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「もー、お兄ちゃん、はーやーくっ!」
「痛い、痛いって! 引っ張らないでよ」
「ちょっと、クーちゃん! 少しは落ち着きなさい!」
真夏の街路を、三人のきょうだいが歩いている。一番小柄で活発そうな女の子が、頼りなさそうな男の子の手をぐいぐい引きながら走ろうとし、その後ろから、やれやれといった感じでため息をつく姉が続く。
「だって、今日はせっかくお兄ちゃんと遊べる日なんだよ! のんびりしてたら、すぐ一日が終わっちゃうもん、クルミそんなのイヤだよ!」
「ぜー、はー。わ……わかってるよ、でもそんなに走ったら、僕バテちゃうから……」
「相変わらず体力ないんだから、リョーちゃんは」
「そんなんだったらアイドルになれないよっ!」
「ならないよ……」
少年は弱々しく笑いながら、姉と妹を見遣り、息を整えている。妹がせっついてくる理由も、彼は重々わかっているのだ。今日を逃してしまえば、次にこうして家族三人揃った外出などできるのがいつになるか分からない。
彼の名は良太といった。姓は遠野、当年とって十二歳の小学六年生である。一つ下の妹と、二つ上の姉とは、いろいろあって離れて暮らしており、彼にとっては伯母にあたる人の家に住ませてもらっているのだった。
〝いろいろ〟。彼にも、二年前までは両親がいた。その日、〝いろいろ〟が全て、雪崩のように三人に降りかかってきたのだ。
例えばそれは、共働きの両親を家で待っていたきょうだいの許へ来て、二人が二度と帰らないことを告げた伯母夫婦だった。例えばそれは、突然きょうだいに重くのしかかった――そしていまだ年少の彼らには、十分な理解もおぼつかない――お金の問題だった。例えばそれは、数えるのも諦めた涙や怒声や嘆願のあとで、今まで夢にも見たことのない形へと収束した、自分たちの生き方だった。
そのときはまだ、姉は遠野理香だったし、妹は遠野久美だった。東京の芸能プロダクションから二人に声がかかったのは、伯母夫婦がきょうだいの処遇を決めあぐねいている時だったから、大人たちは諸手を挙げて賛成したし(そもそもこの話をもってきたのは、伯父の知り合いだった)、子供たちも、乗り気ではないにせよ、いやとは言えなかった。
その〝いろいろ〟があって姉妹は東京へ行き、アイドルである遠野桐華(キリカ)と遠野胡桃(クルミ)になった。人気はまずまずといったところで、どうやら「守ってあげたくなるタイプ」らしく、同年代よりも年上にファン層は多い。テレビには、ちょい役で出たことが何度かある程度。一日の休みも取れないほど忙しいわけではないが、断続的にいろいろなイベントから呼ばれることがあったりする上に、学業を疎かにするわけにもいかず、東京でそれぞれ中学校と小学校に通っている。
「ね、今日は中華街いこ、ちゅーかがいー!」
「わわ、分かったってば」
「クーちゃんテンション高すぎだよ、もう」
こうやって家族が三人揃うのは、本当に久しぶりなのだ。姉妹が稼いでいるお金は、伯母夫婦との取り決めに従って、毎月一定分が良太の養育費として伯母たちのところに入ることになっている。だから、良太も別に邪険に扱われるようなことなどなかったが、それでも、やっぱり寂しいものは寂しいのだった。
(リカねーちゃんも、クミも、可愛いからアイドルになれたんだって言うけど……)
と、彼はいつも考える。
(僕は、べつに二人が可愛くなくたってよかった。ずっと一緒にいれたら、それでよかったのにな)
贅沢な悩みだなんてことは、彼にも分かっていた。だから、良太はぶんぶんと頭を振って、なんにもならない考えを追い出そうとする。たまにこうやって会えるだけでも、十分幸せなんだ、と自分にそう言い聞かせ、彼はいつの間にかだいぶ先まで行っていたきょうだいの許までかけて行く。
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* * *
