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前回までのあらすじ
本日限定 との求人に感化され、ウェブ面接をした主人公だったが
なんと あっさり合格…… したかに思えたが
なんと自分より少し年下の おとなしめの女の子ことハルカさんというライバルがいることが判明!
殺してでも合格を奪取する、 そんな風に思いつつ主人公は、バーチャルリアルワールドへダイブする……?
[newpage]
ゆっくりと目が覚めた。
多分夢は見てない……と思う。
「……δΔ……Γ……」
何を言っているのか分からない。 ただ、野太い声に聞こえた。
人離れしすぎてぶっちゃけ、おかずになるんじゃない、なんて思った。
「何? 誰なのかなぁ……?」
目が覚めるとボクは、木製のサマーベッドの上に居た。
頭がぼんやりする、鈍い頭痛を伴っている。
これがバーチャルリアルワールド?
起きる様子を見ているソノダさんとハルカさんが視界に入った。そして声の主の方を見てみると
「なはっ……」
ギロリとして、鋭い目、恐竜かと思ったが人間っぽさがある、衣服も着ている。
一般人なら寝起きにこんなのを見たら飛び上がるだろうと思うのだが。
大きな蓮の葉に近いものをうちわ代わりにゆっくりとボクに対して仰いでいるのを見て敵意はないと一瞬で体は警戒心を除外する。
そして、ボクに興味深そうな視線を送っているのを見て、よし、ハグしようと結論が決まる。
その間僅か2秒。
「うひゃぁー……結婚してくれっ!!」
飛びつく勢いで蜥蜴人にダイブ。押し倒すと言っても過言じゃない力加減と思ったのだが
腕力や踏ん張る力があるのか、殆どびくともしてなかった。
「ム………ムゥ……」
「ム?」
今度は聞き取れた。 そう思ったその時だった。
「いきなりモブキャラにセクハラ、マイナス2点」
「マイナス2点……? はっ? あ、研修中でしたね、すいません」
状況を理解して蜥蜴から話せる頃、ハルカさんに目があった。
「っぷ……」
目を伏せるハルカさん、顔が赤面するのを感じた。
「お目覚めはハルカさんのほうが早かったので、点差はもう5点ついてますよ」
「えーっ……まじですか…… というか うー……頭痛い……」
急に起きたせいで、冷静になった時、その反動で頭がズシンと痛くなった。
「……ム……」
「うん?……おわっ……」
振り向くと今度は、蓮の葉らしきものはもったままだが、蜥蜴人からハグされた。
……
(うん、マイナスなんてどうでもいい、もうこいつと結婚する、モブだろうがなんだろうが、モブで自律的にハグまでしてくれるとは……もう末永く幸せに暮らせます、まる)
「おやおや、モブは貴方のこと気に入ってくれたみたいですね、マイナスを1点だけ取り消しますね」
「有難うございます、 後、既成事実から作りたいので、無人の空き家に案内して下さい」
蜥蜴人は、会話の空気を読んでかゆっくりとボクを解放してくれる。
「……」
「……あの、念のため伺いますが、空き家で何をしようと……?」
「バーチャルリアルワールドだかなんだか分かりませんが、とりあえず御セックスから」
「……」
ハルカさんが少し蔑んでいる目をしていた気がした。
僕の趣味趣向を予想できたのか、ソノダさんは笑いながら
「一応、その蜥蜴さん、恋人居ますよ?」
「くはっ……現実は小説より冷酷なり……by(バイ)……」
「セクハラじゃ飽きたらず、レイプしようとした、マイナス5点」
「っぷ……」
「あわわわ…… ごめんなさい、ごめんなさい……」
慌てて蜥蜴人に土下座をする。
現時点で-6点差が付いているようだ、にしてもやっぱり頭が痛い。
ハルカさんは平気なのだろうか、気になって地べたに正座したまま問いかけてみた。
「ハルカさん、ソノダさん、頭痛の方は?」
「……ぁ……少し……かな、でも、大分、慣れた」
「私は、何度も来てますからね、免疫といいますかなんというか、それに予想外の面白いリアクション見ていて頭痛なんて吹き飛んじゃってますね」
