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ミノカ・イナヅカが目を覚ました時、そこは、彼女が全く知らない場所だった。
薄暗い洞穴と思しき内部は異様な蒸し暑さに満ちており、眼前には一人の人間の少女を囲う形で複数の猫型モンスターたちが犇めいていた。
助けなければならない、と直感したミノカは、半ば無意識に腰に差した短剣を抜き、身構える。
モンスター、という判断は間違っていないと示すように、彼らのうちの一体が襲いかかってくるが、彼女は素早い動きで腕を振るうと、あっけなく撃破された。
一撃で、結晶の光に返った仲間を目にした他の者たちが、うるさく喚いたかと思えば、その後の行動は二つに分かれた。一方は、襲いかかり、そしてもう一方は蜘蛛の子を散らすように逃げ去っていった。
だが、数の暴力もものともせず、短剣を振るうミノカは、軽快に彼らを相手取り、苦戦することなくそのまま撃破してしまった。
「ええと、アタシはミノカ・イナヅカって言うんだけど……とりあえず、ここがどこか教えてくれない?」
華麗な空中振り下ろしによって、最後の個体を撃破し、スタイリッシュに降り立った乱入者は、呆気にとられる少女に困ったような笑いを浮かべながら、蹲っていた少女ーアナに手を差し伸べたのだった。
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1
助けた少女の名は、アナと言った。栗毛色のウェーブヘアが目を引く15歳の少女は、非常に大人びた振る舞いが板についた冷静な娘だった。
助けられた場所では、追っ手が来るかも知れない、という理由で場所を変え、自分の家まで案内してくれた。
しかし、そこでミノカは、アナの自宅にあった全身鏡を目にして、両手両膝をついてがっくりと項垂れた。
「……身長が低い、というか小さくない? なんで?」
鏡に映るのは、10代前半の少女。ただベリーショートの金髪は、少女というよりも少年のようなボーイッシュな印象を与え、若干気の強そうな目つきをした赤色の瞳とあいまって、同世代の男の子たちと一緒に遊んでいそうなやんちゃな風貌だ。
恐る恐る口角を上げてみると、目つきの強さに反して、その笑みは愛らしい。他でもないミノカ自身が思わず見惚れてしまうほどだった。
なるほど、容姿に関して文句のつけようがないほどに整っている。これ以上を望むのは贅沢というものだろう……しかし、やはり外見に恥じない低身長には不満が残る。
異性の心を弄び、傾国すらも夢ではない絶世の美女とまでは期待していたわけではないが、どうにも自意識とのギャップに戸惑ってしまう。
身に纏うのは、小柄な体格をぴったりと覆うフード付きローブだ。上下一体の無地、白一色であるのは退屈だが、着心地は動くまでもなく快適で、肌触りからして生地も上質なものが使われていることが容易に想像できる。裾は広く、動きやすいように太腿の辺りに切れ込みが入れられていて、腰にはベルト式の鞘に収ま
った短剣が装備されている。
先の戦闘では、ほとんど意識していなかったが改めて容姿を確認すると、記憶とはあまりに乖離すぎているので、ショックが大きすぎた。
「あんなに自信満々だったのに、身長一つでそんなにヤキモキしなくたっていいのに」
「なんか、落ち着かないのよ。前世のアタシは、絶対こんな低身長なんかじゃなかったんだから、身長を伸ばす魔法とかない?」
「すみません、私は魔法には学がないものでして……というか、前世、ということは、貴女はやはり転生者の方、なのですね」
特に驚きを示すことなく、転生者という結論を口にしたアナに、どういう反応をすれば分からない、といった風に、頬を掻いたミノカは、きまりが悪そうに肯定する。
「あ、うん。そうなんだけど、驚かないのね」
「いえ、転生者の方であれば、あの強さも納得ですし、転生者、というのは珍しいですが、決していないわけではありませんから。遅ればせながら、この世界ーエスティアルにようこそ」
どうやら、この世界はエスティアルという名前らしい。しかし、それ以上に重要なのは、彼女が他の転生者の存在についても認知している、ということだ。
「へえ! そうなんだ、じゃあ、アタシ以外の転生者もいるのかな!」
「ご、ごめんなさい。私が会ったことのある転生者は、ミノカさんが初めてなんです。なぜか、皆すぐに行方不明になってしまうので」
行方不明とはまた物騒な話だ。アナの答えに、思案げに考え込むミノカは、行方不明の話について後回しにしつつ、新たな疑問を口にする。
「んーでもどうしてこの世界に召喚されたのかしら? 記憶が無くて、全然思い出せないのよ」
「転生者の方々が、いらっしゃる理由は様々ですが、召喚は常に偉大なるお方によって行われます。その際には必ず契約が取り交わされているはずです。なにか心当たりのあるものを持っていませんか?」
アナに言われて、しばらくの間、ミノカは、自分の服のポケットを弄って探し、やがてそれを見つけた。
「……ひょっとして、これ?」
ミノカが発見したのは、一枚の巻かれた羊皮紙だ。『契約依頼書~ソドム商連発行』と書かれている。
『
名前:ミノカ・イナヅカ
役割:救世主
転生先:サラマパンドラ
報酬:地球への帰還
』
極めて大雑把で、最低限の内容しか書かれていないが、現状を把握するには十分だ。
「救世主ねぇ。そんなことを言われても何をすればよいのやら……何か心当たりはある? ひょっとして、さっきアタシが撃破したモンスターが関係していたりするかな?」
「分かりました、お教えます。私が知る限りのことを」
そう言って、アナは話し始めた。
