残念だ。不覚にも生き残ってしまった。
しかも、本当に現実であれば今までの人生の中での幸運?に見舞われてのことだ。
なんせファンタジーの世界にしかいない龍に助けられて生きている。
幸運通り越して凶運なのではないだろうか。
「その、ナインさん。どうやらあなたに助けられて私はここにいるみたいなのですが、本当に死にたかったので、本当に助けていただけるのであれば殺してくれませんか?
あ、いや、痛くない方法でお願いします。一思いに潰して、何なら確実に死ぬ高さから再び落として頂いても。」
「私は退屈している。」
「は?」
「だから、退屈している。君はなぜこんな面倒な労力をかけて死のうとする?私がせっかく助けた命、そんな無下に捨てようとしなくてもいいのでは?
そこで、君は私と帰りの旅の道連れに付き合ってもらう。
なに、君はどうせ捨てようとした命だ。私がどう扱おうと構わないだろ?命の恩人なのだから。」
この龍の理屈や私の気持ちなど無視した発言に、説明しても無駄なような気がして発言する気力も失いかけたが口を開くことにしよう。
「私は、その面倒な労力をかけて死ぬのと、これからへいこら生きながられるので自分の中で天秤にかけた結果、死ぬことを選んだのです。
何もない自分に辟易としたので、できればこのまま死なせてはくれないで…」
「断る。 君には選択肢などない。この私に直々に助けてもらった身。君はすでに私のものなのだ。まだその口で殺してくれと面倒なことを言うのであれば、はるか昔、龍が人間に行ったとされる拷問を使って望み通りじわじわと殺してやってもいいのだぞ?」
「痛いのは勘弁してください。」
「なら黙ってきくのが懸命だね。」
本当に痛いのは勘弁である。
しかも、だんだん混乱が解けてきたからか、冗談ではなく本当に驚いて失禁したズボンがジメジメと気になり始めた。
「すみません、さっき、君は私と帰りの旅の道連れに付き合ってもらう。っておっしゃってましたけど、帰りとはどこまで…?」
「そうだね。ここからはるか遠い平原までかな。人間だとどれくらいかはわからない。結構としか言いようがないが…。なに、死にやしないさ。きっと平原についたら君も死のうとは思わないだろうね。どこまでも広がる空に爽やかな草原。一度寝転がると動きたくなくなるぞ!ただ、退屈だがね。」
「はぁ。」
「そうと決まれば君の旅支度だ!」
龍は何やら唱えたと思えば、シュルシュルと人間ほどの大きさに縮み、最後には私より少し背が高い女性へと変わってしまった。
背中の翼と何も身に付けていないこと以外は。
見た目は肩ほどの短い髪に深緑の髪色に真紅の瞳の女性だ。
「これであれば君は怖がらないだろうか?男より女の方が攻撃的ではないしな。」
「それより何かきてください!目の置き場が困ります。」
「おお、そうか。暫くぶりで忘れてた。よし、これでどうだ。」
そう言うとワイシャツにジーパンと何やら私の好みをくすぐるような格好になった。
「これについでに眼鏡を掛ければいいかね?」
「好きにしてください。って、人間は久しぶりなのではなかったのですか?やけに現代的というか。」
私好みというか。
「いやなに、チラリと街の様子も見に行っていたのでね。シンプルがいいであろう?いま、君にしか私の姿は見えていない。どうしてそうなっているか聞かれてもそういう摂理しているとしか私も伝えられない。ので翼は残してある。
これで君の支度やらなんやらを飛んで移動できるぞ。買い出しに行くといいかもな。人間らしい道を通るばかりではないのでな。そうと決まればいざゆかん!!」
ガシッと腰のあたりから問答無用で抱き抱えられ、ビュンと音がしたと思えば空の上だ。