第一話「パワハラ気質な強面ガチデブワニ獣人おっさん部長が透明化して野外でヤる話」
バアン! と怒りに任せて机を叩く乱暴な音が辺りに響き渡る。
「お前なあ! 何度言ったら分かるんだ!? ええ!?」
そう言ってワシ、[[rb:荒岩 > あらいわ]][[rb:源之助 > げんのすけ]]は腹の底から大声を出して目の前にいるハイエナ獣人の部下を怒鳴りつける。
そのハイエナはと言うと一見項垂れて反省しているようだが、よくよく見ると不服そうな目つきでこちらを睨みつけていた。彼のその反抗的な態度にますます腹が立って来たワシは、わざとらしくため息をついてみせる。
「……あのなあ、元はと言えばお前の確認ミスが原因じゃないか。違うか?」
ワシがそう詰めるとハイエナはばつが悪そうに視線を逸らした。自分に非があると分かっている証拠だ。
そう。何日も前に取引先から案件について変更点があったことをメールや口頭で伝えていたのにもかかわらず、この男はろくに確認もせずに仕事を進めたせいでミスが発生したのだ。ワシは重たい頭を抱えて、またため息を漏らした。
「ったく、これだから金持ちのボンボンは……」
そう言ってちらりとハイエナの様子を窺うと、彼は悔しそうに口を真一文字に結んでいる。口周りの筋肉が強張っている様子から、歯を強く噛み締めているのだろうと推測できる。
このハイエナは元々は父親が社長を務める会社で働いていたそうなのだが、親の七光りだと噂していた他の社員と口論になり、挙句の果てには暴力まで振るったせいで退職することになり、この会社に転職したという話だ。
そんな噂一つで会社を辞めることになってしまった彼に最初は同情していた。だが正直ここ一か月ほどこのハイエナと一緒に働いてみて、先ほどのような簡単なケアレスミスを乱発する彼の仕事ぶりに、ワシは前の職場の人たちが噂交じりに愚痴をこぼしたくなった気持ちも分かってきた。
ワシは目の前にいる出来の悪い部下を一瞥すると、ふんと鼻を鳴らした。
「もういい。先方にはワシが謝っておくから、お前は他に確認漏れがないかチェックしてこい。どうせ今はそれぐらいしか出来んのだからな」
「…………はい」
ハイエナはとても不満そうに返事をすると、踵を返して自分の席へと戻っていく。気分の悪くなる態度のハイエナの背中を見送ると、ワシは深いため息をつきながら大きく後ろに体重を預けて椅子にもたれかかった。
ハイエナのミスで頭を悩ませることは今に始まったことではないが、それにしても今日はひどい。もう五回も似たようなミスを他の部下たちから報告を受けている。おかげでストレスも溜まっている。
――気分転換に、今日は久々に『あれ』をやろうかな。
そんなことを考えながらキーボードを叩く机の下。誰にも見えないその空間で、ワシの股間は密かに熱を帯びて膨らんでいた。
*
オフィス街のビルの光も消えつつある深夜。仕事を終えて晩飯も済ませたワシはジャージに着替えて、家から少し離れたところにある自然豊かな公園、[[rb:蝦蟇住 > がまずみ]]公園に来ていた。
この蝦蟇住公園は滑り台などの遊具はなく、広い敷地を歩き回れる遊歩道や各所に休憩所として設置された東屋、そしてそれらを包み込むように立ち並ぶ木々や茂みがあるだけだ。
観光になるような名所でもないためこの公園は昼間でも人が少なく、深夜になると全くと言っていいほど人気がなくなる。
ワシは辺りを見渡しながら遊歩道を足早に歩くと、途中で脇道に逸れて茂みの中に入る。この辺りが一番人の通りが少なく、そして木々や茂みが多くて周囲から見えづらいからだ。
大股歩きでガサガサと足元の茂みをかき分けながら進むと、やがて木々や茂みが少ない開けた場所に出る。
ワシは再び辺りを見渡して、誰もいないか確かめる。そもそもこんな遊歩道から外れた茂みの中に来るような者は普通いないし、そうでなくてもこの場所は木々に囲まれているため近くの遊歩道からも見えづらい。公園用の街灯も少なく、深夜ともなれば余計に暗くて何も見えない。
だからこそ、丁度良いのだ。
気付けばワシはいつの間にか息が上がっていた。その息遣いは静まり返ったこの公園の暗闇に響き渡るような気がして、ワシは背負っていたリュックを地面に下ろして、何とか息を整えようと堪える。
その一方で、ジャージの上着のファスナーに手をかける。下ろそうと手に力を入れると、ジジ、とファスナーが固い音を立てた。ワシは逸る気持ちを抑えながら、息を整えつつ、ファスナーを摘まむ指先の力を適度に緩めていき、そおっと音を消してファスナーを下ろしていく。
そしてファスナーを下ろしきったそのとき、タイミングを見計らったようにふわっと風が吹いた。柔らかな風がジャージの隙間に潜り込み、素肌を優しく撫で回していきながら暗闇の中へと過ぎ去っていく。
その素肌から伝わる感触が、痺れるような快感を脳に迸らせ、そこから脊髄を伝って快楽が全身に広がっていく。
ああもう駄目だ。我慢できない! 痺れを切らしたワシは勢いよくジャージを脱ぎ捨てる。下に何も着ていなかったワシの上半身が晒される。
学生時代に運動部で鍛えた名残で盛り上がったままの胸筋が、仕事の疲れを癒すために飲み食いした酒と飯の影響で丸く張り出した腹が、年を重ねてすっかり色がくすんだ鱗に覆われたワニの肉体が、深夜の公園の暗闇の中で露わになる。
呼吸をするたびに冷たい空気が胸の内を満たす。いや、ワシの肉体が熱を帯びているから冷たく感じるだけだろうか。快感で茹だる頭でそんなことをぼんやり考える。
その熱にあてられて、ワシの手は自然と股間へと伸びていく。するとうっすらと膨らんでいるジャージの股座がじんわりと濡れていた。
それに気付いた瞬間、心臓がドクンと高鳴った。ああ、そうだ。我慢する必要はない。ドクドクと力強く鼓動を打つ心臓と、ムクムクと膨らみを大きくする股間がそう訴えかけている。
その訴えに応えるようにワシはジャージの腰に手をかけ、そして一気にずり下ろした。更にジャージから足を引き抜いて、完全に下も脱ぎ去った。
瞬間、先ほどと同じように夜の空気がワシの下半身を撫でていく。
まずは勃起していてもスリットから顔を覗かせる程度の粗末な肉棒、次に丸太のような太ももの隙間から蟻の戸渡りへ、そこから100kg以上の体重を支える巨大な尻とそこから繋がる太い尻尾の先まで、何も履いていない下半身を涼しげな風が気持ちよく通り抜けていく。とてつもない解放感である。
そう、ワシは今サンダル以外衣類と言える物を何も身に着けていない。文字通り裸一貫の姿となったのだ。
ちらりと視線を横にやる。周囲に立ち並んでいる木々の隙間からほんの少しだけ公園の遊歩道を見ることが出来た。
いつ誰が通るかも分からない遊歩道が、木々を挟んだ向こう側にある。そう考えただけで脳が痺れるような快楽が全身に迸る。恐怖と緊迫感から生じる悦びに股間が熱を帯び、仙骨の下が疼くような感覚に襲われる。
ワシはその欲求に駆られるように、傍らに置いていたリュックの中からお気に入りの道具たちを取り出す。
それは肉棒を模した張型。俗にディルドと呼ばれるものである。そしてもう一つ、細長い半透明のピンク色のボトル容器。
まずワシはボトル容器から透明のゲル状の潤滑剤を適量、右手の平に出してよく馴染ませる。そして右手を背中越しに尻へと伸ばして、潤滑剤に覆われたその指先をそっと尻穴に挿し込む。
「んっ……」
何度も経験している快感を想像して、思わず先立って甘い声を漏らしてしまう。人通りが少ないとは言え、もし通りがかった人にこの声を聞かれて、こんな地帯を見られてしまっては大事になる。あまり誰かに気付かれるような危険を冒すべきではない。