まず、この街の名前は、オアシス地下都市『サラマパンドラ』。特殊な結晶が多量に産出される都市である。そして、この街は、モンスターと人間の上下関係が逆転している。支配種として、位置づけられるのは、先程ミノカが蹴散らしたプリズムキャットと呼ばれる猫型モンスターだ。
アナは、この街に生まれた時から住んでいるとあって、街の表も裏や、その歴史を知り尽くしている。つまり、先程彼女は、プリズムキャットによって襲われ、あまり口にしたくないようなことをされかけていた、というわけだ。
「この街では、それが普通なの?」
「え、ええ……そう珍しいことではありません。何とは言いませんが、その……そういうことは、私が生まれたときから、日常生活の一部ですし」
ふざけた日常生活だ。
ミノカは拳を握り、見るからに清廉そうな少女が、口にしたくもないような行為を強要されている、そんな現実が当たり前に罷り通っているという現実に、純粋な怒りを覚える。
そこに至るまでにはおよそ尋常でない背景があるのだろう、事実、アナはそのことについてあまり語りたがる様子はなく、色々あったんです、という一言で済ませてしまった。
「対抗手段はあるでしょ? 貴女が会ったことなくても他の転生者たちが召喚されているなら、アタシ達みたいな救世主の役割を持った人たちが抵抗するはず」
「……ステータス画面についてお話します。生まれたときから、私達の能力は、数値で定められているんです」
アナに言われた通りに、ミノカは自身のステータス画面を開いた。
展開された画面には、多くの情報が記載されている。ミノカ・イナヅカという名前、年齢12歳といった基本的な情報が筋力やら知力やら、魔力やらの数値ステータスも表示されている。とはいえ、全ての値がバラバラなので、この世界の基準のどの程度に値するのかは定かではないが。
「ね。良かったら貴女のステータスも見せてくれないかな。アタシじゃ、ここに書いてある数字が強いか弱いかよくわかんないんだよね」
「ど、どうしても見せなければなりませんか?」
なので、ちょうど目の前にいる一般人代表のアナのステータスで比較対象にしようとしたのだが、何やら気が進まない様子である。
「あ、じゃあ貴女のは見せなくていいから、これがどの程度なのか判断できないの」
見かねてミノカは、妥協策を出すとようやくアナはこちら側に回り、彼女のステータス画面を覗き込む。
「そこまで言うなら……って、これ凄いですよ。私の何十倍のステータスなんでしょう、しかも見たこと無いスキルまである、ひょっとしてユニークスキル?」
「なにそれ」
やはり、転生者仕様のステータスというのは、普通の基準からは大きく逸脱しているらしい。彼女は一つ一つの数値が、一般的な人間のステータスから遥かに優れている、と断言した。
そして、これみよがしにユニークスキルと強調された『活力無尽』というスキルについて、指し示す。
タップしてみると、詳細を読むことができ一読してみた限りでは、このスキルの保有者は、肉体的な疲労が決して訪れることがない、と書かれていた。
「私、聞いたことがあります。ごく限られた、転生者のような特別な方にしか与えられない、世界に唯一人しか持ち得ないスキルがあるって」
「まるで、テレビゲームの世界に来たみたいね」
「テレビ、ゲーム、ですか?」
「ああ、ごめん。こっちの話。さて、ひとまず状況は分かったことだし、この街を解放するために動くとしますか」
「……え、この街を救ってくださるんですか?」
ミノカの口から飛び出した言葉に、アナは静かに驚いた。当然だ。街に長年暮らし、そして彼らの強さを知る者からすれば、今の内容は妄言にしか聞こえないだろう。
「アタシ、救世主なんでしょ? だったらやるしかないじゃない。そうしないと元の世界にも帰れそうにないしさ」
だが不安の目を瞳に浮かべるミノカは、特に気負った様子もなく、アナの疑問を肯定する。
ミノカとしても、救世主なんて言う大層な二つ名を喜んで背負うつもりは無いが、彼女から聞いた街の状況を耳にすれば、おおよその目的は察せられるし、知ってしまった以上見て見ぬふりをすることはできない。
「目立つ行動はしない方が賢明です。噂によれば、この世界に来た転生者は、さっきも言いましたが皆すぐに行方不明になります。特に、多いのが地球次元の転生者の方たちです。つまり、ミノカさんも例外ではありません」
「その前に奴らに狩られるって意味?」
「半分正解です」
「残りの半分は?」
「それは……言えません。私はそれについて知ることを許されていないので、教えようにも教えられません。しかし、この世界は、あんなモンスターなんかよりもずっと強くて、偉大なお方たちの支配下にある、ということです」
含みのある言い方だ。どういうことだろうか?
ミノカは追求しようとしたが、神妙な表情でアナが黙りこくってしまったので、それ以上は何も聞けなかった。
「今なら、まだこの街を脱出できます。私達のことを忘れて幸せになれる可能性があるかもしれません」
だが、それとこれとは話が別だ。諦めて逃げ出すよう促すアナに対し、ミノカは真っ向から反論する。
「貴女が怖がる気持ちはわかるけど、別にそんなんじゃビビらないよ。この街のみんなを解放したら、皆幸せになれるじゃない。街を出るのは簡単だけど、アタシは、自分にできることをしたいし、それにコソコソ逃げて隠れるのは性分じゃない」
「ミノカさん……!」
心打たれたアナは、彼女ならば本当に街を支配するプリズムキャットたちを打ち倒してくれるかも知れない、という希望を抱く。
「ふふ、感動するのは全部終わったあとにしよ。アタシは、知らないことが多いし、アナちゃんの助けはまだまだ必要になる。だから、お願い、協力してくれる?」
「はい、もちろんです!」
「そっか、じゃあ早速作戦会議でもーー」
「にゃ! にゃ! ここらへんにいるはずにゃ!!」
聞き覚えのある複数の気配と声が迫る。悪いタイミングで、追手がここを嗅ぎつけたのだろう。
