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第1章 彪の国
なんか知らないけど虎の獣人であるシロンに異世界へと連れてこられた僕。彼が言うにはこの世界には12の獣人がいること。更にここでは魔法が使えるらしく種族によって使う属性が違うとか。因みに虎獣人は光属性だそうだ。話を聞いてるとなんだかゲームみたいで興味が湧いてきたのだった。
『着いたぞ。ここが虎族の国―彪国だ。』
乗り心地がよくてモフモフだったので降りたくなかった。しかしシロンが『降りろ』と煩く言うので素直に従った。そして人型に姿が変わって僕から服を奪い取る。
シロンが服を着ている間僕は遠目から街の様子を見ていた。そこには豹やウンピョウ、ジャガーやチーターなどがいた。
「何してるんだ?行くぞ。」
シロンは腕を掴むとぐいっと引き寄せた。押されながら街の中に入ったのはいいのだが……
「いい忘れていた。この世界にいる獣人は雄だけだ。それから黒髪黒目の人族はここでは珍しいから一人でいると襲って来るからな。どこかにいくなら俺と常に一緒にいろよ。」
早く言ってください。既に視線がこっちに集まっている。今はシロンがいるから大丈夫だけどね。
「……仕方ない。服屋があるから行こう。俺の獲物に手を出されたら困るからな。」
服屋は目と鼻の先にあった。見なくてもわかるが獣人にしか着れない服ばかり。これだといつになっても解決しないのだがシロンが何かを持って来ていた。手には虎耳のついたカチューシャ。仕方なくつけるとシロンがいきなり飛びついてきたのだった。
「かわいいぞお前!俺の恋人になってくれ!…すまん。獣人は発情すると飛びつく癖があってだな…。特に人族を見るとそうなるんだ。あの時は我慢してたんだぞ?」
顔を赤く染めながら言うのは辞めてほしい。だけど獣人は嫌いではないのでいいんだけど。
「それより名前をきいていなかったな。」
「僕は達也です。歳は16です。」
「16なら結婚してもいい年頃だな。俺は20歳だが未だに独身なんだ。」
4つ上か…。僕は結婚願望はないけれど獣人なら…なんてそんなこといえやしない。
「ちょっと待ってろ。カチューシャ代を払ってないからな。」
シロン…俺の獲物と言っときながら置いとかないでよ…。狙われたらどうするの?なんて思ってたら誰かが話しかけてきた。
「いらっしゃい。お連れさんがいたけど…。」
「レジの方に行きました。お金を払いに…。」
「そうですか。ここは初めてですよね?貴方に合う服は少ないですが…少し待っててください。」
見たところ…店主さんかな?彼は奥からダンボールの箱をいくつか持ち運んできた。
「これは私の小さい時に着ていたものです。捨てるのにはもったいなくてずっとしまっていたんです。貴方の着ている服はこの世界では珍しいので歩き回るにはお勧めしません。私ので良ければつかってください。」
この人…僕が人族だと気づいているようだ。もらってもいいがお金がない。
「お金はいいですよ。元々捨てるものでしたから。」
「…ありがとうございます。」
心優しい店主さんだな…。獣人はエスパーなのだろうか心の声がわかるようだ。
「ところでなにか楽しそうな音が聞こえて来るんですけど…。」
「ああ。今大道芸の人達が来ているんですよ。お連れの方と行ってみてはいかがでしょうか。」
大道芸か…一度は見てみたいと思っていた。と―
「おい!こいつは俺の獲物だぞ!横取りするな!!」
シロンがやっと戻ってきた。なんだか怒っているみたいだけど…話すのも駄目なの?
