救急車が病院に着くと、すぐにストレッチャーが運ばれて行く。
俺はただ走って着いていった。
「こちらでお待ちください」
「何でですか、俺も一緒に…っ「ここからは医療関係者しか立ち入ることが出来ません。
診察や治療が終わり次第声を掛けますので、」
そう言って、看護師はストレッチャーを追って入っていき、静かな廊下に俺一人が残された。
不安を胸に抱き、廊下を右往左往していると、不意に救急搬送口の方に1台のパトカーが止まった。
車から1人の男性が降りて、こちらへ向かってくる。
「……黒木くんで、合っているかな」
その警官の顔を見て、俺は心の中で首を傾げた。
どこかで見た気がしたのだ。
「あぁ、ごめん。
俺は捜査一課の泉宮 涼介。
千秋とは高校時代からの友達でね。
少し前、千秋に頼まれて富士川漁港の倉庫に様子を見に行ったんだけど…覚えてないか」
漁港の倉庫って…もしかして…
『涼介…ぁ、さっき話した知り合いの警官の人ね……』
千秋さんが言っていたのはこの人だったのか…。
「…千秋があんなことになって、動揺しているだろうし何より辛いと思う。
そんな時に悪いんだけど、、捜査に協力してもらいたいんだ。
何があったのか説明してくれないかな。」
涼介さんの言葉に、俺は唇を噛み締める。
暗闇で見た人影。
もしもあいつが犯人なら、捕まえてもらいたい。
その一心で記憶を辿りながら全てを話した。
「分かった。
目撃者がいなかったかも含めて、もう一度整理してみる。」
そう言って涼介さんは立ち上がった。
「……君のせいじゃない。
あまり気に病まないように。」
それだけ言い残して、涼介さんは去っていった。
暫くして医師の雨宮と看護師が俺の元へ来た。
「っ千秋さんは…」
雨宮は複雑な表情で俺を見つめた。
「鉄パイプが当たった衝撃で、身体のあちこちに痣は出来ているものの、大事には至らず、命に別状はありません。
しかし…大量の鉄パイプが当たったことで意識を失い、そのまま地面に倒れたことで頭を強く打っており、今は昏睡状態です。」
「……ぇ…昏睡、って……」
昏睡って詳しい意味なんて知らないけど、よくテレビとかで見るものでは、中々目が覚めないんじゃなかった、?
そうなってるってこと?
「いつ、目覚めるんですか…」
「…今の所は、なんとも言えません。
いつ目覚めるかという見当も付きません。
ただ、待つことしか……」
ショックでふらついた俺を看護師が支える。
なんだよ…それ……
じゃあ千秋さんは、いつ目覚めるか分からないってことか。
もしかしたら、ずっと目が覚めないことも、あるってこと、かよ…、?
そんなの……そんなの…っ
「ひどすぎる……」
雨宮について行って通してもらった病室。
白いベッドの上で、千秋さんは静かに眠っていた。
頭には白い包帯が巻かれ、酸素マスクをつけて、点滴をしている。
千秋さんの左手をそっと握る。
その指には、倒れた時までつけられていた指輪がなかった。
慌てて探していると、横から看護師がそっと指輪を手渡してくれた。
俺は、千秋さんの手と、指輪を握り締めて泣いた。
ねぇ、千秋さん。
何で千秋さんなの?
何で、俺じゃなかったの、?
何で…貴方がこんな目に遭わなきゃいけないんだ…。
こんなの…信じたくないよ…
ねぇ、嘘だって言ってよ…
そう言って抱き締めてよ……。
千秋さん…貴方の声を聞かせて……。
続く