ふと蜥蜴人の方を振り向くと、蜥蜴人は、不格好ながらボクの真似をしていて不思議そうに首を傾げていた。
……真似しているだけなのかもしれないが、愛らしい、今すぐ挙式したい。
「頭痛が治まるまで大変でしょう、あの木にある時計が今から10分経つまで休憩していて下さい」
振り向くと、見慣れない5mぐらいの四角で60cmぐらいのデジタル時計が埋め込まれていた。
表記された時刻は、15時21分を指していた。 10分後だから15時30分までだろう。
「お気遣い有難うございます、ハルカさん、待たせちゃってすいません」
「……いえ、私も10分経てばもう少し頭痛が治まりますでしょうし、寧ろ助かりました」
「……あ、いえ、此方こそありがとうございます」
なんだろう、流石ボクと同じで試験を合格した人、想像した以上に言葉が紳士的かもしれない。
ふとハルカさんと自分の服装がバーチャルダイブする前と変わっていることに気がついた。
動きやすそうなラフな格好、でも長袖長ズボンで肌の露出は少なくデザインはシンプルだった。
ソノダさんの服装はあった時とはほんの僅かに色の違うスーツに変わっている気がした。
念のためパンツもチェックする、見覚えのないトランクスに変わっていた。
やっぱりここがバーチャルリアルワールドなのだろう。 凄い……。
もうなんていうか、無賃金でいいから働きたいよ……。出来れば 最低限の生活費、税金 携帯代 奨学金だけお給料として貰えれば……。
その思考スイッチが入った時、ボクは視界が心地よく一気にじんわりとぼやけるのを感じた。
「…すっ、凄いですね、ソノダさん達は……こ、こんなもの作るなんて……うっ……うぅ」
「……大丈夫?」
心配そうに手を差し伸べてくれたのはハルカさんだった。
「どうしましたか? 頭痛大丈夫ですか?……」
「ありがとうございます」
差し伸べられた手は、まるで本物のようにあったかった。
ボクは今から、このハルカさんと一つ有る席を奪い合わなきゃいけないのだ。
当初は殺してでも奪いたいとさえ思ったのだが、
ハルカさんもこの仕事のボクの熱意に必ずしも一致はしないだろうが、憧れが有るのだろう。
手から伝わるハルカさんの体温と優しさ、今から競って席を奪い合わなきゃいけないという現実が辛く感じた。
この試験で誰も死ぬことはないけど、どっちかが落ちて傷ついて、それは、戦争に似ているのかもしれない。
ボクがもし試験に受かった時、ハルカさんは、涙をこらえて「おめでとう」って言ってくれるのだろうか?
逆にボクが試験に落ちた時、ハルカさんに『おめでとう』って言ってあげられるのだろうか。
どうしてこうも世間は戦争というか、競わなきゃいけないのだろうか……。
果たして正々堂々戦うことは、本当に正しいことなのだろうか?
誰かが笑って、誰かが泣くそれが正しいことなのだろうか?
こんなものでは多分終わらない、ボクの優柔不断な優しさ、多分……このままで行くと……ボクは……。
「……あ、ソノダさん、指輪」
「……へっ? 指輪?」
そう言われて初めて気づく、ソノダさんもハルカさんもちょっと変わった指輪をしているということに。
宝石はブルーだからサファイヤか何かだろうか? 金の指輪に光がちょっと鈍い青い石が埋め込まれている。
指輪のリング太さは1cm程で埋め込まれている青い石の直径は15mmぐらいだった。
「あ、そうだね、渡し忘れていたよ、一応これでそこの蜥蜴君やこの世界の人たちと意思疎通出来る……アイテム、設定だからね」
「あっ、はい」
言い方に少し違和感を覚えたが、言われた通り人差し指にはめてみる。
ちょっとぶかぶかかな?と思ったが、指にした時まるで体にフィットするかのように指輪がぴったり緩くと締め付けた。
「わっ、凄い……外す時は?」
「えーと、外したいって念じながら指輪を抜いてごらん」
「わかりました」
……
(外れる……かな?)
