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「うぅ…どうしよう…」
そう呟きながら瞳一杯に涙を溜め、とぼとぼと。がくがくと。膝を笑わせながら歩くのは頼りない僧衣を纏った狼。
薄暗く、死の臭いが立ち込める洞窟の中。一人での探索は危険を通り越し、自殺行為だろう。
手に持っているメイスからは聖なる光が頼りなく昇っているが、それは狼の身を完全に守ることは不可能に思える。
僧衣の至る所は破れ、狼の頼りない肉体がその隙間から見え。道具袋の類も持っていない。
それもそうだろう。狼はもともと、ここに一人で来た訳では無い。狼を含む4人パーティーで洞窟の探索をしていたのだ。
では何故。狼は一人でいるのか。その答えは至極簡単。他の三人が塵芥と化したからだ。
洞窟の中というのは危険で満ち溢れている。財宝の待っている洞窟となればなおの事。
その探索の途中で、狼たちのパーティーは一つの宝箱を見つけた。もちろんすぐさま開けるなどと言う行為はしていない。
呪術師が呪いの類がかかっていないかを確認し、盗賊が慎重に宝箱を開ける。そのいつも通りをこなしている中で。
呪術師ですら見破ることの出来なかった呪い。違う。呪いではない。…宝箱に閉じ込められた、亡霊の群れ。
凄まじい怨念の声を上げながら宝箱から飛び出して、いの一番。解錠していた盗賊が、消滅した。
骨も何も残らなかった。その場に最初からいなかったかのように。亡霊の群れに飲み込まれた。
声を上げようとした呪術師も同様に。少し。ほんのコンマ数秒後。消え失せた。
偶然それを目視していた狼は恐怖のあまりに腰を抜かし、地面に尻もちをつく。
狼と一緒に居た戦士は丁度見ていなかったのだろう。狼が尻もちをつき、ん?と不思議そうな声を上げ、振り返った。
そして亡霊の群れが戦士の上半身を消し去る。…残った下半身からはどぶり、と大量の体液が噴き出し…どしゃり、と倒れる。
…尻もちをついていた事で、狼は生き残ることが出来た。もし尻もちをついていなかったら戦士と同じような事になっていただろう。
だが、今となっては、そうして何も分からないまま消え失せてしまった方が幸せなのではないかとすら狼は思っている。
死にたくない。その思い一つだけで狼は洞窟の中を一人。探索せざるを得なかった。
どちらが出口かも分からない。魔物と出くわせば必死に逃げ、傷付けられたら魔力で回復し…ひたすら歩き続けている。
もう魔力は欠片も残っていない。進めば進むだけ消耗し、体がすり減っていくような感覚。
曲がり角一つ。ただそこを進むだけで叫びだしたくなるような恐怖に駆られる。いっそそうしてしまえば楽になれるのでは無いか。
そう考え始める狼だが、そこで思い出すのだ。上半身だけを喪った戦士の姿。
真っ赤な液体が噴き出し、骨髄がとろりと地面に滴って…
狼は口元を押さえた。もう胃の中身は空っぽだというのに吐き気を催す。それほどまでにショッキングな光景で。
「うぇっ…ぉぇぇっ…」
狼は耐え切れず胃の中身を戻した。…出てくるのは胃液と、胆汁。口の中に深いな苦さと強い酸味が広がり、狼は涙を溢した。
怖い。怖い。死にたくない。
ぶるぶると震えながら狼はしかし立ち止まることなく洞窟の中をただ闇雲に歩く。
松明の灯りだけが頼りなく洞窟を照らし出した。完全にかき消える事の無い暗闇。そこから何か飛び出してくるのでは無いか。
もうどうしようもない。助けて欲しい。願い祈り念じる。そんな思いの中で。
「…ッ!?」
狼は耳をぴんっ、と立てると尻尾をせわしなく動かし始めた。
風が無く澱み切っていたはずの洞窟内の空気。それが微かに動いたのを感じ取ったのだ。
「外っ…出口ッ…!?」
生ぬるいが、確実にそれは風。狼は最期の力を振り絞る様に風の吹いたと思しき方角へ歩き始める。
もう力が入らない。がくんがくんと何度も倒れ込みそうになりながら必死に歩く。
曲がり角の先。そこに光が見える。それは松明の光とは違うもので。あぁ、自分は奇跡的に。出口に向けて歩けていたのだ。
壁に手をかける。…這いつくばりそうになりながら。体を進めると。
光が。消えた。
「…くっくっく…まさか人間風情がここまで来られるとは思わなかったのう。良くぞ来た。」
そう愉し気に嗤いながら狼に話しかけるのは悪魔。比喩ではない。正しく、悪魔。
にょろりと伸びた黒い尻尾。山羊のように横に伸びた瞳孔。禍々しくねじ曲がった角。コウモリのような皮膜の張った翼。
ほっそりとした体はしかし最低限の筋肉を宿し、ただの人に立ち向かう事は困難に見える。
「ぁっ…あぁっ…」
狼は口をパクパクと動かすとそのままどさり、と地面にへたり込んだ。ひゅうひゅうと喉の奥から呼気が漏れる。
絶望の表情。悪魔はそれを観ると…なお一層。笑みを嬉しそうに、愉しそうに、残忍で冷たい物へ。深めていく。
「くくくっ…クカカカカッ!!そそるのう、そそるのう!その顔!その表情!その仕草!外だと思ったか?残念!ここは洞窟の奥!財宝の眠る場所!ワシの住処!出口とは正反対!」
高らかに宣言すると、悪魔は姿を黒い霧のようなものへ変貌させた。
もう体がぴくりとも動かない。ただ呼吸をする事すら困難で。目の前の光景を見つめる事しか、狼には出来ない。
黒い霧は狼の目の前に集まったかと思えば、悪魔の姿を形作る。ゼロ距離。息と息が触れ合う距離。
悪魔の生臭い息が狼の全身を包み込む。狼の瞳をじぃっ、と見つめながら悪魔は凍り付きそうなほど冷たく、細長い指を狼のマズルに這わせた。
もはや反射で体を動かす事も出来ない。しばらく値踏みするよう狼のマズルを指で撫で回すと。
悪魔は頬を吊り上げる。
