☆☆☆
ひんやりとした重さを額に感じ、俺はゆっくりと目を開いた。
「ん……」
重たい瞼を開けると、見知った天井。
それより上を眼球だけを動かして見据えれば、氷嚢が乗っかってあるのが見えた。
どうやら俺はベッドに寝かされているようだ。
そして額の上に氷嚢が乗せられているということは……。
「気がついたか」
聞き慣れた声がすぐ近くから聞こえてきたので視線をそちらに向けると、そこには竹中の姿があった。
彼は俺の顔を覗き込むように見つめていたが、目が合った途端ぷいっと顔を背けてしまった。
また顔がちんちんに熱くなってしまいそうだ……。
まあ、自業自得ではあるのでそれについては極力触れないようにするとして。
俺は気怠げに身体を起こそうとして……布団を被せられている事に気が付く。
しかも全裸だった身体には服っぽい感触もあって……。
「身体の方は大丈夫か?」
竹中は心配そうに声をかけてきた。
その声で俺は自分の痴態を見られた事を思い出し、ぶわっと顔が赤くなるのを感じた。
(みっ……見られてた!)
そう認識すると頭が沸騰しそうになり、また熱でも出るんじゃないかと思ってしまうほど恥ずかしくなった。
もう本当最悪だ。死にたい気分だった。いっそ殺してくれ……。
しかし俺が頭を抱えて唸っていると、怪訝に思ったらしい竹中が声を掛けてくる。
「どこか痛むのか?」
そう言いながら竹中は俺の額に手を当ててきた。
その暖かな手にドキッとする。
「いや……たぶん、もう大丈夫」
俺はそっぽを向きながらなんとか返事をする。
なんでだろうか、目を合わせることが出来なかった。
そんな俺を不思議そうな目で見つめると、彼は椅子に座りなおして俺に話しかけてくる。
「……なんにせよ無事でよかった」
その言葉は本気で心配しているようで、心からの安堵が伝わってきた。
「扉の外から俺の名を絶叫してる声が聞こえて駆けつけたら、股間を抑えて気絶してるお前が居た」
よかった……オナニーの全貌は見られていないようだ。
安心したと同時に、自分がした事の恥ずかしさを思い出して頭を抱えてしまう。
(穴があったら入りたいよう……)
俺は布団を頭の上まで引っ張り上げると、その中でもぞもぞと縮こまった。
「あっ」
そんな俺の動作を見て、竹中は何かを思い出したかのように声を上げた。
「……すまん」
そして心底申し訳なさそうに謝ってきた竹中に驚きながらそちらに目を向けると、奴もそっぽを剝きながら言葉を続ける。
「汗が酷かったものだから身体も拭いてパジャマに着替えさせておいた。先に言っておくが変な事はしていない」
「え、あ……」
「……それだけ言いたくてな」
俺が混乱して何も言えないでいると、竹中は「それだけだ」と言って椅子の上で足を組んだ。
俺はばっと上半身を起こして布団を捲り上げた。
可愛らしい花柄が描かれたパジャマを身につけていることに気がついて、それが竹中によるものだと分かると俺は顔をさらに真っ赤にして俯いてしまった。
恥ずかしさや屈辱感やらでもう何がなんだか分からなくなっているのだ。
「……ありがと」
俺は小さくそう呟くと、布団を被ってまたベッドの中に潜り込んだ。
今は竹中の顔を見ることすら出来ないのだ。
「もう昼だ。具合、悪くないんだったら昼飯食いに行くついでに他の服着れそうか確かめてくれ」
体調はと言うと、汗をかいたおかげかすこぶる良い。
それに何より『あの』絶頂は凄まじく体力を消耗するのか、この身体のせいか。
