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かつて自分が僧侶と呼ばれる存在だったのはいつだっただろう。
人の時間は、既に忘却の彼方。財宝。宝。富。名誉。技術。力。それらが眠る洞窟の主になってからは必要のないものとなっていた。
「ゥゥ…」
目覚める。いつだって、目覚めは最低で最悪だ。だが、だからこそ、最高の目覚め足りえる。
いっそ目覚めず、滅されていれば絶望を味わわずに済むというのに。腐臭と鉄の臭いと、雄の臭いと雌の臭いが鼻を突き。
道具たちや孕ませ産ませた仔らの狂宴。狂騒が耳をつんざく。
全て自分がやったのだ。彼らを貶め、食らい、貪り、壊した。どれほどの罪を重ね続けるのだろう。
あぁ。
「ククッ…クカカッ…!」
笑いが止まらない。味わいつくした絶望はいまだに甘美。心の奥底に閉じ込めた人の意識が絶望に苛まれ、涙を流そうとすれば、それは快楽と愉悦に挿げ変わる。
かつて僧侶と呼ばれ。しかし悪魔となってしまった狼。
イリーガル。外から財宝目当てに訪れた探索者からそう呼ばれているのを知った。
かつての狼の名前を知っているものは、いるのだろうか。
いや、いない。もうすでに、いない。
イリーガル。それが今の狼だったものの名前。もし知っているものが居るとすればそれは。
「だんな様ぁ…♥」
狂騒と狂宴の中で、確実にイリーガルの耳を捉える甘い声。淫欲を孕み、恐怖と絶望に震える甘い雌の声。
イリーガルとよく似た悪魔。老齢の狼の頭に、片角。下腹部から胸にまで及んだ淫紋は桃色に輝き、鼓動に合わせ明滅を繰り返す。
血の涙を零し、身を震わせ、逸物から濃密な精液を零し、拡がり、仔を産んだばかりの女性器から大量の潮を噴き出し、イリーガルに物欲しげな視線を送ると。
イリーガルは歪に笑った。
もし、知っているものが居るとすればそれは、この淫靡な悪魔しかいない。
イリーガルと共に永劫の刻を歩むもの。
ディナイル。
あぁ、なんと恐ろしくおぞましい行為をしているのだろう。
あぁ、なんと心地よく素晴らしい行為をしているのだろう。
相反し、矛盾する感情。イリーガルは尻尾を大きく振り、翼を軽くはためかせると肉で出来た玉座に座り。近くに座り込んでいた壊れた道具を掴み上げ、そのまま口へと放り込んだ。
いりーがるでいず
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滴る血。締まった肉。全身に力が満ち溢れる。満ち溢れる力は周辺にまで影響を及ぼし、狂宴に耽る雄達を更に昂らせた。
放り込んだ肉を咀嚼しごくり、と飲み干すとイリーガルはディナイルにちょい、ちょい、とこちらへ来るようにジェスチャーを行う。
ディナイルは頬を吊り上げると自らの陰唇をかき混ぜながらふらりふらりとイリーガルに近付く。
すんすん、と鼻を鳴らせばそれだけでディナイルは目を上に向かせ小さく嬌声を上げる。失いかけた理性。知性。ヒトとしての倫理。
「産み終わったばかりだろう?もう孕みたいのか?」
ひょい、とディナイルの腹を掴むとイリーガルは嘲るような口調でディナイルに問う。問いかけながら臀部を指先でなぞり、逸物を腹に擦り付け…嗤った。
イリーガルの問いかけにディナイルはぴん、と耳を立てるとこくこくと何度も頷きイリーガルの逸物に指を這わせる。その大きさは、ディナイルの上半身とさして変わらない。凄まじい太さ、硬さ、禍々しさ。そして蠱惑的。一度味わい、溺れてしまえば、逃れる事は不可能。
愛おしそうに何度もさすり、溢れ出した先走りを舌で掬い上げ、旨そうに飲み干して。
「はひっ、孕みたいっ、孕みたいですッ♥だんな様の仔っ♥もっと、もっと孕んで孕ませて♥仔にも孕ませてほしいですっ♥」
片翼をはためかせ、蕩けた表情を浮かべるディナイルにイリーガルはやはり嗤う。
「そうか。そこまで言うなら孕ませてやろう。その姿を血縁の者が見たらどう思うだろうなぁ?下賤な雌犬。淫靡で腐った、堕ちた戦士。嫌悪して忌み嫌うだろうなぁ。そう思わないか?」
