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「誰か!誰かいませんか!娘が…娘が起きないんです!」
「おい!お前らは病院行ったのか?」
1人の男性が娘を抱えて住宅街を走り抜ける。時折、声を出して助けを求めるが、誰も外に出たがらない。何故ならある現象が起きてから、日常が崩壊してしまい、外に出ているのはもう人間ではなくなってしまった者たちしか居なくなっていた。いや、人間の意識や性格、価値観を持っているが姿はもう人間ではない者たちだ。
数日前
「1列前へ、2列続け!」
「いち、に、さん、し、ご、ろく、しち、はち!」
「バラバラじゃねぇかよ!お前ら気をゆるましてんじゃねぇよ!」
大きな怒号が色んなところで聞こえる。青い制服に身を包み、国の治安と秩序を守ることを誓った者たちが一糸乱れぬ列を作り、教官と言われる者たちの叱責の的にされている。ここ、警察学校では当たり前の姿だ。
「これにて集団行動の授業を終えます。『各教場ごとに整列!解散!』」
この言葉を聞いて大きな声で「おー!」と発する。そして、ダッシュで散らばり、次の授業に向けて準備を始めた。
「木村!木村!次なんだっけ?」
「次は刑法だね。御前田教官の授業!」
木村と呼ばれる生徒は他の同期に声をかけられ、素直に答える。バックから急いで使用する教科書を取り出し、必要になる物をセットする。
「おう!木村!」
「御前田教官!お疲れ様です!」
ドアの方を見ると真っ先に教官と目が合う。木村は教場の中で常にトップの成績を持つ優秀な人材の1人として他の教官助教たちからも一目置かれている。
「木村、最近うちの教場の宮部というやつがいるんだが、君と同じ故郷なんだ。最近、あいつの様子がおかしくてな、少しばかり声をかけて欲しい。俺から声をかけてもいいが、上司というのもあってうまく話してくれなさそうなんだ。」
「分かりました。宮部巡査ですね。」
「あぁ。よろしく頼む」
御前田教官は木村の肩をポンポンと叩くと教壇の上に立ち、全員準備完了しているかの確認をする。
「ここ、テストに出るぞ。警視庁警察官になったからにはここ東京を守るために覚えることが必然と多くなる。頭のおかしい輩と言われる人たちをお前らは対処しないといけない。」
御前田教官は真剣な眼差しで生徒たちを見つめる。生徒たちはそんな教官を見て、ノートにテストとして出てくる箇所を写している。
-とある無線-
『えー、警視庁より全局。現在、高輪ゲートウェイにて体調不良者が複数発生と駅員から通報あり、また、五反田、東京、渋谷、新宿、上野でも同様の体調不良を訴える乗客がいると各駅員から通報あり、95年に発生したテロ事案と類似性が高く、また、中央線やその他の私鉄でも起こりゆる可能性あり、全局駅周辺の巡回強化、テロ事案として行動せよ。』
『大阪府警から全局、現在新大阪、大阪、関西空港、天王寺にて体調不良者が…』
『北海道警から全局、札幌、千歳空港、函館にて…』
『広島県警から全局…」
『愛媛県警から…福岡県警から…鹿児島県警から…愛知県警から…宮城県警から…秋田県警から全局…』
「これにて私の授業を終わります。」
「総員起立!敬礼!」
授業のチャイムが鳴ると同時に当番が立ち上がり、大声で敬礼の合図を出す。皆が一斉に綺麗な一礼を見せ、御前田教官は教場を出る。
「やっぱり御前田教官は面白い授業でわかりやすいね。」
「だね」
周りから御前田教官の授業を振り返り盛り上がる。そして、皆が次の授業の準備をしている時だった。
「御前田教官!こっちです!」
「分かった!」
御前田教官や他の教官たちが一斉に同じ方向に向かって走っている。1つの教場の前の廊下を通り過ぎるたびに、『なんだなんだ』と他の生徒たちが顔を出して様子を見る。
「お前ら教場に戻っとけ!」
激しく怒鳴る声が廊下を響き渡り、皆が教場の中に引っ込める。
あれからどのくらい時間が経ったか分からない頃、
「お前ら、全員寮に戻れ。」
自分たちを担当する教官である橋本教官はそういうと、教場にいる生徒たちを廊下に立たせ、一緒に寮まで歩く。