お腹が雑巾絞りされているかのように空いていた。
返事をする代わりにきゅうと悲鳴を上げた腹の虫を聞いて、竹中は「着替えたら降りてきてくれ」と言って部屋から出ていった。
☆☆☆
着替えて扉を出ると、夏の香り
を乗せた爽やかな風が下から吹き込んできた。
スカートという初めて穿く女の子の服に戸惑いながら、一階へと降りていく。
紙袋に入っていた竹中の妹のお古だという服は、サイズもぴったりだった。
スポブラもあって助かった、先ほどの事もあるけどこれ以上擦れたら上も下も激痛で行動不能になってしまう恐れすらあったからだ。
しかし、この可愛らしいワンピースも先程のパジャマもまるで新品で、それに前に見かけた陽菜ちゃんの趣味とはまた違う、ちょっぴり少女らしいデザインなのは少し気になる所ではあった。
明らかなスポーツマンである努を『兄貴』と慕い、本人もボーイッシュな出立ちの陽菜ちゃんのそれとはやっぱりチグハグだ。
「陽菜ちゃんのやつ……だよな?」
でも、まさかあいつがこれを着るとは思わないしなぁ。
俺は首を傾げながらも階段を降り切ると、なんだろう。心なしかそわそわしている竹中の背中に声を掛けた。
「着てきたよ♪お兄ちゃん♪」
「ぶっ!」
すると竹中は吹き出すようにしてこちらを振り返り、ゲホゴホとむせ始めた。
そのリアクションを見て俺はしたり顔でニマニマしながら奴の周りでステップを踏む。
「あれれ~?どうしちゃったのかなお兄ちゃん♪私だよ私、分からない?」
「勘弁してくれ」
ジト目でこちらを見てくる竹中に、俺はむっとして言い返す。
「……なんだよ冷てえなあ。お前が決死の覚悟で陽菜ちゃんの『新品』を貸りてきてくれたから、せめて妹になって恩義に報いろうとすればこの仕打ち……恥ずかしくないの?」
「親が陽菜の為にプレゼントしたのに着なかった服なだけだ、以上。行くぞ」
竹中は冷たくあしらうと、俺の抗議を無視して歩き出す。
お兄ちゃんなんて言われて満更でもなさそうにしてたくせに。
俺は不満に思いながらも、その後を追いかけてバス停へと向かった。
☆☆☆
竹中に連れられてやってきたのは近くにある喫茶店だった。
意外とイケるらしく、料理が美味しいと評判らしい。
窓際の二人掛けの席に案内された俺たちは適当なメニューを頼むと、暫く他愛もない話をしていた。
「お兄ちゃん♡今日はデートに連れて行ってくれてありがとう♪私ね、すごく嬉しい♡大好きなお兄ちゃんと一緒にこうやってお出かけ出来るなんて夢みたい!」
「やめろ」
俺は猫撫で声を作って竹中に話し掛けた。
喉仏のない声帯は二日酔いからすっかり調子を取り戻したようで、舌ったらずではあるが発音ははっきりしている。
竹中は心底嫌そうな顔をするが、構わず続けた。
「ほら、こうやって綺麗な景色を眺めながらカフェでお茶するの憧れだったんだよ~?お兄ちゃん以上に格好良い男の人なんて居ないんだから♡」
霞がかった窓の外にはなんて事ないアスファルトの地面とコンクリート構造物、街ゆく人々と車の姿しかない。
「……やめてくれないか」
「この景色よりお兄ちゃんの方が格好良いのに~」
「おい!」
さすがに我慢出来なかったらしい竹中は声を荒らげた。
そして驚いたお客さん達に、愛想笑いを引き攣らせながらぺこぺこと謝る。
そんな姿が滑稽で面白くて、俺はケタケタと笑うと、竹中は困ったような顔をして眉間を揉んでいた。