人の言葉を話せるのか、と新たな情報を頭に入れ、ミノカは短剣を抜いて、襲撃に備えようとする。
しかし、それを押し留めたのは、他でもないアナだ。
「やっぱり、情報は共有されているみたいですね。ミノカさん、この家の裏口から貴女は逃げてください。私が彼らの気を引いて時間を稼ぎます」
「でも……!」
「安心してください。私のほうが、彼らの扱いにも慣れていますし、貴女の情報も決して漏らしません、これでも私、結構口が硬い方なんですよ、またお会いしましょう、救世主様」
強気に微笑んだアナの目には、紛れもない希望があった。
ミノカは、後ろ髪を引かれるような思いを覚えつつも彼女の期待と決死の覚悟を裏切るわけにもいかず、苦渋の選択をするしかなかった。
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2
家の裏口から逃走に成功したミノカは、路地裏の影に紛れるように、潜みながら今後の動きについて考えていた。
アナは、自分に希望を見出してくれていた。ならば、その希望に応えるのが、救世主としての役目だ。
しかし、先程のように、雑魚ばかり相手にしているだけでは何も進まない。
プリズムキャットたちがモンスターである以上、完全に駆除し尽くすというのは現実的でない。アナの情報によれば、彼らの数は、いつの間にか増えているらしく、長年この街に住み、街の情報や、世界について、非常に詳しい情報を提供してくれた彼女ですらも、新しい個体を目にすることは珍しくないのだという。そうなると、彼らがモンスターというカテゴリーに属しているというのを前提にすれば自然に誕生する妖精のような存在と推測できる。ならば、その場所を特定し狙い撃ちにしてもキリがないだろう。
ならばプリズムキャットというモンスターのボスを撃破するか。そうすれば、少なくともプリズムキャットが人間に逆らう可能性を減らせるかも知れない。敵の頭を取りに行くのは、ある意味王道中の王道とも言える。
「よし、これでいくか」
どうせ、このまま影で燻っていても、いずれ数の暴力によって組織的に駆除されてしまうだけだ。
ならば、こちらから先手を取って、行動を起こすまで。ミノカは、溢れ出る使命感を胸に、路地裏から、情報収集のため一歩足を踏み出したその瞬間、上空に影が差す。
突発的な奇襲攻撃に対し、地面に身を投げだすようにして、反射的に回避行動を取ったミノカが振り返ると、つい数瞬まで自分が立っていた場所に、鋭い爪を振り下ろす形で着地し、地面を抉るプリズムキャットを目にした。
「ようやく見つけたにゃ」
まるでネコ科の大型肉食獣がそのまま二足歩行を得たような姿は、高身長と、しなやかな脚線美が彩るスレンダーな体格のバランスが、羨むほどに完璧だった。チョコレート色の褐色肌は、局所部だけが簡素で露出の激しい黄金色のビキニスタイルで覆われ、思わず敵であることを忘れ、情欲を催しそうになる艶かしさを宿した官能的な肉体。
そして、人ならざる者としての特徴ーぴょこぴょこと前後する猫耳、左右に揺れ動く尻尾と含め、そこにいるのは、全てが無駄なく自然の存在であることを思わせる狩人だった。
どうしてこの場所を見つけられたのだろうか。
「にゃにゃにゃ。『どうしてこの場所が分かったにゃん!?』って顔してるにゃ。人間ってのは、すぐに考えていることが顔に出てわかりやすいにゃんね」
小馬鹿にするようなオーバーリアクションを取った猫の狩人には、明らかに人間への侮りが見られた。しかし、こちらに全く悟られることなく奇襲を仕掛けた手並みから分かる通り、油断できない相手に違いない。
ミノカは、いつでも戦闘を行えるよう短剣を引き抜いて身構える。
「……」
「あまり舐めないほうがいいにゃよ? あたし達はの縄張りでコソコソ隠れるなんて不可能。目も耳も人間なんかより、遥かに優れているんにゃから、それに頼もしい情報提供者もいたんにゃから」
情報提供者、とは誰のことだろうか。そこまで考えて、ミノカはもしや、と謎のプリズムキャットの片手に頭を摑まれる少女に目を向ける。
「……!」
乱雑に投げられた少女の髪は、特徴的な栗毛色をしていた。
アナだ。この街の情報を最も多く提供してくれた、ミノカが初めてこの世界で出会った人間だ。
「この街の人間に善意なんて期待するだけ無駄にゃ。こいつらには、人に助けられた恩を果たすよりももっと重要なことがあるからにゃ」
地面に這いつくばるアナは、犬のようにヒクヒクと鼻を動かしたかと思えば、鈍く身体を起き上がらせた。その目は、虚ろに揺らぎ、焦点が合っていないが、四つん這いで褐色肌の狩人の元へと
向かうと犬を思わす座り方で着座する。
「おい、人間。さっきあたしに教えてくれた情報をもう一回話すにゃ」
「は、い……アイツの名前は、ミノカ・イナヅカ、です……短剣を使って、プリズムキャット様たちに歯向かった、恐ろしいやつです! しかも転生者! 本人の口でそう言っていました! ステータスも普通の人間よりも遥かに優れていましたし、ユニークスキルも保有していて、間違いなくこの街にとっての危険人物、害悪に違いありません!」
「……!?」
命令されるがまま、何の躊躇いもなく自分の情報をペラペラと話したアナに、思わずミノカは唖然として言葉を失う。
口が固い、と得意げに宣っていたあの強気な微笑みは見る影もなく、街の解放に希望の光を見ていた瞳は失せ、ただただ軽薄で、浅ましい欲望に憑かれた光のみを輝かせていた。別人と言われたほうがまだ説得力がある。
「ほらにぇ? ここの人間は、全員こんなもんだにゃ」
情報を話し終えると、まるでご褒美を待ちかねる忠犬のように舌を突き出す、その姿はおよそ人間の扱いとは、程遠い姿に一種の嫌悪感すら浮かんでくる。