「シロン、店主さんと話してただけですよ?」
「すみません。お連れの方がくるまで一緒にいたんです。ご迷惑でしたか?」
「…そうか。それはすまない。」
「あら?貴方…彪国の王様ではありませんか?」
「!?ち、違うぞ!俺は…。」
「…すみません。気のせいでしたね。」
シロン…目が泳いでるよ?どうやら図星らしい。話していると2人の獣人が店のなかに入ってきた。
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「猜国でも良かったがあっちは品質が悪いからな…。」
「そうだな。彪国の方がいいのがあるから来てみたいと思ってたんだ。しかし来るの初めてだからここのことはここの奴に聞いてみるとするか。」
中に入ってきたのは熊と獅子の獣人である。一体何を探しているのだろうか。その2人は僕達の方に近づいて来ていたがシロンはまだ気づいてない。
「いらっしゃい。何かお探しでしょうか?」
「武器の材料を扱ってる店を探しているのだが…。」
「ありますけど生憎店が閉まってまして…鉱山で働く人達が不足しているので開かないんです…。材料が欲しいなら御自分で採りに行くしかないようです。」
「…そうか。」
武器の材料って言ってたけど近々戦争でもあるのだろうか。熊と獅子の獣人はこっちに気づいたのか近寄ってくる。まずいと思いシロンの尻尾を触ってしまった。
「どうした?」
「早く店から出たいです。今熊と獅子の獣人が…。」
もう遅かった。取り敢えず人族だとバレなきゃいいけど…シロンはというと天然なのか2人を見ていた。
「お前…鉱山の行き方とか知ってたりするか?」
「知ってるぞ。だがあそこは王の許可がないと入れないぞ?材料を採りに行きたいのか?」
「そうだ。」
「…わかった。皇宮に案内するからついてこい。」
いいのかな…シロンが王だって言ったほうがいいのではないのではないのだろうか。
「ところで隣に居るやつなんだか人間臭いな。黒目の奴は特に狙われるから気をつけろよ。」
僕はシロンにしがみついていた。と、また誰かが店にはいって来ていた。
「お前ら!さっさと金を出さねえか!」
どうやら盗賊のようだ。その1人が僕達に近づいてくる。なんだか殺気が感じられるのだが…。
「お?こんなところに可愛いやつが居るじゃねえか。お前の物か?譲ってくれねえか?」
可愛いやつって僕!?シロンをみると怒気の籠ったオーラを放っている。今にも殴りかかりそうだ。
「誰がお前なんかに渡すか!」
シロンが盗賊に向かっていった!それに夢中になり後ろからくるもう1人に気付かなかった。声を出したかったが口を塞がれてしまっている。ふと気付いたのは手に持っていたダンボール箱。それを落とすと3人はやっと気付いてくれた。
「おい!そいつを離せ!」
「嫌だね。黒目の虎は珍しいから奴隷として売れば金がわんさかもらえる。動いたらこいつがどうなってもしらないぞ?」
このままだと奴隷になってしまう。僕は必死に抵抗し逃げようとした。とその時!光の柱のようなものが現れ僕たちを包み込む。何が起こったのか分からないけど僕はその間意識を失っていた…。[newpage]
「おい…おい!しっかりしろ!」
目が覚めたとき僕はベットにいた。どうやらシロンが宿まで連れてきたらしい。シロンだけでなく熊と獅子の獣人も一緒だった。
「驚いた…お前一体何をしたんだ?」
僕にもわからない。突然起きたことなので全くである。自分でも気付いているのだが机の上にカチューシャが置いてあるのが見えた。結局2人にはバレているわけで…
「黒髪黒目かよ…まさか人間の世界から連れてきたのか?」
「連れてこられるのは王だけだぞ。まさか…」
「ち、違うぞ!「シロン…僕もうわかってますよ?自分の世界には獣人はいませんし海に穴は開かないですし…。」」
「虚海を越えられるのは王だけだ。お前は…彪国の王だな?」
「…そうだ。俺がこの国の王様だ。」
やはりそうだった。彼が僕の世界に来た時点でおかしいとは思っていた。
「まだ紹介してなかったな。俺はクロロ、隣りにいるのはジオンという。」
「それにしても可愛い奴を連れてきたな…。」
「や、やらないぞ!達也は俺の恋人にするんだ!!」
シロンの恋人!?というか同性愛とか成立するの!?それにクロロさんとジオンさんのことやこの世界のことを詳しく知らないので聞いてみよう。