「なるほど、貴様、神の使いか。忌々しい。だが魔力切れ、か。…クククッ、尚面白い。神の使いを堕とし、ワシの下僕に、配下に、奴隷にして…神への侮辱。あぁ…最高では無いか…」
うっとりとした、恍惚の色を超えに混ぜ、悪魔はぶるり、と震えると長い舌で舌なめずりをする。
信じた神は。神の力は。今この場では。何の意味も、力も。無い。
「しかし、そのままの肉体ではワシの下僕にするにはちと物足りんのう。」
呟くと、悪魔は再び黒い霧へと変貌する。今度は狼を包み込んだ。
狼の体に。黒い霧が入り込むと。ばぐんっ、と。ピクリとも動かなかったはずの狼の体が跳ねた。
「ガッ…アガァァァァァ!!!?!?!?」
目を見開くと狼は絶叫を上げた。そして。
ぶぢぶぢぶぢと。尋常ではない音が狼の体内から響き始める。ごぎゃっ、ごぎゃっ、と。鳴ってはいけない音。
絶え間なく続く絶叫。瞳から血の涙を溢し。狼の体に変化が訪れる。
千切れた筋肉が凄まじい勢いで修復していく。修復した筋肉がすぐさま千切れる。
繰り返す、繰り返す。それに伴い…狼の体が膨れ始めた。
だというのに。狼の表情に、僅かな恍惚が混ざる。股間が膨らみ、しっとりと濡れていく。だがそれは尿と言うには些か粘度が高い。
「アガグァァァアッァ!!!!!ガァァァァ!!!」
喉の奥から血が出んばかりに絶叫する。やがて膨らみ始めた狼の肉体が、狼の身に着けている僧衣をぶぢ、ぶぢ、と破り始めた。
限界まで膨らみ、服がぱつんっ、ぱつんっ、と悲鳴を上げる。
「ガァァァァァ!!!!」
一線を超えた所で、狼の相違が凄まじい音を立てながらはじけ飛んだ。
生半可な圧力では破ることの出来ないはずの僧衣。それを破り、後に残るもの。
狼の異常に膨らんだ肉体。くっきりと筋の形を映し出す腹。すさまじい臂力を生み出せそうなほど膨らんだ両の胸。
丸太よりも太い腕。太腿。全てが人と比べ物にならないほど膨れ上がり、先程まで遠く感じていた洞窟の天井すら手が届きそうで。
そして。股間。
膨らみ、膨らみ…僧衣の下からずるり、と出てきた逸物。それは狼の胸の前にまで届きそうなほどの大きさを誇り…びぐびぐと脈動する。
グロテスクな血管が竿にぐるぐると絡みつき、張った雁首は鉄よりも硬く。
「ォォォォォ!!!ォォォォォォン!!!」
狼は呼吸を荒げながらしかし背筋を仰け反らせると本能の導くままに遠吠えをした。
「クククッ、どうだ、どうだ?力が溢れるだろう?漲るだろう?これから貴様はその力でワシに仕えるのだ。悦べ悦べ…クカカカカッ!」
黒い霧から姿を戻すと悪魔は狼の首筋に指を這わせる。じゅうっ、と焼け焦げる音。臭い。
狼の首筋に紋様が刻み込まれる。…それは主従の証。
狼は理解出来る事も無く。…ただただ、本能の従うままに遠吠えを上げた。
[newpage]
「ぅ…ゥゥ…」
唸り声をあげると狼は目を覚ます。…松明の灯りで頼りなく照らされていたはずの洞窟。そこがやけに明るく、はっきりと見える。
数度瞬きをすると…頭痛に襲われた。狼は頭を抑える。
「ぼく…ハ…」
低く、野太い声。上げた自分でも驚愕しながら狼は意識を失う前の事を少しずつ思い出していく。
そうだ、自分は洞窟で迷い。出口だと思った場所は…
「アクマ…の…」
はっ、とする。頭を抑えた手。改めて見てみる。
「ッ…」
夢ではない。夢であって欲しかった。
自分の物ではないと思ってしまうほど太く膨らんだ腕。ぐっ、と少し握るだけで凄まじい力を自分で感じられる。
ゆらりと立ち上がる。全身が重たい。それなのに酷く軽く動かせる。腕を上に伸ばせば天井に余裕でくっついてしまいそうだ。
膨らんだ全身。頼りなかったはずの肉体が大きく膨らみ…並の戦士と並んだところで大人と子供の差になってしまうほど。
狼はぶるぶると震えながら…ふらふらと歩く。一歩踏み出すごとにずがん、ずがん、と地面が割れて。
水面を見つけた。狼はそこをのぞき込む。
「アァ…イヤ…だ…ボク…が…」
そこに写った自分の姿。狼はぼろりと涙を溢した。真っ赤な涙だった。
真っ黒な目。真っ赤な瞳。恐ろしい顔付き。首に刻まれた紋様。聖職者であった狼には何を意味するか、直ぐに分かってしまった。
悪魔との契約を結んだものが刻む、魂を売り渡した証。主従の関係。
鋭くとがった爪に牙。全てがヒトを傷付け蝕むものに変貌している。もう外に出る事は出来ない。
狼は顔を抑えると嗚咽を漏らしながら涙を流した。真っ赤な、真っ赤な涙。鉄の臭い。
それに対し、自分の本能が昂っている。尻尾がゆらりと揺れ、耳がピンと立つ。
嗚咽を漏らし続け…やがて涙が枯れる。べっとりと絶望を心に塗りたくられ、狼は失意のまま立ち上がった。
ふらりふらりと歩く。洞窟の中。ヒトであった時は恐ろしかった。どうしようもない程に恐ろしかった。
今も恐ろしい。しかし恐ろしさの恐怖が違う。自分を見ると魔物が逃げ出すのだ。
「ゥゥ…ゥゥゥ…」
それが恐ろしい。自分がヒトで無くなった証明。下手な魔物より上位の存在になってしまった。
『気分はどうじゃ?悪くないだろう。』
キィン、と耳障りなノイズが鳴り響いたと思えば狼の脳内に直接声が語り掛けてくる。
自分を変貌させた悪魔の声。楽しそうに、愉しそうに。
『クククッ、悪魔の力、存分に愉しめばいい。』
「黙…レェッ…!」
『おぉ、怖い怖い。』
狼の憤怒と、絶望の声に悪魔はやはり愉しそうにケタケタと笑い声を混ぜながら狼を挑発する。
腸が煮えくり返る。だが姿も見えず、脳内でのみ声が響く状態を今の狼がどうにかする事も出来ない。
全身の毛を逆立てようとも、鋭い爪を光らせようとも。
どうにも出来ないのか?このまま洞窟の中を久遠の時過ごし続けるのか?
