「テールバーストシンドローム」
初めてその症状を見たときは思わず笑ってしまいそうになった。
それはなにかの拍子に突然尾てい骨が急激に発達してしまい、衣服を突き破るように尻尾が生えてしまうというもの。しばらくすれば尻尾は縮み元に戻るのだが、尻尾の成長は何時どこで起きるのかわかっておらず、コントロールできない。最近の研究では、遺伝子変化による祖先返り説など様々言われているがほとんど解明されていない未知の症状なのだ。
私はそのテールバースト症候群の症状緩和を目的とした医療施設に勤める医師だ。今日も担当している患者の診察を行う。
「サトウさん~おはようございます~」
部屋に入るとそこには四つん這いになって力んでいる患者の姿があった。
「せんせい!また!また!尻尾が!!んんん!んんあああああ!」
すると、患者のズボンの腰のあたりが大きく膨らみ、ポップコーンが弾けるように尻尾が飛び出した。
この施設の患者は尻尾が生えてもズボンが破けてしまわないように、お尻のところにボタンがついている。そのためかポーンと弾けるように勢い良く尻尾が飛び出してしまう。その様子が面白おかしく見えていつも笑ってしまいそうになる。
吹き出しそうになった口を押さえるといつも通り診察を始めた。
「あらら、生えちゃいましたか~」
「んん~、、先生、今日は…2回目です…」
患者は尻尾が生えたせいかすこし疲れた様子だった。
「そうですか、尻尾が生えたときに痛みは?」
「痛みのほうは…あんまりないです。ですけどこっちが…」
患者は恥ずかしそうに自身の股ぐらを押さえている。
「はぁ…またですか、、着替え足らなくなっちゃいますよ」
テールバーストの症状は痛みを伴うのだが、それ以上に快感を伴うらしく、多くの男性患者は尻尾が生えると同時に射精や失禁をしてしまっている。
「ご、ごめんなさい…」
「もう…多少は我慢して貰わないと…」
(ほんと、みっともないな…)
「す、すみません…」
「まぁ、いいですよ。看護師に着替えを用意するように言っておきます。」
「はい…」
患者はしおらしく頷くと長く伸びた尻尾を恥ずかしそうにズボンの中に押し込んだ。
「せんせい、私は…治るんでしょうか…」
「さぁ…今のところ完治した例は無いですし…今後も経過観察と飲み薬で症状が収まるのを待つしかないですね。」
「そうですよね……」
「それでは次の診察があるので」
(ほんと可愛そうな病気だな、テールバースト症候群は)
私はずっとテールバースト症候群のことを他人事のように思っていた。あの日が訪れるまでは、
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長期休暇中、私は家族をつれてハワイ旅行に行っていた。
「ハワイについたな~早速ホテルに行って荷物預けたら観光だ!」
「たのしみね~」
「ぼくは海に行きたい!」
「あなた、ユウタは学校で泳ぎの練習をしてたのよ~」
「そうか~なら一緒にいっぱい泳ごうな」
「うん!」
空港でそんな話をしていると、私の身体に突然異変が起きた。
「ううっ…」
「あら、あなたどうしたの?顔色が悪いわよ」
「すまん、ちょっと気分が悪くて、きっと飛行機で酔ったのだとおもう」
(なんだ…急に背中がじんじんと痛んで…)
「パパ、ホテルで休む?」
「だ、大丈夫だ!」
私は一抹の不安を抱えながらホテルへと向かった。
ホテルへ向かうタクシーの中でも、私の背中の痛みは収まるどころか、次第に強くなっていく。
「わるい、ユウタ、母さんといっしょに海に行っててくれ。」
「えー」
「あなた大丈夫?」
「あ、あぁ、すこし休めば…」
「わかったわ、じゃあユウタいくわよ」
「パパ、ばいばーい!」
私はホテルの部屋で一人休むことにした。
気がつくと背中の痛みは下半身にまで広がっていた。
私は医者としての知識からこの痛みが何なのか考える。
「くそ、痛い…それに…身体が妙に熱い…この症状どこかで…」
私はきっとこの症状を知っている。しかし、頭の整理がつかない。
そんなこんなで考え込んでいると、痛みはついに耐えられないほど強くなっていた。
「い、痛い…く、これは病院にいったほうがいい…な…」
私は受話器を取るために立ち上がった。その時だった。
「んんんん…!??」
全身の血の気が一気に引いた。意識が一瞬飛ぶような感覚がして、倒れそうになった身体を支えるように腰に力を込めた時だった。
ズリュ…
「ヒッ…!?」
何かが私の中から漏れだしてしまったような感覚。私はその感覚に覚えがあった。私はとっさに両手でお尻の尾てい骨の辺りを押さえつけた。
「ち、ちがう!!こ、こんなの!!嘘に決まってる!!」
焦れば焦るほどそれは確信へと変わっていった。
「ちがう!ちがう!ちがう!!!私は!私は!ああ漏れる!!ダメだあああ!!」
私の絶叫と共に私が必死に堪えていたものが濁流のように溢れてしまった。
ズリュン!!
