◇
どの国家においても、法や宗教的規範が統治を正当化しているものであるが、それより表層的なものはモラルや地域の風土や慣習が占める。
取り分け、この国においてその奇妙な風習はごく近年に醸成されたものであり、それ故に『彼女』の影響力は絶大と言えよう。
害虫を捕食する蜘蛛や鼠を喰らう蛇をみだりに殺してはならない、などと言う言い伝えは合理的とすら言える。
それらは時に迷信ともされた。しかし人々の生活の中で未だ息づく風習は多く、これらを否定すれば社会生活を営む事は難しいだろう。
人々は日々の生活の中で無意識的にそれらを守り続けて今日まで生きている。
しかし、この国の場合はそれらに限りを置かず時に疑問を抱かずにはいられないような風習が根付きつつあった。
蝙蝠、鴉、蛙、蛞蝓、毒蜘蛛、蛇、鼠、果てには蠅まで──これらの生き物は『魔女の目』とされ、人間の生活圏に居るこれらは国民を見守り導く者であると口伝いに噂されているのである。
即ち、これらの生き物を蔑ろにする事は魔女を怒らせるという事に他ならない。故に人々はこれらの生き物には敬意をもって接し、その遥か上から俯瞰する目に怯えながら生活している。
その畏れられる魔女こそ、リアーヌと呼ばれる魔女であった。
◇
甘い香が立ち込める異国情緒溢れる部屋の中、城内に突如として誕生したその寝室を訪れたものは皆、一様に驚きと感嘆の声を漏らす。
事実、エルサ自身も初めは呆気に取られてしまい、言葉を発する事が出来なかった程であった。
今となっては溜息の原因とも呼べるその部屋の中央のベッドの中、天蓋から降りる薄い帳に映る影がふたつ。
「──今日のお話しはここ迄ですわ。殿下、そろそろおやすみになられた方が宜しいかと」
この部屋の主人がそう言うも、幼い王子は首を横に振った。
「いや!もっとマノンのお話しが聞きたい!」
駄々をこねる王子に苦笑すると、マノンは優しい声色で諭すように語りかけた。
「いけませんよ、殿下。遅くまで起きていてはお身体に障りますわ、それに明日は早いのでしょう?殿下の身に何かあってはそこなエルサ様に申し訳が立ちませんわ♪」
そう言ってマノンが帳から顔を出すと、刺すような眼光でベッドを睨み付けるエルサの姿があった。
帯刀こそしていなかったが、この身体を許しこそすれ心の底まで知れぬ情婦が妙な気を起こせば即座に締め上げる事など容易い間合い。
そのマノンにのみ当てられた殺気など露とも思っていないかのようににっこり微笑み返すと、帳を上げて王子に語り掛けた。
「さぁ殿下、今日のところはこのくらいに致しましょう♪続きはまた今度、聞かせて差し上げますから」
その言葉を聞いた途端、幼い王子は渋々といった様子でベッドから降りた。そのままエルサの傍まで来ると彼女にぎゅっと抱きつく。
実のところ睡魔に襲われているのは王子だけではないようで、エルサも欠伸を噛み殺しながら王子を抱き留めていた。
「おや、エルサ様もおねむのようですね?どうですか?いっそこちらで三人一緒に寝てみてはいかが♡」
悪戯っぽく笑うマノンの言葉に、エルサは思わず眉を潜める。
このクルティザンヌは王宮に寝所を与えられてからというものの、『王子の夜伽の手ほどき』と言う大役を任ぜられている身にも関わらず、王子とすることと言えば御伽話を聞かせる程度で、未だ宮中では夜伽らしい事は何もしていないのだから。
それこそあの初夜の日以来、彼女は一度も王子と床を共にしていなかった。
エルサも共に呼び付け、殿下がうつらうつらとして来ると寝所に戻らせてしまうのだ。
「……ふん、何か企んでいるのだろう?」
エルサが鼻を鳴らして言うも、どこ吹く風と言った様子で微笑むマノンを見て、それ以上は何も言えずに口を噤む。
そんな二人のやり取りを聞いていた王子はキョトンとした表情を浮かべるも欠伸をひとつ。
その様子を見たエルサは、王子に語りかけた。
「さぁ殿下、もうお休みの時間ですよ。明日は沼の森まで行ってリアーヌ様の魔法のお勉強なのですからね?今日はちゃんとぐっすりお眠りになられないと」
エルサの言葉に素直に頷くと、王子は眠たげに目を擦った。それを見たエルサが優しく頭を撫でてやると、彼は安心しきった様子で腹に顔を埋めてきた。そうして暫くの間、彼の温もりを感じていると次第に王子の呼吸が規則正しいものへと変わっていくのが分かった。
「あら♪お眠りになられたようですわね。……それにしても沼の森に住まう魔女に魔法の指南を受けさせるだなんて、陛下も思いきった事をなさりますね」
この国に来て日も浅いとしきりに言う娼婦は、やはり気になるのかそんな事を呟いた。それに対してエルサは眉間に皺を寄せながら答える。
「ふん……、何も知らぬ癖に」
忌々しげに呟くと、エルサは王子を抱き上げて寝室を後にした。
◇
沼の森──それは王城より東にある森であり、霧深く鬱蒼としたその場所には魔女と呼ばれる一族が住まうとされていた。
一説によればその一族こそが王国の繁栄の立役者のひとりとされ、初代国王と国母と共にこの地へ赴き、この王国を建国したものが後年住んでいたのだとか。
しかし、そんな言い伝えとは裏腹に、沼の森はその名の通りの場所であり、普通の人間が立ち入ろうとすればたちまち道に迷い、最後は底なし沼に喰われて死体すら見つからないと言われている。
その至る所にある底なし沼と深い霧も合わさり、古くから誰も近寄らない場所に場違いな影が三つ。
白と茶の斑ら毛のホースに跨がる馬上のエルサと、それに相乗りする形で腕の中にいる王子の姿である。
「殿下、じき沼の森です。足元が不安定ゆえあまり頭を動かさぬよう、舌を噛まぬようにお気をつけを」
エルサはそう言いながら手綱を操り、ホースを巧みに操りつつ王子に注意を促す。その言葉通り沼の森の近くは霧が深く、今なお視界は皆無に等しかった。
それでもホースは怯む事なく進み続け、やがて木々が開けてくる──そこはまさに異界であった。
白い木々が生い茂り、樹木の枝には数え切れない程の蜘蛛の巣が張られている。地面には赤黒い苔に覆われた大地が広がっており、そこら中に小さな白い花が咲いていた。
「殿下、これより先はいつも通り歩きましょう。グレース、すまないがここまでだ。いつまで過ごすかはリアーヌ様次第だ。近くの村で待機していてくれ。くれぐれも森に喰われぬよう用心を怠るな」
エルサがそう言うと、茶白のホース、グレースは微笑みを浮かべて頷いた。
「御安心ください、私もこの様な場所長居したくありませんので♪……しかし、スゴい蠅ですねえ、さっきから煩くて仕方がありません~」
グレースは尾花栗毛の尾を振り必死に蠅を叩き落としながら呟いた。
「……その蠅もリアーヌ様に仕えるものだ、無闇に殺めてはならぬぞ」
エルサがそう告げると、グレースは不満げな表情を浮かべたもののすぐに笑顔を取り繕う。
エルサも元はこの国の人間ではないがグレースはもっと遠く、人語を解す四足獣の住まう地より来た異種族である。
エルサが手綱を引いてグレースを停止させると王子もそれを感じ取り、徐々に馬から降りると地に足を着けた。
「殿下、お手をどうぞ」
エルサが王子に向かって手を差し出すと、王子はその手をぎゅっと握りしめた。それを確認すると二人は森の入り口に向けて歩を進めるのだった。
◇
「しかし、この森の道も沼の位置も毎度変わっておらぬか?リアーヌ様も殿下の御身を考えれば自らの足で宮中に赴かれるのが宜しいのだが……」
エルサはずかずかと足を踏み鳴らしながら王子に語りかけた。しかし、当の王子はと言うと興味深そうに辺りをキョロキョロと見回しており、上の空と言った様子である。
「殿下!聞いておいでか?」
エルサが語気を荒らげて言うと、ようやく王子も気付いたのかハッとした表情を浮かべて彼女の方を見た。
「あ……うん」
少し申し訳なさそうに俯く王子に対して溜息を漏らす。
