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虎と熊と私 〜番外編〜

  〜七夕〜

  今日は七夕。織姫と彦星が7年に一度だけ天の川を渡り…出逢う唯一の機会だ。先生に呼び出され学校に行ってみると中央に大きな竹が立っていた。笹の葉が風に揺れて心地よい音を奏でている。その近くで虎谷先輩と熊谷先輩が短冊を配っていた。

  「蓮、やっときたのか。短冊渡しとくぞ。」

  「一人で寂しくなかった?」

  「大丈夫ですよ。二人も願い事書いたらどうですか?」

  「そうだな。でも…ここで書いたら蓮にみられる。」

  「見られたら叶わなくなるもんね〜。」

  私はもらった短冊に願い事を書く。願い事は勿論“5人とずっと一緒にいられますように“だ。二人の会話通り願い事を見られたら叶わなくなるので分からない位置に結んだ。そして私は屋台の方に行くことにした。

  「二人共、短冊配りサボらないでくださいね。」

  そう言い残して…2人はその言葉でがっかりしていた…。

  屋台に到着。焼きそば…たこ焼き…かき氷…他にも沢山の屋台が所狭しと並んでいる。どれも食べたいけど…。

  「お!蓮君もきたんだな。」

  「あ…柴谷先輩。先輩は仕事ないんですか?」

  「俺はこっそり抜け出したんだ。それにお腹空いたって言ったら行って来いって返されちゃったよ。それより暇だろ?一緒に歩かないか?」

  「よろしければお願いします。」

  なんかデートしている気分だ。2人を差し置いてこんなことしたら怒られそうだけどね。

  「蓮君、何か食べる?林檎飴とかどう?」

  「自分で買いますよ…。先輩に悪いです。」

  「そんなこと言わないで。同じ所に棲んでるんだから奢らせてよ。じゃあ…これは俺の奢りね。」

  柴谷先輩は林檎飴…ではなくチョコバナナを私に渡した。やっぱり甘いもの好きだな…。

  「そういえばもうすぐ竹が燃やされるみたいだよ。一緒に行く?」

  「はい。虎谷先輩達にも逢いたいですし…。」

  「分かった。じゃあ行こう。」

  柴谷先輩と学校の中央にきた。虎谷先輩達はいなかったけど。ついたと同時に柴谷先輩はトイレに行ってしまった。既に竹が燃やされているのに我慢できなかったのかな…。と、突然炎の中から5枚の短冊が私の方に飛んでくる。それは今シェアハウスで一緒に暮らしている先輩達の短冊だった。5人共“蓮とずっと一緒にいられますように“と書かれていた。やっぱりみんな同じこと書いてたんだ…そう思いながら炎に向かって短冊を投げる。これで先輩達の願い事は叶う筈だ。その数分後…漸く虎谷先輩が来たのだが鼠の集団が足元を通り過ぎバランスを崩してしまった。しかもそのせいで虎谷先輩とキスをしてしまった…。

  「蓮!大丈夫か!!…なんか熱っぽいな。」

  あたふたしている虎谷先輩に私は思わずキスしてしまった。虎谷先輩は顔が赤くなり再びキスをしたのだった。この後熊谷先輩達も漸く来たのだが今の状況が分からずそのままシェアハウスに戻るのだった…。

  〜ハロウィン〜

  秋になった。秋から冬にかけて里帰りをする人も多い。虎谷先輩達もそうするかと思ったけど私と一緒にいたいということで承諾した。

  「お菓子をくれないと悪戯するぞ〜。」

  そういえば今日はハロウィンだったっけ…。私は熊谷先輩が仮装しているのに気づかなかった。それに南瓜の置物にも…。そう思っていると突然変化が起きる。全身に毛が生え爪が伸びている。更に頭を触ると耳があった。これは…狸の耳?

  「あれ?蓮?どこ行ったんだ?」

  虎谷先輩の肩を叩き自分を指差す。勿論みんなは目を丸くし口をあんぐりさせていた。シェアハウスにはそういうものはないし…まさかと思うけど…と思っていると龍谷先生が入ってきた。

  「今日はハロウィンだろ?だから我が変身させたのだ。お菓子をくれないと悪戯するぞ。」

  先生はなんだか楽しそうだ。それにしても私を獣人にした意図はなんだろうか。

  「済まない…今日だけは我慢してくれ。一度は獣人になってみたいと思っただろ?」

  実はそうだったりする。でもやるなら事前に言ってほしかった。先生には感謝してるけど…。

  「ハロウィンって仮装するのか。楽しそうだな。」

  熊谷先輩以外の4人は目を輝かせている。それを見た先生は仮装させるため連れて行ってしまった。

  「どんな仮装するのか楽しみだね〜。僕達はその間お菓子でも食べてようか。」

  一方先生に連れて行かれた4人は個室にいた。最初に標的になったのは虎谷先輩。龍谷先生は手首をボキボキと鳴らしながら近づくとあっという間に服を脱がし魔法を使って衣装を着せた。他の3人はそれを見てビクビクと怯えているのだった…。

  「待たせたな。みんな来てくれ。」

  虎谷先輩の衣装は吸血鬼。白のカッターシャツに黒のタキシードとシルクハットだ。更にチャームポイントの蝶ネクタイが彼をより一層格好良さを引き出していた。柴谷先輩の衣装はどこかにいそうなヒーロー。黄色のマントに赤パンツ、そして青いスーツだ。黒いマスクから見える黒い瞳はこの世の安全と平和を見ているようだ。大神先輩と獅子谷先輩の衣装は殿様…?桜柄の着物に袴で和を感じさせる。時々動く度に褌とガッチリとした肉体が透けて見えるのが凄くヤバい!!それを見た私は少し鼻血を出してしまった。