悪魔の声を聞きながら?誰にも手を差し伸べられず?嫌だ、嫌だ。帰りたい。
思考が交錯し、頭が破裂しそうになる。
必死に考え、唸り。狼は足を止めた。
魔力は残っていない。今感じられる力は自分の全身。肉体から沸き立つ臂力。それだけ。
「みんな、気を付けろよ。」
と、声が聞こえた。…狼は耳をぴんっ、と立てると声に近付くことにした。気配がする。
臭いがする。ヒトの臭いだ。魔力の臭いだ。もしかしたら、自分を助けてくれるかもしれない。
都合がいい思考だ。そう思う自分と。そんなものに縋らなければならない状況。
曲がり角の先。薄暗い。今の狼には陽の下と変わらない明るさの洞窟の中で。
狼はパーティーと。洞窟探索に来た、かつての自分と同じような。ヒトの群れに出逢った。
「なっ…!」
「なんだこいつっ…!」
狼と対面するや否や、パーティーの先頭に立つ戦士が剣を抜いた。
暗闇に突如として現れた、ヒトならざるモノ。それと出逢った時、ヒトがとる行動。分かっていたのに。
狼は声を上げる。必死に。紡ぐ。
「チガ…カエッ…グゥゥゥっ…!」
違う。敵じゃない。僕はただ帰りたい。戻りたい。それだけだ。
その言葉が、上手く紡げない。喉が痙攣してしまったように、零れ落ちるのは聞いた者を畏怖に貶める威嚇の声。
「ここまで来て手ぶらで帰れるかッ!行くぞ皆ッ!」
戦士が剣を構え、足に力を込める。
後ろで魔術師が陣を作り出し、炎を生み出した。
僧侶の優しい光がパーティーを照らし出し、武闘家は軽く跳躍する。
「ヤ…メ…グゥォォォォ!!!」
声は、途切れた。
魔術師の魔法陣から放たれた炎が狼に襲い掛かったのだ。
全身を覆った炎。じゅうっ、と全身が灼ける音。酸素が燃やされ、呼吸が出来ない。呼吸をしようと開いた口に、熱気が襲い掛かる。
両腕で体の前を隠し、悲鳴を上げる。
狼を覆う炎が収まった直後、狼の腕に戦士の剣が振り下ろされた。
「ガァァァァ!!!」
激痛が腕を走り抜ける。肉を切裂き、骨にまで剣が到達したのだろう。がきんっ、と金属質な音。
黒い血がぶしゅうっ、と噴き出し、戦士を。
そして。
「っだらぁぁぁぁっ!!」
狼の懐にまで飛び込んでいた武闘家を汚した。声と共に打ち貫かれるのは狼の腹。
どごぉぉっ!