「城下より外のお出掛けは久しぶりでしたね。……あまりはしゃぎ過ぎてはいけませんよ、殿下」
エルサの言葉に王子は元気よく頷くと、彼らは再び歩き出すのだった。
まるで他者の侵入を拒む様な鬱蒼とした森の中を歩み続ける二人。
周囲の木々からは得体の知れぬ小動物の鳴き声が絶え間なく聞こえ、時折小さな羽虫が飛び交っているのが目に入る。
その羽虫はエルサ達に近付くとすぐに方向を変え、まるで導くかのように前方を飛んでいく。
ぬかるむ地面を避け、微かに判別の付く道のような開けた所をしばらく歩くと、木々が開けてきたのが分かった。
それと同時に僅かな風が吹いて来るのを感じ取ると、エルサは王子に語りかけた。
「殿下、そろそろ沼の森の中心部です」
その一言で場の空気が変わった。先程までの鬱蒼とした森とはうって変わって静寂に包まれ、二人の足音だけが辺りに響く。
やがて澄んだ沼の中心にぽつんと大きな屋敷が姿を見せる。その外観はまるで滅んだ宮殿を思わせ、何より不気味なのは屋根や壁面に数え切れない程の蜘蛛の巣が張られている事だ。
しかし離小島のように大きな沼の中心に浮く屋敷までは橋はおろか渡し船すら見当たらない。
沼の畔まで来たエルサは王子の手を取り、自らの腕で抱き抱えるとそのまま沼へと足を踏み入れて行った。
一歩、また一歩と足を踏み入れれば水の中、となる筈が、水面は彼女の足を避けて波紋が広がる。
本来であれば足どころか船ですら一所に飲み込んでしまうであろう底無しの沼。
しかし、彼女は王子を抱えたまま深く暗い青を湛えた湖面を悠々と湖面を歩いていく。
エルサにとって魔法の心得と言えば、肉体の表面に膜のような防御を張る程度のものであったが、このように足裏に意識を集中して魔力を集中させると水面の上に立って歩けるのだ。
なればこそ、この魔女の居城に立ち入る事が出来る人間は限られ、エルサとこの魔女の奇妙な縁を結びつけるものでもあった。
王子はエルサに掴まりながら湖面の中を泳ぐ色とりどりの魚に感嘆の声を漏らしつつ呟いた。
「いつ見ても不思議……僕もエルサみたいに魔法が使えたらなぁ」
その言葉に苦笑すると、エルサは王子の頭を優しく撫でながら答えた。
「殿下にこの様な小手先の芸当は似合いませんよ」
王子の頭を撫でながらエルサはクスリと微笑んだ。
「さぁ、殿下。リアーヌ様の住まう沼の島、魔女の城に着きましたよ」
そこはまさに常世と現世の狭間の世界であった──。
エルサ達が降り立った場所は石造りの回廊となっており、壁に備えられた松明が辺りをぼんやりと照らし出していた。
床は鏡の如く磨かれた大理石で覆われており、水面には昼の筈なのに月が浮かんでいる。
まるでこの世のものとは思えない風景に王子は身震いした。
エルサの腕に抱かれながらもキョロキョロと辺りを見回し、まるで初めて訪れた場所のように興味津々といった様子で瞳を輝かせている。そんな王子を見てエルサは思わず微笑みを浮かべるも、すぐに気を引き締め直して歩みを進めた。
「さぁ、殿下。リアーヌ様がお待ちですよ」
その言葉を聞いた王子は少し緊張しているのか、エルサの服をぎゅっと握って離さない。
「大丈夫ですよ殿下、リアーヌ様はお優しい方ですから」
──王子にだけは、と言う言葉は心の中に仕舞い込みつつエルサは王子を宥めながら回廊を進んだ。
王子は俯いたまま何も答えず、ただ黙ってエルサに掴まるだけであった。
そんな様子に苦笑しつつ、エルサは王子を連れて進んで行く。
やがて回廊を抜けると再び石畳が敷き詰められた場所に出る。そこはまるで宮殿を思わせる作りで、天井は高く何本もの太い柱が立ち並んでいる。しかし壁に飾られた絵画はどれも悪趣味であり、死後の世界を描いたものや人間の顔をした獣が争う様が描かれたものなど、そのどれもが見る者の不安感を煽るものであった。
リアーヌの心持ちがどの様なものであるかなど、もはや語るまでもないだろう。
回廊を抜け、いくつもの階段を降りた先に大きな両開きの扉があった。エルサがそれを押し開くとその先には開けた空間が広がっており、その真ん中に一人の女が佇んでいた。
夥しい蠅の群れを侍らせ、その中心に座す女──その実、人かどうかも区別出来得る人間はまず存在しない。
白銀の月光を思わせる美しい髪、鮮血を思わせる紅の唇。
しかしその中でも特に目を引くのはその双眸であった。
まるで猫の如き縦長の瞳孔を持つ蒼い瞳は妖しく輝いており、彼女が人でない事を示していた。
その魔性の美を湛えた顔貌より下、首筋より下には人間を遥かに超え、底無しの闇を思わせる漆黒に煌く肢体があった。
異常に縊れた腰部に巨大な腹部。透き通る羽ははためくかのように小刻みに振動し、無数に生えた脚部は祈るようにその前肢を擦り合わせていた。
まさに蠅の女王という名に相応しい姿形。
この異形の存在こそが魔女、リアーヌである事は疑いようがなかった。
「よくぞ参った、我が王子にして最愛の弟子よ」
その美しい唇から発せられる声は、聞くだけで魂が奪われそうになる程に甘く、甘美なものであった。
「リアーヌ様、本日もご機嫌麗しゅう……」
エルサが恭しく膝をつき頭を垂れると王子もそれに倣った。その様子を満足げに見るとリアーヌは玉座と呼ぶべき椅子に腰を掛け直した。すると彼女を取り巻く蠅達が一斉に羽ばたき、一斉に遠ざかっていった。
そしてそれと同時にエルサと王子の前にティーカップが現れ、中の悍ましげな液体から湯気が立ち上っている。
その汚泥はおよそ美味なものであるとは到底思えないが、リアーヌは目を細めて飲むのでだった。
◇
その、呪いと言うべき美貌は何処から手に入れたのか、ヒトには知る由もない。
それはまさに神が作り上げた造形美の如く、その美しさはいっそ神々しくすらあった。
しかし、幼き頃より魔術の研究に耽溺する彼女に自らの生まれ持って備わったそれを理解する頭は備わっていなかった。
その、煩わしさすら感じさせる生来の美しさと言う呪いを解くべく彼女が心血を注いだのは、それすなわち『呪い』の研究であった。古今東西の魔術を貪るように調べ尽くし、呪いに纏わる文献を読み漁るうちに、彼女は自らの身体に呪いを刻みつける事で自らの美貌という呪いを取り払おうとしたのである。
そうして彼女は魔女すら棲みつかなくなった沼の森に工房を築き、研究に明け暮れた。
そしてとうとう自らに呪いをかけた彼女の美しさは、もはや人智を超えた領域にまで至ったのであった──。
エルサが『人間用』の紅茶を淹れる間、王子はリアーヌの膝に頭を預けていた。
膝と言うよりは脚部と言うべきか、その膝には昆虫の甲羅の様なものが生えており、そこからびっしりと生えた毛はまるで羽毛のようにふわふわとしている。
リアーヌがこの蠅の姿になる前は巨大な蜘蛛のようであったがそれより以前の姿にしても、幼い王子にとってこの魔法の師匠の膝元というのは、なにより落ち着く場所であった。
王子が彼女の脚部の甲殻を撫でるとリアーヌはその心地良さから目を細めた。その様子をエルサは微笑ましく思いつつも自らのカップに紅茶を淹れる。
「して……今日はどんな面白い話をしてくれるのだ?エルサよ。聞けば王子の童貞を娼婦に奪われるより先に奪ってしまったと言うではないか。まったくお前はわたしの期待を裏切らない……くくく」
リアーヌは愉快そうに笑いながら言うと、エルサは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべて俯いた。
「……それに関するお話しがリアーヌ様のお望みとあれば仔細ないのですが、殿下の初物を奪った事については……」
エルサの言葉を遮るように、リアーヌは王子の頭を優しく撫でて語り掛けた。
「何も言うな、お前の矜持の傷を抉りたい訳ではないのだ。出来るのであればお前達の初夜を虫の目からでも覗き見したいところであったが、部屋の香が臭くて敵わなんだ。しかし、くく……そうかそうか、あのエルサが坊やとこんなに早く懇ろになるとはね……」
