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後ろの正面ご注意ください! 飢えるウサギの痴漢電車

  私の背後に発情した獣がいる。

  密室の満員電車で、そいつは現れた。

  レナ・ミルモーゼ。

  彼女は、ミルモーゼファミリーというマフィア紛いの家系に属し、一家で傭兵家業を営んでいる。噂によれば、彼女自身もその手の裏仕事に従事した経験があるらしい。獣人は、闘いを主要な営みとするが、その中でもとりわけ恐ろしい背景を持つと言っても過言ではないだろう。

  しかし、そうした後ろ暗い噂が気にならなくなる程度には、彼女の容姿は可憐であり、そして凛々しかった。

  高嶺の花の常として、羨望と憧れの視線を一心に集める彼女は、いわゆる獣人。ベースは兎の、スラリと伸びた両脚に裏打ちされた高身長が目を引く、学校のマドンナだ。

  頭頂部は長めのロップイヤー、対して尻尾は丸っこくて小さいので、特注されたスカートからぴょこんと飛び出しているのが、鮮烈なギャップ萌えの要素だった。性格は気弱なのか、気丈なのか、どうにもはっきりしないが、少なくとも人に後ろ指を指される印象を与えるものではなく、私自身も直接的に関わることは皆無だったが、特段関わりを避けようと思ったことはない。

  今の今まで、そう、件の獣人の少女に、今まさに私が襲われかけてさえいなければ。

  普段通りの通学。普段通りの電車と車両。

  しかし、どうやら電車が予期せぬ事故の影響によって停車してしまったようで、しばらくの間、運転の見通しは立たないらしい。

  致し方ないが、学校は遅刻確定だろう。しかし、そこで表れたのがレナだった。

  彼女は何を思ったのか、運転放送を聞くなりこちらが瞬きをする暇もなく、満員電車の隙間を縫って、背後に表れた。

  数十秒前までは確かにいなかったはずなのに、気づけば私は、扉際に追い詰められ、ピッタリと張り付かれて、身体を弄られている。

  息を荒くした痴漢犯は、きれいな顔をきゅっと歪ませて、今にも解放寸前の野生を必死に、理性で押さえつけているかのような表情を浮かべている。

  『私』という獲物を逃さない、と主張するかのように、顔を上半身を、そして立派に怒張した下半身をその全身で密着、満員電車というシチュエーション絶好を余す所なく利用してしてくる。

  いや、もちろんそれを直接見ているわけではないのだけれど、腰の下側あたりに押し付けられているモノを察するな、と言われる方が難しい。

  そういえば、兎って寂しがり屋で年がら年中発情期なのだっけ。そういう噂も彼女由来で一つあったはずだ。なるほど、どうやら嘘ではないらしい。

  だが、こうして悠長にしてはいられない。

  どれだけ取り澄ました顔をしていても、素知らぬふりで無視とだんまりを決め込むにしても、五感で感じる、同性かつ同い年とは思えない引き締まった肉体と、純粋な獣臭とは異なる香りに包まれていれば、さらに視界の端にイヤでも目に付く欲望が滲んだ熱視線を捉えていれば、自ずと彼女の目的は察せられる。

  「ちょ、っ、ちょっ、と」

  密着していた時間がどれくらいかはわからないが、ついに彼女が制服の下にまで手を入れて本格的に、私の身体を直に触れてくる。

  「ごめんね、ごめんね、ごめんね。本当にごめん、でもねでもねでもね。そんなに無防備な姿で背を向けられたら、本能が、さ、もう我慢できないの……だから、ね、襲っちゃう、ね。嫌だったら、責任とか全部私に押し付けてくれて、いいから、ね? じゃあ大人しくレイプされてね……」

  私だけに聞こえる声で、囁きかけながら、とんでもない言い訳を並び立てる不埒な獣兎は、片方の手を伸ばし、口が塞がれる。

  周囲に声が漏れることを防ぐために。そして、これから行う犯行を隠蔽するために。

  「んぐ」

  さらに口に押し付けられた手指が器用に蠢くと、唇を無理矢理にこじ開けられる。そして、予め持っていたであろう粒状の何かを拒否することもできずに、飲ませられた。

  しかし、その正体が何であるかを探る暇はない。いよいよ本番を始めるつもりなのだろう、スカートが捲りあげられて、下着越しに、彼女の『アレ』の感触が押し付けられる。

  「ちょ、まっ……ほんき、で……」

  「黙って? お願いだから」

  まだ希望はある、そう思いたい。なぜなら、周囲の乗客全員が、私と同じ学校の生徒なのだ。いくら相手が、学校のマドンナといえど、電車の中で、同級生をレイプする、なんていう暴挙を見逃せるだろうか。