「はっ、はひぃっ♥最低の雌犬でひゅっ♥快楽の為にっ♥全部捨てた肉奴隷でひゅっ♥♥だからっ、罰にッ♥♥罰を与えてくだひゃいっ♥」
言葉は凶器となる。凶器となった言葉は互いを傷つけ貶め。そして暴力となる。
暴力は、快楽となる。
血の涙を流し続け、ディナイルはびくびくと全身を恍惚に震わせながらイリーガルの逸物。その亀頭部分に手を添えた。
雁首を撫でまわし、棘がいくつもついた竿へ手を下ろしていく。ずたずたに手が傷付いても構う事は無い。むしろその痛みすら快楽であるといわんばかりに、陰唇から白く濁った粘液と潮の混ざった液体を零し、逸物を何度も脈動させる。
「いいぞ。咥えろ。」
「はぶぅっ♥」
許しが出るや否や、ディナイルはイリーガルの巨大な亀頭を咥え込んだ。大きく開いた口。マズルで亀頭をすべて受け入れるとじゅぼじゅぼと音を立てながら吸い上げ、先走りを飲み干す。
「クククッ…!あぁ、心地よいぞ。ディナイル。お前の口はもはや性器だな。ここから孕むようになってもいいかもしれないな。」
「ふごっ、ふごぉっ♥」
角を撫でまわし、脚を組み。腰を震わせながらイリーガルは上機嫌に呟き、ディナイルの体を自らの太腿に置いた。
口で、全身で。イリーガルの逸物に奉仕するディナイルの表情は愉悦と喜悦と屈辱に塗れ、イリーガルの劣情を煽るばかり。
淫紋は桃色の光を強く放ち、イリーガルでさえ気を抜けば飲み込まれてしまう事だろう。そしてその光は。
グルルルゥゥッ!!ゥゥゥッ!!!
「はひっ、はひぃっ♥♥ひひっ、ぉ”っ、はひっ♥♥」
周辺にいた仔や道具を発狂寸前まで追い込む。ぼごんっ、ぼごんっ、と腹が破れかねない勢いで逸物を道具へ突き入れるのは、魔物か。
イリーガルとディナイルにとても良く似ているが、とても理性があるように見えず、四つ足で道具を犯す姿は獣や下級の悪魔に近い。
そしてその下側に居るのはつい最近…だったか。この洞窟に足を踏み入れ、イリーガルの瘴気に中てられた人種の雄。
既に数度孕み、産み、その悦びと快楽に溺れ切っている。膨れた腹で、更に逸物を突き入れられても、啼き喘ぐばかり。
ばぢゅんっ、ばぢゅんっ、と逸物が抽送を繰り返すたび、精液と先走りと腸液が混ざった液体が泡立ち、雄の臭いと雌の臭いを放ち。
グルルルゥゥッ!!ォォォォオォ”ォ”ォ”ンッ!!
「んひぃぃっ♥♥ぉ”お”っ♥♥ぉ”ぉ”ぁ”ぁ”っ♥ぁ”っ、ぁ”っ♥♥イグッ、いっ…産まれ…ぉ”ぉ”っ♥」
どびゅぼびゅるぅぅっ♥♥びゅぐっ、びゅるるぅぅっ♥♥どぼっ…みぢっ…どぼぉぉっ♥
獣の遠吠え。精液の迸る音。…そして注ぎ込まれた分。隙間を作るように。膨れた腹が歪に蠢き。
逸物と雄穴の隙間から、零れ出る。新たな生命。仔。道具。魔物。
産みながら、何度も何度も達する。
「ぷはっ…あはぁっ…♥♥ふふっ、ふふぅっ…♥」
うっとりとした表情でそれを眺めながら恍惚の息を吐くディナイル。これから自分が犯され、孕み、産む。その予感。確信に、陰唇を激しく蠢かせイリーガルの太腿を心地よく撫でまわした。
「よし、いい具合だ。淫乱な雌。我が伴侶よ。これから種を注ぎ込み、孕ませてやる。悦べ。啼け。喘げ。俺を愉しませろ。」
「はひっ、はひぃっ♥♥だんなさまぁっ♥♥」
がっしりと両手でディナイルの全身を掴み。翼をはためかせ、尻尾を揺らす。挿入の瞬間。その瞬間。
「…チッ…」
イリーガルは鼻の頭に皺を寄せると忌々し気に舌打ちをする。
ディナイルは一瞬きょとんとした表情を浮かべるが、すぐにイリーガルが不機嫌になった理由を察した。
広間の入り口から道具の、肉の臭いと共に、声が聞こえる。
しかし、その声と肉の臭いに、ディナイルは唸り声を上げた。じゅるじゅると唾液が滴り落ち、少々気の抜けた音が腹部から鳴り響く。
その音を聞くと、イリーガルは不機嫌ながらも口の端を吊り上げ、ディナイルの角と耳と頭を撫でてやる。