そう言って愉しげに笑うリアーヌを見てエルサは悔しそうに奥歯を噛み締めた。
彼女はそう言うと王子の頭を自らの膝の上に乗せ、まるで子供をあやすかのように撫で続けた。
その上半身からぶら下がる巨大な水瓶のような乳房もまた、王子の頭を優しく包み込むように覆い被さっている。
その柔らかな感触に王子は顔を赤らめながら、リアーヌの胸元で甘えたような声を漏らして俯く、エルサはそんな彼の顔を一瞥してから、咳払いを一つすると話題を変えた。
「それでしたら、自ら城においでになっては如何です?さすればリアーヌ様も殿下に気兼ねなく毎日お会い出来るというもの……」
「戯け、それこそ出来る筈もなかろう。……この美しさを理解出来る人間が他にいるものか。それにわたしは研究で忙しい、ここを離れるつもりなど毛頭ないさ」
リアーヌはそう言うと王子の頭を優しく撫で続けた。
──彼女の本心を垣間見る機会は少ない、が時折見せるヒトらしい悪態にわるい気はしない。
しかし、親しい人間以外の目に映る畏怖の対象たる彼女を、エルサは彼女が魔女と呼ばれる所以がそこにあるのだと改めて実感せざるを得なかった。
「そう……ですか……」
エルサはそう言って下を向いたまま黙り込んでしまった。その様子を見てリアーヌは苦笑すると王子に語りかけた。
「すまないな坊や。しかし、女と言うものは男が汗を掻き、息を涸らし、かような臭いを纏ってまで辺鄙な居所に逢いに来てくれるのが堪らなく愛おしいのだ。そうまでして逢いに来る想い人を、どうして無碍に出来ようものか」
リアーヌがそう言うと王子は顔を上げて彼女の瞳を真っ直ぐ見つめて言った。
「僕もお師匠さまのことが大好きだから……毎日、あえたら嬉しいけど……」
王子がそう言うとリアーヌは蕩けるような笑顔を見せた。それを見てエルサは二人が本当に通じあっているのだと確信する。
「あぁ!しかし、惜しいなあ……。わたしもお前がもう少し大きければ夜伽の相手を務める事を考えても良かったのだが……なあエルサ?」
エルサはその言葉に顔を青ざめさせるが、当の王子はきょとんとした顔で彼女を見ていた。
「お師匠さまも僕の相手、してくれるの?」
無邪気に尋ねる王子に、エルサは思わず頭を抱えた。その様子を愉快そうに眺めるリアーヌは「くく……」と声を上げて笑った。
「もちろんだとも、お前さえ望むのであれば幾らでも抱いてやる……今から楽しみで仕方ないよ」
そう言ってリアーヌは王子を抱きしめた。すると王子も嬉しそうに彼女の胸元に顔を埋めて微笑んだ──。
◇
「しかしなあ……坊やはまだしも、お前までわたしの姿を見て全く驚きもせなんだとは、今回の呪いも失敗だったか……」
魔女との邂逅から程なくして、リアーヌはふてくされたように頬を膨らませていた。
リアーヌとしては自らが呪いで変化した新しい姿を見て驚いてくれる事を期待していたようだが、今の所その目論見は成就していないようであった。
それを見たエルサは思わず苦笑を漏らしながら弁解する。
「さような事はありませんよ。初めてリアーヌ様にお目見えした際など失神してしまったではありませんか」
エルサの言葉にリアーヌは驚いて目を見開き、そして大声で笑いだした。
「そうだそうだ!そうであったな!お前と初めて会ったのは大蝙蝠になってあまりに気分が昂ったものであったから、思わず城まで飛んで坊やに会いに行ってしまった時だったな!くはは!」
リアーヌが腹を抱えて笑っていると、エルサは少し顔を赤くする。
魔女はひとしきり笑い終えると、エルサの淹れた紅茶に口をつけると一息ついて話を続けた。
「坊やの部屋の窓から忍び込んだところをばったりと出くわしてな。お互い死ぬほど驚いたものだが……あの時のお前の情けない顔ときたら、くく……!その顔のまま立ち尽くして気をやったうえに小便まで漏らすものだから、こちらの方が驚いてしまったわ」
エルサは自らの醜態を思い返して顔を真っ赤に染めると、手で顔を覆って俯いてしまった。それを見たリアーヌはニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべながら尚も続ける。
「魔法を習いたいと言って森に一人で来たこともあったな?湖の上をよちよち歩いて渡ってくる姿が見えたものだから、待ちきれずに大蛇の姿で出迎えてやった時も慌てて集中を切らして溺れそうになっていたな。まったく、今思い出しても笑えてくる……くく」
リアーヌは心底愉しげに、それでいて底意地の悪い笑みを浮かべながらそう言うとエルサはますます顔を赤くしてしまった。
その様子を見ていた王子が不思議そうに首を傾げるとリアーヌは薄く微笑むと彼の頭を撫でながら言った。
「つまりはな、坊やがおのこの部分でしか打ち負かせなかったこの筋肉小娘ですら、この偉大な坊やの師を前には手も足も出ないと言った事さ」
そう言ってリアーヌが皮肉げに笑って見せると、エルサはいよいよもって顔を赤くした。
それを見た王子は真剣な眼差しを二人に向けて語りかけた。
「エルサもお師匠さまに魔法を習ったことがあるの?」
王子がそう言うとエルサは慌てて取り繕うように言った。
「む、むかしの話です!それこそ騎士団に入りたての頃に、魔法を教えていただいた事があるだけです!」
エルサはしどろもどろになりながらそう言うと、リアーヌは意地悪そうな笑みを浮かべて彼女に向かって言った。
「くく……そうであったかな?わたしにとってはほんのひと時の事でしかなかったが、お前にとってはなかなかに忘れられぬ時間であっただろう?しかし出来の悪い弟子で困ったものだ。この底なしの水の上を歩けるだけで、他人を魅了するまじないの一つも使えんのだから……くく」
そう言って笑うリアーヌを、エルサは頰を染めながら睨んだが、その視線はすぐに弱まりバツが悪そうに視線を逸らした。
そんな二人の様子を不思議そうに見詰める王子の視線に気づいたリアーヌは再び彼を膝の上に載せるとその頭を撫でながら言った。
「すまぬな坊や。わたしはこの不出来の弟子一号とはすこぶる折り合いが悪いのだ。なにもせずとも水の上を歩けるとなっては魔法にかけては天稟の才があるやもと期待していたのに、この様なのだからな」
そう言ってエルサを見遣ると彼女は顔を赤くしながら何か言いたげにしていたが、すぐに目を逸らしてしまった。
それを見てリアーヌは「くくく」と喉を鳴らして笑うと再び王子に視線を戻す。
「なあ坊や……もしお前が望むなら毎日でもここへ通い、手取り足取り魔法を教えてやろう。そうなればお前のその白く滑らかな肌を焼いてしまう事もない。わたしの可愛い弟子一号はわたしには絶対服従なのでな?さすれば、ものの数年で世界を坊やの意のままに操る事など容易いだろうさ」
リアーヌがそう言ってきょとんとした王子に微笑みかけると、エルサは堪らずその会話に割り込んだ。
「ちょ……ちょっとお待ち下さい!いくらリアーヌ様といえどそれは……!」
エルサは必死になって抗議する。しかし、そんな彼女の言葉を遮るように王子が口を開いた。
「ぜんぶなにもかも自分の思い通りなんて、そんなのつまんないよ」
王子のその一言にリアーヌとエルサは虚を突かれたような顔をして押し黙った。そんな二人を気にも留めずに王子は続けて言った。
「だって考えてもみてよ?もしも僕が全部の、なにもかもの王様になったら色んな事に忙しくなっちゃうでしょ?朝から晩までずっと色んな人と会ってお話して、ずーっと父上より働かなきゃいけないんだよ?こうしてお師匠さまと会ったり、エルサと稽古をしたり、そんな事も出来なくなっちゃうんだよ?」
そう言って王子は照れくさそうに頰を搔いた。
それを聞いた二人は互いに顔を見合わせると思わず吹き出してしまった。エルサが涙を拭いながらリアーヌに語りかける。
「その賢いお弟子さんがこう言っておりますよ、お師匠様?」