そう少し思いながら引いた時だった、指輪が緩くなり、指から完全に抜くと元の一回り大きい指輪に戻った。
「わぁー……凄い……」
抜けるのを確認してから、再び指輪を人差し指の付け根までくぐらせた。
程よくフィットする、フィットした違和感は、10秒もしないうちに徐々に消えていった。
「蜥蜴さん、さっきはごめんなさい。 ……伝わってるのかな?」
「嗚呼……ハジメマシテ……おれ、お前たちの世界で言う空気読めないって奴みたいだから、ダメな時は叱って指示してくれ……出来る限りおれ、期待に答えてみせるから……」
少しぎこちなさを感じたが、さっきまで何を言っていたのか分からない言葉だったが地球の日本語になったかのよう
にすんなり聞き取れた。
『指輪を外すから、同じこと喋ってみて』 なんてお試しをしてみたかったが
ハッと研修中だと我に返り、でかかった言葉を飲み込んだ。
……にしても、なんか、重い設定じゃないか?
「ソノダさん、これっ……じゃないこの子はどういう設定なんですか?……」
「設定……? ……うん?」
「……えっと、寝ている間に聞いたんだけど、この世界の設定は、一部の亜人族はど……じゃない、メイドや執事みたいな身分が多いの」
「それって……つまり、蜥蜴のメイド!?……」
「えぇ……多分」
『ご主人様、お勤めご苦労さまです、 お食事の用意も、お風呂の用意も、床の準備も済んでおります、どれになさい
ますか?』
ボクの頭の中には今そばにいる蜥蜴人がメイド服を着て帰宅を出迎える姿を想像してしまった。
「まず、床(寝床)でおいしく頂いて、お風呂でもおいしくいただいて、食事では『あーん』して美味しく頂かせてもらって、ぐふ、ぐふふふ……」
「……」
「……」
「……頂く?オレを……? うーーん……オレなんかがお前……あっ……貴殿の口に合う……のか?」
「あうあう、絶対あう! 優しくするし、痛くしないから、ボクを信じて欲しい」
「ん……万が一ということもある、オレなんかは血肉全部捧げても良いわけだが、そ、その……残飯にはなりたくない…味見した上で、食べれるか判断してもらいたい……」
「ぇ?……うん?」
食材としての意味じゃないよ?… そう言おうと思ったのだが、急に重苦しい雰囲気へと変貌していた。
「そうか……オレ……食べられるのか……牛や豚みたいに……か……ぁっ、いや……オレを食べてくれようとしてありがとう……」
……はっ?……えっ……? いやいやいや、悟った目しないで……。食材じゃないよ君は!
蜥蜴人の目からじわりじわりと涙が溢れてくる。
「……貴殿に食されるのは、貴殿の血となり肉になるということ、至極幸せです」
……尋常じゃない……、自分にとって嫌なことでも、忠誠的に言い遂げたこのしゃべり方……。
この子は、どれだけ酷な設定を植え付けられたのだろう……。
「違うっ!! 例えバーチャルでも、ボクは君を傷つけない」
気がつけばボクの目にも涙が溢れていた、フクザツな気分であることには代わりない。
このような可哀想な設定なのがココロが痛い、でもそれがバーチャルであり、ボクの心を動かしたのは本当に凄いと思う。
とはいえここまで重い設定の子、例えバーチャルでも作らないで欲しいと願いたい。
「…ソノダさん……この世界にはこのような子多いのですか……?」
「んー……少し……かな、ただその子は特別だよ」
特別……? 特別ってなんだ? 哀れで可哀想な設定を時間かけて一から作り上げたということなのか?