アナの頭に獣毛が生え揃う丸い掌を乗せ、こちらを嘲るように数度撫でた、かと思えばその髪を掴んで、後方へと投げ飛ばす。
「もう良いにゃ、ご褒美もくれてにゃるから、さっさとどっか行くにゃ、目障りにゃ」
倒れ伏したアナに向けて何かが入った小袋を投げると、即座に起き上がったアナは、それを両手で大事そうに持って足早に駆け去っていった。
「……とりあえずアンタたちが最低のクズだってことは分かったわ」
どうやら、自分が想像してた以上にプリズムキャットというモンスターはたちが悪く悪辣の極みのような存在らしい。
この街の人間たちは、ただ力によって支配されているわけではない。アナに与えられたあの小袋に入った「何か」によって、言葉にしがたいやり方によって、思考や意思をコントロールされてしまっているのだ。
「にゅふふ。同じ人間だからって、味方同士なんていう理屈はどこにもないにゃ、ましてや知らニャイ街の知らないやつなんて。それも分からない、おみゃはずいぶんお人好しで正義感の強い人間らしいニャンね。ここにいる連中とは違って、転生者だからかにゃ?」
「だったら何? 言っておくけどアタシは、アンタ達の言いなりになんてならないわ。転生者の力ってやつ、思い知らせてあげる」
「そうかいにゃ、ならアタシも仲間を落とし前、きっちりつけさせてもらうニャんね」
こちらが転生者と聞いても、大きな驚きを見せることなく、余裕を見せるプリズムキャットに対し、ミノカは油断なく、身構え、観察に務める。
彼女は、最初に撃退したプリズムキャットとは格が違う個体だ。
「こっちのセリフよ。貴女はさっき倒した雑魚達より歯ごたえがあると良いんだけど、せいぜい飽きさせないでよね」
しかし、強気に応じてみせるミノカにも、転生者としての絶対的な自信がある。ステータスという数値によって、力関係が決定されているのならば相手も同様のステージに立っているはずだ。アナを助けた際に戦ったプリズムキャットたちは、例えるならば最初の草原のスライムのように貧弱だった。動きは簡単に見切れたし、数でかかってきても何も問題がなかった。
故に、眼前の褐色プリズムキャットは、彼らよりも優れたステータスを持っていると仮定したとしても、敗北することはない。
しなやかで人間離れした脚線美の猫人は、ゆったりと両手を地につけた前傾姿勢を取ると、猫らしい柔軟性を見せつけるように、どこか厭らしささえ覚えるような艶めかしい動作で、頭から四つ足の指と、尻尾の先まで、残らず波打たせる。
体色と同化しているような獣毛が、キラキラと日光に当たったかのように輝く。
その瞬きに目を奪われたのは、ほんの一瞬、まばたきをするかしないかの刹の合間に過ぎなかった。
「ふぇ?」
しかし、次の瞬間には、ミノカは顔面を摑まれて、身体を宙を浮くのを認識し、そこで初めて眼前の脅威が遙か格上であることに気づき、頭が真っ白になる。
そして、そのまま容赦なく後頭部を凄まじい勢いで地面に叩きつけられてしまい、突き抜ける痛みによって、彼女の意識はそこで途切れた。
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3
「う、ぁ?」
ここはどこだろう。
ぼんやりと視界が明瞭になっていく最中、ミノカは、ローマのコロッセオのようにドーム状のアリーナ、の中心で横たわっていることに気づいた。
見回してみれば、多くの獣猫たちが腰掛ける観客席は満員御礼。洞窟出身の種族であるためか、全体的に青や黒といった異質の肌色を持ち、共通して猫耳と、尾を持つ彼らは、特徴的な鳴き声で大合唱を響かせている。
「おはよ〜にゃ、ちびっ娘。ぐっすりおねんねしてたから、裸に剥くのは、とても楽だったんにゃんよ、威勢が良かった割にゃ、あっさり負けて、くすくすっ、おみゃは、一体全体何がしたかったんだにゃ」
そして、眼の前にいるのは、あろうことか因縁の相手だ。ミノカを気絶させ、このコロッセオに運んできたであろう長身のプリズムキャットだ。チョコレート色の褐色肌をした彼女は、装備を剥かれ、肌着すらも身に着けていない、仰向けのミノカに馬乗りになり、今にもアクビをしそうな眠たげな表情を浮かべ、見下ろしていた。
俗に、獣人とカテゴライズされるような亜人の形態とは異なり、人肌のような柔らかな質感を残しつつも、サラサラとした獣毛に覆われた、しなやかな肢体は、密着態勢ということもあって、その肌触りを、そして、冷たい体温を、ミノカの肌に、じんわりと浸透させるように伝えてくる。
身ぐるみ剥がされ、抵抗手段を奪われた。さらに、こんな場所にわざわざ連れてきたのは、自分の仲間たちに公開処刑として辱めを受けさせるため、に違いない。
ミノカは、性悪な狩人の目論見にいち早く気づき、だがこの程度で負けを認めるわけにはいかない。転生者として、そしてこの街の救世主として召喚された自分には、果たすべき使命があるのだから。
「う、うるさい! あれは、ただ油断しただけでアンタなんか、すぐに、い、っ……! っ、んがぁっ!?」
そう意気込んで、紡いだ反論の言葉は、途中で途切れた。跳ね起きるように、上体を起こそうとしたミノカは、その機先を制され、額がデコピンで打たれる。頭蓋骨が震えるような痛みに悶絶しそうになるも、尚もめげずに起き上がろうとする彼女に対し、褐色の猫は、その小さな口と顎に、五指を添え、再び後頭部を乱暴に地面に叩きつける。
「ーーっ、は……!」
ミノカは気絶こそしなかったが、意識は間違いなく一瞬飛び、今度こそ沈黙して大人しくなる。されど、涙ぐみながらもキッと睨み据える瞳には、まだ抵抗の意思が強く残っていた。
「にひひっ、まだそんな目ができるにゃんて、にゃかにゃか根性のあるちびっ娘だにゃんーーなんにゃ、アタシの掌を噛むなにゃ、そんなことされても別に痛くにゃい……っち、やっぱ嘘にゃ、人間風情が生意気にゃん」