意地悪い笑みを浮かべて言うエルサの言葉にリアーヌは思わず眉根を顰めながら忌々し気に言う。
「わたしを坊やの后にするのならな、の一言が抜けておっただけだ。あくまで絵空事、言うだけならタダだ。くく」
そう言って笑うリアーヌに王子は満面の笑みで言葉を返す。
「僕、大きくなったらお師匠さまとも結婚する!」
その言葉を聞いてリアーヌもエルサも驚いて顔を見合わせた後、堪らず笑いだした。
そんな二人の反応を見た王子もまたつられて笑いだす──。
◇
ひとしきり笑った後、エルサが唐突に思い出したように口を開いた。
「ところでリアーヌ様……今日は殿下にどのような魔法を授けて下さるのですか?」
エルサの言葉にリアーヌは肩を竦めながら答えた。
「なあに、今日は童貞と処女でなくなった弟子ふたりの顔を見たかっただけであったが……。せっかくだ、お前が坊やに魔法を教えてやると良い。できるな?」
前脚を擦り合わせながら、悪戯っぽく笑ってみせるリアーヌにエルサは慌てふためいて答える。
「えぇ!?私には殿下にお教え出来るような魔法はございませんよ!?」
エルサの言葉にリアーヌは、呆れたと言った様子でため息をつくと話を続けた。
「魔法らしい魔法はな?しかし、お前とて得意な分野はあるだろう?」
そうリアーヌが中ほどの肢をかざせば、まるでカーテンが取り払われるかのように壁が捲りあがり、外の湖が見えた。
その様子を見た王子は目を輝かせて感動する。
「坊やを湖の上で歩いて向こう岸まで渡らせるようになるまで、城に帰る事は勿論、この森を出る事も許さん。お前が教えるのだ」
そう語るリアーヌの目に妖しい光が灯るのを見てエルサは身体を硬直させた。
そんなエルサを無視して魔女は王子に向かって語りかける。
「なに、教えるのが出来の悪い弟子一号とは言え、坊やならば直ぐに使えるようになるだろうさ。励む事だ」
その表情はまるで息子を可愛がる母親のようであったが──次の瞬間には悪辣な笑みを浮かべていた。
王子は意気込んで頷くも、エルサは堪らず抗議の声を上げる。
リアーヌとエルサが口論している間も王子は嬉しそうに目の前の湖を眺めていた──。
◇
エルサは鎧を脱いでその場に投げ捨てると、王子の手を引いて湖の縁へ連れて来た。
王子も水浴び感覚で、わくわくしている様子であった。
しかし、エルサの心境は複雑そのもので、その表情は憂いに満ちている。
そんな彼女の様子に気付かず、王子は目を輝かせて言った。
「エルサに教えて貰えば、剣だって上手に振るえるし、走るのだって速くなったし、水の上だってすぐに歩けるよね!」
無邪気にそう言って笑う王子にエルサは面食らってしまう。そんな彼女の様子を気にすることもなく、王子は意気揚々と湖に入ろうとしたが──。
次の瞬間にはとぷんと真っ青な湖の奥底へと沈んで行った。
それを見てエルサは慌てて王子の身体を抱き上げると、湖から引き揚げて咳き込む彼の背を優しくさすっている。
リアーヌはその様子を楽しげに見ていたが、思い出したかのように言った。
「坊やは今までお姫様抱っこで運んで貰っていたから知らなかったろうが、この湖は特別でね。油みたいなもんで水に浮くような船でもたちまち沈んでしまうのだよ。くく……」
そう言って笑うリアーヌをエルサは横目で睨みつけると王子に向かって語りかける。
その表情は苦々しいものであったが、それでも努めて冷静な口調で話しかけた。
「だから溺れる時は一瞬なのです。私も何度この湖で溺れさせられた事か……。殿下の御身は私の命に換えましてもお守り致しますが、どうか軽率な真似はお控え下さいますよう……」
「ご、ごめんなさい……」
王子はすっかりしょげかえった様子でそう言うとエルサに謝った。
その様子を見たリアーヌは愉快そうに笑いながら口を挟んだ。
「まあ待てエルサよ、そう責めてやるな。坊やの気持ちもわからんでもない……くく」
そう言って笑うリアーヌを睨みつけながらエルサが王子に向かって言う。
「殿下、私が手本を見せますので殿下はそこで見ていてください」
そう言ってエルサは呼吸を整えると、意識を集中し始めた。
するとリアーヌの身体の中心から手足に向かって靄のような物が広がっていき、手足が僅かに発光し始める。
それを確認したエルサは意を決して湖に足を一歩、二歩と踏み入れると水面を静かな波紋が広がった。
まるで大理石の床の上を歩いているかのように湖の上を歩いて行くエルサを見て王子は目を輝かせる。
「どうだい坊や、水の上を歩くだなんて行為、単細胞の筋肉娘がやることだから自分でもなんの造作もなく出来るとつい錯覚してしまっただろう?」
「は、はい……」
リアーヌの言葉に王子がそう返事をすると、彼女は顔をぐいと近づけて言った。
「いいかい?魔力を練ったり集中するのは場所の関係上子宮のある女の方が有利なのさ。坊やは魔法を出す事にかけては天賦の才があるやもしれん。だが身体の中の魔力の流れを読み取り、干渉し操作する技術はまだまだ経験が足りない」
その言葉に王子は興味深そうに何度も頷いて見せる。
リアーヌはそんな王子を見て口の端を吊り上げるとさらに続けて言った。
「そこでさ、魔力の放出がまるで出来ないこの反面教師の姉弟子の胸をどんと借りるといい。己の体内に流れる魔力を自在に操作し駆使する術を学べば、坊やは2段も3段もその先を登れるだろう」
そう言って魔女が指し示すのは、やはりエルサの方であった。
「馬鹿弟子は一日でも湖面を駆けても平気な位みっちり仕込んであるからね。ぼうやだけじゃない、わたしを負ぶさったまま走ることだって出来るくらいには頑丈さ」
その挑発めいた言葉にエルサは不服そうな顔をして抗議の声を上げる。
「もうリアーヌ様を抱えたまま、こんなに広い湖を走ったりは致しませんよ!」
しかしエルサの言葉にリアーヌは悪戯っぽい笑みを浮かべながら答える。
「くく……それはどうだかな?まあ、坊やが渡れぬまま一生この城で暮らすも悪くないかと思ってもいるのだが……」
その言葉に王子は大層驚いた顔をして、エルサの顔とリアーヌの顔を何度も見比べた。
そんな二人を見て堪らず魔女は笑い声をあげた──。
◇
魔女がからからと笑うのをよそにエルサは湖上に、アーシュは畔に互いに向き合ったまま立っていた。
「いいですか?下腹に力を込める様にして、魔力をこう、ぶわーっと作って、それを足裏にぐっと力を込めて制御するのです」
普段の剣術の指南をする際とはまるで違う、ふわふわとした説明に王子は不安そうに眉尻を下げて問いかけた。
「ぶわーっと作るってどんな感じ?どうやって足裏に移して制御するの?」
その質問に答えられずにエルサは表情を曇らせて頰を搔いた。剣術は身体の動きの機序さえ覚えてしまえば後は勝手に身体が動いてくれるが、この行為だけはそうもいかない。
「ええと……うーん……」
言葉に窮しているエルサを見兼ねてリアーヌは口を開く。
「ただ外から魔力を練っているのを見ている限りでは分からぬな。まあ、良く目を凝らしてわたしの身体を見てみると良い」
そう言って彼女は自らの身体をまるで透き通るかのように鮮明に王子の眼前に浮かび上がらせて見せた。
ぼうっと光る異形の身体の中身は臓物を思わせる影と、複雑に絡み合う管が浮かび上がっていた。
そしてそこには血液とはまた違うものが巡っているのを王子は見た。
それは色こそ赤や青といった極彩色ではあるものの、それらはただ脈打つでもなくまるでロウソクのように静かに燃えていた。
「わぁ……すごい。これがお師匠さまの魔力の流れ……」
そう呟いて食い入るように見つめる王子にエルサはいたたまれなくなり顔を背ける。
そんなエルサとは対照的にリアーヌは面白がって身体全体を王子の眼前へと映し出して見せた。
「どうだね?美しいものだろう。位置は少々違うが、内臓は人間のものとそう変わらんから参考になる筈だ。ふふん、どうだ坊や?