そう分かっているはずなのに。ワシの指先は勝手に尻穴の急所を求めて、分厚い尻肉の中でもぞもぞと蠢いてしまう。
「うっ、ううっ……んぅ……!はあ……!」
声だけでなく、息も荒くなってく。足の力も抜けていき思わずそのまま跪いてしまいそうだったが、身体が汚れるのを嫌ったワシは膝をつけないよう腰だけを下ろして、その場にしゃがみ込んだ。
そのまましばらく指で尻を慰めたワシは、尻から指を抜き取る。そして尻穴で濡れた指先のままディルドを手に取り、今度は股座から尻穴へと、ディルドを持ったその手を伸ばした。
しゃがみ込んだおかげで先ほどよりも広がった尻穴は、先ほど指先で弄られたせいもあって、そっとディルドをあてがっただけで簡単に入ってしまった。
「あ、ああっ……!あ゛あ゛っ……!!」
ディルドが尻の奥へと飲み込まれていくにつれて、ワシの喉から漏れる甘い声は次第に野太くなっていく。普段から遊んで蕩け切った穴はあっという間にディルドをほぼ全部咥え込んでしまった。
「はあ……はあ……。ふうー……ふうー……」
ワシは深呼吸をして、呼吸のリズムを整えていく。
そうして呼吸が整ったところで、今度は息を吐きながらゆっくりとディルドを抜いていく。
だが完全には抜かない。先端がまだ抜けきらないところで止めて、今度は息を吸いながらディルドを押し込んでいき、奥まで入ったところで再び息を吐きながらディルドを抜いていく。
これをゆっくりと繰り返して、前立腺を刺激していく。最初はゆっくりと、抜いて、挿して、抜いて、挿す。
ゆっくりと、だが少しずつ。少しずつ慣らしていきながら、このディルドを抜き挿すテンポを速めていく。
「はあー……すうー……。はあー……すうー……」
抜いて、挿して、抜いて、挿して。抜いて挿して、抜いて挿して。抜いて挿して抜いて挿して抜き挿し抜き挿し抜き挿し抜き挿し。
「はっ、はっ、はっ、はっ。はあっ、はあっ、はあはあっ、はああっ!」
加速してくピストン運動に刺激された前立腺から迸る快感が、脊髄を伝って脳を満たしていく。整っていた呼吸も乱れ始める。火照った肉体がうっすらと汗ばみ、素肌に触れる空気がより一層冷たく感じる。
その冷たさが、熱で浮かされているはずのワシの頭の中に残っている、冷静な脳の一部分にある記憶を呼び起こす。
簡単なミスを犯して仲間に迷惑をかけたハイエナの部下。そんな部下を激しい怒号で叱りつけるワニの中年親父。つまりワシ、荒岩源之助だ。
その荒岩源之助が、こんな深夜の公園に来て、こそこそと人目を忍んでは茂みの中で服を脱ぎ去り、あまつさえ粗末な肉棒を晒し出したまま尻穴に張型を入れて、獣のように息を荒げて自慰に耽っているのだ。
普段の姿を知っている者が見たらどれだけ幻滅するだろうか――。そう心の中で、自分で自分を蔑む。
その自虐が、絶頂へと至る最後の引き金となった。
「あっ! あ、ああっ! あ゛あ゛ーーーっ!!」
言葉をなさない獣の咆哮とともに、荒岩源之助はとうとうその肉棒に手を触れることなく、鈴口から派手に精液を吐き出した。噴き出した精液は夜の暗闇の中で弧を描いて、ぼたぼたと地面へと落ちていった。
「はあっ……はあっ……。はあー……」
地面に落ちた精液を見て、ワシは深く息を吐き出した。こんなに満足できる気持ちのいい射精は久しぶりだったからだ。
夜の冷えた空気が、火照った肉体をゆっくりと冷ましてく。静まり返った暗闇の中、少しずつ息を整えていく。この余韻に、このまましばらく浸っていたいと思っていた、そのときだった。
ガサッ……。
不自然に茂みの一部が揺れる音。すぐ近くから聞こえたその物音に、一気に血の気が引いた。早鐘を打つ心臓に急かされるように、慌てて周囲を見渡す。
だが近くに人の姿はなかった。注意深く暗闇の奥に誰か隠れていないか、木々の向こう側に見える遊歩道で誰か通ってないか確認したが、やはり人影は見当たらなかった。
だが依然として心臓の鼓動は早まったままだ。正体の分からない不安が、心臓を締めつける。
ワシはすぐさま荷物をリュックに片付けて、脱ぎ捨てていたジャージを拾い上げて着直すと、余韻に浸る暇もなく逃げるようにその場を後にした。
公園から出て家に帰るまでの間も改めて怪しい人影がないか探していたが、やはり誰の姿も見つからなかった。
[newpage]
翌日。いつも通り出勤したワシはいつものようにキーボードを叩いて仕事に打ち込むが、やはり昨日の一件が頭から離れなかった。
あのとき不自然に揺れた茂み。あれは絶対に風で揺れたといったような類の揺れ方ではなかった。何かが茂みを掠めて揺れたとしか考えられないが、一方であのとき周囲には怪しい人影が一切見当たらなかったのも事実だ。
うーむ、一体どういうことだろうか。ワシはパソコンの画面をぼんやりと見つめたまま、顎に手を添えて深く唸る。
「部長。どうかされたんですか?」
と、不意に頭上から声が降ってきたので画面から顔を上げると、いつの間にか目の前に穏やかな顔つきの大柄な白熊の男が立っていた。背は高いが丸々としたシルエットのふくよかな体型が特徴的な白熊だ。
「何だ久利谷か。どうした?」
「どうしたじゃないですよ。部長こそ、さっきから眉間にシワ寄せて何を考えているんですか? 元々怖い顔が更に厳つくなってましたよ」
くつくつと冗談交じりにそうからかってくる白熊、[[rb:久利谷 > くりや]][[rb:聡介 > そうすけ]]の言葉に、ワシはごほんと咳払いをして誤魔化す。
「これは、そうだな。また別件でちょっとな。だが大したことじゃない。気にするな」
少々早口になってしまったが、久利谷は特に気にすることなく「はあ。そうですか」と気の抜けた返事をした。
「あ、そう言えば。部長にちょっと確認してほしいことがあるんですけど、今お時間大丈夫ですか?」
「ん? あ、ああ。構わんが……」
「ありがとうございます。ちょっと待っててくださいね」
そう言うと白熊は懐からスマホを取り出してタカタカと画面をタップして何やら操作している。仕事の資料でも探しているのだろうかと思ったが、そういったデータを久利谷のスマホに共有した覚えはなかった。
ワシがそんなことを考えている間に、スマホを操作する久利谷の指の動きが止まった。
「これなんですけど、確認してもらえますか?」久利谷がスマホをワシの方に差し出して画面を見せてくる。
「どれどれ……?」
ワシは少し身を乗り出してその画面を見てみる。表示されているのはメモ帳アプリに入力された一つの文章だった。
『昨日、蝦蟇住公園で全裸露出アナニーしてましたよね?』
久利谷のスマホに表示されている文章。それを読んで、意味を理解したワシは一気に血の気が引く思いを覚えた。
どういうことか混乱したまま顔を上げると、久利谷は笑っていた。だがその笑顔は先ほどのような穏やかなものではなかった。それはにやりと釣り上げた口の端によって目元も少し歪んでいるような、そんな不気味な笑みだった。
見たこともない久利谷の一面に、ワシは思わず委縮した。それを見た白熊は口元をうっすらと開いて、ちらりと艶めかしく牙を覗かせる。
「もし今すぐに返答いただけないなら、これ渡しときますんで。好きな時間に連絡ください」
そう言って久利谷が机の上に置いたのは、一枚のメモ用紙だった。そこにはアルファベットと数字を組み合わせた、おそらく久利谷が使用しているメッセージアプリのIDらしきものが書かれていた。
「それじゃ。また後ほど、よろしくお願いしますね。部長」
それだけ言い残すと久利谷はくるりと踵を返して自分の席へと戻り、何食わぬ顔で仕事の続きを始めた。だがワシの方はと言うと、突然のことに頭が混乱したままで、すぐに切り替えることが出来なかった。