「……妹ごっこをしてふざけるのはやめてくれないか。さすがに辛い」
「なんで?お前、前に酔った時に『陽菜が『兄貴』って慕ってくれるのは嬉しいけどホントは『お兄ちゃん』って呼ばれたい』って言ってた癖にい〜♪」
飲み会の都合の悪そうな事は全て覚えているのが俺だ。
「……忘れろ、口が滑っただけだ」
「えー、いいじゃん♪陽菜ちゃんなら喜んで呼んでくれるよ?今度頼んであげよっか?」
俺が意地悪くそう言ってやると、竹中は苦虫を嚙み潰したような顔をしてコーヒーカップへと視線を移す。
そしてそれを啜ると、降参したかのように深い溜息を吐いた。
「……もうやめろよ」
そう呟くと頭を抱えてテーブルに突っ伏してしまった。
そんな奴が面白いものだから、俺はわざとツンツンと指で突いてやる。すると、奴は恨みがましそうにジロリと睨みつけてきた。
そして一言、
「俺はもう帰る」
そんな子供じみた事を言うものだから、俺も意地悪く応酬してやる事にした。
「やだ」
「…………」
再びテーブルに突っ伏してしまった竹中に追い討ちをかけるようにしていると、店員さんが早速注文したパンケーキを運んできた。
甘ったるい匂いを放つそれは、いかにも女が好きそうな見てくれをしていた。
上にはシロップ漬けになった果物が散りばめられていて、その中心部には生クリームでデコレーションされたハート型のチョコレートが鎮座している。
「ほら、私の分のパンケーキあ〜んして食べさせてあげる♪はい、あーん」
「やめてくれ」
「ね?食べさせてあげるから、あ〜ん」
俺は満面の笑みでスプーンに盛ったクリームを竹中の口元に持っていった。
すると奴は降参とばかりに肩を竦めて口を小さく開いた。
そこにパンケーキとクリームを入れてやると、そのままむぐむぐと咀嚼しはじめる。
俺は竹中が口に入ったものを飲み込んだタイミングを見計らい、にやりと笑った。
「ねえお兄ちゃん?美味しい?」
「……そうだな」
一瞬の沈黙の後、奴が少しだけ震える声でそう答える。
それがおかしくて俺は笑いを堪えるのに必死だった。
「もしかして照れてる?」
「うるさい」
竹中はむすっとした顔をして、コーヒーを口に含む。そしてまた頭を抱えてしまった。
(冗談だって分かってるだろうになぁ……)
プライドが傷つけられてイライラしているのだろう。それを紛らわすように再び口を付けるのを見て、そろそろ可哀相だと思ったので謝る事にした。
「ごめんごめん、そこまで嫌がるとは思わなくてよ。こんな上等な服着させてもらって、お礼に普段不足してるだろう妹成分の補給をする為お前だけの妹になってやろうと……」
「お前は俺をそんな風に見ていたのか」
じろりと睨まれ、俺はこれ以上からかうのはやめた。
(悪かったよ……)
俺もパンケーキを一口サイズに切り取って口に入れると、幸せな気分になった。
(ん〜っ♡おいしぃ♡♡♡)
クリームが乗っかったスポンジケーキが口の中でほどけていくかのようだ。焼き加減も丁度良くてふわふわである。
思わず顔が綻んでしまうのを感じる。
味覚まで見た目相応に美化されてしまっているなんて、つくづく難儀な身体だ。
「美味いか?」
すると俺の笑顔を見て気が変わったのか、竹中はそっぽを向きながらそんな事を聞いてきた。
そのいじらしい態度に俺は少しだけ動揺したが、俺もそれなりに悪乗りの心得はある方だ。ならばこの機を逃す手はないとばかりにふざけた態度を取る事にした。