「そうか、腹が減ったか。いいぞ、好きなだけ喰らえ。かつての同族を、正義感に駆られた愚かなヒトをな。」
尻尾を振り、血の涙と共に唾液と粘液を陰唇から零しながら。ディナイルはイリーガルの太腿から広間へ降り立つ。
地面を割り砕き、轟音と土煙が周辺に立ち込める。
その向こう。広間に足を踏み入れるのは頑強な装備と強い魔術と祈りに護られた、五人の雄。兜の隙間から見える瞳には強い意志。
イリーガルはにやり、と笑うと玉座から立ち上がり、手を上げる。
「宝が欲しいか?それとも同胞の敵討ちか?愚かなヒトよ、肉よ。…跪け。」
空気の、空間の歪む音。常人であれば、いや、鍛えていたとしてもなお雄を淫欲へと捉え貶める凶悪なフェロモンと圧。
広間に居る道具や魔物たちが唸り声や喘ぎ声を大きくする中。
洞窟に入り込んだ雄達は誰一人としてその圧に負ける事はない。強い瞳でイリーガルを捉え、各々の得物を構える。
「クククッ…!そうか、そうか。いいぞ…!俺を、殺して見せろッ…!」
腕や首を鳴らし、翼をはためかせる。大きく咆哮を上げれば、それが開戦の合図。
イリーガルの咆哮に、ディナイルもまた咆哮すると脚の筋肉を隆起させ、雄達に襲い掛かる。
だが雄達はひるむ事は無い。雄の一人が空に陣を描き、素早く何かを詠唱する。直後、空に描いた陣が真っ赤に光ると灼熱がディナイルを包み込む。
「ガァァァァッ!?」
全身が焼け焦げていく。咄嗟に腕と翼で全身を覆い、ディナイルは着地した。
着地の隙に、斧を掲げた闘士がディナイルへと一気に距離を詰める。顔を上げ、素早く身を翻すディナイルだが、闘士の斧は、確実にディナイルの腕を切り落とす。
黒が混ざった深紅の液体が腕のあった場所、肩から大量に噴き出す。それは闘士や魔術師を染め上げ…
「グゥゥゥッ!!!…旨ソウッ…ダァッ!!!」
ディナイルの表情を苦悶や苦痛から、喜悦のものへと変貌させる。そう、これは調味料。
血の味は甘美なものであり、恍惚を呼ぶことをディナイルの肉体は知り尽くしている。そしてその恍惚は脳に多量の脳内麻薬を分泌させた。
痛みなど感じないほどに。被膜の翼から骨が見えても、その痛みを感じぬほどに。恍惚がディナイルを満たす。
その表情にいち早く気が付いた闘士は、斧を構えなおし、声を上げようと口を開いた。
「こいつはがふぅっ!?ぁ”っ…がぁ”ぁ”っ!?!?」
だが、全てが遅い。脳内麻薬を多量に分泌したディナイルの肉体は限界以上の力を引き出す。闘士の後ろにいた魔術師の耳に響いたのはディナイルの全身が千切れるような音と。闘士の何も理解できていない声と。
視界を遮るほどの。闘士の鮮血。
「クククッ!!そんなに腹が減っていたか!いいぞ、喰らえ!存分に喰らえ!俺も腹が減ってきた!!ククッ!!クカカカッ!!ぐぎゃぎゃぎゃ!!」
喜悦に表情を歪ませ、大きな笑い声をあげるイリーガル。放たれる禍々しい殺気に、剣士たちは少したじろぐ。だがすぐに構え、陣形を作り上げた。
ディナイルのエサとなった闘士には目も暮れない。いや、目を向ければその瞬間自分たちがエサになってもおかしくない。
全身を真っ赤に染め上げ、闘士を地面に叩きつけると、ディナイルは大きく口を開けた。
甘美な罪を頬張る。腹を鋭く歪な牙で裂き、腸を引きずり出す。血走った黒い目。流す血の涙。腸から噴き出る鮮血。
引きずり出した腸を爪で切り刻み、唾液が滴る口へと放り込み何度も咀嚼する。
…まだ闘士に意識があるのだろう。恐怖と激痛に全身をがくつかせ、しかしその動きが徐々に小さくなっていく。口からどす黒い血液を垂らし、魔術師に視線を送る。口がパクパクと動いた。
その様子をまざまざと見せつけられていた魔術師は。
「ぁ”っ…ぁ”ぁ”っ…!!!」
動けずにいた。発狂することも出来ず、ただただ恐怖に竦み、腰を抜かし。
尻尾を振り、片翼をはためかせ、悦びに啼き、肉を咀嚼し続けるディナイル。
…闘士の息が絶えると同時に。ディナイルは肉の宴を続けながら魔術師に飛びついた。