ぼんやりとした頭のまま、ちらりとメモに書かれている久利谷の連絡先に目を落とす。
昨夜の不自然な茂みの揺れ。久利谷のスマホに書かれていた文章。そして初めて見た、あの背筋が凍るような不気味な笑み――。
少し逡巡した後、ワシはとりあえずIDをメッセージアプリに入力して、友達申請だけしておいた。
答えは仕事を終えてから出そう。ワシは思考を切り替えてパソコンの画面に向き直り、キーボードを叩き始めた。
*
「いやあ~まさか部長の家がオレの家の近くだったなんて、そんなこともあるもんスね~」
「……ああ、全くだな」
仕事終わり、結局久利谷と一緒に帰ることにしたワシは、その久利谷が住むマンションの前まで来ていた。
「で? お前の部屋は何階なんだ?」用件を早く済ませたくてワシはそう尋ねる。
「あ、部屋に行く前にちょっとこっちに来てほしいんス」
「ああ?」
ワシが怪訝な顔を浮かべるのにも構わず、久利谷は照明に照らされたエントランスに入らずマンションの裏手に回っていく。意図が読めないまま渋々そのあとをついていくと、ワシと久利谷は薄暗い自転車置き場へと辿り着いた。
自転車置き場に着いたところで久利谷は足を止めて、くるりと振り返った。
「この時間ならもう自転車で出かける人も帰ってくる人もいないんで、ゆっくり話が出来ますよ。荒岩部長」
そうワシの名前を呼ぶとき、久利谷はにやりと笑みを浮かべた。あのとき職場で見せたものと同じ、不気味な笑みを。
その不気味な笑みに思わず額に冷や汗が流れたが、ワシは力強く拳を握り締めて久利谷を睨みつけた。
「……それで? こんなところに連れてきて何の用だ?」
「やだなあ部長。そんな怖い顔しないでくださいよ。何も取って食おうってわけじゃないんスから」
そう言ってパッと表情を明るくして、人懐っこい笑みを浮かべる久利谷。その変わりようにワシはますます警戒心を高めるが、久利谷はニコニコと穏やかな笑みを浮かべたままだ。
「別に怖がらなくていいっスよ。部長の秘密を弱みに強請ろうとか、そんなこと考えてるわけじゃないスから」
「じゃあ何故わざわざそのことをワシに話した? 昨日の一件でワシに言いたいことがあるからだろう?」
「流石っスね、部長。そう、実は――」
久利谷は一瞬視線を伏せてから、すうーっとゆっくり息を吸って、それから意を決したような眼差しをワシに向けたまま、次の言葉に繋げる。
「オレと一緒に、野外露出プレイしてほしいんスよ」
「……………………はあ?」
突然のことに思わず拍子抜けた声を漏らすワシ。
「実はオレも好きなんスよ。外で裸になるの。だってすーっとしてめちゃくちゃ気持ちいいじゃないスか」
しかしそんなワシに構うことなくペラペラと話を続ける久利谷。ワシはいまいち状況が呑み込めないまま、白熊の話を聞き続ける。
「田舎に住んでたからってのもあるんですけど、子供の頃は外で裸になっても大目に見てくれたりしてましたけど、もう社会人になるとそんなこと許されないじゃないスか」
「ま、まあ。そうだな」生返事をするワシ。
「だからオレ考えたんですよ。たとえ社会人のオレが外で裸になってもバレない方法はないかなーって」
「……はあ」
再び生返事をするワシ。結局こいつは何が言いたいのだろうかと、苛立ちすら覚えてきた。
「それで作ったんスよ。これを」
そう言って久利谷はカバンの中から取り出した何かを、ワシの方に差し出して見せてきた。
久利谷の手に握られていたのは、ラベルが剥がされた一本のペットボトルだった。中には薄い水色の液体がたぷたぷと波打っている。
「何だ? それは……」
「これは――って、説明するより実際に見てもらったら分かると思いますよ」
そう言って久利谷はそのペットボトルの蓋を開けると、煽るように一気に中身を飲んでいく。液体を飲むたびに、突き出した白熊のごつごつした喉仏がゴクッ、ゴクッと大きな音を立てる。
その豪快な飲みっぷりに、ワシも思わずごくりと喉を鳴らしてしまう。
そうしているうちに、久利谷はあっという間にペットボトルの中身を飲み干してしまった。「ぷはあっ」と息継ぎをする声とともにペットボトルから口を離した久利谷は、蓋を閉め直してからそのペットボトルをカバンの中に仕舞った。
「部長。見ててくださいね」
そう言うと久利谷は自分の手をワシの方へと差し出した。握手のつもりだろうか、とそんなことを考えながらワシがその真っ白な手に視線を移した、その瞬間であった。
久利谷の手、その指が縮み始めたのだ。
「なっ……!?」
思わず驚きの声を漏らす。訳が分からず見ている間にも、久利谷の指はどんどん縮んでいく。否、消えていくのだ。そしてあっという間に五本の指全てが、まるで根元から切り落とされたかのように影も形もなくなり、手のひらだけになった。
更に見ていると、指だけじゃなく手のひらも徐々に削り取られるように、どんどん夜の闇に侵食されて見えなくなっていく。そして手首も見えなくなり、スーツの袖を覗き込んでもその中にあるはずの腕も見えなくなっていた。
信じられない思いでワシが手首から視線を上げると、そこにはにやりと不敵な笑みを浮かべている久利谷の顔があったが、それすらも消えて見えなくなってしまった。
そうしてワシの目の前に残ったのは、大柄なスーツが人の形をして宙に浮いているように見える、異様な光景だった。
「どうスか! オレ、完全に透明になってるでしょ?」
陽気な白熊のはしゃぐ声が聞こえる。しかしそこに人影はなく、宙に浮くスーツが両手を広げた形を取っているだけだった。
透明化なんて、そんなことあるわけがない。そう思いつつおそるおそるワシがスーツに向かって手を伸ばすと、不意にワシの手に何かが触れる感触があった。だがもちろん、ワシの手を握る誰かの手は依然として見えないままだ。
その事実に、ワシはようやく久利谷が透明になった現実を受け入れざるを得なかった。そして同時に、昨夜から抱えていた謎も解けた。
昨夜、ワシが木々に囲まれた中で自慰に耽っていたとき、風も吹いていないのに不自然に揺れた茂み。周囲を見渡してもどこにも人の姿はないのが不可解だったが、ようやく合点がいった。
「あのときも……透明になっていたのか?」
ワシは姿が見えない久利谷にそう尋ねる。透明の久利谷は返事をしなかったが、それが答えなのだと分かった。
ワシよりも背が高く大柄で、暗闇の中でも目立つ真っ白な毛並みを持つ久利谷。
だがその身体が透明になっていたのならば。その身体を包み込む衣服を何も身に着けていなかったのならば。昨夜、物音がしたときに周囲に人影が見えなかったのにも説明がつく。透明になって影も形もなくなっていたのなら、人影が見えなくても何ら不思議ではない。
全てがすとんと腑に落ちたワシにはもう、目の前で起きた超常現象に対する恐怖はなかった。その代わり、たった今自分の手に触れている久利谷の透明な手に純粋な興味が湧いてきた。
「部長」
そんなワシの心を見透かしたように、透明になった久利谷が穏やかな声をかけてくる。
「あの透明化の薬ですけど、色々試した結果さっき飲んだ量なら軽く三、四時間は透明化状態を維持できるんスよ。そして――」
透明になった久利谷の手がカバンを漁っているのだろうか、もぞもぞとカバンが一人でに動いている。そしてそのカバンの中から、先ほどと同じような一本のペットボトルがすうーっと宙に浮かび上がり、ゆっくりとワシの目の前まで迫ってくる。
「ここにもう一本、あるんスけど……どうスか?」
そう言う久利谷の声とともに、目の前にあるペットボトルが宙に浮いたまま振り子のように左右に揺れる。中に入っている薄い水色の液体がちゃぷちゃぷと怪しく波打っている。
その液体の誘惑に思わずゴクリと喉を鳴らしたワシは、口を開く前にふっと久利谷から目を逸らした。