  これは単純な偶然ではなく、この車両が、学校側が大金をはたいて貸し切りにしてくれている貸し切り車両であるためなのが幸いした。何とか拘束を振りほどいて、いやまだ気づいていないならば、何とか一人でもいいから気づいてもらわなくては

  「たーー!?」

  しかし、助けを求める前に彼女はすでに行動を起こした。

  暴挙が始まる。

  絶大な存在感に溢れるペニスが挿入され、私の処女は、あっさりと破られ、散った。

  凄まじい圧迫感に呼吸が止まって、息ができなくなった。

  夜の一人遊びをそれなりに嗜んでいるとは言え、アダルドグッズにまでは手を出していない。当然、こんな、奥深くまで指を入れたことはない。

  しかし、レナは情け容赦なかった。閉じられた乙女の秘密の部屋をこじ開け、開拓し、ついに半ばまで押し広げてくる。それでも全て入れ切るには不足だったらしく、不満げな唸り声とも、満足の吐息ともつかぬ声を漏らす。それでも尚、諦め悪くグリグリと一ミリでも深く私を貫こうと躍起になっている。

  「っ、っひ、ぃ、ん、っぐぶ」

  私は、暴れ抵抗する。口を塞ぐ手に噛みついた。だが、盛りの気に憑かれた獣には逆効果だ。

  「んぁっ……ぁっ、あ、あ」

  一度引き抜かれかけたペニスが、暴れ馬に鞭を打つかのように、再度、思い切り中を貫かれる。私はたちまちエクスタシーに達した。快感が下腹部から湧き出て、止まない。彼女の雄をみっちりと包みこんでいる膣肉から、愛液が染み出すように漏れ出してきているのが分かる。

  「っ、ぁ、ああっ、ん」

  初めてを受け入れてしまえば、後は抵抗のしようがなかった。

  後ろから必要最小限の動きで、下から上に突き上げるペニスに抗えず、自然の掟で定められた雄と雌の理に従って身体は一人でに、その卓越した腰使いに併せて動いてしまう。

  気づけば塞がれた口から私なのに、私が聞いたこともない喘ぎ声を漏れ出させていた。窓に見える自分の表情が、途方もなく緩み、頬を恋する乙女のように真っ赤に染めて、顔をピッタリと寄せているレナを受け入れていた。

  縋るように、最も近くにいた生徒に視線を向けて、助けを乞う。制服の色で学年が分けられているので、その生徒が最高学年に位置づけられることははっきりしている。

  だが、予想とは異なり、やや気の強そうな目付きをした派手な金髪の女性とは、目を見張りこそしたものの、視線は私ではなく、私とレナが繋がり合うスカートの境界線に目を向けている。しかもその指先は、股間に伸びており、私達の交接を出汁にして、一人遊びに夢中になっている。

  「気持ちいい?」

  レナが問いかけてくる。しかし、首を振る。まだその程度には彼女に屈するもんか、という気概はあった。思い通りの返事を、彼女に大義名分を与えたが最後何をしでかしたものかわからない。

  「嘘つき、我慢比べをしているつもりなのかな。だったら、私も少しだけ本気出しちゃおっかな」

  「ふぎゅっ」

  不機嫌さが混じった宣言と共に、内側から快感を伴う衝撃が炸裂する。レナがたった一突き、力加減を変え、ギアを引き上げただけで、月まで飛んでいってしまいそうな強烈な快感が送り込まれたのだ。

  呼吸が乱れ、喘ぎが漏れる。ドアに添えた両手が、行き場を無くしたように彷徨うのを、レナは見逃すことなく、絡め取り、彼女の温かな体温と、熱のこもった吐息と呼吸音で、耳が湿っていくのを感じながら、私はなすすべなく達してしまった。