「ガッ…!!」
体に鈍痛と鋭い痛み。その両方が駆け巡り、狼は口から血を吐き出した。
ごろごろと転がり、ずしゃあ、と音と共に体が打ち付けられ、壁を砕く。背骨が悲鳴を上げ、狼は再び大量の真っ黒な血を噴き出す。
「よし!このまま一気に仕留めるぞ!」
戦士の勇壮な声。狼は背筋に冷たい稲妻が走るのを感じた。それは恐怖。自分が確実に死に向かっている、という恐怖。
死ぬ。このままでは、死ぬ。
何も出来ず、このまま死ぬ。死んでしまえばと思った。しかしいざ、本当に死に瀕した時。
狼は身を翻し、立ち上がる。このまま死ねば、神に仕えた者、としてでなく、神を侮辱したものとしてそのまま消滅する。
嫌だ。嫌だ。自分が何も出来ず、そのまま死ぬなんて。何も遺せないなんて。仲間の死を悼む事すら出来ないなんて。
死にたくない。死にたくない。死にたくない。
「ゥゥゥゥゥゥッ!!ガゥゥゥグゥゥゥ!!!」
狼は全身の毛を逆立てると、両腕と両脚に力を込めた。膨らんだ全身。それが更に隆起する。
目の前の戦士を睨みつけると狼は跳躍した。何が起きたか、狼自身理解できていないだろう。
ただ本能に従い。体が勝手に動く。目の前にいた戦士に飛び掛かった。腕を引き、突き出す。
ズゴンッ。
「えっ…ぁっ…?ごぶっ…?」
轟音と。肉の千切れる音に戦士は疑問符を浮かべながら、持ち上がった自分の体に視線を降ろす。
戦士の太腿より太い腕が、自分の体を貫通している。脳がその事実を受け入れるのに時間をかけた。
口からだらだらと血が溢れる。びしゃびしゃと狼の毛並みを真っ赤に染めて。
「ぁっ…がぁっ…ぐがぁっ…がぶぅぁぁぁぁぁ!!??!?」
全てを理解する事が出来た戦士は…腹から全身を蝕む激痛に血塗れの悲鳴を上げた。
狼は。
「ぁっ…あぁっ…!」
絶望と快楽と背徳と罪悪と。様々な感情が一挙に押し寄せ、ただ茫然とした表情で口をパクパクと動かす。
抜かないと。そうしなければこの戦士は確実に死ぬ。
腕を動かす。ぐりゅぎりゅと肉の千切れる音と骨が砕ける音。血が勢いよく飛び出し、狼の口に飛び込んだ。
「がっ、がぁっ!あがぁぁぁ!!がっ、あがぁぁぁぁががっ!!!ぎっ、ごぉっ!!!」
狼が腕を抜こうとすると、戦士の体が何度も歪に跳ね、上手く腕を動かせず。
口の中に入った血が、とてつもなく甘く。訳が分からない。分からない。
戦士は白目を剥き、口から血の泡を吐き出し、何度も痙攣する。
「はっ、離せ!離せッ!」
目の前の凄惨な状況に武闘家がようやく我を取り戻し、狼に飛び掛かる。
違う、嫌だ、こんなの、嫌だ。血が美味しいわけが無い。肉の千切れる感触が心地いい訳が無い。
唾液が大量に滴るのはなんで?やめて、止めて。
「ガァッ!!!」
飛び掛かってきた武闘家を蹴り飛ばす。滅茶苦茶な動きで。素人の格闘。だが。
「ぎっ…!?」
武闘家は吹き飛んだ。技術も、何も無くとも。力だけで。狼は武闘家をねじ伏せた。
壁にぶつかると武闘家は血を吐き出し、せき込み、そのまま意識を失ったように狼には見える。
そうしている間に。腕で悶えていた戦士の痙攣が徐々に小さくなった。血の噴き出す量も目に見えて減り。
「アァ…ァッ…」
殺した。殺してしまった。ヒトを。かつて自分だったものを。だというのに、なぜこんなに。
目の前の肉塊が、こんなに。
美味そうに見えるのだろう。きらきらと紅く輝いて美しく見えるのだろう。
唾液が滴る。いや、分かっていた。しかし自分が想像していたよりも遥かに大量の唾液。ぼだぼだと地面に落ちて飛び散るほどに。
がばぁ、と口を開く。鋭い牙は、このヒトだったものを。肉塊を。恐らく容易に。
ばぐっ、ん。
「ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
遠くに声が。悲鳴が聞こえる。そんな事がどうでもいいと思える程に。狼の口いっぱいに。
鉄の、甘い味が広がる。ごしゃごしゃと咀嚼すると果実が弾けたかと思うほどに液体が広がり、口から零れてしまった。
真っ赤だ。甘い甘い真っ赤な果実。背徳の味。罪を犯している。もうヒトではない自分が。
夢中で貪る。果実を。肉塊を。
食べて。食べて。食べて。
あっという間に無くなってしまった。ぺろりと口の周りに滴る果汁を舐めとる。罪すら恍惚に変わる。
ぞくぞくと背中が震え、目が上に向いてしまう。でもまだ足りない。
狼は尻尾を大きく揺らすと。目の前にいた、動くことの出来ないヒト。
そちらに視線を向けると一歩、足を踏み出した。
[newpage]
あぁ、甘い。美味しい。
狼はうっとりとした表情を浮かべながら二つの果実を両手に持ち、交互に齧る。とろりとした白い髄も。真っ赤な果汁も。
狼を満たしていく。目の前に転がるもう一つの果実も、しっかり食べる。腹が充ちる。脳が充ちる。
果汁の池に身を委ね、果実を貪る。
ごしゃごしゃ、ぐちゃぐちゃと。上品に食す事なんて出来ない。
甘美な音が洞窟の中に響き渡った。
…あぁ、腹が一杯になった。げぷっ、と血生臭い息を吐いて。
熱に浮かされていた狼。その熱が冷めていく。そして覚めていく。
「…ぼっ…ボクはッ…今ッ…ァァッ…ァァァァァッ…!!」
慟哭の声。狼は自分の頭を抱えると絶叫する。
自分の犯した罪。行動。絶望に。