魔女の裸を見たものはお伽噺でもいるかもしれんが、更にその中身まで知れる者はそういないだろう?」
そう言って意地の悪い笑みを浮かべて王子に肉体の全てとも言えよう身体の内側を見せるリアーヌに、エルサは顔を真っ赤にして叫んだ。
「リアーヌ様!はしたないです!!」
そう叫ぶエルサを尻目に、王子は魔女の美しい肉体をじっと眺め続けていた。
その様子に気を良くしたのか、リアーヌは再び口を開いた。
「坊やが望むならもっと奥まで見せてやっても良いのだがね……くく」
そう言って淫猥な笑みを浮かべる魔女にエルサの顔は再び真っ赤に染まる。
そんな様子に少しも構うことなくリアーヌは言葉を続ける。
自らの虫の肥大な腹部の、その中ほどの最も光り輝く部位を差しながら、更に続けた。
「ここが子宮、女にはこれがあるから悩ましい。なんせ月の満ち欠けで痛みを覚え、欲に悩まされるからな。代わりに魔力の貯められる量は男の幾倍ほどあるし、複雑なコントロールも容易く行えるから魔法向きの身体を授かったとわたしは思っている」
そこまで言うとリアーヌは、ふっ、と目を細めて笑いを漏らした。
「おっと……『魔女』のわたしがこんな話をしたらいけなかったな……。しかし男も魔法が使えぬわけではない。現に坊やはわたしの教えた魔法……火を出したり雷を出したり……まあ今までは坊やが喜びそうなものを教えてやったが、すぐさま使えるようになっただろう?」
そう言うとリアーヌは王子に向かって話しかけた。
「坊やは今まで魔力なんてものを練った経験がほとんどないだろう?瞬発的な魔力の放出がなまじ強力な分、繊細な操作が出来ない。意識した事さえないんだから、当たり前なんだがね」
そこまで言うとリアーヌは腹部の輝く子宮にあたる部位から光を身体の各部へ、そして各肢の先から湖面へと伝播させ、そこから体内の魔力を放出するイメージで循環させる。
そのまま巨体を起こしたかと思えば、水面を滑るように疾駆し始めた。
まるで飛ぶように水面を軽やかに滑り、瞬く間にエルサの目の前までやって来ると、空中でくるりと身体を翻らせて足先から水面に再び着地した。
「こんな感じさ。……まあ、筋肉娘の言っていた事とそう変わらんが、実際に身体の中の魔力の流れを知覚し、操作し得ることが肝心なのさ。……後は自分でなんとかするんだね」
そう言って再び身体をふわりと宙に浮かべると元居た場所に飛び戻り、ゆらりと腰を下ろした。
「……あの、お師匠様……」
「うん?」
アーシュはおずおずと口を開くが、その視線は魔女とエルサの間を彷徨っていた。
その様子にリアーヌは面白くなさそうに鼻を鳴らすとこう問いかけた。
「言ってみなよ坊や」
その言葉にアーシュは一度深く息を吐いてから覚悟を決めて口を開いた。
「……男の人に子宮がないのは分かったんだけど、それなら僕はどこで魔力を練ればよいのですか?」
その言葉にリアーヌは口の端を吊り上げて笑うと、待ってましたとばかりに口を開いた。
「面白い事を言うじゃないか。そうさ、男に子宮はないよ。だから当たり前だが坊やにも子宮はない。ないが……ぷっくく」
そこまで言うと堪えきれないと言った様子で笑い始めたリアーヌを見て王子とエルサは首を傾げる他なかった。
そんな2人に魔女は笑いながら話した。
「すまん、すまん……いや、坊やと来たら本当に面白い事を言うじゃないかと思ってね」
そこまで言うと目尻に涙を浮かべて言葉を続けた。
「子宮がないから子袋のある女と同じように体内の魔力を練れないというなら話は早急だねえ。しかし、子宮がない男はどうやって魔力を練ると思う?」
そう問われた王子は口元に指を当てて考え込んだ。
エルサもまた首を捻って考えるが、そのような方法は今まで考えた事もない為思いつく筈もなかった。
しかしアーシュはしばらく考え込むとおもむろに口を開いた。
「臓器が違うなら……近い場所を使う……とか?」
アーシュの言葉にリアーヌは額に手を当てて笑い転げた。
「くくく!やっぱりわたしの思った通り、坊やはただもんじゃないね。臓器の場所など普通そうそう気がつくものでもないが……」
そこまで言うとエルサとアーシュを見据えてにやりと微笑んだ。
「当たりだよ坊や。子宮の代わりに男にしかない臓器を魔力の媒体として練るんだ」
そして、そう言って自らの下腹部をさする。
「子宮の代わり……?あ!わかった!膀胱!」
そう言うとアーシュは飛び上がらんばかりに喜んだが、リアーヌはつまらなそうに鼻を鳴らした。
「使えない事もないけど、違うね……」
「えー、じゃあどこ?」
答えに納得いかないアーシュの様子にリアーヌはさらに笑みを深くした。
「男の象徴とも言える場所さ。坊やは最近使えるようになったから変な癖が付く前にわたしが呼んだってことさ」
「あっ……!」
リアーヌの言葉にアーシュは顔を赤くして自らの股間を隠すように両手で覆った。
「それは……ええと、おしっこするところ……」
恥じらいながらそう言う王子にエルサは真っ赤になって怒鳴った。
「こら!不敬な事を言わせるんじゃないっ!」
そう言うとエルサは顔を真っ赤にしてリアーヌを怒鳴りつけた。
そんな様子にくすくすと笑ったリアーヌは言った。
「──殆ど正解、と言いたい所だけど陰茎と精嚢は体外に露出しているからねえ……。まあ、一番てっとり早いのはこっちの器官さね」
そう言って股間を押さえて真っ赤になっているアーシュの手をどけさせると、精嚢と肛門の間をなぞって見せた。
「ひぅっ!?」
リアーヌに触れられてびっくりしたアーシュは短く悲鳴を上げた。
そんな様子を見て魔女は笑いながら続けた。
「気持ちよかったかい坊や?ちょうどこの裏側にはな、前立腺って言う男にしかない器官がある。精虫を保護したり栄養を付けさせる液を作るところだよ。で、そこを刺激したりして意識が出来る様になれば自然と魔力が練れるようになるって寸法さ」
それを聞いてエルサは未だ赤面している王子を見やって思う。
(……わざと殿下を辱める言葉を選んで喋って……)
そう思ってジト目でリアーヌを睨むと彼女はおどけながら応えた。
「おお怖い……そんな顔で睨むんじゃないよエルサ。せっかく不出来な弟子に代わってアドバイスしてやろうと言うのに」
「……余計なお世話です。殿下の才気は私が一番良くわかっていますので」
エルサのその言葉に魔女は口を歪めて笑うと言った。
「まあ……なんもせなんでも4,5年もすれば坊やなら自力で魔力を練る事が出来る様になるさ。今はまだ魔力が垂れ流しなだけだが、いずれ自分で制御できるようになるだろうよ」
5年近くもこの城に抑留されているという事実に、エルサは呆然としながら問いかけた。
「その間ずっとここに居ろと仰るのですか……!?」
その問いにリアーヌは大袈裟に肩をすくめた。
「言っただろう?『坊やが湖を歩いて渡れるようになるまでこの森を出る事は許さない』とな。王からも坊やの教育には積極的に取り組む様にと言われているからねえ、宿題が出来るまではここに居てもらうよ」
そう言って笑う魔女にエルサは忌々しげに顔を歪めた。
しかしエルサのその表情に全く意に介さずリアーヌは話を続ける。
「まあそう悲観したものでもないさ、わたしだって何の見返りもなくこんな事を言う程暇じゃないし……くくく」
そう言うと魔女は再び含み笑いをするが、王子とエルサにはその笑みの意味が読み取れず目を白黒させる他なかった。
「そ、それで、お師匠さま!その、ぜんりつせん?をいじるのって具体的にどうすれば良いんですか!?」
アーシュが焦れったそうに口を開くと、リアーヌは意地悪な笑みを浮かべながら言った。
「なに、そう難しい事じゃあないさ。前立腺は男の急所でもあるからねえ、こいつを鍛えるのに一番良いのは──」
すると、リアーヌの腹部がぼこぼこと膨らみ始めた。
「ひゅいっ!?」
突然の出来事に王子とエルサは変な声を上げた。
リアーヌも流石に堪えるのか、顔を赤らめて前脚を歯噛みしながら言葉を絞り出した。
「ちょうどよかったねえ……。坊やに逢えるとなって我慢していたから……。まだ胎の中にいたのを忘れてたよ……っ♡」
そう言って魔女は頬を紅潮させながら前脚で自らの腹部を押さえ、身体の内に溜まったものを押し出すように腹を膨らませてゆく。
腹部の終端の秘烈を思わせるピンクの裂け目はひくつくように動き、そこからとろりとした蜜が滴る。
「んん……っ♡」