「全員寮に戻ったら、家族に連絡入れろ。事情は着いてから話す。」
教官がそう呟くと先ほどまでの空気とは一変して緊張が走る。皆の足音が綺麗にそして鮮明に聞こえる。寮の自動ドアが開き、ロビーで整列する。
「全員いるな?なんで寮に戻るか皆気になっただろう。今、学校外でいろんなところで体調不良者が続出している。東京だけに収まらず、日本の各地で同じ体調不良者が続出している。これが病気なのか、皆が聞いたことのある数十年前にあったのテロ事件のように仕組まれた物なのか分からない。だが、家族の安全を確認するとともに、自身の無事を伝えなさい。これがどう動くかは分からない。病気であるならば学校でも発症する可能性がある。全員マスクをつけなさい。もし、外で怪しい動きを見たらすぐに報告してくれ。以上。総員各自部屋に戻れ。」
そう呟くと教官は1人職員室がある棟に歩いて向かう。
皆が各自部屋に戻り始め、制服姿で無言で携帯を触り始める。木村も他の生徒と同じようにスマホを取り出し電源を入れる。
『お母さん、久しぶり。今、謎の体調不良者が出てるみたいなんだけど、そっちは大丈夫?僕は大丈夫だから心配しなくていいよ。』
書き込み、送信を終えるとベッドに横になる。シワを極限までに無くしたベッドのシーツの上で寝転がり、スマホを見続ける。まだニュースになっていないのかSNSではみんなが自分なりの楽しさを共有している。
「木村、、、俺の母ちゃんが。。。」
1人の生徒が木村の部屋のドアの前で涙を浮ばせ、そして泣き始めた。木村は急いで自室にその生徒を連れ込み何があったのかを聞いた。
「俺の母ちゃんが、教官が言ってた体調不良になってるみたいで、救急車で病院に運ばれたって。。。」
その生徒は東北に実家がある生徒で、よく家族の話をしていた。木村はその生徒の方をポンポンと優しく叩いたり、撫でたりして落ち着かせようとしている。
気づけば夕方になり、国旗掲揚のチャイムが寮全体に鳴り響く。他の教場の生徒たちも早く戻っていたようで、皆暗い表情で廊下にはいつもの会話やはしゃぎ声はなく、寂れた風の音だけが鳴り響く。色々な個人の出来事が皆持っているのだ。
食堂や風呂場でも皆無言でご飯を食べたり、シャワーや風呂に浸かる。どこも数年前に発生した流行病の時と同じく誰も誰とも口にせず、ただ黙々と日常で送り続けていた作業を繰り返す。気がつけば夜の点呼の時間に入り、全員が廊下に一列に並ぶ。
「リーダー、今日は夜の点呼は中止だってよ。」
「今、昼からの対応がすごいんだろうな。みんな!全員居室に戻って明日の準備して早く寝よう!」
副リーダーとリーダーが少しの会話をし終えると、リーダーは大きな声で全員を居室に戻らせた。皆、自習室に入って、明日使用する教科書やノートを鞄に詰める。そして、干している制服や下着、柔道着や剣道着を纏める生徒たちもいた。皆が明日から元の日常に戻ることを祈り、明日に備えている。そして、準備が整った生徒たちから部屋の電気が消え始める。
翌朝
スズメの鳴き声が静かな寮に響き渡る。
木村はその鳴き声で目が覚め、目覚まし時計を見つめる。まだ起床時間の前に起きていた。木村は目をこすりながらパジャマから教場運動着に着替える。そして、廊下を出てトイレや洗面所がある所へ足を運ぶ。顔を洗い、歯を磨き、髭を剃る。毎日繰り返している作業を丁寧に行い、部屋に戻る。時計に目をやると、まだ起床時間まで時間があるようだった。木村は布団のシーツを掴むと皺を取るために力強くマットレスの裏側へ引っ張る。皺が消えるまでただひたすらこの作業を行う。この寮には居室点検があり、生徒たちが寮を出ている間に寮の監視を務めている教官が生徒たちの居室に入って綺麗になっているかの確認を行う。以前、彼はベットに皺が残っていたことが理由で、居室に戻るとベットが1人でに立っていた。木村はそれを避けるために誰が見ても綺麗な状態を作り上げる。数分後、起床時間のチャイムが学校全体に鳴り響く。全員のドタバタ音が聞こえながら、木村は帽子を被って靴を履く。そして、朝の点呼に向かう列を作るために最前列で待機する。
「木村、めっちゃ行動早くて羨ましいよ」