『どうだ?どうだった?美味かったじゃろう?ヒトの肉は。ヒトの絶望は。ヒトの血は!』
悪魔の声が聞こえる。頭の中に響き渡る。激しい頭痛がするほどに大きな音。
狼はボロボロと大きな涙を零し、頭を抱え込む。血溜まりに突っ伏し、慟哭の声を上げ続ける。
その狼に。
『クカカカッ、クカカカァァッ!!いい声だ、いい絶望だ、いい悲鳴だ!あぁ満ちていくぞ、ワシも満ちていく!もっと聞かせろ!ぐひゃひゃひゃ!!』
悪魔は嗤う。どこまでも楽しそうに。冷酷に。
暖かかった血が冷たくなって。肉の臭いが生臭さを増す頃。
『…そうだ、お主ばかり愉しんでは不公平じゃ。まだ生きてる奴がおるじゃろ?そいつをワシの所へ連れて帰ってこい。』
悪魔の声が頭の中に響き渡った。…狼は拒絶する事も出来ず。
血だまりからすくっ、と立ち上がった。体が半分、言う事を聞かない。
首の紋様が狼の意識を縛り付ける。自らの意思が、肉体に閉じ込められてしまったような感覚だ。
狼はのしのしと地面を揺らしながら…気絶している武闘家に近付いた。
意識が無く、しかし呼吸を行っている。生きている。彼も、自分と同じようにされてしまうのだろうか。
あぁ、いっそここで殺してしまえれば、彼も、自分も、良かったのかもしれない。
狼は武闘家の体を片手で持ち上げる。軽々と持ち上げられるほどの力が溢れ続けている。
今も溢れ、更に大きくなる。
手の中の武闘家は、暖かく…じゅるりと唾液が溢れ出した。もし悪魔にこの身を使われていなければ…
想像してしまい、狼はぶるりと震えた。
悪魔の導くまま、洞窟の中を進む。そして自分が、変貌させられたあの場所へ。
視界が開ける。待ちわびていたのだろうか、悪魔はにまにまと汚らしい笑みを浮かべながら狼を迎え入れた。
「おぉおぉ、素晴らしい。良き力だ。良き絶望だ。良き肉体だ。」
悪魔は漂いながら狼に近付くとうっとりとした表情を浮かべ、狼の体を撫でた。
ぞくぞくと寒気が走る。悪魔に触られているという事実。そして体がそれに対し嫌悪感も何も抱いていない事実。その両方に。
変貌させられた肉体で目の前の悪魔を見ると、恐怖も何も湧かず、むしろ神を前にした時のように。満ち足りるような感情が溢れるのだ。
「ふふっ、そう興奮するでない。」
その言葉に狼は一瞬疑問を抱く。だがその疑問はすぐに解消された。
…自らの逸物が硬さを、大きさを、太さを増しているのだ。ビクビクと血管が浮かび上がり、跳ねる。
先走りが溢れ出し、筋をつつつ、となぞっていく。
「そうじゃなぁ、ワシが慰めてやっても良いのだが。」
そう言うと悪魔は狼の逸物を指の先で撫で回す。快楽が。恐ろしい程強い快楽が駆け巡る。
違う、違うと脳で否定しても、体が震えるのが止まらない。
「ワシの体では受け入れるのにちと逞し過ぎるのう。…と、いう訳で。」
狼の逸物から指を離すと、悪魔はぱちんっ、と指を鳴らした。
手の中に持っていた武闘家が、その音と共に目を覚ます。
そして。
「なっ…!?」
自分の置かれている状況に、目を見開いた。それもそうだろう。狼の化物に体を持たれ、その目の前に悪魔が居るのだ。
悪魔は愉しそうに。狼は絶望と、しかし渇望と。両方を宿した瞳で自分を見つめているのだから。
そして。その瞳を見つめていたら。自分の目の前にそそり立つ異形の逸物を見ていたら。
強い雄と、鉄の臭いを嗅いでいたら。武闘家の中で何かがぷつん、と切れる音がした。
「ぁ”っ…あはぁっ…はっ…はっ…あ”ぁ”っ…♥」
武闘家の呼吸が荒く、艶っぽい物へと変わっていく。だらしなく破顔し、目の前の逸物に手を伸ばす。
「ソレに慰めて貰うがよい。なぁに、お主も元々聖職者であったのだろう?そいつを死なせたくなければお得意の法術で癒してやればよい。」
悪魔はやはり汚らわしく、汚く、なによりも愉しそうに嗤いながら狼から離れ、宙に浮きながら狼と、武闘家の様子を眺める。ただ、眺める。
「ぁ”っ、ぁ”っ、んぁ”っ…ちんぽっ…ふひっ、ふひひひっ、ひひっ…♥」
狼の異形の逸物が手に触れると武闘家はますます破顔し、もはや尊厳も何も無くした顔で。
びくびくと体を震わせる。身に着けている薄い衣服。
武道着が汗で濡れ。股間部分が雄の形に膨らみ、先端に染みを作りだして。
体の自由が利く様になった。恐らく悪魔が自分の体に命令を出すのをやめたのだろう。
「ぐっ…ォッ…!」
駄目だ。駄目だ。駄目だ。何度も何度も呪文のように言葉を繰り返す。
違う違う違う違う!!
「ちんぽっ、ちんぽぉっ、ふひっ、ひひっ、ふひっ、おひっ、ケツっ、おひひひひッ♥♥♥」
壊れた言葉。壊れた顔。武闘家の情けなく。…雄をいきり立たせる雌犬のような顔に。
狼は武闘家の。いや、目の前の雌の。…雌でもない。道具の。
包装を破る様に。武道着を爪で引き裂いた。
まるで薄皮を破る様に、あっさりと武闘家の包装は破れ…もわぁ、と強い雄の臭いを放つ。
くん、くん、と数度鼻を鳴らすと…狼はだらだらと大量の唾液を零しながら。
「んひゃぁっ…♥」
武闘家の。肉で出来た道具の体を片手で持ち上げる。己が逸物の先端に、尻の谷間に隠れる穴を宛がい。
武闘家の逸物からびゅるびゅると先走りと精液が溢れ出す。期待に、恐怖に。達してしまったのだ。
狼は…
ズンッ!