「……少しだけ、時間をくれ。その……準備したい、から……」
頬が熱くなるのを感じながらワシがそう言うと、「分かりました」と嬉しそうな久利谷の声が聞こえた。
[newpage]
あの後ワシは久利谷に誘われるまま彼が住む部屋へと向かい、シャワーを借りて準備を済ませると、その足で玄関へと向かう。靴が雑多に置かれている土間にそっと素足を下ろすと、ひやりと冷たいコンクリートの感触が伝わってくる。
ドアノブに手をかけて玄関の扉を押し開けると、隙間から早速冷たい空気が流れ込んできた。ワシは全身の肌でその心地よい冷ややかさを受け止めながら、意を決して外へ一歩踏み出す。
「おっ、準備終わったみたいっスね。部長」
からかいまじりに話しかけてくる久利谷の声。その久利谷は透明になっているので、声のする方向を見てもそこに白熊の姿はないが、ワシは虚空に向かってじろりと睨みつける。
「あ。もしかして部長、今怖い顔してます?」
久利谷がすぐ近くにいるはずのワシの表情についてそんなはっきりしない言い方をする。それも仕方のないことだ。なぜならワシも、久利谷が飲んだものと同じ薬の効果で全身が透明になっているからだ。表情なんて見えるはずがないのだ。
「いや~こうしてお互い透明だとちょっと不便っスね」
「まあ、当然だな。お互いに見えてないんだからな」
「じゃあ部長。オレの手、握ってくれません?」
と、そんな提案をする久利谷。いい大人になって恋人でもない相手と手を繋ぐのも少し気恥ずかしかったが、このままでは一緒に行動することも困難なのは確かだ。
「分かった。では手を……どこだ?」
ワシが久利谷がいる方向に向かって手を伸ばす。すると、指先に何か温かいものに触れた感触があった。
「ん? これか?」
ワシは両手でその形を確かめようと触れる。だがそれは手ではなかった。太くて長くて、それでいて先端だけはエラのような出っ張りとともに一回り大きくて、例えるならキノコのような形で――。
そこまで思考が追いついたところで、「ふふ」と笑う声が聞こえた。
「そんなにオレのちんぽを撫で回しちゃって、部長ったら積極的なんスね」
「ちち、違うわ!」
顔が熱くなるのと同時に、ワシは慌てて久利谷の肉棒から手を離して距離を取る。
「というか、何で既に勃起しとるんだ!?」
「言ったじゃないスか。外で裸になるの気持ち良くて大好きだって」
だからと言って節操がなさすぎる。呆れたワシは思わずため息をつくが、当の久利谷はうふふと嬉しそうな笑みを漏らしている。
「そういう部長だって、実はもうビンビンなんじゃないっスか?」
「や、やめろ! 触るな!」
おそらくワシに向かって手を伸ばしてきているであろう久利谷から逃げるため、ワシは両手を股間で守って後ろに飛びのく。両手で覆われたワシの股間では、痛いほどに勃起した控えめな肉棒がスリットから慎ましく顔を覗かせている。
「くだらんこと言ってないで、さっさと手を繋ぐぞ! ほれ!」
「分かりましたよ。それじゃ、はい」
そう言ってワシの目の前に、宙に浮いた鍵が差し出された。おそらくは久利谷が自宅の鍵を握り締めているのだろう。ワシは片手で股間を守ったまま、もう片方の手でその鍵を握っている久利谷の手を探す。
すると今回はちゃんと手を握れたようで、鍵を握っている拳のその根元、久利谷の手首を掴むことが出来た。
ワシがほっと一安心していると、今度はワシの手首を掴む感触があった。おそらく久利谷がもう片方の手で掴み返したのだろう。
「部長。鍵を握っている手の方、一旦離してくれますか? 家の鍵、閉めちゃいたいんで」
「あ、ああ。分かった」
久利谷の指示に従ってワシが手を離すと、宙に浮いた鍵は吸い込まれるように玄関の扉にある鍵穴に差し込まれる。そして久利谷は鍵を捻ってがちゃりと音を立てて施錠する。
「よし、じゃあ行きましょうか」
「ああ。でもその鍵どうするんだ?」
「下の郵便受けに入れときます。開け方知らなかったら盗られることないんで」
いつもそうしているのだろう、久利谷は慣れた風にそう言ってみせる。
「ほら、行きますよ部長」
「あ、ちょっ……」
急に手を引っ張られたので少し体勢を崩すが、ワシは何とか倒れずにそのまま久利谷に手を引っ張られるままついていくと、どうやら階段の方に向かっているようだった。エレベーターを避けたのは、途中で誰かが乗り込んできたときに透明化がバレてしまうリスクがあるからだろう。
ワシと久利谷は手を繋いだまま、誰もいないか周囲を警戒しながら、4階から3階、3階から2階へと、下に向かって一段ずつ薄暗い階段を下りていく。
そうして何とか無事に誰にも遭遇することなく階段を降り切ったワシたちは、1階のエントランスホールへと辿り着いた。
時刻はとっくに真夜中だが、無人のエントランスホールは照明によって明るく照らし出されている。
そんなエントランスを見て、ワシは思わず身体が強張る。いくら透明になっているからと言って、何も着ていない全裸でこんなに明るい場所を歩くのは流石に躊躇した。
しかし、ワシの手を握る久利谷はそんなこと関係ないと言わんばかりに、ぐいとワシを光のあるエントランスに引っ張っていく。
「お、おいっ。久利谷」
「しーっ、部長。透明になってても、声は聞こえるんですから。あまり喋っちゃダメですよ?」
そんなことは分かっている。と言いたかったが、そんなこと言ったところでそもそも『透明でも明るいところを歩くのは恥ずかしいからやめてくれ』なんて言えるわけがなかった。ワシは大人しく口を噤むことにした。
久利谷が自宅の鍵を郵便受けに入れると、マンションの出入り口に向かってぐんぐんと進んでいく。一歩踏み出すたびに、外から吹き込む冷たい風が素っ裸のワシの素肌を撫でながら後方へと流れていく。
いよいよだ。ワシはごくりと唾を飲み干しながら、とうとう久利谷に手を引っ張られたままマンションの外へと繰り出した。それと同時にワシの手を引っ張る力がふっと消え失せた。おそらく久利谷が立ち止まったのだろう。せっかくなのでワシもその場に立ち止まって、ゆっくりと周囲の光景を見渡す。
目の前を横切るように道路を駆けていく車。その道路を挟んだ向こう側には24時間営業のコンビニエンスストアがあり、明るい店内から客が荷物を片手に店から出ていく姿も見える。
真夜中と言えども、街を照らす光も、外を出歩く人が絶えることがない都会のど真ん中。
そんな街中で、透明になったワシと久利谷は、衣服を一切身に着けることなく素っ裸で立ち尽くしているのだ。
「どうスか? 部長」
と、不意に久利谷がそう話しかけてくる。ワシはつい声の方向に顔を向ける。
「夜の街中で全裸になるって、最高でしょ?」
子供のように嬉しそうな久利谷のそんな声に、ワシは思わず股間を守る手に力が入る。ワシの手の中で、熱くなった愚息がだらしなく我慢汁を漏らしているのが分かった。
*
それからワシは久利谷に手を引っ張られるまま、夜の街を歩いた。最初は近くを通り過ぎる車にもビクビクと警戒していたが、真夜中の街中では透明になっているワシらに気付く者がいる様子はなく、しばらくすると透明化にも慣れてきたワシは股間を守っていた手を離して堂々と歩けるようになった。
何も遮るものがなくなった股座に、夜風が吹き抜ける。長いこと手で覆っていた上に、興奮で肉棒がいきり立っていたせいで少々蒸れていた股間を撫でる風の感触がとても心地良かった。
そうしてしばらく歩いたところで、やがてワシの手を引っ張る久利谷の足が止まる。つられてワシも立ち止まると、そこは蝦蟇住公園の入り口であった。そう、ワシが昨夜――。
「――部長、昨日はここで全裸アナニーしてたんスよね?」