  「蓮?鼻血が出てるぞ?」

  虎谷先輩はポケットに入っていたハンカチを取り出すと私に渡す。みんなの格好を見たらまた鼻血を出しそうなのでなるべく見ないようにした。

  「それよりこの衣装…俺にはきついよ〜。」

  柴谷先輩も動く度に筋肉が透けて股間のものが膨れ上がっている。これも先生の思惑なのだろうか…。なんて思っていると先生はなにやら呪文を唱えている。すると光の柱が現れ私達を包みこんだ。一体どこに連れて行くつもりなのだろうか…。

  龍谷先生が連れてきたのは人族の学校。偶然だけどここでもハロウィンの真最中だった。ついたと同時に獣耳を付けた女子高生が近寄ってきた。

  「一緒に写真撮ってください!」

  「ポーズ採ってもらっていいですか?ピースでいいですよ。それから笑顔でお願いします!」

  「みなさん格好いいですね!キャー!可愛い❤私…貴方達に惚れてしまいました♥」

  一番最後に言った奴…後で天罰をくれてやろう。私は恨みと嫉妬心が増加していた。確かに五人とも格好いいから仕方ない。因みに龍谷先生は囲まれるのを避けるため姿を隠していた…。私でもそうするかもしれない。そう思っているといつの間にか囲まれていた。こんな大勢に囲まれたことのない私は緊張していた。それに気づいた虎谷先輩は私の手を掴み人気のない場所まで走る。獣人じゃなかったらついていけなかっただろう。

  「ここまで来れば大丈夫だろう。」

  人目を避けて私達は公園に来ていた。勿論周りには私達以外誰もいない。静かでいいけど…。

  「写真のお礼にお菓子を貰ったぞ。だが…貰いすぎたな。柴谷、マント貸してくれ。」

  「これは風呂敷じゃないよ〜。仕方ないな〜。」

  「蓮…大丈夫か?」

  「はい…少し目眩がしますが大丈夫です。それより先生の所に戻りましょう。」

  「大丈夫だ。我はここにいる。」

  龍谷先生…やっと姿を見せてくれたよ…。少し不安そうな顔をしているけどなんでだろう…。

  「沢山もらったな…。人族の学校はどうだったかな?」

  「俺達全員女子高生に集られました…。ですが俺達は蓮の恋人ですから興味を持ちませんでした。蓮は大勢に囲まれたことがなかったから少し目眩を起こしてしまい今はここで休ませてます。」

  「…そうか。少しばかりやり過ぎたようだな。それではシェアハウスまで戻るとしよう。」

  龍谷先生は魔法を使い私達を転移させる。そしてあっという間に到着した…。その時私にかかっていた魔法も解除されていた。

  「先生…貴重な体験ありがとうございます。ですがやる時は事前に言って下さいね?」

  「む…承知した。自重しよう。」

  「じゃあもう寝るか。」

  龍谷先生と先輩達のおかげで今日一日楽しく過ごすことができたのが嬉しかった。また来年も一緒だといいな。

  〜クリスマス編〜

  五人と過ごす初めてのクリスマス。外はすっかり雪が積もっていて銀世界になっていた。仕事はというと冬の間は休みらしい。というのも虎谷先輩達の仕事は外でやるそうで天候によっては休みになるとか。特に雨や雪は以ての他である。因みに大神先輩は料理人の修行で室内の仕事だけど休みなのはおかしい。もしかして仮病をつかってるのかな?柴谷先輩はというと相変わらず仕事を探し中で私と家事をしながら見つけるからと言っていた。しかしそんな素振りをしているだけで仕事を見つけようとはしてないようだ…。

  「乾杯!」

  「豪華だな〜。流石蓮だな。全部美味そうだ。」

  「大神先輩にも手伝ってもらったんですけど…。」

  「我まで…良かったのか?六人でやりたかったんだろ?邪魔なら失敬するが…。」

  「先生にはお世話になってますし…これからもよろしくお願いします。あとは柴谷先輩の仕事が見つかればもっといいんですけど…。」

  「俺は別に仕事したいとは思ってないよ。蓮君と一緒なら家事でもいいくらいだ。一人で大変だからな…。」

  柴谷先輩は私のことを分かっている。でも彼にも仕事はしてほしい。何かないだろうか…。

  「柴谷先輩、もし仕事が見つかったらどういうのがいいんですか?」

  「そうだな…まず外で仕事するのは嫌だな。それから蓮君と一緒に出来る仕事がいいかな。」

  それはもう家事をすると言っているものだ。みんな溜息をついているのに柴谷先輩は笑ってごまかしていた。

  「柴谷はこういう奴だ。蓮、面倒臭いやつだがよろしくな。金のことは俺達に任せてくれ。」

  虎谷先輩達は頼もしいが自分のことは自分でしてほしい。自分の部屋くらい掃除してくれてもいいと思うけど…特に今。

  「食事したら部屋の掃除するぞ。自分の部屋くらいやらないと蓮君が可哀想だからな…。」

  柴谷先輩が私の顔を見て察したようだ。短い間だけど逞しいと思った私だった…。

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