その快感で軽く達してしまったのか、魔女は身体をぶるりと震わせた。
立ち込めるほどの牝の香りは、否が応でもエルサとアーシュの情欲を刺激するものであったが、初めて目にする光景に王子とエルサはただ呆然と見つめる事しか出来なかった。
未だに透ける様に見える臓物、取り分け子宮の中に幾つもの影があることが分かったのは、光が弱まり始めてからであった。
「あぁ、たまらないよ坊や……っ♡もっと近くに寄りな……♡」
リアーヌが熱っぽい目でアーシュを見つめている事に魔女自身も気がついていた。
近くでアーシュが腹部に触れると、その姿が見える様になる様にリアーヌは調整していた。
「あ、お師匠さま……そのお腹の中に……」
アーシュは目を白黒させながらおずおずと問いかけた。
「ん……?あぁ……これがわたしの子供さ、可愛げがあるだろう?」
そんな淫靡な姿とは正反対にどこか母性を感じさせるような穏やかな笑みを浮かべながら言う魔女の言葉に、王子は自分の頬が益々紅潮するのを感じた。
「ああ!でも勘違いはしないでおくれよ、呪いのせいで勝手に産まれるのさ。今までのよりよく育った子達だよ……きっと坊やも気にいるさ」
そう言って妖しく笑う魔女の姿に、王子はごくりと喉を鳴らした。
「……胎が空いたら坊やの子も孕ませてもらおうかねえ……くくっ」
「っ……!?」
そんな事を言いながら再び腹部が蠢き、溢れた蜜が地面に滴る。
その様子を見てエルサは肩で息をしながら呆れて言った。
「……冗談も休み休みにしてくださいリアーヌ様」
それにリアーヌもまた返す。
「おや?わたしは本気だったけれどね。何ならエルサ、お前も混ざるかい?」
「っ!結構です!」
慌てて顔を背けるエルサを見てくすくす笑うと魔女はアーシュに視線を戻した。
そして、その腹を撫でながら続けた。
「さて、坊や?試しに一つわたしの腹に触れてごらん」
そう言って腹部を撫でるリアーヌに促されて、王子はおそるおそる手を伸ばした。
優しく擦るように下腹部を撫でていると、その掌にぷよんとした弾力を感じた。
「きゃっ!?」
アーシュは驚いて手を離したが、リアーヌはそのまま触れさせて言葉を続ける。
「そう……少し強めに押してみるんだ……。んっ♡……はぁっ♡」
王子は言われるがままに少しだけ手に力を込めて押してみて驚いた。
手の形にへこむものの、中にあるものは全くと言っていいほど動かないのだ。
それはまるで柔らかな毬を触っているかの様な感覚であった。
「これは……?」
アーシュは驚きに目を見開く。
魔女はその反応を楽しむかのように不敵な笑みを浮かべながら、アーシュの耳元で囁くように言った。
「もっと触ってごらん……?この中がどうなっているか知りたいだろう……?」
そう言われて王子はごくりと喉を鳴らすと、意を決して手に力を入れた。
すると、指先にこりこりとした感触を感じると共に魔女の身体がびくんと跳ねた。
「ふぅんっ♡あ……っ♡」
途端に先程よりも強い香りが鼻腔を刺激した。その匂いに陶酔する様に目を細めながら王子は夢中になって手に力を込め続けた。
ぐにゃり──ぬちり──そんな音を立てて下腹部を押しながら掌で撫で回し、エルサが見ている事も忘れてその感触に夢中になっていた。
「ああっ♡んぅ……っ!坊や、も、もっと激しくしていいからね……っ♡」
「お、お師匠さまっ……!」
堪らず声を上げる魔女に王子は益々興奮を覚えた。
そしてリアーヌの求めに応じるようにその力を強めてゆく。
透けて見える子宮は虫で編んだ籠のように形状を変えて、その内部に詰まったものの存在を知らしめる。
やがて広がりきった子宮口は、先程より肉感的に収縮し、やがて幼虫たちが殺到するように子宮口を押し拡げていった。
「あぁっ♡そ、そうだ……っ♡良い子だね……んんっ♡」
激しく愛撫を繰り返された子宮は快感で痙攣し、リアーヌの理性を奪ってゆく。
王子が撫でる度に敏感な部分への刺激に背筋を震わせ、快楽に打ち震える彼女の姿は普段の魔女としての姿からは想像もつかない程に淫靡であった。
そして、その行為は益々王子を駆り立てる。
エルサはそんな様子を見て頭を抱えながらも、焼き切れそうな理性で必死にその光景を見ないようにしていた。
リアーヌが悦楽によがる度に溢れた蜜からはむせ返るような牝の香りが立ち込めていく。
そんな香りに当てられたかのように、魔女の下腹部に触れるアーシュもまた顔を紅潮させながら息を荒げていた。
「あぁ……っ!すごい、中でいっぱい動いてる……!」
王子は興奮を抑えられずにそんな言葉を口にした。
その言葉通り、アーシュの掌の下では未だに胎動が続いている。
小さな生命が蠢くさまを、王子はその様子を興味深そうに眺めていた。
「はぁ……っ♡坊やも随分と上手だねえ……♡……そろそろ限界だよ、一回手を離そうか」
その言葉にアーシュは名残惜しそうな表情を浮かべながらも手を離した。
「そう残念そうな顔をするんじゃないよっ♡わたしが暴れて坊やが下敷きになったんじゃ大惨事だろう?」
リアーヌは妖艶な笑みを浮かべると、今度は前脚で王子の頭を優しく撫でた。
「あ……っ」
心地良さに目を細める王子に魔女はくすくす笑いながら続けた。
「さて、坊やも充分わたしの具合が分かった事だし──そろそろ仕上げに入るとしようか」
胎の虫たちももう限界のようで、一匹また一匹と子宮から這い出そうとしていた。
「あぁっ♡あは……っ♡ひぅ……っ♡」
ずるりと這い出てくる感覚に、リアーヌは思わず声を上げて身体を震わせる。
そんな様子を見て王子は心配そうに魔女に問いかけた。
「お師匠さま……?大丈夫ですか?」
その声に応えるように顔を上げると、魔女は言った。
「くく……っ大丈夫さ、それより坊や──もっとしっかり見ていておくれ」
そう言って笑う彼女の表情はとても安らかで、それでいて妖艶であった。
そしてリアーヌの腹部がより一層収縮を強め──。
「あ、あぁ……っ♡産まれる……っ♡」
その言葉と同時に子宮から無数の白い影が飛び出した。
子宮を押し広げ、産道へと下りてくる数多の幼虫たち──それは彼女が今まで胎内で育ててきた子供たちであった。
「ああ、凄い……こんなに沢山……っ」
王子は感極まった様に声を上げた。
しかし魔女の腹部はまだ窮屈そうに張り詰めていて、子供たちはまだ出てきている最中のようであった。
そして──最後に一匹だけ、白い影が残っている事に気が付いた。
「んん……っ♡あともう一匹だけ残ってるねぇ……」
リアーヌは切なげな声を上げながら自らの腹部を愛撫した。すると最後の一押しとばかりにごぽりと大きな音を立てて子宮から虫が飛び出した。
同時に盛大な絶頂を迎えたようで、魔女は身体を大きく仰け反らせた。
それと同時に他の子らも一斉に産み落とされる。
ひくつく陰部を大きくこじ開けるようにして溢れ出たのは、母親のそれとは真逆の、真っ白な色合いの幼蟲達であった。
「ああ……っ♡産めたぁ……っ♡」
それは王子が見た中でも最も淫靡で美しく、それでいて神聖さを感じさせる姿であった。
産まれた子らはしばらく地面を這い回ったあと母を求めるかのようにリアーヌの身体に這い上り、その全身を覆うように群がり始めた。
その光景を見たアーシュは思わずごくりと喉を鳴らした。
「ぁ……凄い……」
白い子らに覆われたリアーヌの姿は、まるで純白のドレスに身を包んでいるかのようにも見えた。
彼女は暫くの間ぐったりとしていたが、やがてその身体をゆっくりと起こした。
そして自らの産み落とした子らを見て目を細めると優しく語りかけた。
「ふふ……どうだい?みんな可愛いだろう?」
その言葉に応えるように幼蟲達は一斉に触覚を揺らすと甘えるようにリアーヌの身体に張り付いたり這い上がったりした。
どれも皆、肥大化した乳房から滴る母乳を嬉しそうに舐め取っている。
そのくすぐったさに彼女は蕩けそうな表情を浮かべた。
「あっ♡ふふ、元気な子たちだこと……♡」
そう微笑む彼女の表情はとても穏やかで慈愛に満ち溢れていた。
その姿に王子はしばし見惚れていたが、やがて我に返ったようにエルサは言った。
「まったく、こんな蟲どもに貴重な魔力を分け与えるだなんてとんだ魔女ですね、リアーヌ様は」
そんな皮肉めいた言葉も意に介さず、それどころかどこか愉しげに魔女は返す。