「ぎっ…がぁ”ぁ”ぁ”!!!」
ねじくれた角が魔術師の腹を穿つ。貫通した角から鮮血。魔術師は目をぐるんっ、と上に向かせると全身を弛緩させた。
ディナイルは頭にヒトを抱えながら、事も無げに立ち上がる。息が絶えたとはいえまだ肉は残っている。
「ダンナ様ァ♥♥美味シイ、美味シイオ肉、アマイアマイアマイオニクゥ♥」
「そうかそうか、旨いか。それは良かった、我が伴侶よ。愛しき雌犬よ。後で俺も喰らおう。だから少し待て。」
グルルウゥゥゥッ♥
イリーガルの言葉にディナイルは目を細め、残った肉の咀嚼。そして。
角に刺さった意識のない魔術師を弄び始める。
「どうした。俺を殺して見せろ。さぁ、早く。」
「言われずともッ…!」
イリーガルの言葉に怯む事は無い。残った三人は完璧に連携が取れた動きでイリーガルへと立ち向かっていった。
それがどれだけ無謀な事か。思い知る時、彼らは生きているのだろうか。
イリーガルの目の前に飛び出した一人の雄が素早く何事かを呟き、念じ、祈る。
その言葉は、イリーガルが使いこなせる法術を紡ぐための言葉。
後ろに構えた僧侶がその言葉を、法術の力を強め…眩い光を放ち始めた。
どれだけ渇望した事か。その言葉で救われることをどれだけ渇望した事か。
叶わぬ望みと分かっていながら、願う事しか出来なかった。そしてその願いが叶わないと知れば。
「ククククッ!!クカカカカッ!!!!」
イリーガルはディナイルよりも大粒の血の涙を零す。そして雄を迎え入れるように両手を大きく広げた。
「ハァァァァッ!!!」
不気味に思いながらも。雄はそれでも止まる事は無い。自分のありったけを、全てを込めるように剣を構える。真っ白な光に包まれた剣は、生半可な悪魔ーいや、それ以上の存在すら祓うことが出来る。イリーガル自身、見た事が無いほどに強い力。
もしかしたら。もしかしたら。
煌めく、≪音≫が聞こえる。構えた剣が、目の前に。
「ぎっ…ギグガァ”ァ”ァ”ァ”ァ”ァ”ッ!!!!」
簡素な音だった。肉が千切れる音だった。腕が落ちた音だった。左腕が落ちる音だった。
真っ黒な鮮血が肩から噴出し、剣士の視界を遮る。しかし攻撃が止む事は無い。
鮮血を浴びながら剣士は着地し、素早くその身を翻す。続けざまに鮮血へと飛び込んでいくのは双剣を携えた戦士。
イリーガルへ肉薄すると落ちた腕のあった場所―すなわち肩へ片方の剣を突き刺す。
「グギャァ”ァ”ァ”ァ”ァ”ッ!」
「喰らえッ…!!」
手を放し、もう片方の剣を首筋へ鋭く。突く。喉を掻っ切れば、そのまま。
そう思考した瞬間。鮮血を抜けた先。待ち受けていたのは。
「頂キマァスッ!!!」
それが双剣使いの聞いた最期の言葉だった。
ガブチィッ、と肉と骨が噛み千切られる轟音が剣士と僧侶の耳に届いた。
イリーガルは双剣使いの上半身を丸ごと頬張った。そして容赦なく。口から大量の臓物と血液を迸らせながら咀嚼を繰り返した。
口の中一杯に広がる甘美な絶望に、イリーガルは目を上に向かせ愉悦に全身を震わせる。
あぁ、また死ぬことが出来なかった。
「まだだァッ!!」
その絶望を打ち払うように剣士は両手に剣を構え、イリーガルに飛び掛かる。
そうであれば良かったのに。
「終わりダ。跪けッ…!!」
ぱちんっ、と残った手でイリーガルが指を鳴らすと。
「ぐぁっ…ぁ”っ…いやっ…だっ…俺はッ…堕ちたくっ…なっ…」
持っていた剣を落とし。剣士はがくがくと震える。
異常を察知した僧侶が剣士に近付こうとしたが。全て。手遅れ。
「はぁ”っ…ぁ”っ♥♥ぁ”ぁ”ぁ”ぁぁ”っ♥」
剣士は目に桃色の光を宿すと先程までの絶望とはうって変わって、恍惚の声を上げ、全身を快楽に震わせた。
鎧の隙間から、ぼだぼだと粘液が滴り落ちる。それは種と雄の香りを放ち…周囲の魔物たちの目を惹きつける。
「さぁ、新たな道具だ。孕ませてやれ。」
「ぁ”っ、ぁ”っ、ぁ”ぁ”っ、はぁ”ぁ”んっ♥」