「美味しいよ♡お兄ちゃんっ♪」
もう好きにしろ、と言わんばかりに手をひらひらさせて降伏の意を示す竹中。
俺はそれを見て内心ほくそ笑んでいた。
(そうそう、素直が一番だ)
甘くてふわふわ、ふんわり優しい生クリームにちょっぴりビターなチョコレートシロップ。
舌を包み込むようにとろけるスフレは、濃厚なのにくどくなく、それでいてすぐに無くなってしまった。
☆☆☆
昼食を摂った後、服を見て回るという竹中の提案によりショッピングモールを訪れていた。
さすがはお洒落な土地柄だ。ブランド物の店が軒を連ねて陳列された商品達は見ているだけでも楽しい気分になる。
ただ残念なのは今の俺には金がなく、物をねだれる相手は『お兄ちゃん』しか居ない。
「ねえ見てお兄ちゃん♡このパンツ真ん中にポーチがあってオシャレだけど何が入るの?」
俺はメンズ下着コーナーで海外ブランドの『身体の一部が大きい人向け』の下着を手に取りながらそう尋ねた。
とにかく、この完全に持て余しているサイズのチンポが収まる下着が欲しくて、竹中に下着を買ってもらうことにしたのだ。
今現在だってスカートの中でぶらぶらしていて収まりが悪い、早くなんとかしたかったのが本音だろう。
竹中はしゃがみこんで俺が手にしている下着を見た後、小さく溜息を漏らした。
「知らん」
「えー、また意地悪するー。お兄ちゃんも、こんなパンツ穿いてるんじゃないんだあ?」
こいつのチンコを直接見た事はなかったが、先程の部屋での事を鑑みると普通のサイズじゃなかった。
きっとこのメーカーを知っていてここに連れてきたと言う確信すらあった。
「……黙秘する」
「まっいいや。試着出来ないからサイズ合うかよく分かんないし、自分で測ろーっと」
俺はそう言うと再び商品の陳列された棚に向き合う。
ヒップのサイズだけはあるからメンズでも多分いける。
なので股間のモノを収めてくれる、せめてもの妥協点を探すことにした。
デザインはどれも野郎向けって感じだから俺でも分かる。
いくらか手に取っていくと、ちょっと場違いなものを見つけて首を傾げた。
(おっ……。これは……♪)
竹中が知らんぷりを決めつけている間にそれもカゴに入れて、会計に持っていく。
渋々財布を出す竹中を尻目に、俺は店員さんに満面の笑みを浮かべた。
「買ったやつ、着て行っても良いですか♪」
「か、かしこまりました。更衣室はあちらになります」
店員さんは度肝を抜かれながらも営業スマイルを崩さずにそう言ってくれたので、俺は礼を言ってそそくさと試着室に入っていった。
☆☆☆
女の買い物は時間が掛かると、休憩コーナーに半日以上生息しているくたびれた中年男性は言っていた。
あれは事実だ。
現に俺は、女の子の買い物の楽しさを身を持って痛感している。
「陽菜の何倍買い物に時間を割いてんだお前は」
「……だって、楽しいんだも~ん♪」
「ガキかよ……」
竹中は本日何回目かも分からない深い溜息を吐き出す。
実際、この肉体にあった服をその場で当てがってみたり、試着してみると時間なんて放置したアイスクリームだ。
とにかく今の俺は客観的にみてもひじょーに可愛くて、どれを試してみても似合ってしまう。
鏡の前であれこれ合わせていると楽しくなってしまって時間を忘れてしまった。
「これなんてどうかなー」
ちょっと大人っぽいワンピースはオフホワイトの生地に薄いベージュ色の花柄がプリントされている。