指先に歯を立てる。
傍目から見れば、口輪を掛けられた猛獣のように拘束されたミノカにできた渾身の抵抗は、効いたらしく顔を顰めた猫。それを見て、掌の下で快心の笑みを浮かべようとしたミノカだったが、次の瞬間、強烈なビンタが頬を打ち、彼女は、今度こそ気絶しそうになる。
だが、プリズムキャットはそれを許すことなく、髪を乱暴に掴んで頭を揺さぶって、意識を強引に繋ぐ。
「よく聞くにゃ、ちびっ娘。おみゃは、あたしに負けたんだにゃ。だから、口答えや生意気したりしたら、おみゃの命なんて簡単に始末できるんだにゃん、そのことを忘れるんじゃないにゃ」
「うる、さい……ちびっ娘、じゃ、ないもん……アンタみたいなモンスターと違って、名前、あんの、よ……ミノカって名前が、ね」
「ほ~ん、ちびっ娘にしては、上等な名前にゃんね、ま、アタシもシェーリファーって名前があるにぇけどね」
シェーリファーと名乗った
さて、ミノカ。どうするにゃん? おみゃはまだまだ
お互いに自己紹介を済ませて、仲良くしたいと思ってるにゃんけど、どうやらおみゃは、そのつもりはなさそうにゃんね
「当たり前じゃない……! アタシはまだ、負けてないんだから」
「にゃはは、口の減らないメスガキだにゃ~。いいにゃいいにゃ、そっちの方がいたぶりがいがあるし。じゃあちびっ娘ミノカに」
猫を思わす縦長の瞳が、嗜虐心を垣間見せる
「ふぅ、少し痛い目みてもらう必要があるみたいにゃんね。ここの掟をその小さな体に教えてあげるニャんよ」
わざとらしく、大げさなため息を
「っ、小さいって言うな! くそっ、今に見てろ、あんたなんか、すぐにひっくり返して、痛い目見せてやるっ!」
「にひひ、できるもんなら、やってみるにゃよ。ちょっと手加減してやるから、試してみると良いにゃ」
地面に抑えつけるような負荷が僅かに緩んだ。
好機だ。後悔させてやる
数分後、依然としてマウントポジションで上に跨るシェーリファーから逃れられず、その下で、両手を大の字に広げて息を荒げるミノカの姿があった。
周囲のプリズムキャット達は、先よりも一層嘲笑を深め、なーご、なーごと特徴的な声で鳴いている。
ミノカは、活力無尽のスキルに物を言わせ、ちびっ娘とバカにされた矮躯でも全力で暴れ、そして抗った。
しかし、想定した以上に、彼女との体格差からなるディスアドバンテージは、致命的だった。
どう足掻いても、細くしなやかな両脚の拘束からは、抜け出すことができず、それどころか、まるで初めから勝ち目など用意されていなかったかのように、シェーリファーは、あらゆる抵抗の動きを完封してのけたのだ。
いくら疲労という概念が存在しない肉体であるとは言え、心が軋む。いや、もはや折れている。
ミノカの頭は、もはや眼前で自分を悠然とあしらった、魔猫を完全に格上だと位置づけてしまって、
転生者としてのステータス優位すらも満足に活かせない。いや、本当に自分が転生者たることにすら疑念が生じ、ろくに身体を動かせなくなっていた。
あくびを噛み殺しているようなシェーリファーの表情、その視線は、まさに下等な生物を見下ろすそれだった。
無力感が心を苛み、恐ろしさに身が竦む。今まで自分が持っていた自信や尊厳などが、グズグズに踏みにじられていくような痛みが、ミノカを襲い、彼女は自然と涙を流していた。
「ひぐぅ。こんなのぉ、おかしいよぉ……わたしぃ、てんせいしゃ、なのにっ、救世主っ、なのにっ、なんで、なんで、こんなっ……こんなふうに、ひどいこと、されないと、いけないのぉ……!」
そして、コロッセオの座席に座っている複数のプリズムキャットが観戦していることにも構わず、情けなくメソメソとすすり泣きを始めたミノカを見て、しばし呆気にとられた様子だったが、シェーリファーは程なく、口角を歪ませて笑う。
街の人間を飽きるほどいたぶり、嬲ってきたが、この少女は、そのどれとも違う優越感を湧き上がらせてくれる。モンスターとして生を受けたが故に、宿す野性的な本能の領域に嗜虐心が、くすぐられ、仮初の仮面が崩れ、年相応の少女としての顔を晒したミノカを、さらにグチャグチャにしてやりたい。
「おかしくなんてないにゃよ〜人間に、モンスターは勝てないって理屈はこの世界じゃ、全然珍しくないにゃ、だから素直に認めるんだにゃ、おみゃえは弱くて、未熟な、ただのちびっ娘だってことに」
そんな欲望に従い、シェーリファーは、子どものように泣き腫らす哀れで可愛らしい少女に覆いかぶさって、その涙をペロペロと舐め、優しく、毒を流し込むように慰める。現実に打ちひしがれて絶望したミノカにはその言葉を受け入れることしかできなかった。
「わたし、は、よわ、い……み、じゅく、で、ただ、のちびっ娘……」
しかし、従順に言葉を繰り返したのは、決してミノカ自身の意思だけによるものではなかった。狡猾な雌猫は、彼女の頭に手をかざし、人間の精神を幼児退行させる魔法をかけていたのだ。モンスター由来の魔法特有の紫色の光に包まれたミノカは、洗脳と同等の状態となる。
「そう。にゅふ、ちゃんと認められて偉いにゃ。あたしは、初めからできるって思ってたにゃけど、ね」
ここまでやれば、もう逆転の目は一切ない詰みだ。
召喚されたばかりの転生者にしては、かなりよく持った方ではある。遭遇したのがそれなりに若い個体だったことも災いしてしまったのだろう、もとよりこの世界での人間とモンスターの力関係はほぼ絶対的であるがゆえ、たとえ転生者のような高スペックのステータスと能力を持っていたとしても、こちらに逆らう意思そのものを頭から消してしまえば、何も恐れる必要はなくなる。
「ぐすっ、ぐすっ……ふぇ? そうな、の……? アタシ、えら、い?」
