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彼女から離れられない

  ※扉の開く音

  お帰りなさい。

  今日もお仕事ご苦労様。

  ……大丈夫?疲れた顔してるよ。

  ……平気?むー、そう言ってすぐ無茶するでしょ。

  私がいるから頑張れる?

  でも、倒れたりなんかしたら私は心配する。

  だから、無理せずに休める時はちゃんと休んでね。

  とりあえず、シャワー浴びておいで。

  体の汚れを落とせば、さっぱりして気分も良くなるだろうしね。

  ※少し間を開ける

  ※針の音

  またお弁当?体に悪いよ。たまには自炊したら?

  ……私が作ってあげられればいいんだけどね。

  そうだね。仕方がないね。

  でも、さっきも言ったけど君の体が心配なんだから。たまにはちゃんとしたご飯食べてね。

  あ、その唐揚げ美味しそう。

  食べるって……もー、食べられないってわかってるでしょ。

  意地悪だな。ふふっ……

  ※少し間を開ける

  眠くない?

  ……そう……

  ……ねぇ、いつになったら私を解放してくれるの?

  いつになったら私を離してくれる?

  ダメだよ。いつまでも……死んだ人に縋ってちゃ。

  ここにいる私は、私じゃないんだよ。

  体のない、いわゆる幽霊。

  君が、一歩前に進まない限り、私は君のそばを……この家から出られない。

  ……そうじゃない。君が嫌いとかそうじゃない。

  私がずっとここにいれば、君は前に進んでくれない。

  忘れて欲しいってわけじゃない。

  今の私は幽霊で、君に何もしてあげられない。

  お風呂の準備も、ご飯の準備も。

  君に触れて癒すことも、何もできない。

  ただいることしかできない。

  ……君はそれでいいかもしれないけど、私は嫌なの。

  それに、このままじゃ君倒れてそのまま死んじゃうよ。

  私はそれが嫌だ。

  私は知ってるよ。君は、ちゃんと私の死を受け入れて前に進める人だって。

  死者を引き留めてまで、過去に縋る人じゃないって。

  大丈夫、私は君をずっと見守ってるよ。

  君が死んで、一緒に生まれ変わって、また出会って、好きになって……

  今度こそ結婚して、子供作って、一緒におじいちゃんとおばあちゃんになる。

  ……うん、約束。私、約束破ったことないでしょ。

  だから、ね。

  ……愛してる。誰よりも……貴女のことを

  ※リップ音

  ※消える音

  ※時計の針の音

  【完】

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