腰からふわっと広がるフレアスカートも好みで、可愛らしさの中に大人っぽさのある組み合わせがとても良い感じだ。
「似合うだろ?」
俺が可愛らしく首を傾げて尋ねると、竹中は半眼で俺を睨み付けた。
着替えては試着室のカーテンからお披露目すると、やつはいつも無視を決め込む。
「お兄ちゃん、ちゃんと見てよぉ」
「何を着ようとお前の自由だろ」
俺は頰を膨らませて抗議するのだが、竹中は視線を外して取り合ってくれなかった。
ぶーっと口を尖らせるが、奴が相手にしてくれないなら仕方がない。
しょうがないので俺は、その場でスカートを捲り上げて先程買ったとっておきのを見せてやることにした。
それを見るや否や、竹中はその場で一瞬フリーズした。
「おい。何やってんだ」
「え~、似合う?」
すぐさまそう言った竹中は口調からして努めて冷静だったが、そのリアクションから俺は自分のチョイスに満足する。
真っ白かつシンプル、日本のトラディショナルな下着といえば、この『ふんどし』しかあるまい。
これの何が良いかと問われれば俺はこう答えるだろう。
男の中の男に相応しいからだ、と。
「可愛いでしょ?」
揺れる前垂れからちらりと見えるゆったりとした袋に包まれたイチモツは今にも零れ落ちてしまいそうで、そのまま後ろに絞られた立て廻しは尻の割れ目に食い込んでその真っ白い桃のような尻の輪郭をくっきりと誇示している。
「……全く。悪ふざけはやめろ」
俺があざとく首を傾げるが、竹中はひらひら手を振って俺を追い払うような仕草を見せた。
こんな可愛らしい生命体が、これでもかとオシャレをして、だのに下着はこんな実用的な前垂れを見せつけているのに。
俺は悔しくなって、ふんどしをぐっと食い込ませて丸出しの尻を見せつけてやる。
すると竹中は真っ赤になって顔を背け、指で顔を覆った。
(なんて分かりやすい奴……)
その隙を俺は見逃さなかった。
俺は半身を乗り出して一歩踏み出すと、奴の手首を引っ張った。
巨漢は片足で床をタップして、狭い試着室を更に窮屈にさせた。
ほぼゼロ距離と言ってもいい。
俺は竹中の耳元で囁く。
「見てくれなきゃヤダよ。ね?お・に・い・ちゃ・ん♡」
そして俺はスカートの裾をめくって、尻肉が完全に食い込んだ前回しを竹中の目の前で晒してやった。
「っ」
竹中は声にならない声を上げて、俺の股間と尻肉に目を奪われていた。
大声で怒鳴ったらまだ逃げれるはずなのに、その目は目の前の肉の塊に囚われ、心の動揺を表すかのように目をキョロキョロさせている。
(な~んだ)
俺は奴のその様子を見てにやりと笑いそうになる。
(思ったよりムッツリじゃないか)
竹中はたっぷり三十秒も俺の下着(ふんどし)を凝視していた。
そしてようやく我に返ったのか視線を逸らすと、俺の手を無理やり振りほどいた。
「ふざけるのも大概にしろ」
そして再び目を逸らすが、その視線は泳ぐばかりだったので、もう少し遊ぶ事にした。
「あ〜、似合ってないかあ。じゃあ次の服にしよ〜っと」
俺はワンピースを脱ぎ捨てて下着姿になると、わざと前屈するようにしながら足元の服を漁る。
突き出したデカケツは当然壁際の竹中に向かって行ってズリズリ後ずさりを強要する。
そして俺に突き動かされるように竹中が下がった瞬間、俺のケツは奴の股にぶつかった。
「ひぁっ」
俺は咄嗟に出てしまった素っ頓狂な声に、慌てて口を押さえる。
(マジ……で……?)