ビリビリ!ズボッ!!
それはあっという間だった。ズボンを簡単に引き裂き、私の身体から抜け出ていくようにそれは勢い良く伸びた。同時に、私の頭は弾丸を撃ち込まれたような強烈快感が支配した。
「だ、ダメだあああああ!!」
ビュルビュルル…
私は自らの股ぐらを掴むと痙攣するように何度も射精した…。
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「パパぁ?元気?中に入りたいんだけど、扉開けて?」
「い、いまは…だめだ!!」
「なんでぇ?」
「あなた~中にいれて~?」
「そ、その…部屋にゴキブリが出てな!!退治するまで逃がさないように扉を閉めてるんだ!!」
「ゴキブリ!?きもい~!」
「え~?ゴキブリですって?ここ高級ホテルなのにゴキブリがでるの?」
妻は不振がっている。だがまだ開けるわけには行かない。
なぜなら私の尻尾はまだ短くなっていないのだから。
「くそ…!早く元に戻れ!!」
私は尻尾を掴むと身体の中にねじ込むように押し込んだ。しかし、そんなことで状況が変わるわけがない。
「わかったわ、スタッフさん呼んでくるから!ちょっと待ってて!」
妻が走ってスタッフを呼びに行った。
(まずい!まずい!まずい!!)
「くそ!!早く!!早く!!」
「この部屋です!」
「わかりました!すぐに退治します。お客様には別のお部屋を用意いたしますね。」
どうやらスタッフが到着したようだ。しかし、まだ尻尾は縮んでいない。
「隠すしかない!!しかし、このどこに!?」
私の身体から生えてしまった尻尾は1m近くあり、服に押し込んで隠すなんてことはできなかった。
「あなた~?スタッフがマスターキーで開けるって言ってるけど大丈夫?」
「だ、だめだ!まだ!」
「開けますね…」
「まって!まだ!まだああ!!」
ガチャリと扉が開いた。
「パパ!ゴキブリはどこ!?」
「あぁ、いま、そこの窓から逃げたよ」
「な、なんだ…良かった。」
「パパどうしたの。汗びっしょりだよ?」
「いや、いや何でもない。」
私はとっさに壁に尻尾を押し付け、背中で挟み込むようにして尻尾を隠した。どうやらバレていないようだ。
「パパ?大丈夫?」
息子が近づいてくる。
(だめだ!こっちにくるな!)
危険を感じたその時、尻尾はシュルシュルと縮んでいきあっという間になくなってしまった。
「よ、よかった…」
私のほっとした様子を妻は不思議そうに見ていた。
「あなた、そんなに虫苦手だったっけ?」
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「パパ!こっちこっち!!」
息子が浮き輪を持って海の中ではしゃいでいる。
「あなた、ユウタが呼んでるわよ!いってあげて」
「あ、あぁ」
「あら、あなたまだ着替えてないの?せっかく新しい水着買ったのに」
「そ、そうだな」
ハワイ二日目、私は家族と海に来ていた。
昨日あんなことがあってからというもの、私は尻尾が生えてしまう恐怖に支配されていた。私はテールバースト症候群であることは確定してしまった。もし、家族に見られたらきっと私が今まで患者に思っていたように私のことを笑いバカにするのだろう。そんなこと私のプライドが許さない。
「パパ!はやく!!」
「わ、わかったよ…」
(水着はヤバイな…もし水着で症状が起きたら…)
そう考えるだけで私は恐ろしくて仕方がない。
昨日の一件で尻尾が生えるのは我慢なんて出来ないことがわかった。尻尾の前兆が起きたら生える前に誰もいないところに逃げ込むしかない。
幸い海の中、もし尻尾が生えて海に入っていればバレないかも知れない。
私は恐る恐る水着に着替えると、海に入っていった。
「パパすごいよ!海が透明だ!!」
「そうだな!じゃあパパが沖のほうまでつれていってあげよう!」
「わーい!この水中ゴーグルでお魚いっぱい見るんだ!」
私は浮き輪を抱えた息子を沖につれていった。
その最中だった。私の身体が再び熱を帯始めた。
(しまった…これは…まさか…)
私は必死に尻尾が生えるのをこらえようとする。
「パパ?どうしたの?」
「ん…なんでもない。それより向こう見てみなさい。あそこに船がっ!…んん…ん…」
ズリュン…メキメキ…
「え~?どこ?」
息子がこちらを向こうとしたので私は適当な方向を指差した。
ビュルル…ビュッ
「クッ…ふぅっ…」
私は海の中で息子を前に、尻尾の刺激で射精してしまった。
「えー船なんてないよ~?」
「パパの…見間違えだったみたいだ」
「なーんだ。あ!パパみて!そこに蛇みたいなのがいる!!」
息子が嬉しそうに海面を指差した。そこには私の尻尾がゆらゆらと動いていた。
「そ、そうだな…危ないかもしれないから岸に帰るよ…」
「えーゴーグルで観察したいのに!」
「だめだ…」
私は息子を岸につれていくと、すこし泳いで来ると言い、尻尾が縮むまで沖で泳いだ。
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日本に帰国する日になった。
「楽しかったね~」
「また来たいね!ハワイ!」
「そ、そうだな…」
妻と息子は満足そうな表情をしていた。一方の私はというと、尻尾をことで頭がいっぱいで旅行なんて楽しめたものじゃない。常に尻尾が生える恐怖と戦っているのだ。
「あら、もうこんな時間。ゲートに行きましょ」
空港のゲートにつくと、私たちは荷物を保安検査員に渡した。荷物をゲートに通したときだった。ゲートから大きな音が鳴った。
ビビーッ!!