今の彼女は、まるで野生の姿を忘れ、居場所を求めて彷徨う子猫のようだった。思考力を見てくれ通りの幼い童女並にまで奪い、自分で何かを考えるという選択肢そのものも奪う。
シェーリファーは、今まさに子育てをしている気分だった。
「にゃ、とびきりのお利口さんにゃ。でもお利口なら、もう一つアタシに言わなくっちゃいけないことがあると思うんにゃけど、なんだか分かるかにゃ?」
すると彼女は、焦ったように目を泳がせて、必死に答えを探す素振りをし始める。
「……あ、アタシが、間違って、ました……身の程知らず、なのに、逆らって、ご、ごめんなさい……! ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさいごめんなさいごめんなさい……!」
「くすっ、くすくす、もう良いにゃ。ちゃんとお望み通りの答えを言えたから、いい加減泣き止んでくれにゃ」
「うぅっ、うっ……! ごめんな、さい……おこ、らないで、なんでも、言う事、きく、からぁ」
「ありゃりゃ~、ちょっと意地悪しすぎちゃったかにゃん。別に怒ってないにゃんのにぃ、だから、あたしとちょっと仲直りがてら楽しいことをしようじゃにゃい」
「楽しい、こと?」
「そうにゃ、あたしと一緒におたのしみの時間だにゃん」
ようやく涙を流すのを止めて、話に食いついたミノカに対し、ニッコリと微笑んだシェーリファーは、敢えて何も口にすることなく、だが、馬乗りの状態から彼女を解放する。
そして、猫の獣人であることを象徴するかのような、滑らかな動きで、ミノカの華奢な肩を、寂しいながらも幼女らしく発展途上で乏しく膨らんだ双丘に、それぞれ手を這わせていき、しなやかな身体を左右にくねらせながら、下腹部へと移動していく。大気に剥き出しになった、今まで手つかずだった未成熟の、薄い割れ目が入口になった女陰を覗き込むと、そのまま長い舌をペロリと出して、ゆっくりと内側へと侵入させる。
「んっ、ぁ、だめ、そこ、ん……なに、してっ」
体の内側が、ザラザラの舌で舐られる感触に、ミノカは思わず陶然とした声を漏らし、全身の力を緩ませた。その初心な反応を愉しみながら、シェーリファーは多少の手心を加えつつも舌先で的確に、膣壁を擦り、彼女の身体に快感を覚えさせていく。
転生前は、どんな姿をしていたのかは定かではないが、少なくとも今の、この肉体でまだ自慰をしたことはないだろう。膣壁を擦り上げても、零れる愛液の量は少なく、だが初物の少女らしい仄かな甘味が舌に乗る。反射的な反応として、ミノカの膝は内股に閉じ、シェーリファーの浸入を止めようとするが、そのような抵抗は狩人にとっては児戯に等しい。
握り込むだけで折れてしまいそうな細脚を握り、思い切り引き寄せる。
「ん、んんっ、んひゃぁああああああん……!」
甲高い悲鳴まじりの嬌声をあげて、あっさりと達し、未成熟の割れ目から多量の愛液を吹き出させたミノカは、甘い快感が連続する波を、全身を小刻みに震わせて受け止める。
「はぁ、はぁっ……んっ、んぇ」
初めての絶頂に翻弄され、息絶え絶えのミノカだが、疲労困憊といった様子ではない。スキル活力無尽によって、彼女の体は疲労というものを知らない。覆しようのない力の差に絶望したのと同じように、心のほうが現状に追いついていないのだろう。
ならば、とシェーリファーは、彼女にさらなる追い打ちをかけるために、人差し指を平らな下腹部へと当て、それを介して体内に魔力を流し込む。
「ーーーーーーーっ……!」
言葉もなく、ミノカは背中を浮かせて途方もないエクスタシーに理性が蒸発していく感覚を知る。とても先程とは比較にならない激しい絶頂体験は、数分に渡って続き小さな矮躯をビクビクと微細に痙攣させ続け、その間、彼女の下腹部は、薄紫に発光し複雑な模様を描き出す。
「……なっ、なんでぇええええええええええ!?!?!?!?!?」
小柄な幼女の身体には、似つかわしくない天を衝くように屹立した男性器を目にし、ミノカはまず最初に困惑し、そして絶叫した。
「にゃは〜、これまた随分、凶悪な雄ちんが生えたにやんね」
目を丸くするのは術をかけたシェーリファーも同様だった。淫魔が操る典型的なふたなり化の魔法だが、対象者の素質によって生えるペニスは千差万別である。馬のそれと同程度のサイズをしたそれは、先端から鋭い流線型のカリ首に、根本に向かうにつれて、全体的に太ましくなっていく凶悪な形状をしていた。しかし、まだ雌の味も知らないと主張するように、見事な白肌色にツヤツヤと初々しい。
「ふたなりは、初めてかにゃん? ま、普通それもそうかにゃん」
「え、えっ……こ、これ、どうす、っ、どうすればいいのっ!?」
「だ〜め、自分から動いちゃだ〜め、おみゃえは、そのまま大人しく寝っ転がって、アタシに全部任せるにゃ、分かったかにゃん?」
「ん……で、でもっ……」
「にゅふふ。初めは、みんなわからないものをそうやって怖がるんだにゃ、なら、分かる奴に任せるのが、一番だんにゃ、そしてーー」
「あんっ……!」
「あたしは、こいつの扱い方をよ~く知っているんだにゃ、ね?」
シェーリファーは、ゆっくりと勃起した陰茎を扱く。生えたばかりの肉竿は、正直というべきか早速、己の役割を理解したかのように先端から透明な汁を漏らし始め、たちまちシェーリファーの手に収まらないほどに太さを増していく。その光景を、未だ夢の中の出来事のように呆然と見つめるミノカだったが、すぐに快感神経が刺激される甘美な快楽に夢中になった。
「ほっ、ほ、ほっぉおお、っ」
生暖かい吐息がふっと吹きかかり、直後にペニスの側面が、舌先でスゥっと一直線に舐め上げられた。聞くに堪えない間抜けな声が出るのを抑えることもできずに、ミノカはなすすべなく、背をのけぞらせ、未知の快感に翻弄される。