触れた瞬間に感じる熱く固い感触に、俺はごくりと息を呑んだ。
まさかとは思ったが、竹中の股間はズボンの上からでも分かるくらい完全に勃起していた。
すごい存在感と熱意を尻に感じる。
俺は動揺を悟られないように竹中に背を向けるが、下着姿でケツを振りながら服を漁るというかなり恥ずかしい体勢になっていた事には気付かない程慌てていた。
次なる服を探るたびに自然と押し付けてしまうたびに、竹中のモノはどんどん熱く大きくなっていく。
「う〜ん、どれにしよう〜」
俺はわざとらしいほど大きな声で独り言を言いながら、尻を竹中に押し付けて遊んでしまう。
そして一歩前に踏み出すと同時に大きくバウンドさせると、熱い肉棒が尻の割れ目に沿って擦るように往復した。
(ああっ……すごいぃ♡)
前回しは思っていた以上に強く食い込んで、もしかしたら大ぶりなアナルは殆どはみ出て竹中に丸見えになっていたかもしれない。
それが擦れて気持ちいいし、何より竹中のモノが脈打つ振動をダイレクトに感じてしまって、思わず涎を垂らしてしまいそうになってしまった。
いや、下の方は既に先走りが洪水のように溢れて、下着に染み込んでしまっているかもしれない。
そしてふと目の前の鏡を見て愕然とする。
そこには可愛らしい顔を真っ赤にしてトロンとした目つきになり、男を誘惑するように尻を突き出したメスが映っていた。
(ち、違う!)
俺は我に返って自分の痴態を振り払うように頭を振る。
(俺がこんな顔してエロい下着つけて、野郎のチンコケツに擦り付けて喜んでるなんて……)
そして俺は見てしまった。
それより上の光景を。
熱に浮かされたような竹中の顔と、その股間の膨らみが余りにも雄々しくて……
俺は自分の身体の奥から熱いものが込み上げてくるのを感じた。
俺は自分の中から込み上げてくる衝動を抑える事が出来ずに、そのまま目の前の鏡に手を伸ばして縋り付くように抱きついた。
顔を見られたくなかったし、見たくなかったのが現実だった。
おかしい。
だっておかしいじゃないか。
俺は見てくれこそ変わってしまっても生物学上はオスであるし、竹中だってまさにオスで、俺の親友で、今は頼れる『お兄ちゃん』のはずで。
それがどうしてこんなに俺はドキドキしているんだろうか。
(これじゃまるで……)
そこまで考えて、思考は中断された。
背中に熱い体温を感じると共に、耳元で囁かれる言葉があまりにも刺激的だったからだ。
「いい加減にしろ」
それは低く唸るような怒声だったけれど、俺を動揺させるのには十分過ぎるほど熱情を帯びていた。
震える声で、俺は懇願する。
「ごめん……なさい」
押し付けられた胸筋は固く、熱い鼓動が伝わってくる。
全てが俺を包みこんでいるかのように錯覚してしまうほど熱く強く抱きしめられていた。
太い逞しい腕が俺の身体を締め付けて、柔らかい身体が少し軋んだ。
痛いくらいの抱擁の筈なのに俺は不思議と心地よさを感じてしまっていた。
「おにいちゃん……ごめんなさい」
「怒ってない。謝らなくていい」
その声は優しかったけれど、むしろ怒鳴られるよりもよっぽど怖かった。
そして竹中は俺をゆっくり向き直らせて向き合う形になったのだが、俺の怯えた姿を見て呆れたように頭を搔いた。
「服着ろ、買って帰るぞそれ」
「はい……」
俺は気まずさと恥ずかしさで俯きながら、脱ぎ捨てたワンピースを着る。
そんな俺の様子を竹中は何か言いたげな顔で見詰めていたが、結局そのまま無言で服を着替え始めた。
「ねえ竹中……怒ってないの?」
不安になって俺が尋ねると、竹中は深い溜息を吐いた。
「お前のそういう所だ」
「え?どういうとこ……?」
俺が聞き返すと、奴は気まずそうな表情をして再び長い溜息を吐いた。
そして頭をガシガシと掻きむしりながら、言いにくそうに口を開く。
「なんでもない。全部可愛かった。似合ってる」
「へっ」