「ふふ、そう言うな。この子らはわたしの胎から作る魔力で成長したんだ……それに、わたしだって蟲の10匹や100匹に負けるような魔女じゃないよ。育った子らは魔力を糧として死ぬまで国を見守る……そんな子らを無下に扱うだなんて可哀想じゃあないか」
そう言いながら、魔女は愛おしそうに我が子を抱いてその頭に口付けを落とした。
暫くすると、それでも乳が足りないのか幼蟲達は更に母の身体に吸い付き始めた。
その光景はまるで母を求める乳飲み子のようであったが、その行為は王子から見ればとても淫靡なものに映った。
「あぁ……♡あまり強く吸うんじゃないよ♡」
リアーヌは我が子の愛撫に甘い声を漏らすと、困ったような表情でアーシュに視線を送った。
「残念だけど乳首も2つしかないものでね、沢山の子供たちに乳をのませるのも一苦労でね……っ♡」
そう言うと、リアーヌの乳頭の先に頭を潜り込ませるようにして中へと入り込んだ幼蟲がいた。
「あぁん……っ♡こら、そんな一度に何匹も入ろうとするんじゃあないっ♡」
リアーヌは悶えるようにそう言うと、仕方なくと言った様子で乳房を揺すり始めた。
「はぁ……っ♡んっ♡こうしないと全員に行き渡らないのさっ♡」
彼女はそう言いながら自らの乳房を刺激し続けた。
幼虫が入り込むたびに乳房がぼこぼこと歪に膨れ上がる様は異様ではあったが、血走る太く青い血管が浮かび、彼女の乳腺の中で乳飲み子のように蠢く姿はどこか神秘的にも思えた。
王子はその姿をまじまじと見つめながら下腹部を熱く滾らせていた。
そんな視線に気付いたのか、リアーヌは蕩けた表情で彼に言った。
「ふふっ♡坊や、こんな姿を見て興奮しているのかい?」
「……っ!そ、それは……はい、師匠がとてもきれいで……」
恥ずかしさに頬を染める王子の返答を聞いて魔女はくすくすと笑った。
「ふふ、世辞でも嬉しいよ。こんなにも可愛い弟子がわたしを見て興奮してくれているんだ……あとでわたしを思い浮かべながら自慰に耽させるくらいのことなら、許してあげようじゃないか♡なあいいだろう?馬鹿弟子」
その言葉に王子は思わず顔を赤らめるが、セレナは慌てて嗜めた。
「リアーヌ様!それではあんまりではありませんか……!それはあまりに……」
しかし魔女は面白がるように笑みを漏らすと、エルサの顎を指先で撫でながら言った。
「ほう……?わたしに意見するのかい?可愛い弟子ふたりが娼婦なんかに身をやつしたどこぞの亡国の姫如きにお情け半分面白半分でさせられた交配ごっこに耽るのはよくて、愛しい我が弟子がわたしに懸想するのを禁じさせるのは何故だい? 」
そう言われてエルサは押し黙る。
この、魔女の隠そうにも隠せぬ怒りはもっともであったからだ。
しかしこれは、切羽詰まって単身あのクルティザンに良いように絡めとられたエルサを諭すつもりでリアーヌはこのような戒言をしたのだろうが、リアーヌ自身まだこの弟子たちに対する想いを完全に自覚しきれていないためか、嫉妬心もあったのかもしれない。
「なぁに、弟子がやらかした事なら師匠のわたしが尻拭いをするのが筋というもんだろう?これからみっちり、坊やにも小娘にもわたし流の教えとやり方というものを骨の髄まで教育してやるよ、ふふっ♡」
妖艶に微笑みながらそう語る彼女の目はしかし全く笑っていなかった。
そんな様子に気付いた王子は怯えたように後ずさりをすると、部屋の隅に逃げ込むような仕草を見せた。
「ひ……っ!お師匠さまこわい!」
怯える王子とは対照的にリアーヌは嗜虐的な笑みを浮かべていた。
「ああ良いねぇ♡その反応が見たかったんだ……ほら坊や、こっちにおいで♡よしよし、じゃあ坊やには特別な訓練をしてあげよう」
そう言いながらリアーヌは歪に膨らみきった乳房を自ら揉みしだく。
「あっ♡ああんっ♡ほら、坊やのために準備した特濃のミルクだよっ♡」
そう叫ぶと同時にリアーヌの乳頭から勢い良く白い塊が飛び出した。
それはぼたぼたと滴り落ちながら床を白く染め上げていく。
その光景を見て王子は思わず喉をごくりと鳴らした。
そんな様子を見て魔女は満足げな表情を浮かべると言った。
「ほら坊や、ぼーっとしていないで乳飲み子のお仕事だよっ♡わたしのミルクを飲んでごらん♡」
そう言われて王子はふらふらと引き寄せられるようにリアーヌの元へと歩み寄ると、彼女の乳房に吸い付いた。
「あっ♡はぁんっ♡ふふ、良いよ坊や。人の子に乳を吸わせたのは初めてだねぇ、あぁ……っ♡」
乳飲み子のように夢中で乳房をしゃぶる王子の様子を見てリアーヌは恍惚とした表情を浮かべながら快感に身を震わせた。
「あっ♡すごい、小さい舌で一生懸命にわたしのミルクを飲んでるぅ……っ♡ふぁああんっ♡可愛いよぉ坊や♡」
その様子を見ていたエルサも堪らずと言った様子で口を開いた。
「お師匠様……わ、私にも……!」
そう言って懇願する彼女の様子に魔女はわざとらしく大きな溜め息を吐き出した。
「まったく、堪え性のない弟子を持つと師匠は苦労するね……ほら馬鹿弟子、ミルクが欲しいなら空いてる方を勝手に吸いな。ぱんぱんに張って痛くてかなわないんだ」
そう言ってもう片方の乳房を差し出すと、エルサは嬉々としてそれにしゃぶりついた。
「んんっ♡ああ……っ♡」
左右から異なる刺激を与えられてリアーヌはその快感に身体を震わせた。
「良いよ坊や……もっと強く吸っても大丈夫だからね」
その言葉に応えるように王子は一際強く乳房に吸い付くと、それに応えるように魔女の口から甘い吐息が漏れる。
「ああぁんっ♡まったく、可愛いったらありゃしない……♡馬鹿弟子はもっと労わる様に優しく舐めな、わたしと可愛い坊やたちが飽きてしまうだろう?ああ、良いよ……その調子だ♡」
リアーヌは満足げに微笑むと、再び乳房への刺激に感じ入った。
王子も彼女に教え込まれた通りに乳首ではなく乳輪の辺りから円を描くように舐め回し、時折乳首を口に含みながらも舌で優しく愛撫していく。
「あっ♡ああっ♡そうだ、偉いぞ坊や……♡」
そう言って魔女は王子の頭を優しく撫でる。すると嫉妬か寂しかったのか少し拗ねた風の弟子一号がガジガジと乳首を歯噛みし始めた。
「んぅっ♡あっ、こら馬鹿弟子!歯を立てるんじゃないよ!」
その様子にリアーヌは困ったように笑いながらもどこか嬉しそうな表情を見せると、今度はエルサの方に目線をやった。
「あぁんっ♡まったく……出来が悪かろうが教える時期が短かろうが、みんな可愛いわたしの弟子だよ♡」
そう言ってリアーヌは反対側の乳房に黙って吸い付くエルサの頭も優しく抱き寄せた。
「んぅっ♡あぁ……んっ♡」
エルサは幸せそうに目を細めながら、必死に母に甘えるかのように乳房を吸い続ける。その様子を見てリアーヌはさらに愛おしそうに目を細めた。
「あっ♡んぅっ♡ふふ、元気だねぇ弟子たち♡この調子で三人でいっぱい子作りするのも悪かないねえ♡」
その言葉に王子は顔を真っ赤にすると俯いてしまったが、エルサの方はまんざらでもないのか頰を赤らめながら小さな声で返事をした。
「そ、それは……♡」
その様子を見てリアーヌはくすりと笑った。
「ふふっ♡もうすっかり盛りがついてしまったみたいだね♡まったく……いけない子たちだ♡」
そう言って嗜めるように言うと王子とエルサは再び恥ずかしそうに目を伏せた。
そんな2人の様子を見て満足したのか、彼女は改めて自分の乳房に吸い付く弟子達を慈しむように見つめながら言った。
「んっ♡乳飲み子のくせして母をイカせようなんざ、淫らな子たちだ♡よぉし分かった!そんなに強く吸いたければ好きなだけ吸わせてやろうじゃないか!」
そう言うと、リアーヌは自らの乳房を両手でぎゅうっと押し潰すように寄せ上げると二人の顔を乳房の谷間に埋めた。
「ほらっ♡さあ、思う存分味わうといいさ♡」
その淫靡な光景を目の当たりにした王子とエルサは思わず生唾を飲み込む。
乳首の中にまで舌を突き入れて必死に舌を動かすエルサ。
そして王子は口いっぱいに乳房を頬張ると、まるで赤子のようにちゅぱちゅぱと音を立てて吸い続けた。
「んんっ♡あぁんっ♡なんて下品な音だい♡」
そんな二人を愛おしそうに見下ろしながらリアーヌはその大きな胸をふるりと揺らした。
幾重にも枝分かれした乳腺の中に潜り込んだ幼虫たちも、一斉にリアーヌの乳房の中で暴れ回っているかのようであった。
「ああんっ♡す、すごいっ♡外からも中からも虐められてっ♡あはぁんっ♡」
リアーヌはたまらずに嬌声を上げる。その拍子に彼女の乳房から乳汁が噴き出し、エルサと王子の顔を濡らした。