シェーリファーの口淫は、大胆で、口全体を使ってペニス全体をしゃぶりあげてくる。どこまでも野性的というか、雄を楽しませる目的というよりは、子種を搾り取るための技能として身につけたような適当さが強く表れていた。しかし、ペニスの根本辺りを舌を押し付けられると、左右に動かすとザラザラの感触が、その直下にある睾丸に刺激として向かい、快感以上の何かが、尿道の中を着実に競り上がってくる。
「ほ、ほ、ほ、おっ、ぉぉおおおおおっ……!」
そして、すぐさま女の子の身体では決して味わうことのできなかった雄の特権たる射精を解き放った。
噴水のような白濁液がシェーリファーの口内をたっぷりと満たし、彼女はそれを嚥下する。ミノカは、初射精で生じる快感を制御することができず、腰をしゃくりあげるようにしながら上下させていた。
シェーリファーは、眉根を寄せながらも彼女の射精が完全に果たされるまで吐精を受け止めると、じゅるじゅると唾液の絡みつく音を下品に立てながらペニスを引き抜く。
「んぐ、ぅ。中々、良い子種を出すにゃん。にひひっ……にぇへへ、転生者ってのも伊達じゃないにゃんねぇ。想像以上の魔力が、アタシに種付されて一滴残らず搾り取りたくなるくらい、ぶっ濃い……にゅふふ、っ……」
口の端から、白の雄液の垂らしたシェーリファーは、妖しい微笑みで放心状態となったミノカに擦り寄っていく。この手の魔法の一つの性質として、対象者の魔力を子種・精液に変換する。それが射精によって放たれるが、その快感は、筆舌に尽くしがたいほどに気持ちいいそうだ。ミノカは、幼い見た目ながら、ありえないギャップのサイズのペニスを生やした。すなわち身に宿す魔力は、普通の人間を遥かに凌駕し、下手をすれば生半可なモンスターさえも上回るだろう。もっともプリズムキャットからすれば、相手がどれだけ多くの魔力を持ち、強大な魔法を放とうとも関係のない話だが。
腰を上げたシェーリファーは、ミノカ同様につるつるで、かつ彼女以上に成熟した雌の生殖器を見せつける。
「ほら、見えるかにゃ? ちびっ娘のちんぽ、あたしのにゃんこ穴とぴったりくっついて、入りたそうにしてるんにゃ」
「ああ……ああっ、アタシのおちんちん、おまんこに、入っちゃうよ……!」
ミノカは両手で、目を覆い隠しつつも、指の隙間から、二つの獣が一つになる瞬間を食い入るように見つめていた。シェーリファーは、彼女の期待を言われるまでもなく把握していたが、その期待を焦らすように、腰をうねらせて、淫らなダンスで誘惑をする。
「あ、あっ、挿れて……いれてっ……! お願い、はやく、おまんこ、っ、して……!」
「ほりゃ、童貞卒業おめでと、にゃん」
ミノカの懇願を微笑みながら受諾したシェーリファーが、ペニスを握り、一気に腰を沈めた。
途端に、股間から脳天までビリビリ痺れるような快感が弾ける。そして、その快感が波打ち、猫の蕩ける媚肉は彼女の柔軟な肉体と同じように蠢いていた。
「どう、にゃん? 初めてペニスで雌を犯した気分は」
「気持ちいい、っ……なに、これっ、きもちいいよぉっ!」
「上々にゃん、けど、まだ挿れただけ、これからが本番だ、にゃんっ!」
「あああっ……!」
シェーリファーが腰を浮かせ、前後にスライドさせる。若猫の膣液でヌラリとコーティングされたペニスが亀頭の寸前まで垣間見える。かと思えば、再び根本まで飲み込まれて見えなくなる。
その一連の上下運動は、やがてテンポよく加速していき、ミノカは一方的にペニスの快感を味合わされる。それは、苦しみとも悦びともつかない複雑な感情に、ミノカを苛む。
「にゃ、にゃぁ〜〜っ、ま、まって、っ、そんな、気持ちいいのっ、何度も、耐えられないっ!」
「にゃははっ! 気持ちいいってのは認めるにゃね! いいじゃにゃいかっ……なら、も〜〜っと気持ちいい、極楽交尾を体験させてア・ゲ・ルにゃっ」
「ほぉおおおおお〜〜〜」
思わずうっとりとした喘ぎが漏れ、全身を震わせながら腰を浮かせたミノカは、ブリッジでもするような姿勢を取る。反射的に突き上げてしまって根本まで埋まったペニスは、限界を超えてシェーリファーの奥深くに導かれ、子宮口と思しき場所まで到達する。
噛み合わせはバッチリだ。快感を逃がすようなつまらない真似をさせないべく、膣肉の締付を強くし、安易な射精も許さない。その状態で器用に腰を振って、限界まで彼女の精を煮詰めていく。
「おおおっ、おおっ、だめっ、だめっ、これきもちよすぎるのぉおおっ……! あたまっ、こわれりゅっ、おまんこ、気持ち良すぎてっ……!」
「だ〜いじょうぶにゃ、おみゃえは転生者なんにゃし、人間はそんな簡単に壊れにゃいにゃ、だから、もっとお股に意識を集中させて、理性なんて、ぶっとばすにゃっ!」
「おっごぉおほっ、お゛っ、おおおおぉお……っ!!! でるっ、でるのぉおおおっ……っへ?」
「なんで、どうし、て?」
シェーリファーの苛烈な腰使いが、ピタリと止まる。当然、あと一歩で吐き出しそうになっていた射精も、一秒が何十秒にも感じられる間に遠ざかっていき、ミノカは頭の中が破裂しそうなほどのもどかしさを覚えながら問いかける。
「にしし。おみゃえ、の顔を見てると、もっとすごいことをしたくなるんだにゃ~にぇへへ、こいつも特別大サービスで使わせてやるにゃ」
「なに、いって……しゃせ~、はやく、しゃせ、い、させてよっ!」
そう言って、シェーリファーが見せるのは触れただけで壊れてしまいそうなほど儚げなガラス細工を思わせる『葉』だった。硬質な、妖しい紫の輝きを放つそれを、言葉の意味が分からないまま、射精を懇願するミノカの前まで近づけると、あっけなく握り砕いた。
振りかけられるように、顔面を包み込む光ー視覚で捉えられるほどの濃い桃色のそれを、鼻腔で吸引した瞬間、弾けるのは甘い香りだった。
視界が霞み、かと思えば明瞭になる。
(ほしいほしいホシい欲しい欲しいおかすオカす犯す犯す犯す!)