1人のクラスメイトが羨ましがるのを見て、木村は笑顔で返す。そして、すぐに真顔に戻る。いつもの日常が戻るだろうとその日は思っていた。気がつけば、ほとんどの生徒が準備ができたのか、木村の後ろに並び始めた。リーダーと副リーダーが前に出て、人数を確認する。そして、みんなで点呼の待機場所へ移動を開始した。
待機場所に到着すると、他の教場の生徒たちも既に点呼開始の合図を待っていた。
「おはようございます。まだ点呼の合図とかってないんですかね?」
リーダーが他の教場の生徒に聞いてみるが、その生徒は首を横に振り、リーダーは困った顔をした。
「みんな、できる限り無言で貫こう。私語は謹んで!」
みんなで待機場所で無言で直立不動で待機する。他の教場の生徒たちはまだ少し騒がしいところもあるが、木村たちの教場を見て、皆が静かに待つようになってきた。無言で全員が動きをとめ、待機場所の場所が空いているところに他の教場の生徒たちも入って皆無言で合図を待つ。
「おはようございます!」
「おはよう。」
前の教場の生徒たちが大きな声で挨拶をする。教官が来たのが一目でわかり、全員に緊張が走る。そして、目の前に教官が歩いてきた。
「おはようございます!」
リーダーがの声と共に、全員が大きな声で挨拶をする。教官は寝ていないのか、冷徹な目の下に少しクマができている。通り過ぎて、他の教場の方へと歩いて行った。
少し時間が経った頃、準備ができたのか、他の教場の生徒たちが歩き始める。木村の教場も後ろに続いて歩き始めた。一階に降りると、外で点呼の整列をしている生徒たちが経っていた。蝉の音が聞こえ、蒸し暑さを覚えながら、木村たちも外に出る。
「〇〇教場!駆け足、始め!」
他の教場の生徒のリーダーが大きな声で言うと、その教場の生徒たちが駆け足の姿勢をとり、その場で足踏みを始める。そして、点呼の位置へと移動を始めた。気づけば、木村たちもリーダーの声が鳴り響き、駆け足を始めて、点呼の位置へと走る。全教場が揃い、1人の教官が登壇する。
「おはようございます。現在、外で同じ体調不良を訴える人が続出していると言う話を聞いているだろう。一夜が経過して、事態は深刻になっている。家族が体調不良になって病院へ搬送されたと話をいろんな生徒たちから聞いた。今、日本全国だけでなく、他の国でも同じ現象が起きているようだ。この学校でも外と同じ体調不良者を増やさないためにも、マスクや消毒を徹底するよう心がけてほしい。私からは以上になります。」
教官が降壇すると、解散の合図が走る。木村たちの教場も後を向いて、寮の玄関口まで走る。戻ると、各居室に向かって走る生徒や掃除用具を持って各掃除場所へと歩き始める。木村は学校の正門まで歩き、正門に落ちている落ち葉や砂を竹箒で履き始める。自転車で通勤してくる教官や車で通勤する教官、近くの駅から歩いてくる教官もおり、全員に挨拶をしながら、黙々と掃除時間が来るまで正門付近を綺麗にする。木村やクラスメイト数人で一箇所に落ち葉や砂を回収し、廃棄場所まで持っていくと同時に掃除時間も終わりを迎えていた。皆で歩いて寮へと戻る道中だった。
「な、なんだあれ。」
1人の生徒が木村の後ろの方向へ指を刺す。木村たちも振り返ると何か緑色の霧のようなものが風に乗って学校に向かって迫り始める。木村は嫌な予感が走り、「逃げるぞ」とクラスメイトに声をかけ、そばにある教場がある校舎へと走る。大きく重いドアを開け、5人が入る。それと同時に緑色の霧のようなものが学校を覆い始める。他の生徒たちも皆異色のものを見て逃げようとするが、ほとんどの生徒たちが逃げ遅れた。
「だ、誰か、、あけ、、あけて、、、」
霧の向こう側からドアを叩く生徒たちが押し寄せる。木村たちは恐怖と驚きで体が固まり、助けようにも体を動かすことができなかった。時間が経つにつれて、外にいる人たちの声が聞こえなくなり、木村といた他の生徒の1人は腰が抜けて呼吸が荒々しくなっていた。
「い、一旦、きょ、教場に行こう。」