予想していなかった答えに、俺はぽかんと口を開けて固まってしまった。
竹中は顔を真っ赤にして視線を外して、そそくさとカーテンの外に出ると、レジで支払いを済ましていた。
俺はと言うと、もう勝手に顔がにやけてきてしまって顔を両手で抑える事しか出来なかった。
(へえっ!?そういうとこって、どういう所……なんだ?聞き間違い?……それとも……)
尻に食い込んだふんどしを直すと、先ほどの熱い感触を惜しむように、俺はもう一度ぎゅっとお尻を締め付けてみた。
「……きっと、惚れ薬のせいだ」
誰にも聞こえないぐらい小さな独り言をこぼすと、俺は微熱の気持ちのまま、竹中の後を追うことにした。
☆☆☆
「……今日はありがと。竹中……」
帰り途、唇をつんと突き出してそっぽを向きながらも竹中にきちんと礼を言う。
別に気恥ずかしかっただけで、感謝していない訳ではないのだ。
「ん」
と無愛想な返事をする奴の表情は柔らかいものになっていて、俺はそれを指摘する気にはなれなかった。
「バイト代入ったら返すから」
「……別に気にしなくていいぞ。たまには良いだろうああいうのも」
竹中はぶっきらぼうにそう答えるが、俺は気付いてしまった。
シャツの裾を掴んでいる奴の手が僅かに震えていることに。
(手汗びっしょりじゃん……)
俺は思わず笑いそうになるのを堪えて、下唇を軽く噛んで上を向いた。
「あーあ、デート終わっちゃうなー。楽しかったのになー」
「なんだそれは」
竹中が不機嫌そうに答えた。
(それでいーんだよ、それで)
俺はふふんと勝ち誇ったように笑って見せた。
「せっかくかわいい服に靴に、下着まで♪いっぱい買ってもらったから、明日から女子力磨くの頑張ろーっと」
「……」
竹中は俺の言葉を聞いて、何か言いたげに唇をパクパクさせていた。
しかしすぐに諦めたように溜息を吐いて、そして言った。
「魔女探し、するんだろ。じゃないとお前一生そうだぞ」
俺は目をぱちくりさせる。
「……別に構わないけど」
「俺が困るんだよ……お前が他の誰かからも言われ始めたら、流石に」
竹中は苦しそうに呟くと、しばらく押し黙ってしまった。
そんな奴を見て、俺はポツリと言葉を返す。
「……なーんだ……そっか……」
(そうだよね……そりゃそうだよね)
それはひどく安心する気持ちだったけれど、同時にどこか寂しさも感じた。
一生このまま。この身体で生きていくのも悪くはないかなと思ったけれど、こいつはそうではないんだなと思うと俺は少し申し訳ない気持ちになった。
本当に、俺の事を心配して付き合ってくれているのだ。
「じゃあ、一緒に魔女探しする……?」
俺は躊躇いがちにそう尋ねる。
竹中は心底嫌そうな顔をして、大きな溜息を吐いた。
「お前ってほんと馬鹿だな」
大きな掌が俺の天然パーマをくしゃくしゃにする。
俺はそれをどこか心地好く思いながら、意地悪でこまっしゃくれた言い回しを奴に返す。
「楽しい夏休みにしようね♪お兄ちゃん♡」
「お兄ちゃんはよせ」
竹中は心底嫌そうに首を振ると、少し歩調を早めて俺の前を歩き始めた。
慌てて追いかけて、結局隣に並んで歩く。
竹中はチラリと俺を横目に見ると、いつものように意地悪な事を言い始めるのだった。
「お前みたいな手間のかかる妹はいらない」
「ええ〜?ひどぉい」
俺が口を尖らせると、竹中はバツが悪そうに明後日の方向を向く。
(それならさ……)
俺は竹中の腕に絡みついて上目遣いでおねだりする。
「じゃあさ……彼女ってのは?夏休み限定の♪」
竹中はなぜか頬を赤らめてそっぽを向くと、素っ気なく言った。
「……勘弁してくれ」
(なーんだよ……まんざらでもないんじゃん)
俺は竹中の反応が面白くて、その腕にぎゅーっと身体を押し付ける。
すると奴はぎこちなく、それでいてどこか優しく俺の肩を抱き寄せて、俺の家までの道をゆっくりと歩いてくれたのだった。