鎧を脱ぎ捨てる剣士…だったもの。鍛え上げられた全身。イリーガルの血液を浴び…淫靡に彩られ。
魔物や道具たちに囲まれ…彼は、快楽の坩堝へ。恍惚の地獄へと堕ちていった。
「ダンナ様ッ、ダンナ様♥♥」
肉塊を二つ。そしてイリーガルの腕を持ち上げ、ディナイルは尻尾を振りながらイリーガルに近付く。
「よくやった。旨いな、上質な肉は。」
「オイシイ、オイシイっ♥」
分け合い、喰らい、貪る。肉塊を合わせて三つ。貪り、喰らう。
腹が満ち、イリーガルは腕とディナイルに言葉を紡ぐ。その言葉は。
「法…術…なっ…んでっ…」
「あぁ、生き残っていたなぁ、一人。貴様はどちらにしようか。肉か?道具か?」
柔らかな禍々しい光に包まれ、ディナイルの全身が癒えていく。切り離された腕の神経と肉が繋がり、膨らみ…やがて何事もなかったかのように癒えていく。
僧侶は…目を瞑った。そこに恐怖も、絶望も。反抗も何もなかった。
目の前で仲間が殺され、喰われ、道具にされ。しかし全ては覚悟のうえであったと。覚悟を決めていたのだ。
決死の覚悟だったのだ。
…それが、イリーガルには気に食わない。だからこそ。
ディナイルの頭を撫で、僧侶に近付く。その体を持ち上げると…
「ぐっ…」
「クククッ、貴様はどちらも似合わない。良かったなぁ、貴様だけは生かして返してやろう。俺の広間に貴様は不要だ。」
楽し気に笑うとイリーガルは酷く丁寧な手付きで僧侶の全身を撫でた。
「何がッ、何が目的だッ!」
「目的など無いさ、ただの気まぐれだ。…あぁ、気まぐれついでに俺からプレゼントをやろう。ここまで来た、俺に一太刀浴びせた褒美だ。受け取れ。」
吼える僧侶にただただイリーガルは恐ろしいほど慈愛に満ちた笑みを浮かべる。
本能から安らぎ、癒されてしまう笑み。悪魔が浮かべる笑顔とは思えぬほどに。
否定も拒絶も何もすることも出来ず。僧侶の額に口づけを落とす。血の臭いに混ざるのは神秘の臭い。
直後。僧侶の全身が淡い光に包まれた。
「なっ…!?」
続けざまに、イリーガルは言葉を紡ぐ。それは聖なる言葉。ただの悪魔が使えるはずのない法術。
経験を積み、熟練された僧侶ですら扱えるかどうか、分からぬ法術。
「あっ…あぁっ…」
僧侶の双眸から涙が溢れ出す。昂った感情に混乱した脳が下した命令。
ぼろぼろと大粒の涙が溢れ出し、地面に落ちる。
「クククッ…これで貴様は一流の僧侶になった。おめでとう。」
「何でッ、何故ッ、何故ッ…!?」
「言っているだろう、悪魔の気まぐれだと。これで思う存分人々を癒し、富と名誉を手に入れればいい。いや、手に入れろ。」
イリーガルの言葉の、行動の意味。僧侶はその切れ端を掴む。
何かを企む言葉。何かを期待するような言葉。懐疑と恐れと…様々な感情を瞳に込めて僧侶はイリーガルを見つめた。
慈愛の笑みに、悪魔の色が混ざっていく。少しずつ、少しずつ。
「さぁ、地上に返してやろう。そして凱旋した貴様は人々に告げるのだ。」
笑みが真っ黒に歪に歪み。恍惚と愉悦と快楽の笑みへと。悪魔の残虐な笑みへと歪み。
「あの洞窟には、まだ宝が残っている。それも今の私より強い力を手に入れられる宝が、とな。」
つまり僧侶は。
理解したとき、僧侶は満ち溢れる癒しの、神の力に戦慄する。
「それ以外の事は決して言うな。…言えば貴様は死ねない。死ねずに…」
ごぎゃんっ、と鈍い音が広間に響き渡った。
「ガァァァァッ!?ぐぁぁぁぁ!!!がぁぁぁぐぅぅっ!!?」
四肢が砕け、関節が逆を向き、骨がひしゃげるような激痛に僧侶は目を見開き悲鳴を上げた。
痛みにしかし意識は飛びそうなそぶりを見せない。むしろ太陽を浴びた時のように、脳が覚醒していく。
激しい痛みが更に激しさを増し、全身に脂汗が滲んだ。
「この痛みと永劫付き合う事になる。」
イリーガルが手をかざし、光で僧侶を包み込むと直後、激痛が嘘のように収まった。僧侶は荒く呼吸を吐き、改めてイリーガルを見つめる。
懐疑は無い。理解した。絶望の瞳。浮かんだ脂汗を拭うことも出来ない。