木村はクラスメイトたちに声をかけて、階段を登り、教室へと入る。教場まで1時間かかったかのように感じるほど、木村たちは先程の出来事でなかなか体が動かせなかった。教室の窓から外を伺うと、全くと言っていいほど、見えなかった。緑色の霧が視界を塞ぐほど濃く、晴れる気配もなかった。外はどうなっているのか、同じ教場の生徒たちは大丈夫なのかが全くと言っていいほど、外の情報だけではまだわからなかった。
『こちら、職員放送室から。現在学校内に原因不明の霧が発生しております。生徒については、寮の居室にて待機しなさい。校舎に避難している生徒は各所属教場に入り、そこで待機しなさい。以上。』
放送が鳴り終わると、木村はクラスメイトと一緒に外の光景に釘付けだった。
「木村、橋口教官たち、大丈夫かな。」
「外で清掃している時に、教官は見なかった。状態はわからないね。」
1人の生徒が話しかけると、木村は被っている帽子を深く被って話す。すると、廊下から誰かが歩く音が聞こえる。木村たちが振り向くと、そこには御前田教官が立っていた。
「おはよう。教場に避難しているのは君たちだけか。他の生徒たちは、、、全員が寮に避難していることを祈るしかないね。」
「教官、大変恐縮ですが、他の教官たちも、、、」
「残念だが、全員揃ってるという話ではないな。」
そういうと、御前田教官は無線を取り出して、人数の報告をしていた。腰には交番に立っている警察官と同じ装備をして他の教場の方へと歩き始めた。拳銃や手錠を携えるくらい、教官も心の余裕がないようだった。
「木村、今日は授業どころじゃないよな。。。」
「うん、というか、僕ら授業受けられるような服装に見える?」
「いや。。。」
御前田教官の背中を見ながら1人のクラスメイトが木村に問いかける。木村は即答で、今の状態を軽く聞き返し、霧が晴れるのを待つ。
時計の針が10時を回った頃、外の光景も少し見えるようになってきた。外を見ると案の定逃げ遅れた生徒たちが倒れていた。助けに行こうにも外が助けられる状態かわからないため、みんなが窓から覗く。口を開けて倒れている生徒たちが行進場で倒れている。また、寮のガラス窓のところにはたくさんの生徒が積み重なって倒れている。木村はこの光景を目の当たりにし、自分たちだけが助かったという罪悪感と吐き気が迫ってくる。
「ちょっと、トイレ行ってくる。」
木村はそう言って1人トイレへと向かう。トイレで苦しいものを出し切ろうとしたが、なかなか出し切ることができない。罪悪感や吐き気と共に今度は恐怖感が背中を上り始める。足がガクつき、無力の自分を情けなく感じてしまった。しばらくして、彼は教場に戻り同じ教場の生徒と一緒に外の光景をずっと眺める。
霧が本格的に晴れ始めて数十分経った時だった。倒れている人たちの体が痙攣を始めた。無事であった教官たちが救助にあたろうと担架を持っていっているが、倒れている生徒たちはずっと痙攣をおこし、教官たちはその生徒たちを抑える。それでも、力が強いのか教官たちも手に負えていない状態だった。
「おい、あれ。なんか変なものが生えてないか?」
1人のクラスメイトが指差す方向に痙攣が止まり、意識が回復したのか四つん這いになっている生徒がいた。だが、尾てい骨あたりに何か黒いものが生えているように見え、教官たちも気づいたのか急いで駆け寄った瞬間だった。
「うわ!!!!!」
近づいていた教官が大きな声を出して腰を抜かす。木村たちも窓から見ていると、その生徒の顔は明らかに人間ではない顔をしていた。何か犬のような骨格、耳。だが、その生徒は涙を浮かべているのか泣いているような姿が見てとれた。すると、寮の窓に積み重なっていた生徒たちも徐々に尾てい骨付近からいろんな種類の俗に言う尻尾のようなものが生え始め、動物のような顔で教官たちのもとへ歩き始める。みんな泣きながら、教官たちに近づく。
「お、お前ら!全員動くな!動くなよ!」
1人の教官が警棒を取り出し、牽制をする。それでも、他の生徒たちは助けを求めるかのように教官たちに近づく。教官は仕方なく、担架をそのまま置きっぱなしにして全員が避難する。すると、助けを求める存在がいなくなり、校舎の窓を見始める。そして、木村たちと目があい、人の手ではなくなった手で『たすけてください』とヘルプサインを出し始める。木村たちは急いでカーテンで閉めて、これが夢であることを皆が祈り始めた。