「お゛おぉぉっ♡イグぅううぅぅううっ♡♡♡」
その瞬間、リアーヌは激しく身体を痙攣させた。
それと同時に彼女の乳首からは凄まじい勢いでミルクが噴出し、地面を白く染め上げた。
「ああぁぁあんっ♡ああんっ♡まだ出てりゅううぅぅ♡♡♡」
リアーヌは全身を弓なりに反らしながら、何度も身体を跳ねさせ、その度に大量のミルクが噴き出した。
あたり一面に甘い匂いが立ち込め、まるで乳香を焚いたかのような匂いが充満していった。
そうしていると、更に追い打ちをかける様に乳房の中から幼虫が数匹顔を出し始めた。
「ああぁぁんっ♡まだまだいっぱい出るっ♡もっともっと出ちゃうぅぅううっ♡♡♡」
絶頂の最中だというのにリアーヌの乳首からは止めどなく乳汁が溢れ出し、地面を満たしていく。それはさながら失禁のようでもあった。
何匹かの白い幼虫が地面に撒き散らされた乳汁に顔を浸し、そうして瞬く間に床一面が白い世界へと変わっていった。
「はぁーっ♡はぁーっ♡」
「ふぅ……♡ふふっ、わたしの可愛い弟子たち……今度はお前たちの番だよ?」
そう言って魔女は妖しく微笑むと、白乳の海でのたうち回る我が子を腕に抱えてふたりの弟子に見せた。
彼女の腕の中で幼虫は小さな身体を忙しなく蠢かせており、その動きに合わせて母乳がぴゅっぴゅっと噴き出していた。
自分たちの番、という言葉にふたり顔を見合わせて首を傾げる不出来の弟子たちに、魔女は苦笑しながら言った。
「おやおや、物分かりが悪いねぇお前たちは……」
そう言うと彼女は王子の服に手を掛け、器用に脱がせていく。そして王子の方もされるがままにズボンとパンツを脱ぎ去った。
「おっ♡」
既に臨戦態勢に入っている弟子のペニスを見てリアーヌは驚いたような声を上げる。しかしすぐに淫靡な笑みを浮かべると舌なめずりをした。
「へぇ♡まったく元気が有り余っているようだね♡でもこっちはしばらくお預けだよ。今回はこっちを集中特訓するんだからね」
そう言って王子の白く丸い尻を優しく撫で回す。
「あ……っ♡」
と王子は思わず声を上げるが、すぐにそれは小さな喘ぎ声へと変わっていった。
「ん……っ♡んぅうっ♡」
魔女は王子の尻たぶを両手で掴み左右に割り開くと、その狭間にある小さな窄まりに指を這わせる。
「うんうん♡坊やが便秘になる度に摘便してやった時から思っていたけれど、だいぶ良い感じに育ったじゃないか♡」
そう言うと彼女は弟子の尻穴に指を突き入れぐりっと動かした。その瞬間王子は身体を仰け反らせ、「あぁっ♡」と甲高い声を上げる。
そんな様子を見て魔女は満足そうに微笑むと、そのまま指を根元まで突き入れた。
「ああんっ♡お師匠さまぁ……♡」
そう言いながらも王子の表情は既に快楽に溺れており、口の端からはだらしなく涎を垂らしていた。
「ふふっ♡どうだい?わたしの指がお前の中で触れているここが、前立腺だよ。ここに魔力を集中させて感覚を鋭くするのさ。そうすれば魔力を操る際に様々な感覚を得られるようになるんだよ」
そう言いながら魔女は更に弟子のアナル深くへと指を挿し入れる。そして前立腺を直接刺激されたことで、王子の口から悲鳴にも似た嬌声が上がった。
「ああぁぁあぁあっ♡♡♡」
幼い茎がびくんっと震え、先端から透明な蜜液が溢れ出す。
それを見て魔女は目を細めた。
「おやおや……まったく堪え性のない子だね♡でも心配しなくていいさ。これから下の世話はこの子らにやって貰うんだからねえ♡」
そう言ってリアーヌが頬ずりしていたのは、先ほど乳房から産み落とした幼虫であった。
エルサはそれを見るなり嫌な予感に顔を顰めるも、アーシュは蕩けた顔のまま自らに起ころうとしている淫らな運命を受け入れようとしていた。
エルサの心配も余所に、魔女は嬉々としてそう言うとアーシュの蕾をひと舐めした。
「んぅっ♡あっ♡ああっ♡」
たったそれだけの刺激でアーシュは身体をびくびくと震わせる。
そんな彼の姿を見てリアーヌは嬉しそうな笑みを浮かべた。
「この身体になるとこうも坊やのお尻が美味しく見えて仕方がないよ……。まったく、坊やは最高だよ♡ほぉら、弟子一号ちゃんと見ておくんだよ?この子が坊やのうしろの処女を頂くんだからね♡」
そう言ってリアーヌはアーシュのアナルに自らの唇を近づけ、口付けをする。
「んっ♡ふぅっ♡」
初めて感じる未知の感覚に、思わずアーシュの口から甘い吐息が漏れる。そんな彼の様子にリアーヌは気を良くしたように微笑むと、舌を突き出して彼の菊門を押し広げていった。
「ふぁあんっ♡♡お師匠さまぁ……んくぅうっ♡♡♡」
排泄器官を舐められる初めての感覚に、アーシュは背を仰け反らせながら悶えた。
「ふふ……良い声だ♡その調子でもっと乱れるんだよ?坊や♡」
そう言うとリアーヌは舌を引き抜くと、代わりに真っ白な自らの産み落とした幼虫を尻穴へと押し当てる。
「んぅううっ♡♡♡」
これから起こるであろうことへの期待からか、アーシュは身体を戦慄かせた。
そんな彼の期待に応えるように、幼虫にアナルの中へと潜り込んでいく。
「んあぁああぁああぁあぁああぁぁああっ♡♡♡♡♡」
生まれて初めて異物を受け入れた衝撃にアーシュが絶叫を上げると、リアーヌは満足げに微笑んだ。
「ふふ……いいねぇ♡感度良好だよ♡」
そう言って彼女は更に数匹の幼虫をアーシュの尻穴に潜り込ませていく。その度に彼は身体を跳ねさせ、激しい快感に身を悶えさせた。
「んおっ♡おっ♡おぉおおぉおおぉぉおっ♡♡♡」
一匹入り込むたびに絶頂を迎えているかのような声を上げる弟子にリアーヌは興奮すると、さらに激しく幼虫を彼の腸内へと潜り込ませていった。
やがて全ての幼虫が彼の胎内へと収まると、リアーヌは舌なめずりをしながら言った。
「よし……それじゃあ、残りの幼虫は馬鹿弟子にくれてやろうとしようかね?わたしは平等がモットーだからさ♡」
エルサの股が人外の膂力により無理矢理開かされた。
「ああぁっ♡」
そうして露になった彼女の秘所は既に濡れそぼっており、準備万端といった様子であった。
「あはは♡そんなにコレを期待してくれているのかい?可愛い馬鹿弟子だねぇ♡」
そう言って魔女は残りの腕を使ってエルサの割れ目を愛撫し、解していく。
「んっ♡あぁあっ♡♡そ、そこぉっ♡♡♡」
エルサがそう言って身を捩らせると、魔女は彼女の耳元に口を寄せた。
「可愛い声で鳴くじゃないか……産む時もそうやって鳴きな♡」
そう言ってリアーヌはエルサの蜜壺に幼虫を侵入させる。
「あぁっ♡な、なんで私にも!?」
エルサが驚いて声を上げると、魔女はくつくつと笑った。
「弟子達には平等に魔力の感覚を教えてやりたいんだよ♡お前は子宮で魔力をその子らに分け与えながら特訓だよ」
膣内を這い上っていく異物感にエルサは身体を震わせる。しかしそれでも彼女は恐怖や嫌悪感を覚えるどころか、むしろその快感に酔いしれていた。
「あぁんっ♡くぅううぅっ♡♡♡」
やがて子宮頸部に辿り着いた幼虫達がもぞもぞと動き始める感覚に、エルサは甘い声を上げて身悶える。そんな彼女の姿を見て、魔女は言った。
「ほう?坊やのとどっちが感じる?」
そう言う最中も幼虫は子宮口に頭を押しつけ、グリグリと刺激を与え続けた。
「んっ♡あっ♡あぁああぁあああぁぁああぁぁっ♡♡♡」
あまりの快感にエルサは舌を突き出して絶叫を上げる。その瞬間、子宮口が大きく開き、幼虫が次々と子宮へと侵入していった。
「あぁっ!だめぇええっ♡♡こんなの無理ぃいいぃっ♡♡♡♡」
自分の意思とは関係なく犯される感覚に、エルサは涙を流して悶えた。その間にも幼虫達は彼女の子宮内を暴れ回り、蹂躙していく。
「ふぁっ♡ああぁあっ♡♡だめぇええっ♡♡おかしくなるぅううっ♡♡♡」
そう言いながらエルサは自ら腰を振り、快楽を求め始めた。それを見たアーシュが恍惚とした表情で呟く。
「すごい……エルサもあんなに乱れて……僕もあんな風に……なりたいなぁ……♡」
そう言ってアーシュは自分のアナルを弄り始めた。それを見てリアーヌが苦笑する。
「おやおや、坊やまでそんなになって……まったく仕方のない子たちだね。誰に似たのやら……♡」
腹部を擦りながら、魔女は二人を抱きかかえて不気味な居城へと戻る。
特訓は明日から。
苛烈で、熾烈で、狂気に満ちた修行が始まるのを告げるかのような高笑いが、森中に響き渡った。