そして、ミノカは、いつからか、という境目を意識することなく、頭の中を交尾の欲望で支配されていた。
それは、エストプリズム。プリズムキャットのみが生産できる特殊な薬草だ。結晶質であり、非常に脆いため、手に力を込めるだけで簡単に砕くことができる。その特性は、快感増強作用や魔術的な発情作用と、強烈な快楽への依存性を誘発させることに特化しており、一度使えば、人間であればまず抜け出せなくなってしまう。
魔法による分解や無効化などは理論上可能だが、砕いた瞬間に発生する桃色の煙は、吸引者のあらゆる抵抗力を著しく低下させてしまうので、即時の無効化はまず不可能だ。
「にひぃ、アタシたちの交尾に、欠かせないとっておきのオクスリだんにゃ。天国までぶっ飛ばして、セックス中毒になるといいにゃよ」
「おく、しゅりぃ? わけわかんない~でも、でも、でもぉ~いひひっ、これ、しゅご、しゅごいよっ、しゃせー、しゃせー、したくて、しゃせー、した、したいっ……!」
「ちびっ娘、それでいいにゃ。けど、おみゃえの力はこんなもんじゃ、ないにゃ。もっと盛れ、盛れ、人間だったことなんて忘れて、頭を空っぽにして、思い切り盛る、それ以外のことはぜーんぶ無駄なんだにゃ」
「うんっ、うんうんっ! わかった! さかりゅっ! いっぱい、しぇ、りふぁのこと犯すっ!」
シェーリファーに促されたミノカは、彼女の言葉で体から力を湧き上がらせたのか、先程までピクリとも動かせなかったマウントポジションを、容易に覆し、姿勢を逆転させることに成功した。
「しぇ、り、ふぁ……ぁ、きしゅ、きしゅ、する……っ! きしゅ、して、犯して、たねづけ、いっぱい、すりゅ、のっ、いい、っ、いいよねっ!!」
見上げるシェーリファーの視線が、自分のすべてを受け入れてくれるかのように感じられ、ミノカは、呂律の回らない口で、彼女に欲望を丸出しにした交尾宣言をする。
すると体を引き寄せられ優しく唇が塞がれ、シェーリファーとのファーストキッスが交わされる。お互いを密着させて、唯一呼吸を許された鼻から、彼女の汗混じりの獣臭をいっぱいに吸引し、それがまるでさらなるスパイスのように性欲が増強されていく感覚を覚えたミノカは、間もなく雌猫の唇をこじ開けて、荒々しく舌を入れ、貪るようなディープキスに溺れさせる。
「んんっ〜ん〜〜っ、ぷはっーーはぁ、はぁ、はぁ、はぁ、だめ、だっ、め〜〜これ、こりぇ、おかし、おかしい、よっ……きもち、いいいっ!!」
頭が痺れて快楽を享受すること以外、何も考えられない。
「小さい体で頑張る頑張る♡ んんっ♡ いいとこ入ったにゃんねぇ、でもアタシをこの程度で負かせられると思うにゃよぉ」
「んんっ」
さながら猫と繰り広げる正真正銘のキャットファイトのように、シェーリファーの雌の肢体に組み付いたミノカは、偶然にも彼女の膣内の快感ポイントを突き、それを足がかりにして優勢を確保した。
何とか彼女をぎゃふんと言わせられるように必死に腰を叩きつけるが、シェーリファーも負けじと脚線美が美しいスレンダーな脚で、その腰をロックすると逃げ場のない密着距離で手指を絡め、口づけ合い、ぱちゅんぱちゅんと生々しく粘膜が混ざる音に、興奮を高め合っていく。
「ほんと人間はおバカさんだにゃぁ」
シェーリファーの小馬鹿にするような言葉が耳を打つが、ミノカの頭は、もはやその言葉の意味すら満足に理解できず、狂ったように腰を動かすだけの種馬となっていた。チカチカと、意識が断続的に途切れては繋がる。それでも、シェーリファーとは繋がり続けている。
「あ、あ、あっ、あっ、だめ、なにか、なにか、きちゃうっ……!」
そして、その瞬間が訪れる。太いペニスが拡張させた雌猫の膣内の最奥に達した瞬間に、ミノカは、射精を果たす。二度目とは思えない膨大な吐精は、確かに彼女の魔力から変換され、子種を吐き出していく。その証拠に、ミノカは自身の肉体から致命的な何かが溢れ出していくのを知覚していた。しかし、一度出てしまった射精を止めることはできず、延々と白濁液は漏れ続け、断続的な快感を彼女に与え続けた。
「ううっ、うっ、うう、うぇへ、えへへへへ」
快楽の波が一通り過ぎ去ると、先ほどとは打って変わって、しおらしく衰弱したようになったミノカ。実際、体に残っている魔力は、ほとんど吐き出されてしまって、空っぽになり、自分の一部を捧げた射精の余韻によって、思考も簡単にはまとまらなくなっている。それでも、彼女の口はにへらとだらしなく緩んで、廃人のように舌を突き出したまま、生命力を絞り出すように、白濁液をぴゅるぴゅると放出している。
「お前、中々やるニャン。ミノカって言ったかにゃん? 泣き虫のメソメソちびっ娘のくせに、とんでもない性欲だんにゃ〜。にゅふふ、気に入ったにゃ。おまえのこと、飼ってにゃるにゃ」
「か、う? えへぇ、よくわかんにゃい、けど、ふぇへへ、わたしぃ、わかった~飼っても、いいから……交尾☆ 交尾☆ もっとしよ!」
ミノカは、シェーリファーの言葉に、訳も分からず唯々諾々と頷いて、肯定の意を示し、熱のこもった瞳で、彼女に続きをねだった。
ついさっき生えたばかりの雄ペニスを、生まれ持ったそれと同じように使いこなしている。さんざん焦らされ、二度の射精しかまだ果たしてはいないが、さすがは転生者というべきか魔力の回復が早く、すでに次の射精のために、変換された魔力が子種として彼女の金玉に充填され始めていた。
しかも、体力が尽きないという特異なスキルのおかげで物理的な限界を心配する必要もない。
まさに理想的な種馬だ。救世主というのもあながち間違いではないかもしれない。シェーリファーは、ニコニコと笑いながらぬいぐるみのようにミノカを抱きかかえ、蕩けきったアヘ顔を浮かべる彼女の頭を優しく撫で擦ってやる。今すぐにでも続きを始めたい、と誘いに応じようと口を開きかけたシェーリファーだったが、その前に、にゃ〜にゃ〜という合唱が近づいてくるのに気づいた。
視線をやるとそれまで観戦客として二人の熱狂的な交接の一部始終観戦していたプリズムキャット達が、次々にコロッセオの地面へと降り立ち、駆けてくる途中だった。
「にゃはは〜、あたしらの交尾が羨ましかったみたいだにゃんね〜。ふたなりの雄と盛るなんて機会、めったにないもんにゃから、我慢できなくなったみたいにゃ」
「にぇ、へ?」
「にゃはは、要はお楽しみの時間はまだ終わらないってことにゃ」
一番にたどり着いたプリズムキャットの手が、ミノカをシェーリファーと引き剥がし、地面に仰向けに横たわらせた。
爛々と性欲の光を輝かせた、瞳の据わった猫達に取り囲まれ、彼女らは、我先にと無力化された幼い救世主の股間にそびえ立つ雄棒を求め、一斉に群がってくる。
盛りのついた雌猫たちによる性の饗宴が前戯も何もなく、挿入という形で幕を開ける。嬌声を上げて輪唱するプリズムキャット達が、シェーリファーよりも濃厚な獣臭を漂わせながら、絶頂の歌声を響かせる。そして次々に、あの紫の葉を取り出しては砕き、その香りによってミノカの嗅覚はたちどころに支配され、取り返しのつかない深みへと溺れていくのだった。
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