と、ワシの思考を先読みしたかのように久利谷が話しかけてくる。ワシは何も答えず声のする方向を睨みつけた。
「行きましょうか」
それだけ言うと久利谷はワシの手を掴んだまま再び歩き始める。
両脇に木々が立ち並んでいる遊歩道を、服を一切身に着けてない状態で歩き続けるワシと久利谷。昨日ならば途中で横道に逸れて茂みの中へと入っていくのだが、今日はそのまま道に沿って奥へと進んでいく。
周囲に誰もいないか警戒しながらしばらく歩くと、暗闇の中に明かりが見えてきた。どうやら東屋の照明らしい。四本の支柱に支えられている屋根の照明が、休憩所となる木製のテーブルやベンチを照らしている。
そんな東屋に向かって、久利谷がワシの手を引っ張ってぐんぐんと歩いていく。そして東屋の屋根の下まで来たところで、ワシの手首を掴んでいた感触がふっとなくなった。おそらく久利谷が手を離したのだろうが、お互いに透明になっているからこのままでは見失う危険がある。
「おい、久利谷。どこに――ッ!?」
ワシが久利谷の名前を呼んだ瞬間、スリットからはみ出ているワシの肉棒に誰かの指が掠めた感触が走る。電流のような快感に、思わず声が上ずってしまうほどだった。
「あれ? てっきりここら辺にちんぽあると思ったんスけど……」久利谷の声だ。
「こ、こら! いきなり何をする!?」
「へへ。さっき部長にちんぽ触られたお返しっスよ」
「あ、あれは不可抗力であって、わざとでは……」
「っていうか部長。やっぱちんぽ小さいっスね。どこにあるか全然分かんなかったっスよ?」
ふざけたような口調でそうからかってくる久利谷の言葉に、かあっと顔が熱くなったワシは思わず両手で股間を覆い隠す。一方で両手に伝わる温度から、肉棒も負けじと熱を持っているのが分かった。
「お、お前なあ! こんなことするためにワシを連れてきたのか!?」
「いやいや。そんなことないっスよ? だって――」
と、一拍置いたその瞬間に、風が不自然にゆらめいた。そして直後にワシの胸元に久利谷の温かい両手が触れる。
「愉しみは、これからじゃないっスか?」
あっという間に距離を詰めてきた久利谷がそう企んだような声色とともに、その右手を滑らせてワシの胸を撫で始める。
「あっ、こらっ。何を……! あうっ……!」
たまたま久利谷の指先が乳首を掠めた感触に思わず情けない声が漏れてしまう。しかしその声で気付いた久利谷は、照準を合わせるようにゆっくりと乳首に指先を当て、今度は確信を持った動きでワシの乳首を摘まむ。
「あぐっ……! んんっ……!」
乳首を弄られて感じている声など部下に聞かれたくないワシは、必死に口を閉じて堪える。幸い、両手で股間を覆っているおかげで腕が胸元の近くに来ているため、久利谷も上手く乳首を弄ることが出来ないようだった。
だが、久利谷が諦めることはなかった。やがて久利谷はもう片方の手も反対の乳首へと伸ばし、弄り始める。
「うぐっ……! ぐううっ……!」
「部長、どうして我慢してるんスか?」
「え……?」
両乳首を責める刺激に息も絶え絶えのワシの耳に、久利谷が囁いてくる。
「今、部長のことを見てる人は誰もいないんですし、そもそも透明になってるから誰にも見られないんスよ?」
久利谷にそう言われて、ふと思い返す。
そうだ。確かにワシが今いるこの場所は照明で明るく照らし出されてはいるが、周囲には誰もいない。それどころかワシは透明になっていて、部下に乳首を弄られて情けない声を我慢している姿など見られるはずもないのだ。だが――。
「だからって、こんな声を……お前に聞かれたく……」
「部長」
そう言って久利谷はワシの手を取った。乳首を弄られた快感で力が弱まっていたワシの手はそのまま久利谷に引っ張られて、やがて何かに触れる感触があった。
ワシはそれが何かじっくりと触って確かめた。血管が浮き出ている太く大きな茎の上に、エラが張った傘のような形。その鈴口はぬるぬると濡れており、我慢汁が漏れ出ているのが分かった。
透明で見えないが、久利谷の立派な怒張が勃起しているのだと、理解できた。
「オレ、部長と一緒にエロいこと出来るって、ずっとこんなんなってるんス。恥ずかしいのも気持ち良いのもお互い様っスよ」
「久利谷……」
「部長の全部、オレに教えてください。ちゃんと気持ち良くしてあげますから……ね?」
甘えるような声を出す久利谷。その甘い誘惑に、ワシは逆らうことが出来なかった。
「…………痛くするなよ」
ワシは股間を覆っていた両手を離して、背中に回す。そのため股間で主張している肉棒だけでなく、筋肉と脂肪で固く丸く張っている胸板、その双丘の上に立つ乳首も、無防備にさらけ出されることになった。
「――ありがとうございます」
久利谷はそう言うと、再び乳首を弄り始めた。ワシはたまらず「んっ」と声を漏らしたが、久利谷の両手は躊躇いを見せることなくそのまま愛撫を続ける。
乳首を撫でたり、摘まんだり、あるいは指先で小刻みに擦ったり。ワシが両腕を背中に回して邪魔がなくなったため、先ほどよりも激しく、多様な方法で乳首を責めてくる。
そんな刺激に、ワシの乳首は次第に固くなっていき、ピンと立ち始める。
指先でその変化を感じ取ったのか、久利谷は乳首から両手を離す。だがワシの胸板には手を添えたまま、それを頼りに透明になっているワシの乳首を目掛けて、大胆にしゃぶりついてきた。
「んんっ!」
突然乳首を襲う粘膜の感触と、舌から伝わるその体温に、ワシはまたしても情けない声を漏らしてしまう。
だが久利谷は気に留めることなくワシの乳首を舐め続ける。そして乳首への愛撫を舌に任せていることで両手が空いた久利谷は、ワシの素肌を撫でるようにその手を胸板から腹、そして腰へとどんどん下の方へと滑らせていく。
久利谷の手はそのままワシの股間に辿り着くと、肉棒から漏れ出る我慢汁で濡れそぼったスリットの縁を指先でなぞる。
「ん、んう……!」
焦らされるような指先の動きにワシが声を漏らすと、久利谷の手は急にワシの肉棒を握った。
「あっ……! そ、そんな急にっ……!」
「あれ? 触ってほしいんじゃないんスか?」乳首から口を離して返事する久利谷。
「そ、それは……」
その先に続く言葉を言えずにワシが押し黙ると、再び久利谷の舌がワシの乳首を舐める。それと同時に、久利谷の大きく柔らかい手がワシの粗末な肉棒を優しく包み込んだ。
肉棒を握る手の感触から、どうやら久利谷の大きな手ではワシの肉棒を握るのは大変らしく、小指だけを立てて握り込んでいるのが分かった。そんな慣れない握り方のせいか、肉棒をしごく手の動きも若干ぎこちなく感じる。
「部長のちんぽ小っちゃいから、しごくのも大変っスわ」再び乳首から口を離す久利谷。
「…………悪かったな」
「あれ? 怒っちゃいました?」
拗ねた声を出すワシに対し久利谷はそう言いながら、右手でワシの肉棒を握ったまま体勢を変える。透明で見えないが、おそらく風の動きからしてワシの背後に回ったと思われる久利谷は、ワシの肩に左手を添えるとそのまま抱き寄せてきた。毛皮に覆われた久利谷の柔らかい身体の感触と体温が、冷たい鱗に覆われたワシの素肌に伝わってきて、柄にもなく少し胸がドキリとした。
だが久利谷は、そんなワシの気持ちなど知らないと言った様子で肉棒をしごき続けている。鈴口から漏れている我慢汁が竿にも垂れてきたのだろうか、次第に上下する手の感触に合わせてくちゅくちゅと水音が聞こえ始める。
こんなおっさんの小さくて握りづらい、我慢汁まみれの汚い肉棒を、文句の一つも言わずにしごいてくれている。
そんな白熊の健気な奉仕に、ワシの心臓がドクンドクンと高鳴る。熱くなった血液が心臓の鼓動で全身を駆け巡り、内側からじんわりと身体を温めていく。
