葛藤されても憧れる者はいる

  「う…」

  俺は目を覚ますとそこは見知らぬ天井だ。

  「ここ…は…?」

  「目を覚ましましたか」

  俺は目を覚ますとベットに寝ていて横にはエドアと古炎龍、さらにはギルドマスターであるシーエストさんがいた。

  「おっ!やぁ~と目覚めたかそこのデブ人間、俺がいなかったら今頃丸焼きだったな~感謝しろよ~?俺があの魔物を倒したんだからな~」

  どうやら古炎龍が奴を倒してくれたようで威張らんばかりに俺を見る、横でシーエストさんが古炎龍を睨む。それは隣にいるエドアも同様に。

  「古炎龍様?」

  「おっとわりぃ…」

  すかさず謝り椅子に座る、なんか心配かけちまったな。

  「そうか、俺は…倒れて」

  「ここはギルドの医務室です。一応依頼は完了しましたが何故倒れたのかわかりますか?」

  シーエストさんの言葉に俺は一つ原因をわかってはいた。

  「確か空腹で」

  「そのようです。あまり食べていなかったのですか?」

  俺は朝あまり食べなかったのもあってかほぼエドアが食っていた。

  「痩せるためにあまり食べなかったので」

  「それは流石に無理しすぎですよ?」

  「そんな食わない状態で戦えるのか~?」

  シーエストさんと古炎龍に言われ何故か俺の心に何か刺さる感じがした。

  「ザドラ、無理はするな」

  「無理なんて…」

  何故か俺は苛立っていた。俺だって痩せていかないと…あいつらにパーティを解雇されたから。

  「食事でも」

  「いいです……」

  俺はシーエストさんが食事を出そうとしたが断る。

  「しかし」

  [b:「いいんです!俺だって痩せないと!」]

  また俺は何か言われる、それが一番辛く感じた。

  「シーエストよ、すまないが話がある。それとお前もだ。ザドラ少し席を外す」

  「……」

  エドアは何か察したのか二人を連れて部屋を出た。

  「……」

  俺はただ……。

  [newpage]

  「古水龍様どうしたんですか?話とは?」

  「おいおいなんで俺まで?」

  エドアはシーエストと古炎龍を連れてギルド長室へ入って話をすることになった。古炎龍は自分まで話すことになるのか理解していないようだ。

  「うむ…ザドラのことでな、恐らくだが…」

  エドアはザドラの事で話をする。パーティから解雇された原因は自分がデブであることで悩みそれでも痩せれずに悩んでいることを。

  「なるほど…だから食事を拒んだ」

  「なんかそいつらのような人間って…最悪だな」

  「我も一緒にいてまだ体型で悩んで一年経っても痩せれず焦りが出ている。そうなると難しいな」

  理由を理解してシーエストは首を傾げる。

  「かといってまた空腹で倒れると依頼にも支障がきたしますし」

  エドア達は悩んでしまう、彼の悩みをどう解決するべきなのかを。

  「ってかそれならあのパーティの人間共をぶっ潰せばいいんじゃね?」

  [b:「馬鹿かお前は!!国ごと亡ぼすつもりか!?我らは古代龍の誓約というものがあったの忘れたか!?」]

  単純な発言をする古炎龍にエドアは怒鳴りだす、古代龍達には何やら決まり事があるようだ。

  「古代龍の誓約…確か七匹の古代龍達の間で交わされた誓約でしたね?」

  「さよう、竜人であるシーエストならわかるであろう?かつて我らは魔王に立ち向かい勇者によって魔王は絶たれ世界は平和となった…その後我らは世界を見届け我ら古代龍の間に再び魔王の支配がされる世界にならないために誓約を立てた」

  七匹の古代龍…エドアを含めて彼らは誓約を交わした、誓約の中には国によっては魔の者達の支配以外の国に手出しをしてはいけないと。

  「忘れてた…すまねぇ…」

  冷静になって古炎龍は謝る。

  「言葉には気をつけろ馬鹿古炎龍、言っていい事と悪い事があるとしれ」

  睨みつけられ古炎龍は項垂れる。

  「言葉には気を付けましょう古炎龍様、今はザドラさんの事を何とかしなければ」

  改めてザドラについて話し合うことに。

  [newpage]

  「……」

  医務室のベットにいる俺は迷っていた、空腹になったのは俺の原因だ。だがあまりに苛立ってしまいエドア達にあたってしまったことを後悔する。

  「どうしよう…さすがにシーエストさんもといギルドマスターにあたったのは」

  やってしまった、そう後悔してしまう俺。

  「ぐっ…」

  だが余計腹が減ってしまい動きたくても動けない。そんな時だった。

  コンコン。

  「ん?」

  扉を叩く音が聞こえる、エドア達話終わったのか?

