首をもたげている。
「……じっちゃん、おら……」
「わかっとる。まだ収まらんのじゃろう?」
瓜蔵がもどかしげに言葉を紡ぐと、仙八はその先を察して孫の背を優しく撫ぜる。祖父の胸元でこくりと頷いてから、瓜蔵は名残惜しげに身体を離し、祖父と真っ直ぐに向かい合う。頭の内側が灼けるほどの快楽に浸されてなお、優しい面影のままに微笑む大きな顔。問いかける代わりに小さく首を傾げた仙八の胸をささやかに擦りながら、その先へ踏み込む。
「でも、おらはじっちゃんにも、もっと気持ちよくなってほしいだ。だから、このまま……」
祖父の尻の奥深く、根元まで突き刺さった逸物は、二発の放出を経てなおも滾っている。太肉の合間に消えたその姿は瓜蔵からは見えないが、股座から逆流する血の昂ぶりが、青筋を立てて猛り狂う肉棒の有り様をあからさまなまでに伝えてくる。加えて、煮え滾るほど熱い昂ぶりを飲み込んで離さない肉襞の圧力からは、祖父がまだ満足しきっていないことも手に取るようにわかる。交わった二つの体を同時に満足させる方法は、たった一つしかない。
「このまま、もっと……じっちゃんと、『まぐわう』っての、やってもええか?」
「……ええぞ。わしも、おまえが欲しい。瓜蔵のちんぽが……もっと欲しい……」
臭気と熱気に燻され、夏の夜のような蒸し暑さを湛えた蔵の中で、祖父と孫の唇が再び重なる。とうに踏み越えてしまった境界線の先、更なる高みを求めて、交わった二つの身体がゆっくりと動き出す。
「ほれ、今度はおまえから腰を動かしてみい。わしの中にたんまり種をまいておくれ」
そう誘いながら、仙八は背を床に倒して身を横たえる。繋がったままの腰を軽く上げて促すと、瓜蔵は祖父の両脚を脇に抱えて起き上がり、祖父の尻を下腹部で押し上げて膝立ちになった。足を中空に投げ出したまま背を地につけた祖父の姿を眺めるだけで、瓜蔵にはすぐにわかった。たった今、この場の主導権が自分に譲り渡されたのだと。
横たわる祖父の熱っぽい視線が、瓜蔵の心を絡め取る。媚びるように甘い息が鼻先をくすぐる度、揺れ回る胸や腹の脂肪。その魅惑的な舞に酔わされて、痺れを切らした腰が動き出す。
「ぬぅっ! ふっ、うぅっ、んんぅっ! う、瓜蔵おっ、おぉっ、んぉあぁぁっ!」
「はっ、はぁっ、はあぁっ……じっちゃん、じっちゃん……っ!」
天に突き出た足首を掴んで左右に広げ、瓜蔵は祖父の尻に一心不乱に肉棒を突き立てる。細短い渦巻の尻尾を揺らし、臀部を引き絞って力を籠めれば、熱した鉄杭のように昂った逸物は啄木鳥の嘴を思わせる勢いで仙八の内奥を削り穿つ。一突きごとに仙八の体内に迸る、内臓を余さず引きずり出されるような衝撃。おぼつかない指先で穿った一週間前の初体験などとは比べ物にならない暴力的なまでの快楽が、老爺の蕩けた精神を更に攪拌する。
「んほおぉぉっ! そ、そこじゃ、瓜蔵……そこを、もっと突いてくれ……っ」
「こ、ここかっ、ここだなっ、じっちゃん! じっちゃんっ、じっちゃんっ!」
祖父の名を呼びながら、瓜蔵は探り当てた急所を思い切り突き回した。先端が『そこ』に当たるように狙いを定め、熟した果実の如く膨れた亀頭で圧し潰し、捩じり倒すと、仙八は喉奥が見えるほど口を大きく開いて泣き叫んだ。
「ほぉぉぉっ!! そう、じゃっ、そこ、おっ、おぉっ……おぅっ、おぁ、ふ、あぁぁっ!」
仙八が頭を振り乱して悶え喘ぐと、背に向けて伸びた白い髪も、顎から垂らした白い髭も、皆千々に乱れて毛先を四方に躍らせる。喘ぎと吐息が支配する蔵の中、精液の臭いと互いの体臭が狭い空間の全体に充満し、獣のように叫び散らす二人の雄叫びは格子窓を通って月夜に響き渡る。張りのある肌と肌がぶつかる度に弾ける破裂音が、まるで祭り囃子の太鼓のように聞こえて、二人はますます情欲を昂らせた。際限のないその漲りを示すかのように、仙八の前袋はすでに布地の意味をなさないほどに濡れそぼつ。その中で、柔らかいままさらさらと汁を垂れ流し続ける逸物は溜まった汁に半ば浮き上がっていた。
「じっちゃんっ、気持ちええかっ、じっちゃん! おらのちんぽ、気持ちええだか!」
「おうっ、んぉぉぉっ! き、気持ちええっ、瓜蔵っ……ま、孫のちんぽが気持ちええっ!」