「あら、私たちの荷物からだわ。」
「おいおい、ちゃんとチェックしろって言っただろ」
「ちょっとすみませんね~」
「鞄のほう開けて確認しますね~」
保安検査員が数名集まってきて私たちの荷物を調べ始めた。
「たく、怪しいものなんてなにもないのに」
「すいませんね、これが仕事なもので、一応大丈夫だとは思いますけど、ボディチェックもいいですか?」
「はぁ…好きにしてくれ」
私たちは一人ずつボディチェックを受ける。最初は息子、次に妻、最後に私の順番だった。
「私の番ね。胸とかあんまり触らないでよね!」
「大丈夫ですよ!女性の人が確認するので…」
妻がボディチェックを受けているときだった。
突然、全身が熱を帯びて汗が吹き出し始めた。
(しまった!まさか…)
そのまさかは的中していた。
それを意識した瞬間、全身が一気に強ばって尻尾が生えるように準備を整え始めた。
「ふぅ、終わったわ、次はあなたよ?」
「い、今はだめだ!!」
「え?」
「どうしてダメなんですか!?」
保安検査員の表情が一気に曇った。
(しまった!怪しまれてる!)
「いや、お腹がいたくて!トイレ!先にトイレに行かせてください!!」
しかし保安検査員はそれを許してくれない。
両手を広げ私の行く手を阻む。
「すぐ終わります!!命令に従いなさい!!」
「く、くそ!早くやりやがれ!!」
私は観念して両手を広げた。
ボディチェックが始まると、さっきの行動を怪しんでかさっきよりも念入りにボディチェックが行われてしまう。
(くそ!はやくしろ!もう少しで!耐えるんだ!!)
尻尾が生えるのを必死に耐えるが限界が近い。私は身体をモジモジと捩りながら必死に我慢した。
「ぐ、ぐぅ…」
「苦しそうだな…隠し事があるんだったらさっさと吐くんだな!」
(なにもねぇよ!!尻尾が漏れちまううう!!)
しばらくボディチェックをしてもなにもでないとわかり保安検査員は不満そうに私から離れた。
「なにもでないな…よし、行っていいぞ!」
(やった!解放された!!!)
私の尾てい骨は今にも爆発しそうで、すこし触れただけでも決壊してしまいそうだった。
私は一目散にトイレに向かって走り出した。しかし、不運なことに私は小さな段差に躓いてしまった。
「きゃ!あぶない!!」
妻の大きな声と共に私は盛大に転んだ。
妻の大きな声は空港内に響き渡り視線を集めていた。
(まずい!!!)
私は床に叩きつけられると同時に、必死に我慢していたものが一気に解放された。
「あっ?!ああああああああああああああ!!!!」
ズリュンッ!!ビリッビリビリ…パッ~ン!!
私の腰から太く長い立派な尻尾が弾けるように露になった。それを見ていた周りの人たちは驚くような声をあげた。
「漏れるっんんんんんんんん~ッ!?!!」
私は尻尾の刺激で身を震わせた。当然、その刺激で私はパンツの中で盛大に吐精し、それは何度も何度も続いた。
「ハハハッ!!なんだあの日本人は!尻尾が生えてるぞ!?」
「なにあの人!?尻尾が生えてるわ!」
「なんだあの間抜けな顔!?痙攣してるぞ?」
「ギャハハ!なにあの人~!」
(やめろ…私を見るな…私の尻尾が見るな…)
私はその場で泣き崩れてしまった。それをみた周りの人はさらに面白がって笑っていた。良くみると写真を撮る人までいた。
(終わりだ…)
「パパ…?」
息子の険しい表情が見える。
「…」
妻は一言も喋らずその場に立ちすくんでいた。
私は恥ずかしくてその場で身体を丸めうずくまるとそのまましばらく泣いていた。
そんな中でも尻尾は己を主張するかのようにユラユラと気持ち良さそうに揺れていた。
翌日、SNSには私の尻尾が生えた時の動画が拡散されていた…。