どれくらい時間が経ったか、木村は朝ごはんも食べず、昼を迎えようとしているのに気がついた。腹が減り始め、クラスメイトたちもお腹をさする。
「お腹すいたね。」
「だな」
緊張がずっと走っていたため、疲労感も感じるようになり、皆は会話も短くなっている。教官たちも疲弊しているのか、歩いてくる気配すらない。木村たちはこの事態が一刻に早く鎮まることを祈り、腹の減りを紛らわすために洗面所の水をがぶ飲みする。他のクラスメイトたちや避難していた別の教場の生徒たちも同じ考えなのか木村と同じように洗面所に向かって水をひたすら飲み始める。
腹が少し膨れら感覚を持ち、昼、そして、夕方まで教場で待機する。少しカーテンを捲り、外の状態を確認しようとする。それでも、外の光景はあまり変わっていない。完全に人間でなくなってしまった生徒たちが彷徨っている。中には寮の玄関口で避難している生徒たちと対峙している場面も見えた。木村はここからどうやって外に出ようかと考えながら、クラスメイトたちを見る。
「お前ら、誰も欠けてないな?これ、備蓄しているやつだ。少ないだろうが、食べて力つけろ。必ず助けは来るはずだから。」
教室の扉が勢いよく開くと御前田教官が大きな段ボールを持ってきた。他の教場の生徒たちにも配っているようで、何人か手伝って欲しいと呼びかけがあった。1人のクラスメイトがこれに応じ、御前田教官と一緒に備蓄品があるところへと走って向かう。久しぶりの食料を見て、みんなの目に光が戻り始める。段ボールを開けると中には乾パンと書かれた缶が入っており、教室にいる人数には多すぎるくらいの量がそこにはあった。皆、1人1個取り、残りの物はロッカーの上に置く。缶の蓋を開けて中の匂いを嗅ぐ。クラッカーのような匂いが鼻に入り、涎が止まらなくなる。皆、急いで食べるかのようにひたすら黙々と乾パンを食べ始める。時間はもうすぐ、夕陽が綺麗に見える日没になる手前の時間帯だった。
夜になり、校舎の明かりが着き始める。外を見てみるともう彷徨っている人間ではなくなった生徒たちの姿がどこにもなかった。そして、御前田教官の手伝いで行ったクラスメイトが戻り、外の人たちをどうしたのかを木村たちに教えた。どうやら、御前田教官は武道場の校舎を開放し、人間でなくなってしまった生徒たちを一時そこで待機するように放送を流したようだった。1週間分の備蓄品を武道場の校舎の玄関口に設置し、自動ドアを開放して、生徒たち全員を中に収容することができたようだった。また、寮にいる生徒たちにも備蓄品を渡し、変な争いが起きないように済ませたようだった。そして、19時を回ったら、校舎にいる生徒は寮に避難するように指示が出されたとのことだった。
約束の時間になり、木村たちは朝から来ていたジャージ服を着直して、廊下にクラスメイトたちを整列させた。みんなが無事であることを祈りながら、木村たちは一歩一歩静かに歩く。外に出たら、まだ何が起きるかわからない。それでも、彼らは校舎の玄関口の立ち、寮に帰るための一歩を踏み出す。外はすでに日没し、暗くなり始めていた。空は綺麗な星が見え、月は満月だった。木村たちはそれすらも気にせずに寮へと歩き始める。外は生暖かく、少し蒸し暑い。寮の玄関口が開くと、避難していた生徒たちがお出迎えしてくれた。その中には、リーダーとクラスメイトたちの姿が見えた。だが、そこにいた人数は8人だけだった。
「木村、お疲れ様。今日はベッドでもう寝な。」
リーダーは少し暗い顔をしながら、校舎に避難していたクラスメイトたちが無事であることを安堵して、休息をするよう促す。
「リーダー。他のみんなは?」
「ぐっすり寝てるよ。あまり気にしないで」
そう言って、リーダーは木村の居室まで連れて行き、「おやすみ」といって扉を閉めた。
木村は明日は平常通りで、今日はただ悪い夢を見た影響だと考えながらベットに横になる。しかし、これから多くの苦難の壁にぶつかることを彼はまだ知らない。
-1話 完-
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