これ以上。エサが出来ることなど、もう、ありはしないのだ。
「クククッ、ククカカカッ…!!!クカカカッ!!ゲギャギャギャギャ!!!」
イリーガルの歪な笑い声を耳に刻みつけられながら…僧侶は地上へと送還された。
広間に訪れるのは再び、淫靡な宴。先程の剣士は既に孕まされたのではないかと錯覚するほど腹を膨らませ、しかしそれでもまだ足りないとばかりに全身で悪魔や道具に奉仕し続け壊れた笑みを浮かべている。
「だんな様…ぁ”っ♥」
憐憫と恐怖と恍惚に顔を歪めるディナイルの言葉にイリーガルはやはり頬を吊り上げ、ディナイルの体を持ち上げた。
ディナイルの手にある肉の塊を頬張り、咀嚼する。甘美な罪の味が口いっぱいに広がり幸福を、絶望を味わわせる。
「旨い、甘い。素晴らしいな。…待たせた、我が伴侶よ。」
「だんなさまっ…あふっ…♥」
深く口づけを交わす。舌を絡ませ、互いの唾液を、肉を、血を味わう。
イリーガルは翼をはためかせフェロモンをまき散らしながらディナイルを持ち上げ、玉座へ向かう。
ディナイルもまた発情を強め、淫紋を光らせると腰をがくがくと振りイリーガルの肉体に自分の肉体を押し付け片翼をはためかせた。
「ぶはっ…ふぶぅっ…んっ…」
粘液の音がはっきりと聞こえるほど強く舌を絡ませあい、繋がりあう。
絶望の泉に咲く、恍惚の花。
イリーガルの尻尾が揺れ…逸物がそそり立っていく。
「はぶぁっ…ぁ”っ、ぁ”ぁ”っ…♥だんな様のぉっ…♥チンポぉ…♥」
その気配に目を向けずとも。ディナイルはうっとりと呟く。陰唇から大量の潮が噴き出し、イリーガルの逸物を濡らした。
熱く、硬く、太く、長く、禍々しく。
ディナイルの潮を纏い、血管を浮かび上がらせ天を突く勢いで膨らみあがる。
「丁度いいところに邪魔が入った。旨い肉も喰えた。死ねると思った。素晴らしい。最高の絶望だ。我が伴侶よ。良い仔を孕め、産め。格別の種を注ぎ込んでやる。」
空間を歪ませるほどの威圧と気迫。近くにいた魔物や道具が言葉を聞いただけで意識を失い、身じろぎ一つ取らなくなる空気の中。
ディナイルは嬉しそうにこくこくと頷き、イリーガルの体に抱き着いた。尻や背中や太腿に肉の、逸物の感触。
熱く滾り、返しがディナイルの背中に傷をつける。
「はいっ、ダンナ様、だんな様の仔孕みますっ♥」
「それでいい。愛すべき愚かな我が伴侶よ。」
ディナイルの体をがっしりと両手で掴むとイリーガルはディナイルの体を事も無げに持ち上げた。
「んひゃぁっ♥」
淫紋が強く、強く桃色の光を放ち、甘い香りをたてる。放たれるフェロモンはイリーガルですら意識を引っぺがされるような感覚に陥らせるほど強く。そして拡がり切った陰唇が激しく蠢き、視覚すら奪い去る。
あぁ。勇壮だったはずの老齢の狼が。
「淫らな雌犬め。」
「はひっ、はひぃっ♥あぉ”っ♥♥あぉ”ぉ”んっ♥わたしっ、わたしはぁ♥だんな様に堕とされた仔を孕むだけの種床れひゅぅっ♥もうだんな様なしじゃ、だんな様のチンポなしじゃ生きられない雌犬れひゅッ♥♥」
あぁ、そうだ。自分が堕としたのだ。自分を殺しに来てくれた彼を。
その事実が鋭く煌めく剣のように突きささる。剣士が突き立てた剣よりも強く、鋭く。
あぁ。
「素直な奴だ。悦べ。啼け。喘げ。イけ。」
「あひぃっ♥」
なんて心地よい激痛なのだ。涙が零れて止まらない。
尻尾を絡めあい、翼を触れ合わせる。顔を近付け。
マズルを交わす。角を突き合わせゴリゴリと擦り付ける。
軽く口づけを交わし、もう一度マズルを交わして。限界まで膨らんだ逸物。限界まで拡がった陰唇。準備を整え切った膣。雄穴。
イリーガルはディナイルの陰唇に逸物の先端を宛がった。
怒張した逸物は解放の時を今か今かと待ちわびているようであり、何度もしゃくり上げ、先走りを溢れさせる。
これから与えられるであろう暴力的な快楽にディナイルは引きつった笑い声をあげ、全身を断続的に震わせた。
言葉は無く。イリーガルは翼を畳むと。
ずんっ…!