なんだかんだ言っても、中華街は楽しい。きょうだいで歩いていると、良太もうきうきする気持ちを抑えられなくなってきて、自然と目線があちらこちらを漂う。極彩色の建物。見たこともない漢字だらけの看板。美味しそうな匂いと、賑やかに行き交う人々。そんななか、すこし外れたところにぽつんと立っている華美な建物を、彼は指差す。
「リカねーちゃん、あの建物なにかな?」
「ん、どれどれ? ……むむ、お寺?」
「名前書いてあるよ、ほらここ。クルミは読めないけど」
「ナントカ――廟。えっと、とりあえずカミサマ系のものを祀ってるとこかな、要するに」
桐華が最後に言った言葉を聞いて、良太はふうん、と息をつく。
「なら、神さまにお祈りでもしておこっと。みんなが、いつまでも一緒にいれますようにって」
「あ、いいなっ! クルミもー!」
心のなかで知らない神さまにお願いを言い終わった途端、良太は急に、軽いめまいのようなものを感じた。
(う……、これは、暑さにバテてきたかも)
「……ねえ、ちょっとどこかのお店に入って、休憩しようよ。僕、どうものぼせたっぽい」
「じゃあね、じゃあね、点心のお店がいいな! こないだ、なんかの番組で食べさせてもらったんだー、小籠包!」
しょーろんぽー、しょーろんぽー、とはしゃいでいる胡桃をたしなめつつ、桐華は弟を見遣る。
「大丈夫、リョーちゃん?」
「うん、まだ平気だよ。点心のお店って、どこがいいかな……クミ? あれ、どしたの」
うるさいくらいだった胡桃が、急に声のトーンを落としたかと思うと早足で歩き始めたので、残る二人も付いていく。
「――たぶん、アレかな。ほら、あそこの高校生っぽいひとたち」
声を潜めて、桐華が良太に耳打ちする。そう言われて通りの向こうを見てみれば、彼らより明らかに年上の男子が、三人ほどいた。見た目は不良という程でもないが、ひそひそ何事かを言い合ってニヤニヤしているところをみると、どうにも健全で真面目な優等生とは思えない。具体的な内容は聞こえないものの、大体の内容は十分想像できる。どうやら彼らは、桐華と胡桃がアイドルであることに気がついたらしい。
「やだな。こっちに向かって来てる」
「? 別に、そこまで気にすることないんじゃ」
「……ごめんね、でも」
「あ……も、もし何かあったら、ねーちゃんとクミは先に逃げなよ、僕はほっといていいから」
高校生のグループが近寄ってくる。へらへらした笑いを浮かべ、軽薄な言葉を漂わせ、根拠のない自信に動かされて。当人たちには大して悪気はないのだろうが、現実に姉妹はそれを恐れている。
(それなら)
と、良太は思う。
(僕がしっかりしないと。きょうだいで男は僕だけなんだから)
だけど、どうしても、いつもの物思いが、頭を擡げてくるのだった。
(ああ……二人とも、別に可愛くなくてもいいから、もっと強かったら、こんな苦労もせずに、みんなで楽しく過ごせるのにな)
くらり、とさっきより強い立ちくらみが良太の足をふらつかせた。
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* * *
胡桃と桐華は走っている。中華街にきたのは初めてではなかったが、道を熟知しているわけでもない。だから、行き先も考えず、足の向くままに走っている。
途中、良太がちゃんと付いてきているか確かめようと振り返っていたとき、もろに壁にぶつかってしまったが、それさえ気に留めず、姉妹は走り続けた。
――もちろん、何か軽いものが落ちてきて、自分たちの頭に当たったことなど、二人の頭からは数秒のうちに消えていた。
「お姉ちゃん」
「心配、ないからね、クーちゃん。リョーちゃんも……後ろから来てくれてるから」
「ううん、違うの。な、なんだかね、クルミ、……モゾモゾするの」
「……? お手洗いに行きたいってこと?」
「わかんないの、わかんないんだけど、あぁぅ……」
胡桃は恥じらうように頬を赤らめ、桐華の手をぎゅっと握りしめる。
(そういえば、もうかなり走ってるはずなのに、あんまり息が切れていない)
ふと、そんなことに気付いて、桐華は激しい違和感におそわれる。アイドルは何より体力勝負なのだから、普段から人一倍トレーニングを積んでいるとはいえ、自分たちがか弱い女の子であることには変わりない。
(それに、私もクーちゃんも、こんなに速く走れたっけ……?)