「あの……ソノダさん……少しお言葉言わせていただいて宜しいですか?」
「ん?……どうぞ?」
「すー……はぁ……」
ボクは大きく深呼吸した、何を言いたいのか言葉にするまでボクも分からない、下手をすると怒鳴り散らす結果になるかもしれない。
そしてボクは研修に不合格になるかもしれない。
ただ、どうしてもこのような不遇な子がバーチャルで出来るのに耐えられなかった。
「あの、確かに獣人や蜥蜴人がメイドというのは、最高です、ノーベル賞貰えるぐらい最高です、でも……」
目から涙が溢れていた。少なくとも今隣りにいる蜥蜴人をオレは全力で救いたい。
「……ソノダさん……オレ、不味いことしたか……? 謝ればいいか……? そんなんじゃすまないか……? オレで憂さ晴らしするか?……む……」
場の空気を読めないというのはあながち嘘ではないようだ、でも、申し訳無さそうに言う姿がズシズシとボクの心に矢がささるような痛みを生じさせた。
てか『憂さ晴らし』って何……? そんな口実で暴行を素直に受けてたのか……?そういう設定なのか?……。
「嗚呼ー、大丈夫、君は関係ないからね、少し離れて待機していてもらえるかな?」
「……御意……では、手を上げていただければ、すぐ来ますので」
「ありがとう本当によく出来た子だ……」
その上から目線の言い方も辞めて欲しい……。
バーチャルだから人じゃなくて物なのかもしれないけど、ひとつひとつのことをプログラミングされて動いてるのかもしれないけど……。
「……駄目……何も喋らなくていいから隣にいて……ボクは、君のために戦うから……」
ボクは立ち去ろうとする蜥蜴人の手をとった、蜥蜴人の手をがっしりと掴んでから、自分の手が震えていることに初
めて気づいた。
優しさじゃないかもしれない、自己満足かもしれない、でもこの空間が……現実の世界のように感じていた。
本当にこんな世界を作り上げたのは凄い……だが……。
流石にこれは余りにも酷すぎる。
「……オレどうしよう……? わかんない……、 ソノダさん……?」
……必死に空気を読もうとしている蜥蜴人、物凄く不安になっているに違いない。
不安にさせてごめんね……。
「奴隷設定なんて駄目です、そりゃ、そういうの好きな人いると思いますけど、かくいう自分も、何度か……『奴隷』
や『グロ』ネタをおかずにしたことありますけど……でも、抜いた後すっごい自己嫌悪になって、自分のこと嫌いになりました。 多少の主従関係は良いと思いますけど、これは余りにも例えバーチャルで心がないにしても酷いなって思
います、ここまで言ったら、ボクはもう研修不合格かもしれませんけど、ボクの見える所で、こんな身分の差認めない、認めません!! 余りにも、余りにも可哀想です……社員じゃないボクが無駄口叩いて申し訳ないですけど……。 お願いします、 こんな子達を作らないであげて下さい、 お願いします、 お願いしますっ!!」
ボクは蜥蜴人の手を離して、土下座をして、喉が潰れるぐらい懇願した。泣き叫ぶぐらいに。
「……」
「……」
辺りに沈黙が流れた、その時、ぷにっと蜥蜴人の手がボクの手を優しく包んだ。
「うぅ、うぅぅ、うわぁぁぁぁあああん……うわぁぁぁあああん……」
大声で泣いた、研修で何やってるんだろう、もう不合格も合格もないよね……。
「ナカナイデ……ナカナイデ……オレ頑張るから」
蜥蜴人の優しい言葉が心を包む、そして、優しく背中まで慰めてくれた。
この暖かさをこの蜥蜴人は多分知らないのだろう、或いは何年も味わってないのだろう。
ボクなんかこの子に比べれば温室育ちで、社会的に理不尽なことはあったけど、そんなの、蜥蜴人の設定に比べたら天と地の差があるだろう……。
「……言わんとせんことは分かったよ、辛い思いさせてごめんね」
「それじゃぁ……」
ボクを労う言葉、少しだけ安堵したが、もしやと全身から血の気が引くのを感じた。
「…すぅーー……はぁぁ……」
ソノダさんが怖かった、不合格を言われそうで怖かった。
でも、蜥蜴人の背中をなでてくれる手があったかかった。
だから、ボクは顔を上げて、ソノダさんの目を見た。
人と目を合わせるのが少し苦手なボクだけど、目は口程にモノを言うみたいな言葉を信じて。
目を合わせて、恐る恐る尋ねた
「……ソノダさん……?」
「もう君を全部信用して言おう、良いよね…… ハルカさん」
「はい、どーぞ、私も彼なら良いと思いますし」
「ん……?」
何故かハルカさんと連帯感のあるソノダさん、どういうことなのだろう?
