ブランシュ ヤギ女性 第一発見者
「……ブランシュさん、お疲れのところごめんね。
これ、温かいお茶。
もしよかったら、少しでもお腹を温めて、
落ち着いてくださいね。」
(隣にそっと腰掛け、声をワントーン落として、
波を立てないように優しく語りかける)
「今朝は本当に、恐ろしいものを見てしまったね。
怖かったでしょう。
オオカミさんからね、
『ブランシュがひどくショックを受けているから、
優しくしてやってくれ』って、
とても心配そうな伝言を預かってきたんだよ。」
「だからね、何も焦らなくていいし、
どうしても辛かったら途中で
お話を止めても大丈夫。
ただね……あなたが今朝の5時ごろ、
喉が渇いてお茶を買いに行ったとき、
自販機のところで何があったか……
あなたの目で見聞きしたことを、
覚えている範囲で少しだけ教えてもらえるかな?」
「……ごめんなさい…思い出したくないわ…」
(気持ち悪そうに口を手で覆うと横に首をふる)
(慌ててバッグから清潔なハンカチを取り出し、
そっと手渡しながら、
あなたの背中に優しく手を添えてゆっくりとさする)
「うん、うん……ごめんね。
無理に思い出させようとして、
本当にごめんなさい。
見るだけでも恐ろしいものだったのに、
第一発見者になってしまうなんて……。
思い出すだけでも胸が苦しくなるのは当然だよ。
ハンカチ、使ってね。
ゆっくり、深呼吸してみて。
吸って……吐いて……。」
(あなたが少し落ち着くのをじっと待ち、
お茶の缶をそっと手元に寄せながら、
さらに声を潜めて、
まるでささやくように語りかける)
「今朝のことは、
もうこれ以上詳しく聞かないからね。約束する。
ただね……もしよかったら、
昨日の『夜のこと』で、
ひとつだけ教えてほしいんだ。
オオカミさんから聞いたのだけど、昨日の夜、
彼が車の中でタバコを吸っていたでしょう?
そのあと、夜中……例えば二時ごろとかに、
外から何か『大きな音』が聞こえたり
しなかったかな?
古いモーテルだから、外の音が部屋まで
響いたかもしれないなと思って……。
本当に、それだけでいいんだ。
何か、ふっと耳に残っている音はなかったかい?」
「…ごめんなさい、
彼が水を持って帰って来てからは…
何にも聞いてないわ。」
(背中をさする手をそのままに、
あなたの言葉を頭の中で反芻する。
そして、あなたの心を刺激しないよう、
表情は穏やかなまま、
しかし心の中でひとつのピースが
カチリと嵌まったのを感じる)
「……うん、謝らなくていいんだよ。
教えてくれてありがとう。
オオカミさんがお水を部屋に持って
帰ってきてくれたんだね。
彼、ブランシュさんの体調を
すごく気遣っていたものね。
そのあと、お二人で
静かに過ごせていたなら本当に良かった。」
(手元のメモに『彼(オオカミ)が水を
持って帰ってきてからは何も聞いていない』と
そっと書き留め、優しく微笑みかける)
「2時ごろの音のことは、気にしないでね。
ぐっすり眠れていたなら、それが一番だもの。
たくさん怖い思いをさせてしまって
本当にごめんね。もうお話は終わりです。
オオカミさんが向こうで
心配そうにこちらを見ているから、
彼のところに戻って、
今日は温かくしてゆっくり休んでね」
(ベンチから立ち上がり、彼女がオオカミさんの
元へ歩いていくのを優しく見送る)