「ねーちゃん、クミ! はあ、はあ、やっと追いついた」
息も絶え絶えの弟を見ていると、疑問は弥増すばかりだ。良太は、桐華を見上げて、ぜえぜえと肩を上下させている。まだ姉よりも華奢な肩。火照る顔と潤んだ瞳。
(リョーちゃんって、こんなに、可愛かったんだ……!? う、ううん、何考えてるのよ私ったら、おかしい、何かがオカシイ――?)
「リカねーちゃん? どうしたのさ、僕の顔、何かついてる……?」
ただならぬ様子の姉を見上げながら、良太はおどおどと声をかけるが、桐華は心ここにあらずといった感じで、返事が返ってくる気配もない。
どうしていいか分からず、狼狽えるだけの少年の袖を、胡桃の手がやけに強い力で掴んでくる。
「お兄ちゃん……クルミ、変なの……頭の中で変な声がして、お兄ちゃんがどんどんエッチに見えて、クルミ、もう我慢できなくて、熱いのが止まらなくて……」
「う、うええっ? クミ、ちょっと落ち着いてよ、何言ってるか分かんない……とにかく、放せってば、クミ!?」
「お兄ちゃん、こわいよ、やだよ……熱いよぉぉ……熱いいよぉぉぉおお!!」
絶叫する妹の体が、急に大きくなるのを見て、良太は頭の中が真っ白になっていくのを感じる。救いを求めて、姉の方を振り向こうとしたが、見えたのは、熱に浮かされたかのようにぶつぶつと呟きながら、妹と同じように巨大化していく、見たことのない何かの姿だけだった。
「い、いやあぁ、いやだよおおぉぉ、お兄ちゃああああん!! あああ、あ、ふぎいぃ!?」
胡桃の叫びは聞こえていたが、驚きに麻痺した良太の頭には、もはや目の前の出来事を何かにこじつけるだけの機能さえ失われていた。ただ呆然と、どうして二人ともそんなに股間を膨らませているのだろう、という妙に落ち着いた疑問だけがぽつんと残されていた。
答えはすぐに明らかになる。二人の服が、膨張する中身に耐えきれず、とうとう弾けて使いものにならなくなったからだ。……そこには、良太の肩幅ほどもある肉の柱が、今この瞬間にもより大きく、より存在感を強調しつつあった。
(なに、あれ……? あんなの、前はなかった、のに?)
姉妹はすでに人間の顔をしていなかった。胡桃にはどんどん毛が生えていっている。お腹からは白い毛が、背中からは茶色がかった金髪のような毛が。妙に人間離れした、獣のようなふわふわした毛が……。反対に桐華の方は、頭髪も、申し訳程度の股間の毛も、見る間にどんどん抜け落ちていって、自慢の白い肌さえ、縮みひび割れ破れていく。剥がれ落ちた皮膚の下から、なにか変な色のものが見えた気がした。
そして二人とも、腕といわず胴といわず脚といわず、全身が鎧のような筋肉で覆われていき、体の後ろからは、あり得ないはずの器官が――尻尾が――どんどんと伸び、重みを増していく。
「なにコレ、なんなの!? コレ、私、わた、はあぅぁ、んっ……!!」
桐華は今や角と鱗とに包まれた怪物になり、透き通るようだった声は巨体に似つかわしいだみ声となって、良太の鼓膜を打つ。よく発達した両肩からは巨大な翼も生え、ツインテールを括っていたはずのシュシュが、一際目立つ頭頂の二本角にしがみついているのが見て取れた。
「助けて……お兄ちゃん、止まらないの、クルミが、あぁっ、あっ……」
二つ足で立つ肉の壁が、可愛らしかった胡桃のなれの果てだ。泣きそうな声とは裏腹に、全身を覆う黄金の毛皮と漆黒の縞模様には威厳が満ち溢れ、両足の間に聳立するモノは、そこに生えたトゲによって凶暴性を強調し、先端から溢れ出る透明な液と体温そのものが、瘴気にも似た靄となって昇り立つ。
がばり、と視界が暗くなった良太が見あげれば、頭上に肉厚の手が被せられていた。
「ごめんね、リョーちゃん、ごめん……、身体……、が」
姉は、しきりに繰り返す謝罪の言葉を、自分自身の蕩けた表情で裏切りながら、ひょいと良太を持ち上げる。
「……ごめ、んぉぉおおぉっ!!!」
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* * *
始めは、何が起きているのか、良太には理解できていなかった。
(バケモノの手……ねーちゃんの、手? 僕を持ち上げて?)