  「エドア?」

  すると扉が開き中に入ってきたのは。

  「あ、あの…」

  「お前は!?」

  それは先ほど俺が助けた黒い狼獣人だ、軽装の少しボロついた鎧を着ていて俺のところにきた。

  「あなたに助けられた者ッス、倒れて運ばれたと聞いて」

  どうやら俺が運ばれてきたのをギルドの受付嬢か誰かに聞いてきたようだ。

  「そ、そうか…」

  俺は安堵した、助かってよかったと。

  「う…」

  ふと腹の虫がまた鳴る。

  「お腹が空いてるッスか?」

  「そうなんだが…食いたくないんだ」

  だが腹の虫はなおも響く。

  「どうして食いたくないんスか…?」

  「それは…」

  そう言われ俺は戸惑う。

  「助けられたのも何かの縁ッス、話してほしいッス」

  「……」

  こんな俺を助けられるのかわからない、話し相手もいなかったし話すか…。

  [newpage]

  俺はこれまでの事を狼獣人に話した。

  「そうだったんスか…だからそこまで」

  「でもギルドマスターにも怒っちまったから俺ってなんかムキになりすぎた…痩せたいと」

  本心では痩せたい、俺のようなデブは誰かの恥になると思っている。

  「でも俺…あんたに助けられた時…かっこよかったッス…」

  「え?」

  意外だった、こんなデブな俺にかっこいいと言ってくれるなんて。

  「見た目ではそう思っても俺にとって命の恩人なんス!」

  助けられたことで救えた、それがこいつにとってよかったと言える。

  「俺…種族がフレアワーウルフという狼の一族で生まれた時からこの体毛なんス、本来フレアワーウルフは炎が使えるッスが俺は炎が使えず皆から忌み嫌われていたッス…」

  ふとそいつの眼には涙が出ていた。

  「俺は15の時に村を出て冒険者になりました…薬草採取などの依頼で生計を立てていたんス…火山で火燐草の採取依頼してるところを魔物に」

  なるほど…だからあの場にいて俺が助けたってとこだが結局腹が減って倒れちまったしな。

  「だからあんた…いや!兄貴!」

  「へ?」

  今兄貴って言ったか?

  「俺を!兄貴見たく鍛え太らせてください!!」

  狼獣人は俺の前で頭を下げる、おいおい!?鍛える事はいいが太らせてくれとかとんでもないこと言ったぞこいつ!?見た感じ体型は狼獣人特有の細く筋肉もそこまでついていない。そういえば聞いたことあるが狼獣人は何故か太ることとかできなかったはず。

  「ま、待て待て!?どうしてそこまで!」

  「俺みたいな役立たずは今のままでは強くなれないんです!だから……お願いします!!」

  ここまで懇願されるとな…だがこいつの気持ちはわからなくない、俺もあいつらにパーティを解雇されて役立たずと捨てられた。そう考えると……。

  それにこいつは俺がデブでも受け入れてくれてる、どうなるかわからない…何故かデブでも受け入れられる奴がいるんだなと。

  「…頭上げてくれよ」

  狼獣人は頭を上げる。

  「意外な言葉で動揺してしまったがいいのか?俺のようなデブになっても?」

  「構わないッス!だって兄貴は命の恩人でありますから!」

  それでも弱い自分を変えたいその心意気をこいつから感じた…俺どうかしてたわ、痩せてそれからどうするのか考えていなかったのと俺のようなデブを受け入れる奴がいたんだなとだからこそ。

  「わかった、そこまで言うのなら鍛えてやってもいい」

  「あ、ありがとうございますッス!」

  狼獣人は喜んだ、あ、そういえば。

  「そういえば名前名乗っていなかったな、俺はザドラ・エイスカッシュ。お前は?」

  「あ、まだ名乗ってませんでしたッスね…俺はクロワ、クロワ・フレアルフッス、よろしくッスザドラ兄貴!」

  クロワと俺は互いに自己紹介したのだった。

  「う…」

  やばっ…そういえば腹減っていたの忘れてた。

  「兄貴!やっぱ食事しないと!体がもちませんッス!」

  「わかった、ギルドマスターのところに行って食事を頼む」

  「はいッス!兄貴待っててくださいね!」

  そう言い一目散にクロワは部屋から出て行った。

  「はあ~」

  安心したのか俺はベットに横になる。ずっと腹の虫を響かせながら。