「ところでシロン、王の仕事はしなくていいのですか?」
「あ、いや…ちょっと気晴らしに街を散策したかったんだ。最近物騒になってきているから取り締まりを強化しようと思ってたんだ…。」
「なるほど…僕も今思ったけどクロロさんとジオンさんも王様だったり…。」
2人は目を泳がしている…図星だったらしい。
「それより武器の材料が欲しいと言っていたが何かあるのか?」
「ああ、近々猜国で剣術の大会があるそうだ。出場条件が『剣と盾を装備する』ということらしい。しかも賞品が豪華で…"自分の願いを1つだけ叶えてくれる"という伝説の龍玉が貰えるんだ。シロン、お前も参加しないか?」
それがあれば自分の世界に帰れるかもしれない。だけど…あったばかりの3人とは別れたくないな…。
「面白そうだな。俺も参加するぜ。」
「因みに4人までならチームを組んでもいいそうだ。あと1人探さないとな…。」
「ぼ…僕が参加します。」
「な…なんだと?本当か?」
3人とも驚いている…それもそのはずだ。思わず出てしまったのだから仕方ない。
「それなら優勝して俺の恋人に…」
「それは置いといて…この世界のことを詳しく教えてくれませんか?」
「置いとくな!今すぐ帰りたいんだろ!?」
「そうですけど折角来たのですから他の国にも行ってみたいと思ったんです。」
「この世界に興味をもってくれたんだな。街に出るならこれを付けてくれ。」
僕が人族であることを隠すためにシロンが買った虎耳のついたカチューシャを渡される。それを付けた瞬間やはりシロンに飛びつかれてしまう。
「…羨ましい。お前にはもったいないぞ。」
「なんだと!?絶対やらないぞ!!」
「俺達も達也が好きになってしまっただけだ。」
この3人は僕を恋人にしたいようだ。本当にこの世界では人族は魅力的らしい。
「それより2人は武器の材料が欲しかったんだったな。連れて行ってやる。」
「タイミングよく王に逢えるとは俺達ついてるな。そうだ、材料が手に入ったお礼にシロンと達也の武器と防具を作ってやるとしよう。俺達がだけが得しても仕方ないからな。」
「鉱山まではここから10分といったところだ。」
シロンが彪国の地図を広げたと同時にクロロさんとジオンさんは笑顔になる。その証拠に獣耳がピコピコと動き尻尾が大きく揺れていた。僕はその2人を見て思わず鼻血を出してしまった。
「だ、大丈夫か!?今布を…」
獣人が使う物って余計に危険ではないだろうか。獣人の匂いは癖になってしまうのだ。その匂いに当てられ僕は意識を失った…。[newpage]
3人は武器の材料を採取するため鉱山へ来ていた。僕はというと鼻血を出し気を失っていた(前回の話から)。そのためシロンがここまで運んできたのだった。
「さっきのは達也には逆効果だったな。あれは隠れてやるしかないようだ。それにしてもここの鉱山は猜国よりも広いんだな…。」
「掘られた形跡もないからいいのが採れそうだな。早速掘るとしよう。それで…どうするんだ?」
「ここの岩壁は硬いからドリルを使って掘るんだ。ドリルに魔力を送るんだが…Bランクくらいでやっと掘れるくらいかな。俺もBランクだけど掘れずに断念したくらいだからな…。」
「俺達もBランクだからな…掘れなかったら諦めるとするよ。じゃあ早速始めようぜ。」
ドリルの音はとても静かで…3人の声しか聞こえない。この世界の道具は自分の世界のとは随分違うんだな…。その数分後…僕は漸く目が覚める。3人を見ると上半身裸になっていた。ガッチリとした肉体で腕も太い。そういう体型は本当に憧れる。結果はというとまだ掘れておらず以外にも苦戦していた。
「くっ…本当に硬いな。なんて硬さだ…。」
「だが諦めないぞ…時間をかければいける。」
「俺は少し休憩するぞ。クロロ、ジオン、頑張れよ。お?達也…やっと目が覚めたのか?」
「はい。それにしても大変そうですね…。少しやってみてもいいですか?」
「いいけど魔力なんてないだろ?」
「やらしてあげたらどうだ?俺達も少し休憩がしたい。シロン、ドリルの使い方を教えてやってくれ。」
シロンはいやいや教える。『無理だな』と思っているに違いない。その証拠に目が細目になっていた。それは置いといて早速ドリルを岩壁に向けてみた。手から魔力は感じられるが…やはり無理だろう。と思ったその瞬間岩壁が崩れる音がした。そして金や鋼など武器の材料が出てくるのだった…。