それが、力任せに彼の着衣を引き裂いても、まだ彼の心は正常な判断から遠いままだった。下着までも奪われ、真夏の熱い空気と日光とに全身の素肌を曝しながら、彼はもっと滾るような熱を尻の下に感じていた。
その姿は胡桃の思考をさらに狂わせる。
(お兄ちゃんのハダカ……なんで、見慣れてた、はずなのに……なんでこんなに、エッチなの? なんでこんなに、モゾモゾするの? わからない、分からないよ! いや、いやぁぁ……いやなのに……なのにぃぃイイイ!!)
「グォォァァアアア!!!」
猛獣の咆哮はそのまま肉棒の激動となって、巨虎はそれをぐいっと良太の口腔に突き刺そうとする。もちろん入るべくもないが、ようやく危険を認識し始めた彼の叫ぼうとする声を、肉壁はまるきり押し留め、お返しとばかりに迸る白濁の奔流を、少年のか細い喉に流し込む。
「ぐええっ!? がは、げぼっ、がぼ……」
息つく暇さえなく、虎の精は流れ込む。それは、そのまま力であったかのように、少年の身体に隅から隅まで染み渡り、その身体を一回り分大きくさせ、虎の遺伝情報を叩き込んでいく。それを待っていたとばかりに、大きくなった良太の尻穴を、竜の剛直が貫いて侵入する。
(い、いぎゃあぁっ、がああ、はあぁっ……ぅぅぅ!!!)
叫びたくとも、口いっぱいを占領する虎の肉が、それを許してはくれない。その間にも、後ろから流れ込む竜の胤が、良太をさらに大きく、一段と人間から離れさせる。姉のものとよく似た色の鱗が生えて、妹とお揃いの毛皮に染みを作っていく。虎と竜の生存競争はそのまま拡大を続ける。生命の神秘が、少年を蹂躙する。
「お兄ちゃん……っ!!」
「リョーちゃん……っ!!!」
胡桃も、桐華も、助けを求める言葉は遂に喉から出なくなって、ただ肉欲に動かされるまま、息を荒げ、腰を振り、汗と唾液を滴らせ、少年を――大切なきょうだいを――ただひたすら愛するために、全身を貫く快感にもはや抗おうともしない。すでにアイドルである胡桃と桐華は、二人の少女は、この世から永遠に失われた。いまここにいるのは、ひたすら雄の悦楽に身を委ねるだけの、虎と竜の獣人。二頭の、この上なく巨大なケダモノだけだ。
……立ちくらみにも似た感覚が、精液で真っ白に染まった良太の頭に刺さる。
(爾ら力を望みたれば)
(子らよ、癒せよ)
(百年の流離を!)
(千年の羈孤を!)
(爾ら繋束を望みたれば)
(おお、我が裔よ、殖えよ!)
上から下から流れ込む竜虎の精とともに、誰のものともつかない思考が、繋がった三者を結んで揺さぶる。触れたこともない記憶が、脳裏を掠めたことさえない知識が、肉体の変容とともに精神をも蝕んで増殖する。
「あ、あぁあ、ぁぁぁ……」
良太は変化を感じていた。心のどこかでそれを喜んでさえいた。けれども一番大きかったのは恐怖だ。虎の牙が生える。竜の角が生える。体中で氾濫する二つの生命の流れが内臓をも変え、骨格をも変え、尾骨が伸長して、どちらともつかぬ尾が生える。肩が異常に盛り上がったと思えば、その変化の一々に、彼は根源的な畏れを感じ、体を、少しでも遠くへ離そうとする――が、彼の身体は心の願いとは裏腹に動き、口と肛門の両方で、さらに深く、さらに貪欲に、虎と竜との生命の樹を咥え込み、飲み干そうとしてしゃぶりついていく。
細く小柄だった少年の面影はとうに失せ、一瞬ごとに良太の身体組成は更新されて、今や両端の獣人たちにも劣らぬ筋肉の塊と化しつつある。巨大化した体躯は地面に降ろされ、足を組んで腰を落ち着けた二頭の間で、心ばかりが必死に現状から抜けだそうとしてもがいている。
(どうしてこんな、抜けな――ンギィイ、キモチイイ、アアァァギギィィ……! ――僕、おかしく、あ)
恐怖は快感をともない、恍惚は更なる変化を誘発する。
(あああ……なんでチンコが、こんな、なんか変だ、なんか出ちゃううぅ……!?)