「ぉ”っ…ぉ”ぉ”っ…ぉ”ごぉっ…♥」
簡素な、しかし凄まじい轟音がディナイルの腹からイリーガルの耳へ届き。ディナイルは逸物から大量の精液と先走りの混ざった液体を迸らせた。
絶頂に達した。ただ挿入した、それだけで。
凶悪な逸物を陰唇で、膣で受け止める。腹が破れるのではないかと思うほどの太さと長さと硬さ。返しが膣壁をズタズタに傷つけ…痛みが快楽となる。
舌をはみ出させ、ディナイルは目を上に向かせると背筋を仰け反らせ、足を突っ張らせ…全身を硬直させた。
「ククククッ…クカカカッ…!まだ挿入れただけだぞ、我が伴侶よ…!」
心地よく締め付け、吸い上げ、撫で上げる膣の感触に腰をゾクゾクと震わせイリーガルは唾液をだらだらと零す。
なんという快楽か。そう、挿入れただけだ。それだけで、イリーガルもまた絶頂に達しそうになる。
稲妻よりも強く早く鋭く。背筋から脳へ、脳から全身へ。快楽が、恍惚が、駆け抜けていく。
ディナイルの全身をしっかりつかみ、更に奥底へ、奥底へ逸物の挿入を続ける。
「ぁ”っ、ぁ”ぉ”っ♥♥ぉ”ぉ”んっ♥♥だんなっ、ひゃまぁっ♥♥らめっ、りゃみぇになりゅぅぅっ♥ぁ”ぉ”っ、ォ”ォ”ォ”ォ”♥」
腹に逸物の形がはっきりと浮かび上がればディナイルは与えられる快楽に目を蕩けさせ、しかしもっともっとと言いたげにイリーガルの腰に脚を絡めていく。胸と腹の肉をぶつけ合うと激しい音と共にディナイルの黒ずみ膨らみあがった乳首から白く甘い液体が可愛らしく噴き出す。
「ククッ、クククッ、ククククッ!!!グギャギャギャギャッ…!!!」
ずぶずぶと沈んでいく逸物。そして沈んだ分だけ膨らむ腹。
逸物の竿をしっかりと咥え、撫で上げる膣壁の感触は、肉体的な快楽だけではない。
雌を蹂躙する悦び。自分自身を、彼を傷つけ、愉悦に浸る、精神的な快楽。
「動クぞ…啼ケ。イケ。イき狂エ。」
「はひっ♥♥はぉ”ぉ”ごぉ”ぉ”ぉ”っ♥」
イリーガルは言葉とほぼ同時に腰と両手を動かし始めた。
ずがんっ、ずがんっ、と力強く禍々しい肉の弾ける音。ディナイルのこの世のものと思えぬ嬌声と悲鳴。
「いっ、いぎぃ”ぃ”ぃ”っ♥♥ぉ”っ、だんっ、なっ、さまぁっ♥ぉ”ぉ”っ、ぁ”ぉ”ぉ”ぉ”んっ♥」
「グルゥゥゥゥッ…!!!いい、イイぞ…我がハン侶よ…!!!イけ、イけ、イけッ…!!!」
逸物の抽送を繰り返すたびディナイルの膣は痙攣を起こし強く強くイリーガルの逸物を締め付ける。
その締め付けを無理矢理振りほどき、逸物を抜き取る抵抗感。そして再び挿入する…蹂躙。
莫大な快楽。欲望が一時的に満たされるが、まだ足りない。イリーガルはディナイルの体を抱え込むと逸物の抽送の勢いを強めた。
肉体が壊れてしまう程の勢い。それだというのにディナイルの浮かべる表情はどこまでも淫らに、快楽に耽る雌のもの。
「ぉ”っ、ぉ”ぉ”っ♥♥イグッ、いぐっ、アォ”ォ”ォ”ッ♥イグっ、イっでるぅぅっ♥♥だんっ、なさまぁっ♥」
「クククッ、クククククッ!!グルルゥゥゥッ!!」
尻尾を何度も振り。尻尾を交わし。イリーガルはぐぱ、と唾液の滴る口を広げるとディナイルの肩に噛みついた。
ぶしゅう、とどす黒い鮮血が二人を汚し、蠱惑の香を広間へと漂わせ…淫らな宴をより激しい物へ変えていく。
「ぉあ”ぉ”ぉ”ぉ”ぉ”っ♥ぎもっ、ぢぃっ♥♥だんなさまぁっ♥♥ぐちゃぐちゃにされてイっでるぅぅっ♥」
壊れていく肉体。壊れていく精神。それでも保ち続ける快楽への執着。ディナイルは悦びのあまり何度も何度も。