「ぉ”ぉ”ぉ”ぉ”ぁ”ぁ”ぁ”っ♥♥♥」
ぶぢぶぢと体内の何かが千切れる音と、武闘家の悲鳴が同時にその場に響き渡る。
狼は無理矢理、怒張しきった逸物を挿入すると。ふぅぅぅぅっ、と深く息を吐き、動きを止めた。
武闘家の腹はぼっこり、と狼の逸物の形をはっきりと映し出し、狼の脈動に合わせ血管すら浮かび上がらせている。
強く締め付ける雄穴の感触は、自分の手で自らを慰める感触と全く異なった。
僅かに残っていた理性と自我が、ふわふわと自分の頭から離れていく。聖職者として生き、自らを律し続けていた。
自慰すらまともにしなかった。そんな狼が。
ぞくぞくと腰の奥から背中を駆け巡る快楽に耐えられるわけが無い。武闘家の鼓動と合わせて腸壁が活発に動き回る。
狼の逸物全体を包み込み、排出しようと必死に蠢き、結果それは狼の逸物に更なる刺激を与えるだけだった。
武闘家の体を少し動かしてみる。
「ぁ”ぁ”ぁ”っ♥♥♥」
武闘家はただそれだけで全身をびくんびくんと跳ねさせると壊れたように嬌声を上げた。
行き過ぎた痛みが快楽とない交ぜになり、脳がパンクしそうなのだろう。逸物から大量の精液と先走りが溢れ出し、二人の体を汚す。
武闘家が絶頂に達すれば狼の逸物への締め付けが変わる。激しく、よりいっそう強く。
確かな抵抗感が、逸物を扱いて。
「グゥゥッ…ゥゥゥッ!!!ゥゥゥゥ!!!」
狼はにぃっ、と頬を吊り上げる。もう、いいか。
お預けを解除されたような。理性と自我を握りつぶされ。狼は。
腰を振り、武闘家を片手で持ち上げる。もう片方の手を武闘家にかざし、念じる。
神の力だったはずの法術。それを応用して。武闘家の体を癒しながら。壊す。
ずがんずがんと肉同士が激しくぶつかる音。
「ぁ”っ♥♥♥ぁ”ぁ”っ♥♥♥ごわっ、ごわれりゅぅっ♥♥♥ゲヅマンごわれっ、あぎひぃっ♥♥♥おぉ”ぉ”っ♥♥♥」
武闘家は腹の凹凸が激しくなるたびにどこまでも心地よさそうに、壊れたように嬌声を上げ続ける。
もはや脳みそは飾り。快楽の余り唾液を零し、舌をはみ出させる。目は上を向き、口角は歪に上がり。
その表情が、更に狼の―悪魔の手先としての―欲望を肥大化させる。
腰を激しく振る。持ち上げた手で武闘家を動かす。その様はまさに…
「クカカカッ、良い長めじゃな!肉オナホは気持ちいいか?便利な道具を早速手に入れたもんじゃのう!」
「ぉ”ぉ”ぉ”っ♥♥♥あ”っぁ”ぁ”っ♥♥♥おれっ、オナホっ、いひひひぃっ♥♥♥ぎぎぃっ♥♥♥」
聞こえる声がどこか遠く。狼はそんな言葉よりも、目の前の武闘家を。道具を。扱う事に夢中になる。
がっしりと握って、手を乱雑に動かして。心地よく締め付ける雄穴。絡みつき、排泄しようと収縮を繰り返す腸壁。
だくだくと溢れ出す腸液と、狼自身の先走りで具合が更に良くなる。
背徳が、罪悪が、道徳から外れる、未知の快楽。腰がビリビリとしびれ、狼は夢中で何度も何度も道具を動かす。
あぁ、きた。一際大きな波が来た。見える。来る。
「グゥゥゥッ!!!ゥゥゥグゥゥゥッ!!!」
狼は荒々しく息を吐くと、道具の肉体を抉れそうになるほど強く握りしめた。
逸物がびくんびくんと大きく脈動し、睾丸がせり上がる。
絶頂の予感に。道具は。
「ぁ”ぁ”っ♥♥♥ぁ”っ、ぁ”っ、ぁ”ぁ”ぁ”っ♥♥♥」
啼いて。啼いて。全身から力を抜いた。いや、抜けてしまった。ヒトだったものが、完全に道具と化した。
狼は牙を食い縛ると、腰を激しく打ち付けた。ずごんっ、と一際激しく、大きな音の後。
「ォォォォォォォンッ!!!」
今まで一度たりとも上げたことの無い。恐怖を煽り、下位の生命を畏怖させる遠吠えを上げ。狼は快楽に腰を震わせた。
尿道を通り抜けるマグマ。鈴口がぱっくりと開き。
…ぼびゅるぅぅぅっ!!!びゅぼっ、びゅびゅぼぉっ!どぼっ、どぼっ、ごぼんっ!