  初物の、正真正銘のエクスタシーが駆け巡る。

  崩折れそうになるが、そこはレナがしっかりと支える。あわよくば拘束から抜け出せればと思ったが、そんな目論見は、お見通しだったようだ。

  初めてが、こんなに気持ちいいなんて。

  いつの間にか、眼前の扉が、くもりガラスのように白くなってしまっている。そして、周囲には、

  私達の周囲を守護するように女生徒たちが円を作って、私達が交尾している様を視姦していた。

  あり得ない光景。ありえないシチュエーション。

  私は、あらゆる要素が私に対して不利に働く、という状況に、絶望に近しい思いを感じながら、レナにされるがまま犯される。

  「ああ、もう出るよっ……! 貴女の、中に、私の子種、種漬けするから!」

  「やめて、やめて……やめてよ……せめて、外にっ……ああ、っ、だめ、やめてーー」

  最後の瞬間は、あっさりと訪れる。

  膣内で洪水が起きたかのような、濃厚な精の奔流が注ぎ込まれ、途方もない開放感に私の意識は宙を舞った。実際にその瞬間だけは意識を失っていたのかも知れない。圧倒的な、生命力に満ち満ちた子種の流れ込む感覚は、今まで知る由もなかった、否頭の奥底に眠っていた雌としての自覚を叩き起こすような快感で、無限のエクスタシーに私を導いた。

  出されちゃった……まさか、これで妊娠しちゃうの? 獣人の赤ちゃんを?

  「大丈夫だよ。お薬、飲んだでしょ?着床はしないからね、安心してね」

  私が抱いた危機感を読み取ったかのように、レナは、心地よさそうに息継ぎするついでにそう言った。

  一瞬、何を言われたのか分からなかったが、おぼろげながらも雄棒を受け入れる寸前に、彼女に飲まされた粒状のなにか、のことであると当たりをつけ、言外にそれが避妊薬の類だと言われたからか、安心感がこみ上げてくる。

  「でもそのかわり、私の赤ちゃん汁が孕ませてくる感覚はあるからね」

  しかし、続く言葉はひどく現実味の薄い、無情な内容だった。

  さすさすと注がれた下腹部を撫でながら、未だにペニスを引き抜く様子のないレナの囁きが、心地よく耳に入ってくる。

  「頭の中が幸せで弾けるようなとても心地よい感覚、無駄なことを全部忘れちゃうくらい幸せ〜ってなっちゃう快感……人間さんにはちょっと贅沢すぎるくらいの」

  「今日一日、その感覚をしっかりお勉強してね、放課後にチェックするから、約束だよ」

  「は、ぎっ……!?」

  ようやくペニスが引き抜かれた。かと思えば、再び股間に快感が奔り、膣穴を塞ぐ、張り型が挿入されたことが知覚される。反射的に自由になった両手を伸ばそうとするが、それは許されなかった。

  獣兎の微笑み、と一切光を映しこまない茶褐色の瞳に射抜かれた私は、そこで彼女に対する反抗的な意思が挫けるてしまった。

  「だめ、私が許可するまで抜くのは許さない。無視したらどうなるかよぅく、考えてね。逃げても無駄だからね。ひどいこといっぱいしちゃうかも、だから、メッだよ」

  念入りに釘を差したレナの言葉の終わりとともに、見計らったかのようなタイミングで電車が動き出す。彼女は、それ以上は手を出してこなかった。その代わりに、交尾の余韻を堪能するように、あるいは匂い付けするように、停車駅に着くまで私のそばから離れず、一切の言葉を交わすこともなかった。

  「それじゃあ、また後でね。〇〇」

  最後に私の名前を呼び捨てしながら彼女は去っていった。

  夢だったら良かったのに。しかし、どうしても現実の感覚として残る下腹部の重みが、電車内での出来事が現実であることを思い知らせる。私たちに続いて、下車した同級生たちの視線がチラチラと刺さる。私を助けてくれなかった裏切り者たち、友達よりも私欲を優先した、背徳的な雌達にどんな表情を浮かべればいいだろうか。

  「ははっ……」

  笑うしかない。あるいは、いかなる事情があれど、レナが自分をターゲットにしたことを誇るべきだろうか。そのようにポジティブに捉えた私は、しかし、その程度で無理やり初物を散らされたショックから立ち直るはずもなく、弱々しく口角を上げて、学校に向けて歩き出した。

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