そして、ボクを許す権限がハルカさんにあるって一体……?
事態を冷静に判断させてくれ、そう願っても時は等しく流れる。
「ここは、バーチャルリアルワールドではないんだ、地球とは異なる星なんだ」
「……はっ……えっ……ええっっ!!??」
「いやいやいやいやいや、ここバーチャル世界でしょ? 今ボクの体はソファー型装置の上でしょ?」
「眠っている間に、この世界に続くワープホールへ搬送しました」
「えっ……まって、洋服はどう説明するのさ」
「ソノダさんもハルカさんもボクも 恐らく現世で着ていたものと違いますよね?」
「えっと、私は自分で着替えたけど、そっちは、ソノダさんとシオン君とべいろー君3人係で着替えさせた感じかな?」
「……パンツまで着替えてるよね……?」
「念には念を入れました」
ニカッと笑うソノダさん。
「ボクの息子見ました……?」
「まぁ……私バイセクシャルですからね、因みにシオン君達も……」
「きゃっ////」
思わず女の子らしい声をあげて両手で顔を隠した。
「あぁーでも触れていないですよ、一応仕事ですからね」
「……」
ハルカさんの視線が痛い気がする。
「あ、あの因みに、シオン君達は獣化したままボクのお着替えを……?」
「お嫌いでしたか?」
「いえ、滅相もない! 着ぐるみさん達による介護プレイ……はぁはぁ……」
「もし、録画してますっていったら欲しいですか?」
「初任給と交換して下さい!」
「ははっ……駄目だ、わらける、変態すぎるけど、逆に清々しいわ、あーもー無理、でも私好きかも」
そこにはケラケラと笑うハルカさんがいた、明らかに最初の様子と違う気がする。
「あの部屋に監視カメラはありますが、監視カメラの映らない部分でお着替えしました、期待させてすいません」
「……オワタ……orz」
脳内では、ソノダさんがああは言っても、バイセクシャルなら着ぐるみのどちらかがセクハラしたんじゃないかというのを淡く期待していたのだが。
「……本当に欲しいです?」
「……それなりに映っていれば……」
「はぁ……まっすぐっていうか、なんていうかなぁ……」
ハルカさんの大きい溜息でボクは我に返った。
「ではご要望に合わせて、私ソノダも獣化して3人によるお着替えプレイということで」
「うぉー……あんたは神か……」
「いえいえ滅相もございません」
悪乗りに付きあてくれるソノダさん、とはいえあわよくばそれは給料が少し減ってもいいから欲しい。
嗚呼、本気で言ってる自分って本当変態なんだろうな……。でもそれが幸せ。
そして、異世界で働くことに決まった。……ん……異世界……?