「~~~~っ…♥♥♥」
道具は完全に意識を飛ばし、体を何度も痙攣させる。その間も腹はどんどんと膨らんでいく。
狼は…凄まじい射精感に酔いしれた。半分固体に似た精液が尿道を駆け抜け、道具を満たしていく。
ごぼんごぼんと音を立てながら。圧倒的な量を注ぎ込む。精液が解き放たれたと思えば、まだ次があって。
次は更に快楽を増しながら、道具を満たしていくのだ。
やがて、道具の腹がパンパンに膨れ上がると。口からどぼっ、どぼっ、と断続的に精液が溢れ出す。
行き場を失った精液が出口を求め、逆流している様だ。
意識を失い、白目を剥いた道具は…それでも口角を上げたまま、恍惚に浸っているのだろう。逸物からびゅるびゅると薄くなってしまった精液を吐き出し続ける。
続く射精。快楽は留まる事が無い。いつ終わるのか、自分でも分からない。理解できない。
ただ、今は。
「ォォッ、ォォォンッ…!ォ”ォ”…!!」
吼える。吼える。吼える。
快楽に浸りながら。
[newpage]
意識を取り戻す。
今度は、はっきりと覚えている。腕の中。熱い肉の塊。
まだ生きている。それは生物として、生きているというだけだ。
「あ”-…ぅ”ぅ”-…ぅ”ぁ”ー…ぁ”…ぁ”ぁ”…」
狼の肉体に縋りつきながら壊れた声を上げ、自らが逆流させた狼の精液を舌で掬い上げる。
濁り切った瞳に希望も理性も無く。ただただ、快楽に縋りつく。その姿が、また。
「…ククッ…」
狼は嗤った。あぁ、また欲情してしまうじゃないか。
ヒトとして覚えていた罪悪感が、悪魔としての欲望を滾らせる。僅かに萎えていた逸物が膨れる。それはあっという間に道具全体の大きさを上回り…
道具を持ち上げた。
「ぁ”-…ひひっ…♥ぁ”ぅ”-…♥」
逸物の感触を味わうと道具はびゅるっ、と精液を噴き出し、雄穴からごぼんっ、と精液を勢いよく溢れさせた。
また犯そうか。いや?犯す、という表現は間違っている。また、『使おう』か。
狼は迷うことなく、道具の肉体を持ち上げる。
「んひゃぁ♥♥♥」
道具は恐れるどころか、むしろ嬉しそうに。頬を吊り上げると全身をびくつかせた。浮かび上がった筋肉に、うっすらと汗を纏わせ。
狼の肉体を見つめる。狼はぺろりと舌なめずりをすると。
ずんっ。
「ぉ”ぉ”ぉ”っ♥♥♥」
道具の雄穴へ逸物を挿入した。あぁ、心地よい。狼の逸物にぴったりと、少しきつめにフィットする腸壁。
昨日、初めて使った時よりも、更に心地よさが増している。ぶるりと腰が震え、自分の意思と反し体が動く。
凶悪に膨らみ、どす黒い竿があっという間に粘液に塗れ、泡立ち、淫靡な臭いを立てながらコーティングされていく。
道具の哀れで、淫靡な嬌声が狼の耳をくすぐって、理性をどんどん崩す。崩れた理性は欲望の餌となって。
「ほっほっほ、すっかり愉しんでおるようじゃのう。良き事じゃ。」
悪魔の声が聞こえた。狼は視線だけをちらりと向け、しかし道具を使う事を止めようとはしない。
黒い霧が集まり、悪魔の姿をかたどって。…悪魔はやはりにまにまと嗤いながらその様子を眺めた。
道具の口から精液が溢れ出す。同時に、粘液とは異なった何かが溢れ出て。
悪魔が指を鳴らすと、白い何かが悪魔の元へ向かっていった。
あぁ。なるほど。あれが。
狼は理解した。あれが、所謂。ヒトの魂。狼の中のヒトが、悲鳴を上げる。罪悪感が、後悔が、絶望が。大きく膨らみ。
それは。
「ォォォォォンッ!!」
どぼっ、ごぼぉっ!ぼびゅっ、ぼびゅるるぅっ、ぼびゅぼびゅっ!
狼は絶頂に達し、再び道具の中に精液を注ぎ込んだ。量も濃さも変わらない。あれだけ射精し、道具を満たしたというのに。
まだ足りぬと言わんばかりに。道具を新鮮な精液で埋め尽くす。
知らなかった。知ってしまった。ヒトの絶望が、罪が、悲鳴が。
「ギモヂッ…イヒギィッ…!」
狼は唾液を零しながら天を仰ぎ、ぶるぶると震えながら頬を吊り上げた。
ちっぽけなヒト。それがいまだに残っている。自分の中に残っている。だが、それすら悪魔の欲望に火をただただ注ぎ込むだけだ。
ごぐっ、と悪魔が魂を飲み込んだ。満足そうに笑い…
狼に近寄る。
もう恐ろしくない。そう。今の自分は、悪魔に近い。…同じ存在なのだ。
「さて、愉しんで貰った所で…また新しい冒険者たちがこの洞窟に立ち入っているようでのう。お主に任せてよいか?」
「…アァ…当然…」
狼は悪魔の前に傅いた。両手を地面につき。道具を逸物で支えながら。
腹がぼこん、と膨らみ。道具は嗤う。嗤う。びくんっ、びくんっ、と震えながら。精液をだらしなく。口から、逸物から、雄穴から溢れさせながら。
[newpage]
新たな力を得た。
新たな道具を得た。狼はドスドスとわざと大きな音をたてながら洞窟の中を歩く。
桃色の紋様。肩からぶら下がった鎖。その先に繋がれたのは。
「あ”-…う”ぁ”-…ぁ”っ、ぁ”っ、ひぁ”っ♥♥♥」
道具。両手両足に鎖を繋がれ、狼の体の前に固定される。雄穴は逸物を受け入れ。狼が歩を進める度に逸物が腹の奥を突き、前立腺を抉り…道具に凄まじい快楽を与え続ける。
「グゥゥゥ…ゥゥ…」
眼下に居る道具。その顔が快楽のあまり崩れていくのを見ると、また興奮してしまう。狼はだらだらと唾液を狂った獣のように零した。
もう何度目か。数歩歩く度に腰を動かし、射精して。
道具の腹はパンパンに膨れ、口から何度も精液を零し、その度に狼を汚した。
今の道具がこなす役割。それは性処理と同時に、狼の体を守る、盾。そして、逸物を覆う、カバー。
一つ手に入れれば、もう一つ。二つ。欲しくなる。道具が欲しい。性処理用の道具が欲しい。
