静かな夜、狼さんと慰め合い

  バチュン!バチュン!バチュン!

  「んん♡♡!!あぁぁあ♡♡!!んぎぃぃ♡♡!」

  時刻は午前4:00

  暗がりの部屋の中で淫らな水音が何度も何度も、とめどなく繰り返されている。

  わずかに開いたカーテンから差し込む、高校の輝く白銀の月の光が、つい先ほど知り合った狼獣人の毛をどこか神秘的に演出していた。

  「まっでぇ♡♡!!おねがぃだからぁぁ♡♡!!」

  「……………………」

  

  バヂュ!バチュン!バン!バン!バチュン!

  僕のナカに何度も何度も彼の逸物がストローク運動続け、脳みそを直接掻き回されるような快感に陥る。

  彼の赤黒く、パンパンに膨れ上がった雄のソレが何度も何度も子種を奥に送り出そうと小刻みに痙攣してる。

  それに応えようと僕のナカはきゅうきゅうと締め付け、彼の理性を順調に削り取っていった。

  思考力がトロトロとだめになっていく。

  それでもまだ微かに掴んだ理性の端が、自分にこびりついて離れない薄汚さを赤裸々に意識させる。

  「だめぇ♡♡!!だめだからぁ♡♡!!」

  「…………グルルルゥ」

  彼のトロトロとした先走りが、腸壁を見事に犯し潤滑油となって作用する。

  部屋中に獣人特有とフェロモンが充満し、どこに逃げても彼がいる、そう錯覚してしまうほど乱れる。

  バヂュ!バチュン!バチュン!バチュン!

  それでも彼は腰を振ることを止めない。

  銀狼の営みは非常に暴力的で、乱暴で、どこか自暴自棄だ。

  怒っているように荒々しいのに、ぽっかり空いてしまった心の穴を誤魔化すような、そんなふうに僕のことを犯し続ける。

  「まっでぇ♡!ナカはだめぇ♡!!お願いだからぁぁ♡!!」

  「……ハァ………ハァ…………」

  その時、彼のストロークスピードが確実に早くなっているのに遅れながら気づく。

  奥をグリグリとカリ高チンポがゴリュゴリュ♡と削り取ったかと思えば、粘液の糸を弾きながら腰を引く。

  フカフカのダブルスベッドの寿命を何十年と縮め、下の土台は悲鳴をあげている。

  火照りまくった僕の体はもはや言うことを聞いてはくれず、何度も何度も雄穴を締め付けてしまう。

  「実さんんん♡♡!!イ、イグゥゥ♡♡!!!」

  「!!!!!!!」

  数時間前に初めて聞いた名を呼んだ時、荒々しく腰を打ち続けながら、僕の素肌にポタッ…っと、生暖かい雫が滴り落ちた。

  乱れに乱れ、ベットに沈み込む体を動かし、何とか彼の顔を視界に入れる。

  そこには、吸い込まれそうになるような琥珀色をした瞳からボロボロと大粒の涙を落とす、端正な銀狼の顔があった。

  「グルゥゥ……………ウゥ……」

  しばらくすると、項垂れるように腰を振るのをやめてしまった彼。

  僕の中にまだ萎えることを知らない雄棒を挿入したまま狼は力なく僕のことを、ガラス細工を触るかのように優しく、それでも確かに感じる悲しみを感じさせるように抱きしめる。

  人間である僕なんて覆い被してしまうように、そんなふうに体を預ける。

  肩元では僕の数倍はあるであろう大きさの狼獣人が、痛々しい声で涙を流している。

  少し息を吸えば、サラサラの毛から彼の雄々強い匂いが鼻腔の奥底を刺激した。

  「うぅうぅう……うぅぐぅ……」

  嗚咽混じりの鳴き声が、彼の苦しさやや生々しく表現してやまない。

  