逸物から、雄穴から、乳首から。大量の液体を迸らせ、イリーガルに抱き着き、腰を、全身を動かす。
凶悪な逸物と肉が擦れあい、泡立った液体が二人の結合部を彩り…イリーガルは嗤った。
突けば突くほど、ディナイルの顔が崩れ、蕩け。膣は締まり、きゅうきゅうと切なげに吸い上げる。
なんと心地よいのか。
何度も何度も。抽送を繰り返し。イリーガルは腰の奥の疼きが強くなったのを感じ取った。
解放の時を待ちわびる活火山のように。マグマが滾る。
「サぁ、種をやろウ。イけ。孕め。悦べ、我が伴侶よ。」
一度腰を止め、イリーガルはディナイルの耳元でささやき、にんまりと嗤った。
ディナイルは意識を半ば飛ばしながらも嬉しそうに全身を痙攣させるとこくこくと何度も頷く。悦びの瞬間、それはディナイルにも伝わっていたようだ。
「はひっ、だんなさまっ、だんなさまのこだねっ♥♥いっぱいっ、いっぱいにひれぇっ♥♥」
ねだり、喘ぎ、抱き着き、膣全体でイリーガルの竿を包み込み、吸い上げ。
イリーガルは頬を吊り上げたまま…
「イクぞッ…!!!グゥゥゥゥッ!!!!」
全身の毛を逆立て、唸り声を上げると…止めていた腰の動きを再開する。
勢いも強さも、何もかも。桁違いのもの。欲望のまま、赴くまま。
「ァ”ォ”ォ”ォ”ッ♥♥ぉ”っ、ぉ”ぉ”ぉ”っ♥♥ぉ”ぉぉ”ぉ”ぉ”っ♥♥イグッ、イぎいぐいぎぃがぁぁぁっぁっ♥♥」
「グォォォォォォッ!!!アォォォォォンッ!!!」
どぼっ、ごぼぉぉっ♥♥どぶっ、どぶぶりゅびゅびゅるぅぅぅっ♥♥びゅっ、ごびゅっ、ごぼぶびゅるるぅぅっ♥
「ぎっ…がっ…ぁ”っ…ぉ”っ…♥」
注ぎ込まれる精液は、液体と呼んでいいものか。それほどの密度と量を誇り、ディナイルの中をあっという間に満たしていく。
腹に浮かんでいた逸物の形が、やがて液体で膨らみ、判別出来なくなるほどに。注ぎ込む。注ぎ込む。
注ぎ込む快楽。注ぎ込まれる快楽。
永遠とも思える時間。絶頂に浸り続け。どれだけの時間が経ったのか。
ディナイルが快楽のあまり意識を失い。しかしそれを快楽を持ってたたき起こす。
「ぁ”ぉ”っ♥」
「何を満足している。まだだ、まだこっちで孕んでいないだろう?」
「あひぃっ♥」
雄穴に指をねじ入れ、掻きまわす。既にこちらも準備は整っている。むしろ待ちわびていたかのように。
イリーガルの指を心地よく締め付け。腸壁が活発に蠢く。
ディナイルの膣から逸物を抜き取る。ぽっかりと拡がったまま戻らなくなった陰唇。しかしその隙間から精液が零れだす事は無い。
密度が高すぎるが故…溢れ出すことすら出来ないのだ。
「ひっ、ひひっ、いひひっ♥」
「クククッ、クククッ…!!」
まだ。まだ。交尾は終わらない。
[newpage]
玉座に腰かけ、道具を犯し、孕ませ。
愛しき伴侶の頭を撫でる。歪に膨らみ切った腹から生命を幾重にも感じる。もう間もなく産まれる事だろう。
ディナイルの浮かべる表情は恍惚と愉悦と人さじの絶望。
ここは、地獄だ。
「来たか。」
広間の入り口から、新たな肉の臭いがする。どうやら撒き餌は、その役割を果たしているらしい。
どれだけの絶望を味わいながら、富と名誉を得ているのだろうか。
考えるだけで絶頂に達してしまいそうになる。
あぁ、もう、終わって。もう、嫌だ。
聞こえるちっぽけな声。助けを求める絶望の声。
「クククッ…!愚かな肉どもよ…!跪け。」
全てを飲み込み。
かつて僧侶だった狼の。悪魔の日々は、続いていく。
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