「な…俺達には掘れなかったのになんで…。」
「いいじゃないか。達也のおかげで材料が採れたんだから…これは本当に上質だな。これだけあれば凄いのが作れそうだが全員分作っても余るくらいだ。」
「剣と盾さえ装備してれば大会には出られる。条件を満たしていれば他のも装備出来るぞ。首飾りとか指輪とか…。」
(その手があったか。それなら…。)
クロロさんが何か考えてるようだ。ジオンさんの言った"指輪"に反応して…気のせいかな。
「じゃあ宿に戻るとしよう。」
「明日は隈国に向かうからな。材料は3人で持っていくとしよう。」
「隈国は工業が盛んだ。そこでしか作れないからな。明後日は宍国に行くぞ。この世界についての本が沢山あるから達也には役立つと思うぞ。」
確かに…僕はこの世界について知らなさすぎる。宍国に行けば元の世界に帰る方法があるかもしれない。しかしこの世界のことをもっと知りたい。この2つのことで今は頭がいっぱいだ。取りあえず行ってから決めることにしよう。[newpage]
鉱山から出てもまだ明るいが早く宿に戻りたい…というのもまた盗賊が襲ってくることがあるからとシロンがいったからである。しかし―
「まだ明るいな…彪国回って見るか?」
「そうだな。俺達は普通の民として歩くことになる。王様なんて絶対に言うなよ。」
王様と歩くなんて有り得ないよ…でも3人共獣人なので一緒にとは思っていた。結局こうなるのなら初めから言わなきゃよかったのに…。
「食事がまだだったな。宿の近くに食事処があるから行こう。そこならすぐ宿に戻れるぞ。」
というわけでそこに行くことになった。歩いても5分という近さにあった。それより…荷物はどうするの?
「シロン、材料は宿において来たほうがいいんじゃないか?誰かに盗られるかもしれないぞ?」
「そうするためにここにしたんだ。俺が全部運ぶから先にはいっててくれ。」
シロンはそこまで馬鹿ではないようだ。もし馬鹿だったらもう関わりたくないと思っていた。シロンと別れ取りあえず店の中に入る。店いっぱいにいい匂いが漂ってくる。席は全てテーブル席だった。空いている席に座りメニューを見る。この世界の物は自分のとは変わらないみたいだったので安心した。と―
「餃子が10人前とラーメンが4人前、烏龍茶を4つ、それから…唐揚げを10人前頼む。」
クロロさんがオーダーをしていたがすごい量だな…
「そんなに頼んで大丈夫ですか?」
「獣人はこれが普通だぞ?」
今頼んだのは人族が食べる3倍の量である。僕はラーメンでお腹がいっぱいだ…。シロンもメニューが来たと同時にきて3人でこの量をあっさりと平らげてしまった…。
[newpage]
そして夜…やっと一日が終わる。外に出たかったが物騒なので部屋の前にある椅子に座って景色を眺めていた。
「達也…寝れないのか?」
シロンも眠れないようで部屋から出てきた。
「はい…。色々ありすぎて…。」
「そうだよな。済まない。」
「少し話しましょうか。この世界には人族はいないんですか?」
「ああ…いない。だから自分で蜀を起こしてお前の世界に行ったんだ。」
「ここでは同性愛は成立するんですか?」
「雄獣人しかいないからな…それぐらいわかるだろ?俺はこの世界の奴らとはしないけどな。達也。元の世界に帰りたいなら婚約ぐらいはしてくれ。」
シロンは訳の分からないことを言っている。それで帰れるのなら苦労はしないけど。
「そんなに人族がいいのですか?」
「そうだ。俺との相性がいいから相応しいと思って連れて来たんだ…駄目だったか?」
「なるほど…でも婚約しなくても帰れるのでは?」
「…そんなに俺が嫌か?頼む…俺の伴侶になってくれ。」
と言いながらシロンは僕に抱きついた。何か理由でもあるのだろうか…。
「いい年頃なのだから早く婚約してくれと執事に言われたんだ…それで皇宮から出てきたんだ…。」
あっさりとした理由だったので僕は思わず苦笑してしまった。シロンはもちろん驚いていた。
「…わかりました。一時的ですが付き合います。」
その言葉にシロンは大喜びだった…。
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