どちらが雄でどちらが雌かを、二人はすでに理解していた。自ら快感を求めて動き始めた瓜蔵の口ぶりは次第に雄々しさを増し、完全に孫の逸物に支配された仙八の頬に最早恥じらいの色はない。互いの乳首を抓み合い、汗にべたつく肌を重ねて、むせ返る雄臭に塗れながら、ただひたすらにまぐわい続ける。それだけが、今の二人の行動原理だった。
「あ、あぁぁっ、出る、出るぅっ! わし、わしのちんぽ、止ま、止まら……んぅぅっ!!」
「お、おらも出すぞ、じっちゃん! じっちゃんの尻に種、いっぱいまくぞぉっ!」
二度目の種付けに、仙八の尻穴から下品な水音が響き渡る。絶え間なく尻奥を擦り上げられ、前袋が水風船のように膨れ上がってもなお、仙八はとぎ汁のような白濁を絶え間なく垂れ流し続ける。体中を隅々まで焼き尽くすような絶頂の感覚が過ぎ去った後、二人はとうとう疲れ果てて倒れ伏した。萎びた瓜蔵の逸物がずるりと抜け、仙八の尻穴から噴き出す特濃の子種が敷布を汚してゆく。
「瓜、蔵……」
「……じっちゃん」
脱力した身体に揺蕩う、心地よい倦怠感。薄れゆく意識の中で、二人は互いの名を呼び合う声を聞いた。それは、ありふれた呼びかけ。二人が一つ屋根の下で生きてゆく限り、交わし続ける聞き慣れた呼び名。その響きが、これまでとは全く異なる意味を宿してしまったことに、二人はとっくに気付いていた。
もう、ただの祖父と孫ではいられないのだ。
※
百鼓が瓜蔵と仙八の元を訪れたのは、明朝のことであった。後になって瓜蔵が事情を聞いたところによると、薬がなくなるまではまだ余裕があったものの、たまたま村の近くを通りがかった際に経過が気になったのでつい立ち寄ったのだという。村人から二人の所在を聞いた百鼓が母屋を探し、辿り着いた蔵で目の当たりにしたのは、裸のままぐったりと横たわる瓜蔵と仙八の姿だった。
慌てて二人を抱き起こすと、今に至るまでの一部始終を聞かされて、百鼓は激しく恐縮した。仙八の著しい精力向上が、自分の薬に含まれる成分の過剰摂取による副作用だと即座に理解できたためである。褌一つの二人に向けていそいそと膝を突き、深々と頭を下げる。
「私の説明不足のせいで、このような……何とお詫びを申せばよいか」
「お詫びなどとんでもない。むしろ、薬師さまには感謝しております。おかげさまでわしも、もうあと十年は元気で働けそうじゃ」
「じっちゃんが元気になって本当によかっただ。これもみんな、薬師さまのおかげだ」
元気になるといっても程度があるのでは、と口をはさみたくなる気持ちをこらえて、百鼓はにこやかに微笑む裸の二人を見つめた。孫と襤褸布で体を拭い合う仙八の姿には、先んじて聞いていた病の症状は欠片も見受けられない。過剰服用による副作用が他にも出ていないかと心配したが、どうやらそれも杞憂のようだ。百鼓がほっと胸を撫で下ろし、大きな腹を擦っていると、いつの間にか床に三つ指を揃えた仙八が恭しく頭を垂れた。
「薬師さま。お代は払いますので、同じ薬をまた用意してはいただけませぬか」
「承知しました、お爺様。順調に快復されているようですし、次の薬は精力剤は控えめで」
「いやいや、効き目は今のままで頼みますわい。それより……」
そこまで言いかけたところで、仙八は照れ臭そうにうつむいた。朱に染まった頬を隠すように顔を背け、目だけを動かして百鼓を見やると、もどかしそうに口を開く。
「できれば、でよいんじゃが、その……次はもうちっとこう、いちもつが硬くなるような効き目も加えてもらえませぬかのう」
「そりゃあええ。おらからもお願いするだよ、薬師さま。なんとかしてけろ、な?」
仏を拝むように両手を合わせ、平身低頭して頼み込む猪二匹に囲まれて、大狸はたまらず絶句した。何度も何度も頭を下げる二人の瞳には一点の曇りもなく、ただ純粋な願いのみが見て取れる。こうも熱心に頼み込まれては、すげなく袖にするのはどうにも気が引けてならない。
「……ぜ、善処します……」
とんでもない馴染みの客ができてしまった、と溜息をつきながら、百鼓はとってつけた笑みを設えて頭を下げた。とはいえ、望まれたからには手を抜けないのが薬師の誇りというもので、頭の片隅では早くも勃起力を高める新しい調合の考案が始まっている。どうあれ、喜んでもらえるのならいいと思い直して、百鼓は瓜蔵たちの家を後にした。
その後、百鼓が拵えた新しい薬で、仙八の逸物は見事回春を果たし、そのふてぶてしい魔羅の威力は瓜蔵どころか百鼓まで虜にしてしまうのだが、それはまた別のお話。
何はともあれ、めでたし、めでたし。