「はあ……はあっ……はあっ……!」
内側に溜まってきたその熱を逃がすように、ワシは自然と吐く息を荒げていた。だが上下する久利谷の手に握られている肉棒から迸る快感が熱を生み続け、ワシの身体は素肌に汗がにじみ出るほど火照っていた。
そして火照った身体の内側で、熱を帯びた血液が股間の砲身へと集まっていく。このまま白熊が与えてくれる快感に身を委ねていれば、気持ちよく果てることが出来るだろう。
だが、それだけでは満足できないだろうということも、分かっていた。肉体の奥底で疼く衝動が、そう訴えかけていたから。
気付けばワシは、久利谷の手を掴んでいた。いきなりのことに久利谷が「えっ」と小さく戸惑いの声を漏らしたのが聞こえた。
「久利谷……」
息も絶え絶えで、消え入るようなか細い声で白熊の名前を呼びながら、俯いたままその先を続ける。
「挿れて……くれ……。頼むっ…………」
尻穴の疼きに屈したワシは、震えるような情けない声を漏らして、職場の部下相手にそう嘆願する。
さすがに幻滅されただろうか、とワシが心配する暇もなく股間を握っていた久利谷の右手の感触が消える。そして肩に回していた左手も離れたと思ったら、久利谷の両手がワシの身体を包み込むようにして抱き寄せてきた。
背中に伝わる、白熊の胸元と腹回りの柔らかさと温もり。そして尻肉の隙間に、太く硬く、大きくて熱い何かが触れているのが分かった。
「……自分で言うのもなんですけど、オレのちんぽ結構デカいっスよ? 慣らさなくて大丈夫スか?」
「問題ない。準備なら、その……先ほどしてきた」
そう。久利谷の部屋に入ってシャワーを借りた際、洗面台にわざとらしく置いてあったローションを見つけたワシはそれを拝借して、入念に指で尻穴をほぐしておいたのだ。もし久利谷に求められても、その場ですぐさま応えられるように――と。
そんなワシの考えを見透かすように、ふっ、と軽く微笑みを漏らす白熊の声が聞こえた。
「――了解っス」
心なしか少し嬉しそうな声の久利谷は抱き寄せていたワシの身体を撫でながら右手を動かし、尻尾の下に眠る尻肉の元へと滑らせていく。そしてその指先はワシの分厚い尻肉をかき分けて、その奥に眠る穴に触れる。
「んっ……」
「大丈夫っスか?」
思わず上ずった声を漏らしたワシを気遣ってか、久利谷が声をかけてくる。そんな部下に対してワシは何も言わず、ただこくりと頷いてみせる。
すると問題ないと判断したのか、久利谷はその指先を穴の奥へと食い込ませる。事前に慣らしておいたワシの尻穴は、中にまだローションが残っていたおかげもあって、久利谷の指先を一気に三本ほど、するすると違和感なく呑み込んでいく。
「あ、ああっ……!」
久利谷の太い指先に尻穴を蹂躙される快感に腰が砕けそうになるが、そんなワシの身体を久利谷は余っている左手一本で抱きしめて支えてくれる。
その一方で尻穴に突っ込んでいる右手の指先の動きが止まることはなかった。久利谷が指を折り曲げると同時に、指先の近くの尻肉の中に眠る前立腺が刺激され、再び腰が砕けるような快感が脳天まで身体の中を走り抜ける。
「ひぁんっ……!」
快感で力が抜けて緩んだ口元から、普段の野太い声とはかけ離れた甲高い嬌声が漏れ出る。しかし久利谷の指先は前立腺を転がすように尻の中で蠢き回り、何度も何度も繰り返し前立腺を刺激し続ける。
「あっ、あっ、あんっあんっ、やっ、だめっ、らめっ……!」
指先の動き一つで前立腺を刺激されるたびに力が抜けていくワシは徐々に呂律が回らなくなり、膝ががくがくと笑い始めるほどに足腰に力が入らなくなる。
だが自分の足で立てないほどに力が抜けているということは、ワシの身体を支えている久利谷の左手にかかる負担も大きくなるということだ。だから久利谷はワシの身体から完全に力が抜けてしまう前に右手の動きを止めて、尻穴から指を引き抜いた。
「あっ、はあんっ!」
尻から指が吐き出されたときの刺激で一際大きな声を出してしまう。はっと我に返ったワシは慌てて口を塞ぐも、そんなことをしても無駄だとすぐに冷静になる。だって今の情けない声を聞いた人物が少なくとも一人、ワシの後ろにいるのだから。
「そんなはしたない声出しちゃって、気持ち良かったんスか? 部長」
「……うるさい」
後ろから耳元にそっと囁いてくる、白熊のからかうような声にワシはぶっきらぼうに返事する。だがその一方で、囁かれた耳元から熱が顔全体に広がっていくのを確かに感じていた。
「部長」
甘く優しい囁きが再び耳元をくすぐると、久利谷がワシを抱き寄せた。そのとき、ちらりと東屋の中央に鎮座する木製のテーブルが目に入った。
ほんの少しの沈黙の後、久利谷がワシを抱き寄せる腕を緩めた。ワシは自分の予想が当たっていることを祈りながら久利谷の腕から離れて木製のテーブルへと近付くと、その上で仰向けに寝転んだ。
「久利谷……」
ワシは縋るようにそう白熊の名前を呼びながら両足を上げ、膝を抱えてその尻の穴がよく見えるような体勢を取った。と言っても、ワシの身体は透明になっているのだから実際に見えるわけではないのだが。
同様に透明になっている久利谷の動きもワシには見えないため、久利谷が今どこにいるかもはっきりとは分からないのだ。
先ほどのワシの呼びかけに久利谷がどう動くのか、どんな表情を浮かべているのか、何を思っているのかも。その全てが分からない中、ワシはひたすらに濡れそぼった尻穴をひくつかせながら、両膝を抱えたこの体勢で久利谷が来てくれるのをただ待っていた。
するとワシの足の指先に何かが触れる感触があった。視線を向けてもワシの足に触れるその何かは見えないが、きっと久利谷の手だろうと思った。
そんな久利谷の手は探り探り確かめるような手つきで足の指先から足の甲へ移り、そこから滑るように脛を撫でて膝に辿り着くと、太ももへと手を下ろしていく。
お互いに身体が透明になっていて見えないから仕方ないとは言え、いちいち身体の形や体勢を触って確かめないと挿入もままならないこの行為に、多少のじれったさは否めなかった。
だが、それと同時にワシは、肌と肌が触れ合うこのささやかな時間を、ワシの肢体に優しく触れる白熊の手の動きを。たまらなく愛おしく思っているのも、また事実であった。
そんなことを考えていると、土手肉に指先が当たる感触にワシは我に返る。気付けば太ももを撫でていた白熊の手はとっくに股座に到達しており、そこから足と腰の間にある肉の谷間をなぞった先にある蟻の戸渡りに沿って、更に下へ下へと降りていく。
いよいよだ――。そうワシが胸を高鳴らせていると、尻穴に指先が触れる感触が訪れた。
「部長」
久利谷がワシを呼ぶ。
「いきますよ」
続けてそう呼びかける。ワシは何も答えずただこくりと頷いた。透明だから頷く動作だけでは伝わるわけがないのだが、何となく声を出したくなかったのだ。
けれど、そんなワシの気持ちを汲み取るように尻穴に熱い感触が訪れた。瞬間その熱さに溶かされるように、ワシの尻穴はとろりと周辺の筋肉を緩めてしまう。
すると筋肉が緩んだことを感じ取った久利谷が腰をぐいと前に動かしたのだろう。ワシの尻穴に触れていただけの『それ』は蕩けるような熱とともに太さを増して奥に入ってくる。
「お゛っ、お゛お゛っ、ん゛お゛お゛っ……!」
ず、ずず、ずずずっと段階を踏んで奥に入ってくる大きな『それ』は、その熱と太さでワシの尻穴を広げていく。普段の自慰で用いている張型とは違う、本物の肉棒がもたらすその存在感に野太い声を出すのを抑えきれない。
「…………ふうっ」