もっと気持ち良く、心地よく。全てを掌握し、蹂躙する。堕とす。堕としていく。汚して穢して。
その為にも。
耳をそばだてる。道具の元が。洞窟に侵入してきた、という冒険者たち。
哀れで、脆く。
狼はたんっ、と軽く跳躍した。驚くほど軽く。その体躯に似合わないほど素早く。
冒険者たちの前に躍り出る。
「なっ…!なんだこいつっ…!」
驚愕する冒険者たち。恐れと困惑の表情。あぁ、いい。ぞくぞくする。敵意を、殺意を、困惑を、絶望を、恐怖を。
「俺ニ…見セロ…!」
狼が声を上げる。ただそれだけで。
冒険者たちはそれぞれの得物を構える。そして、立ちすくむ。
膝が震えているのが狼の目にはっきりと映る。自分に畏れているのだ。あぁ、それだけでイってしまいそうだ。
狼は遠吠えをすると…冒険者たちに肉薄する。
存外、ヒトを壊さず、殺さず倒すというのは難しい物だ。
数人いた冒険者たちの内、半数は消し飛ばしてしまった。更に半数は食い殺してしまった。
僅かに残ったのは二人。生き残った。生き残ってしまった。
「あ”はぁ”っ…♥♥♥」
「んぶぅっ…♥♥♥ぉ”っ…♥」
紋様の力は、雄を強制的に発情させる物だった。雌には効果が無い様だが、問題ない。
雌は、旨い。
むしろ狼にとって都合がいい。雄達は発情し、戦う事が出来なくなる。雌たちは困惑し、そのまま餌になる。
最高だ。最高だ。
一匹の雄を持ち上げ、唇を貪り、自分の体液を流し込む。吐き出そうとすれば、一緒に魂の一部が出てきた。
口に入れた魂と言うのは、甘美なものだった。
もう一匹の雄は、道具と一緒に狼の逸物に縋りつき、雄穴に手を捻じ込み、自慰をしながら狼の逸物に奉仕していた。
精液を飲み込み、何度も絶頂に達する。雄がはしたなく雌の快楽に溺れ、雄を貪る。その姿を見るのは、これ以上にない程快楽だった。
道具はたっぷりと犯した。なら、次はこちらだ。
狼は口で雄を蹂躙しながら、片手に道具を持ち、雄穴に指を入れる。そのままぐりぐりと腸壁を抉り。
もう片方の手で雄を。捕まえたばかりの、新鮮な雄を持ち。逸物を無理矢理捻じ込む。
ずごっ…ごぼんっ!
「いっぎぃっぃぃぉいぃぃぃぃっ♥♥♥」
奇声が、心地よい。耳を撫でるようだ。狼はにい、とやはり頬を吊り上げ。
逸物を無理矢理ねじ入れていく。肉が千切れるような音。雄の奇声のような悲鳴。嬌声。
治療しながら。壊す。壊しながら、治す。
神よ、感謝します。
こうやって壊す事が。自由自在に出来る事。感謝します。だから。
「喰ワセロッ…!」
狼は嬉しそうに言葉を放つと。口での蹂躙を強める。雄の気道にまで舌を突き入れ、味わう。
「ッ”♥♥♥~~っ、~っ♥♥♥」
「ぁ”っ、ぁ”っ、はぁ”ぁ”っ♥♥♥」
「あ”ーっ、あ”ぁ”ぁ”♥♥♥」
奏でるトリオ。悪魔に快楽を与え。欲望を昂らせるトリオ。狼は嗤う。嗤う。
[newpage]
気が付けば。
部屋の中は、道具で溢れていた。狼が眠りから目覚めると。
狼に群がる。筋骨隆々の雄。でっぷりと太った雄。折れてしまいそうなほど細い雄。共通しているのは全員。
濁り切った瞳で。欲望に身を灼かれ、狼の雄を求めている事。
肉体が更に大きく膨張した。逸物もそれに伴い、大きさを増した。最初に手に入れた道具の口から亀頭が覗き見えたほどだ。
貫通してしまった。それでも道具は嗤った。絶頂に達した。それに狼もまた、達した。
精液を浴びた。
そして今。狼の睾丸に、逸物に、脇に、腹に、胸に。舌を這わせ、貪り合う。
竿を挟み、唇を交わし合う道具の姿は、美しくそして淫らだ。
部屋の中は常に雄と雌の入り混じった濃密な臭いで満たされている。その臭いだけで達してしまう道具もいる程だ。
「チンポ、旨いか?」
「あ”-♥♥♥ぅ”-♥♥♥」
言葉もそういえば、流暢に話せるようになったものだ。逸物を咥える雄達の頭を撫で、狼は壊れた言葉を並べる雄に尋ねる。
成長した。肉体も、精神も。もはやヒトとしての罪悪も無い。ヒトであった記憶も薄らいでいる。だが、これは忘れない。
忘れたら、欲望の味が落ちてしまう。そう、自分はかつてヒトであった。こうして、罪を犯し、快楽に溺れている。
あぁ、なんて愚かなんだろう。心地よい。罪に溺れるのが、ここまで心地よいなんて。
神の遣いが悪魔の遣いに。悪魔でありながら、神の力を使うとは。なんたる侮辱か。
そして使い魔であったはずの自分が。この洞窟の主となった。
部屋の隅を見てみる。…そこにはぶすぶすと未だに燃える、悪魔の肉体。
自分を変貌させ、遣いにしていた、悪魔。あぁ、そういえば。殺したんだった。あっさりと死んでくれた。もっともだえ苦しんでも良かったのに。
ぞくぞくと背筋が震える。逸物からどぶり、と精液が溢れ出した。
雄達は狼の精液が出てくるのを確認すると、群がった。舌を這わせ、貪り尽くす。
理性も無く、欲望のまま。自分が、彼らをそう堕とした。恐怖と発情で、理性を壊した。
もっと、もっと、もっと、もっと。
狼は立ち上がると部屋のど真ん中に置いてある椅子に腰かけた。歪で、禍々しいそれは恐らく、玉座。
腰かけ、足を組む。
雄の数人が狼の体に貪りつき、夢中で奉仕する。肘をかけ、雄の一人を持ち上げ、逸物を挿入する。
嬌声が響いて、耳を心地よく揺らした。
次の冒険者を待ちわびる。
餌になるか、道具になるか。どちらにせよ。
「愉しいなぁ…ククカッ…!」
狼は嗤った。
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