何かが引っかかる気がした。
その時だった。
「そろそろ良いか? 本題に入る前に、お前、さっき自分が言ったこと覚えてるか?」
「……色々言いましたよね……、えっと何についてでしょう」
本件と関係ないのはわかっているが、奴隷ネタやグロネタをおかずにしたと言った記憶もある。
はぁ……忘れたい、穴があったら入りたい、タイムマシーンがあったら戻りたい……。
「その、なんだ、自分の見渡せる県内で酷い身分差は認めないと」
「…ぁ……言いました、……嗚呼現実なんですね……」
現実というのは何よりも嬉しい結論ではあるがそれと同時に、この蜥蜴人が過酷な差別を受けてきたのも事実となる。
ボクはたまらず手を伸ばして蜥蜴人の腕を掴んだ。
「……オレも話に入って良いのか……? でもオレ空気が読めてないって奴だから、分からない」
「……大丈夫だよ、側にいるだけで……」
「アリガトウ……お前、あったかいな……懐かしい感じがする」
誰かをこんなにも守りたいと思えたのは始めてだろうか?
それから、ソノダさんのスマホが音を鳴らした。
10分ぐらい、20メートルほど離れた場所で何やら話をしていた。
暫くして、ハルカさんも手招きされソノダさんから何やら話を聞いていた。
それから、何の電話だったのか、いまでもボクは信じれない。
ありえない一言を聞くことになった。
「あ、国王、その子、一応奴隷ですが、いまの主人から買いつけます?」
「ぇ……ん?……」
最初の「ぇ……」は『奴隷を買います?』でその後の「ん?……」は、空耳だろうか『国王』と聞こえた気がした。
「…こ、国王?……」
「そうです、国王陛下、僭越ながら、私、国王補佐のハルです。 宜しくお願いします」
よくわからないが、ソノダさんが跪き、ハルカさんことハルさんも跪く、釣られて蜥蜴人も跪こうとするが
手を上に引いてそれだけは阻止した。
そして、必然的……いや、事故的に、蜥蜴人を抱きしめる形になった。
はぁ……幸せである。
「って、国王? ボクが? さっきの電話何?前国王みたいな権力者からの電話?」
「はい、私も凄く驚いておりますが、御方は、国王の主張に大変感銘を受けたご様子で」
「えっとね、ここアルドン帝国は、結構小さい国だけど、ゆくゆくは、大国を任せたいって」
「え、んー、さっきの電話って大きい国の王族か何か?」
「そうそう、想像力豊ね、 流石あの小説を書けただけはある」
「あの小説……?」
「嗚呼、言ってなかったけ? あの挿絵私が書いたの」
「ままままっ、マジ……ですか」
「そんな嘘ついても何のメリットにもならないわよ、喜んでくれてありがとう」
「いえいえいえいえいえいえ!! ありがとうございます、励みになりました、筆が止まっても、あの絵を見たら頑張ろうって気持ちになれて……おかげさまで至極順調です!」
気がつけば、ハルさんの両手をひしひしと握っていた。
「ねぇ、一つ聞きたいんだけど良い?」
「な、なんでしょうか?」
「あの小説の続きまた書いてくれる? んで 出来ればあの小説をこの世界で実現させて?」
「……」
少し答えるのに間が言ったが、あの小説の真の終わりは、本当にあらゆる身分差が緩和され、種族問わず平和に暮らす世界。
無責任なことなのかもしれないが、ボクは
「あなた(絵)のために頑張ります!」
「……」
「ん?……どうかしました?」
予期せぬ沈黙に耐えかねてボクは尋ねた。
「ぇ…… 国王様、男色家ではなかったので? 女性もいけますか?」
「へっ?…… 自分も(ソノダさんと一緒で)バイセクシャルですが……」
「そ、そうなんだ…… うん、 平和にして、だってさ、すっごい良い子じゃん、あの子」
「そうですね…… やれる限り頑張ります」
気のせいか、ハルさんの顔が赤くなったのにボクは余り気がつけていなかった。
次回もやりたい放題やっちゃいます。
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