久利谷が一息つくのと同時に、尻穴を掘り進めていた肉棒の動きが止まる。ワシが好奇心で自分の尻穴に手を伸ばしてみると、指先に白熊の柔らかい土手肉の感触があった。つまりそれは白熊の腰とワシの尻がぴったりくっついているわけで、白熊の巨根がワシの中に全部入ってしまったことを意味している。
「へへ、マジでオレのちんぽ全部入っちゃいましたね。普段どんだけ遊んでるんスか?部長」
「……うるさい」
真面目に答えるのが恥ずかしくてわざとらしくぶっきらぼうに答えるワシ。だが、羞恥心を煽るようなその問いにワシの肛門が勝手に反応して、肉壺の中にある巨根を締めつける。すると久利谷が「うわっ」と驚いた声を出す。
「びっくりしたー。部長、もしかして興奮してます?」
「…………だったら何だ」
悩んだ結果、ワシはそう答えた。すると何が可笑しかったのか、「ふふ」と久利谷が笑う声が聞こえた。
「いや、やっぱ部長って変態だなって思っただけっスよ」
「うるさい。そう言うお前こそ変態だろうが。わざわざ透明になる薬なんて作りおって、この露出狂が」
「昨日コソコソとこの公園で全裸露出アナニーしてたような人に言われたくないっスね」
久利谷の流れるような罵倒と同時に、乳首を触られたワシは思わず身体をびくつかせる。右手と左手でそれぞれ左右の乳首を摘まんでいる久利谷の指先は、そのまま乳首を摘まむ力を強める。
「あっ……!」
瞬間、身体の中を走る電流のような刺激的な快感に声が漏れる。
「ほら。ちょっと乳首をいじっただけでそんな声出す人が強がったところで全く説得力ないっスよ。部長」
「う、うるっ、さい……! これは……!」
「これは?」久利谷がピンとワシの乳首を指で弾く。
「あううっ!!」
不意の刺激に一際大きな声を出してしまう。ワシは慌てて両手で口を塞ぐが、興奮で息が上がっているせいで指の隙間から荒くなった吐息が漏れだすのを止めることは出来なかった。
「ほら。やっぱり変態じゃないっスか。乳首弄られて気持ち良いんでしょ?」
「…………」乱れた息を整えるのに必死なワシは、両手で口を塞いだまま答えられなかった。
「ああ、答えなくてもいいっスよ。だって――」
久利谷がそこで言葉を区切ると、不意に右の乳首を摘まむ感触が消えた。と、思ったら股間でいきり立つワシの陰茎が誰かに強く握り締められた。
「ああんっ!」
突然の刺激にワシはたまらず声を上げるが、両手で口を塞いでいたおかげでそこまで声は響かなかった。だが、ワシの陰茎を握るこの白熊には間違いなく聞かれてしまっただろう。
「小っちゃい小っちゃいちんぽをこんな必死に硬くしちゃってるんですもんね。気持ち良くなかったら、こんなに我慢汁垂れ流してギンギンにおっ勃てるわけないっスもんね」
「そ、そんなことっ……!」
挑発するような久利谷の物言いにワシは思わず反論しかけたが、その続きを口にすることが出来なかった。
透明になって一緒に全裸散歩をしようと誘われて断らなかったのも、シャワーを借りたときにローションを使って尻穴をほぐして準備をしていたのも、先ほどの手淫でわざわざ久利谷の手を止めてまで射精を堪えたのも。全ては久利谷に犯してもらいたかったからだ。
だからこそお互い透明で挿入すらままならない状態で、こうして久利谷の肉棒を尻穴で受け入れることが出来て、久利谷と繋がることが出来て、ワシは心の底から悦びを覚えているのだ。
そんなことないと否定することなど、冗談でも言えるはずがなかった。
だからと言って、透明で見えないのをいいことに野外で全裸になった挙句、部下に肉棒を尻に挿入されていることに悦んでいるなど、口が裂けても言えるわけもないのだが。
ゆえにワシは何も言わず、尻穴をきゅうっと締めつけた。中に入っている白熊の肉棒の太さを、大きさを、その形の全てを確かめるように。尻穴に神経を集中させてただただその逸物を肉壁で締めつける。
「うおっ……! めっちゃ締めつけるじゃないスか。エロいっスね」
久利谷が気持ち良さそうな吐息を漏らしながらそう煽ってくる。その言葉にワシは顔に血が集まって熱くなるのを感じると同時に、また尻穴がきゅうっと反応して肉棒を締めつけてしまう。
いや違う。ワシの尻穴が締めつけているだけではない。白熊の肉棒もまた更に硬さを増したことで、内側から尻穴を押し広げているのだ。
つまりそれは、久利谷がワシの尻穴で興奮してくれているということだ。こんな年のいったおっさんの尻に。都合のいい勘違いかもしれないが、そう思うと年甲斐もなく嬉しくなった。
「部長……」
と、不意に名前を呼ばれたワシはどきりと目をしばたかせる。
「な、何だ?」
「オレ……我慢できそうにないっス……良いスか?」
はあ、はあ、と荒っぽい息を挟みながらそう嘆願するような声を漏らす白熊。今にも暴れだしそうな欲望を抑えている白熊に、ワシは何も言わずに両足を白熊の腰に回してがっちりと固定する。その上で尻穴にも力を入れて、その凶暴な肉棒を搾り尽くすように締めつける。
「……あざっす」
砕けた口調の敬語でそう言うと白熊は腰をぐっと前に押し出して、肉棒でワシの尻穴の奥をえぐる。その動きで、白熊の肉棒は肉壁の裏に隠されたワシの前立腺を刺激する。
「お゛っ……!」その刺激に思わず喉から野太い声を出してしまうワシ。
「大丈夫っスか?」
「も゛っ……問題、ないっ……!大丈夫だ……!」
「了解っス。それじゃあ……」
そう言うと久利谷は腰を引いてから、再び腰を押し出して肉棒で前立腺を掘り当てる。ワシはまた「お゛うっ」と野太い喘ぎ声を漏らした。
そこから久利谷は何度も腰を前後に動かして、その肉棒でワシの尻穴を犯す。その勢いと速度は徐々に増していき、ぐちゅぐちゅと掻き混ぜるような水音と、白熊の腰とワシの尻肉がぶつかるたびにパンパンと鳴り響く破裂音もまたどんどん大きくなっていく。
「はっ、はっ、はっ、はあっ……!」
「お゛っ、お゛っ、お゛っ! お゛お゛っ!! お゛お゛っ!!」
息を荒げて一心不乱に腰を振る白熊と、その白熊の巨根に尻穴を犯されてあられもない声を上げて喘ぐワシ。白熊が尻穴の奥にある前立腺を掘り当てるたびに、その太く大きな肉棒が持つ熱が快感となってワシの肉壁から身体の内側に広がり、へその辺りまで熱がせり上がってくるような感覚を覚える。
「はあっ、はあっ……! どう……っスか、部長! オレのちんぽは!」
「お゛っ、お゛っき、お゛っ! お゛お゛っ! お゛っ、きいっ、お゛っ! お゛お゛んっ!!」
「はあ? 何言ってるか分かんないっスよ! ちゃんと言ってください!!」
「う゛お゛お゛っ!!」
一際尻穴の奥を深くえぐるような白熊の一突きに、ワシもまた一際野太い喘ぎ声を上げて吠える。だが白熊はそんなワシに構うことなく、暴力的に腰を振ってワシの尻穴を犯し続ける。
「ほらっ! もう一度言ってみてくださいよ! でないと抜いちゃいますよ!?」
「あ゛っ! だ、めっ……! ら゛めっ!! ぬいぢゃっ、ら゛めつ!!」
「じゃあ言ってください! オレのちんぽ、どうですか!?」
「お゛っきいっ!! お゛っきくでっ、お゛うっ! ぎもっ、ぢ、い゛い゛っ! あ゛あ゛っ!!」
前立腺を犯され続けた快感が熱となって全身に広がり、脳まで溶かしそうな快楽の中、ワシは必死に声を上げる。意味のある言葉になっているかどうか分からないが、ただひたすらに自分の情動のままに心の底から叫ぶ。
すると突然、誰かが乳首を摘まんできた。
「ごあ゛あ゛っ!!」
不意に襲い掛かる両乳首の快感にワシはたまらず大声を上げる。そして慌てて自分の胸元を見るが、身体が透明になっているため何も見えない。もちろん、同じように透明になっている久利谷がワシの乳首を摘まんでいる光景も、目で捉えることは出来ない。