「グッ、ぐぼぉぁぁ!?」
口いっぱいの虎の仔胤を泡立たせながら、良太はこらえ切れずに叫びを漏らす。身体に見合うように巨大化し、屹立した男根から、既にしとどに体液を滴らせ湯気を上げているそれから、一筋の白い間欠泉が噴き出し、空間を汚す。
「あ、あ……っ、ガッ、グアア!」
その勢いは衰えるどころか、さらに量を増していく。あまりの水勢に耐えかねたのか、彼の男性器は、みしり、ぶちりと音を立てながら二つに裂けていき――
「ぁぁァルガアアアア! グルアアアアァァアァ!!!」
大音声の咆哮を上げた彼は、既に完璧なる一頭の猛獣と化して、その股間からは虎と竜との逸物を、二つながら誇らしげに聳えさせていた。
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* * *
「ぁはぇ……ぼく、どうなて」
莫大な質量を持った全身から――口や鼻からは虎の、尻からは竜の、そして二本の男性器からは自前の――白濁液をぼとぼとと零しながら、その獣人は焦点の合わない目で譫言を呟く。体中を毛皮と鱗と、なによりはち切れんばかりの筋肉で覆い、上から下から飲み込んだ精液が溜まりに溜まって、腹部を大きく膨らませている。
「いいぜ、ああ、いい! それでこそ、俺の弟だ」
右手でその肩を親しげに抱く竜人は、きょうだいが愛おしくてたまらないとでも言うように、虎竜の顔に頬ずりを繰り返す。そうしてもう片方の手で、可愛い弟の肉棒を一本、揉んでやることも忘れない。
「リカねーちゃ――ううん……にーちゃん?」
ごく、ごくんと精液をなんとか飲み込んでそう言う彼は、段々と意識がはっきりしてきたのか、声に力が戻ってきてはいる。とはいうものの、状況がまだ理解できていないのは変わらないようで、変わり果てた年上のきょうだいを、不思議そうに見つめている。
「そうだなァ。俺はもう桐華(トンファ)なんかじゃない……瓏猾(ロンファ)ってのはどうだ」
「お兄ちゃん! オレも見て見て!」
そう言って、琥檮(フータオ)と名乗った虎人は、嬉しそうにもう一本の肉棒を口に含む。末弟のざらざらした舌で、まだどくどくと仔胤が流れ続けているそれをねぶられて、かつて良太だった虎竜人はもう何度目になるかわからない絶頂を体験する。
「がああぁ、ふうっ……よしよし、いい子だ、フータオ」
「えへへー、お兄ちゃん大好きっ!」
そのあと、不審な物音を(いや、寧ろ大騒ぎというべきか)聞きつけて、何事かと恐る恐る覗きに来た高校生の集団を、フータオは目敏く見つけて、満面の笑みを湛えてそちらへかけていった。そちらをにやにやと見やりつつも、ロンファは弟を愛撫している方が楽しいようだ。
「……なんせ、何百年もご無沙汰だったんだ、たっぷり楽しませてもらわないとなっ」
「うん、にーちゃん! ……にーちゃんのチンコも、舐めていい?」
「おうともおうとも。そうだ、お前にも新しい名前を付けてやらなきゃな。今までは良太だったから……兩泰(リャンタイ)! お前は今日から、リャンタイだ。いい名前だろ?」
「うん! とっても気に入ったよ」
向こうのほうで、高校生の悲鳴が、だんだん猛獣の咆哮に変わっていくのが聞こえる。
「この分だと、だいぶ兄弟が増えそうだね」
「もちろん。兄弟は多い方がいい。エライ人も言ってるだろ、『四海之内、皆兄弟』ってな」
兄と愛を交わしながら、リャンタイは将来に思いを馳せる。今、自分は二年間の願いを実らせたのだと思うと、自然と顔も綻ぼうというものだ。きっともう、兄弟が引き裂かれることはない。それだけの力を、思いもよらない形でとは言え、手に入れることが出来たのだ。
高校生を皆おとなしくさせて、弟のフータオも帰ってきた。
「ロンファにーちゃんも、フータオも、みんな、……大好きだよ」
虎竜人の目に、もう曇りはなかった。
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