  「……ごめんなさい……うちのバカが……本当に」

  どういった感情で話せばいいのかわからない僕の口から溢れた最初の言葉は、ありきたりな謝罪だった。

  僕の記憶の中の奥底にしまわれそうになっていた出来事が鮮烈に蘇っていく。

  一昨日の夜

  僕の彼氏である虎獣人の眞城が会社の同僚と駆け落ちした。

  様子がおかしいとは少し前から思っていた。

  仕事から帰ってきてもずっと上の空。

  何かあったかと聞いても「別に」とあしらわれる。

  夜ご飯も家で食べる頻度が次第に減っていき、僕たちは同じ家に住んでいるにも関わらず会うことが減っていった。

  そして、一昨日の夜。机の上に置かれた置き手紙。

  「さようなら」とだけ書かれた電話帳の切れ端だけが、机の真ん中に置かれていた。

  その時、時間が止まったかの様な感覚が鈍く僕の脊髄から襲った。

  なんで?どうして?

  次第に遅効性の絶望が体を直撃する。

  吐き戻しそうな感覚。

  ぐるぐると回る視界。

  目の前で起きている現実を整理しようとすればするほど頭がおかしくなりそうだった。

  「ううぅうぅう……うぅ………ううぅう……」

  そして、眞城が駆け落ちした相手こそ、目の前でうずくまっている実さんの彼氏の人間だった。

  彼もまた、実さんに最後の挨拶を短い文言で済ませて姿を消してしまった。

  「……ごめんなさい…」

  僕は肺が苦しくて、うまく空気が吸えなかったあの時の空気を鮮明に思い出してしまった。

  声は弱々しく震えて、感情を抑えきれなくなっていった。

  「あんなクズ男、こっちから願い下げだ」と、今まで強がっていた分、彼を見るとどうしようもない気持ちでいっぱいになってしまった。

  次第に僕も涙で目の前の狼のマズルが滲んでいく。

  胸に確かにあった感情、今まで放置してきたものが今になって僕の心臓を抉り取ろうとする。

  捨てられたという事実。

  それでもまだ愛してしまっている現状。

  何もかもが、もう終わったこととして完結することができずに、ずっとダラダラと引き伸ばし続けている。

  しまいには、僕は憔悴しきっていた実さんに言い寄った。

  話を聞くと。慰めてあげると。

  躊躇いはなかったと言えば嘘になる。

  それでも何もかも忘れたくて、僕は彼のことを利用しようとした。

  「…………………」

  「…………………」

  部屋は静寂を取り戻す。

  月は雲に隠れ、部屋全体に深淵とも言える様な暗闇が支配している。

  一度に一気にたくさんの感情を処理しようとしたからであろう。

  時間が流れていくのを感じる。

  もう過去には戻れない。

  楽しかった眞城との思い出も、約束も、全部全部、何の形にも残らず流されていく。

  その現実が、僕は耐えられなく苦しい。

  それは、実さんだって一緒のはずだ。

  「うぅうぅ……志葉人ぉ………」

  もう戻らない恋人の名前を情けない低音で繰り返す銀狼。

  そこに狼の威厳はなく、1人で僕の肩を涙と涎で濡らす。

  あぁ…僕って最低だ。

  彼の愛を踏み躙った挙句、歪ませた。

  もう矯正できないほどに、彼の心を土足で踏み荒らしてしまった。

  愛する人間以外を、無理やり抱かせたも同然なのだ。

  罪悪感と喪失感、その他諸々の負の感情がどんどんと自分の薄汚れた愛への未練を露呈させる様で、どうしようもなかった。

  ついに僕は現実に背を向けるかのように、静かに目を閉じた。

  もう僕の行いを罰してくれる人はいない。

  ただ自分で勝手に傷ついただけ。

  .............あぁ........

  僕は誰よりも.......眞城のことが大好きなだけだったのに...

  時刻は午前5:00

  次第に周りの人間や獣人をたちが活動を始めるために起き上がる時間帯に差し掛かる。

  月は息を潜め、次第に空が燃える様なオレンジ色で修飾される。

  ただ、前に進むことを拒絶する2人を置いて。