だが触られているその感覚だけははっきりと分かる。久利谷の指先がワシの乳首を摘まんだり、こねくり回したり、そして指の腹で乳首の先端を擦るようなその繊細な動きの一つ一つが、快感となってワシの脳髄へと突き刺さってくる。
「あ゛っ! ぢぐっ、びっ! ぢぐびっ、ら゛めっ……あ゛あ゛っ!!」
肉棒が尻の奥から突き上げてくるだけでなく、両手で乳首を弄られている快感に耐えられず、ワシの身体は喘ぎ声とともにびくびくと痙攣してるかのように小刻みに震え始める。そして痙攣して緊張したワシの肉体は、肉棒を咥え込んでいる尻穴にまで力が入って、白熊の肉棒をぎゅうっと力強く締めつける。
「あっ! やばっ!! 超気持ち良いっスよ、部長!!」
尻穴が締めつけているのにもかかわらず、構わず腰を振り続ける白熊。むしろ肉壁から分泌されている腸液や、肉棒から漏れ出ている我慢汁が尻穴の中を満たしているおかげで滑りが良くなっているのか、白熊が腰を振るスピードはますます勢いを増していく。
「あ゛あ゛っ! あ゛っ、あ゛っ、あ゛あ゛っ! あ゛あ゛っ! あ゛あ゛っ!! がっ、あ゛あ゛あ゛っ!!」
尻穴を犯される快感で脳を塗り潰されたワシはもうまともな言語すら発することが出来ず、ただただ獣のような咆哮を繰り返すばかりだった。そして交尾に喘ぐ獣と化したワシはその先を求めるように、白熊の肉棒を更に強くしっかりと尻穴で締めつけた。
「うっ! あっ、やばっ! 出るっ、出る出るっ!! 出るっ!!」
「い゛い゛っ! だっ、あ゛あ゛っ! だじっ、でっ!! だじでっ!!」
限界を訴える白熊と、縋りつくように求めるワニ。静かな公園に二匹の獣の咆哮が重なる。
「あ゛っ! い゛っ、ぐっ……! い゛ぐっ、あ゛あ゛ーーーっ!!!」
先に限界を迎えたのはワシの方だった。巧みな指遣いで両乳首を責められながら、激しいピストン運動で間断なく前立腺を突かれ続けたワシの粗末な陰茎は、噴水のように勢いよく精液を吐き出した。精液は綺麗な放物線を描きながら、そのまま重力に従ってぼたぼたと、透明になったワシの腹肉の上に落ちて白く汚した。
「オレもっ、出しますよっ……!! うっ、ああっ……!!」
うめき声とともに、久利谷もワシに続いて絶頂を迎えた。久利谷の怒張からまず一発目の精液が放たれ、ワシの尻穴の更に奥へとせり上がってくる。
だが久利谷の巨根は一発の射精だけで治まることはなかった。ワシの尻肉の中で久利谷の肉棒がどくんと強く脈動すると、それに合わせて二発目の精液が放たれた。そのままどくどくと肉棒が脈打つたびに三発目、四発目の射精がワシの腸壁を叩きながら、容赦なく犯してくる。
「はあ……はあ……」
腹の中が精液で満たされる多幸感に包まれながら、ワシは全力の射精に伴う脱力感に襲われる。呼吸もゆっくりと落ち着いていき、心地良い眠気とともに重たい瞼を閉じていく。
と、そのときだった。不意に「ガサッ」と、茂みが揺れるような音が耳に飛び込んできて、ワシは慌てて目を見開いた。
「お、おいっ。久利谷。誰かがこの近くに――!」
「大丈夫っスよ部長。オレたち透明になってるんスよ? バレっこないですって」
「あっ、それもそうだな……」
久利谷にそう諭されたワシは、改めて透明になっている自分の身体を見つめる。確かに粗末な陰茎もだらしない腹肉も見えない。ワシらがこんなところで行為に及んでいることなど誰も知りようがないだろう。
ただワシの腹の上に飛び散っている精液と、辺りに充満している粟の臭いは、その行為の激しさを物語っている。
「うわあ……。我ながらひどいな……んん?」
何か違和感を覚えたワシは再度自分の腹の上に飛び散っている精液に目を向ける。そして背筋が凍るような事実に気付く。
「お、おいっ! 久利谷! どうしてワシの精液は見えているんだ!?」
「どうしてって……あっ」
一拍遅れて久利谷も気付いたようだ。そう。ワシの身体は透明になっているのに、ワシの陰茎から身体の外に放たれた真っ白な精液は透明になっていないのだ。
透明になっていない、ということは。他の誰かに見られる可能性があるということ――。
ねえー。何か変な匂いしなーい?
どこかから聞こえてきた、誰かに話しかけるような女性の声に耳を澄ませると、二人分の足音がこちらに近付いてきているのが分かった。
「逃げるぞ! 久利谷!」
「了解っス! よいしょっ、と……!」
「あっ、待っ、あんっ!」
乱暴に尻穴から肉棒を引き抜かれた際に前立腺を擦られたワシは思わず上ずった声を漏らしてしまう。
「ちょっと! 何変な声出してんスか!」
「うるさいっ! お前がいきなり抜くからだろうが!」
「とにかく、早く逃げますよ!」
そう言うと久利谷はワシの手首を掴んだのだろう。透明で見えないが、ワシの手首を包み込む温もりを感じた。
その温もりに手を引っ張られる形で、透明になっているワシは素っ裸のまま、静かな夜の公園から慌ただしく逃げ出したのだった。
[newpage]
あれから慌てて久利谷の家まで逃げ帰ったワシは再びシャワーを借りて、疲れ切った状態で何とか服を着ると、余力を振り絞って自分の家へと帰った。おかげで家に帰った直後、落ちるようにベッドに倒れ込んでそのまま寝た。
そして翌日。家を出るのがいつもより少し遅めになったものの無事に出社したワシは、いつもと同じようにモニターとにらめっこしながらキーボードを叩いて仕事に打ち込んでいた。
「はあ……」
ため息をついたワシはキーボードを叩く手を止める。そして両手を大きく上げて後ろに体重を預けて思い切りを伸びをしながら、ワシは昨日の一件を思い返していた。
透明になれる薬を持っていた部下。それを使って部下と一緒に全裸で夜の街に繰り出し、そして公園にある東屋の照明の下で――。
「部長」
不意に声をかけられてドキリと心臓が跳ねる。慌てて声が聞こえた方向に振り返ると、そこには不敵な笑みを浮かべる白熊の部下、久利谷聡介が立っていた。
「……何の用だ?」ワシはわざとらしく声を低くして尋ねる。
「そんな怖い顔しないでくださいよ。昨日一緒に愉しんだ仲じゃないスか♡」
「うるさい。バカなことを言っている暇があったら仕事しろ」
「はーい。すいませーん」
軽い口調でそう答えながら、久利谷は踵を返して自分の席へと戻っていく。その背中を見つめながら、ワシはもう一度ため息をついた。
久利谷聡介。穏やかな顔つきと物腰柔らかい口調、そして丸々としたふくよかな体型が特徴的な白熊。
だがまさかあんな透明化の薬を隠し持っていて、しかもワシと同じように野外で露出するのが好きな上に、行為の最中は被虐心を煽るような言葉責めとともに容赦ない腰遣いで尻を掘ってくるなんて……。
久利谷のことを穏やかな奴だと思っていたワシは、あいつのあんな裏の顔があったなんて未だに信じられずにいた。まあ裏の顔と言っても、昨日は透明になっていたので実際には見ていないのだが。
「…………」
昨日のことを思い返したワシは少し考え込んだ後、尻ポケットからスマホを取り出してメッセージアプリを開き、文章を打ち込んでいく。
『あんな風にたまに夜風に当たるのも、悪くはない』
そう打ち込んだワシはそのまま相手に送信する。すると数分もしないうちに既読表示が出て、相手からの返信が送られてきた。
『また一緒に散歩しましょうね♡』
そのメッセージを読んだワシはスマホから顔を上げて送信先の相手、久利谷が座っている席に視線を向ける。するとワシの行動を先読みしていたように、久利谷は既にこちらを見つめていた。
手に持っているスマホを口元に当ててこちらを見つめたまま、久利谷はにやりと目を細めて不敵な笑みを浮かべる。
その煽情的な表情に、ワシは机の下で股間が熱くなるのを感じた。どうやらこの熱を冷ますためには、また夜風に当たる必要があるようだ――と、ワシは更に股間の陰茎を硬くした。