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何故そこまで彼は

  立の声がし、秋信は玄関へと向かい、扉を開けた。

  「急に来てすみません」

  申し訳なさそうに立は言う。

  「いや、大丈夫だよ」

  立を居間へと通す。

  恵奈を見て、一瞬驚いた表情になる。

  「……秋信さん、恵奈とも知り合いだったんですか」

  「今朝、会ってね」

  恵奈を起こさないよう、二人は小声で話す。

  「……そろそろ望を迎えに行った方がいいかしら?」

  恵奈の側にいたキジ猫は、伸びをしながらそう言った。

  「……あの……今日は……あいつ……望の代わりに来ました……」

  「えっ?」

  立の言葉に、キジ猫は止まった。

  「あいつ、今日熱出して、早退してたんですけど……偶然、あいつが山に向かっているところを見つけて……」

  [newpage]

  約一時間程前。

  立の視界には、覚束無い足取りで歩いている望が映っていた。

  早退したはずの望が、何故こんな道端を歩いているのか、立は疑問しかなかった。

  「……おい」

  立は、望に声をかける。だが、返事がない。立は望の肩を掴んだ。

  「おい!」

  「!えっ?立?」

  ようやく立に気づいたのか、望は目を白黒させていた。

  望の顔色は、想像以上に悪かった。

  「……早退した奴が、何で出歩いてるんだよ……家にいろ」

  「いや、その……約束が、あって……」

  「約束?」

  「……秋信さんに、また明日来ますねって……」

  「……それ、約束というより、お前の押し付けだろ。とにかくかえ」

  「嫌だ!!!!」

  望は、立の言葉を遮り、そう叫んだ。さすがの立も、これには驚く。

  「……待ってるよって……言ってくれたんだ……初めてちゃんと……ここで行かなかったら……また……絶対に嫌だ!」

  「お、おい……わかった。わかったから落ち着け……」

  望は何かに怯えている。それは見て取れる。だが、このまま放って、山なんか行かせたら確実に倒れる。

  「……代わりに俺が会いに行く」

  「……えっ?」

  「伝言もらってきてやるから。お前はおとなしく家で寝てろ!」

  立は望の腕を引っ張り、家まで送った。そして立は、秋信のもとへと足を運んだ。

  [newpage]

  そして現在。立は秋信に、先程のことを全て話し終えた。

  (やっぱり、昨日から体調が悪かったのか……それにしても、何でそこまで……)

  秋信も立も、何故望がそこまで秋信のもとに行こうと必死になっていたのか、わからなかった。

  「……あいつが、あんな風に必死になっているところは、初めて見ました……」

  立は、小さくそう呟く。

  その表情は、明らかに心配を含んでいた。

  「……立、聞いてもいいかな?」

  「……なんですか?」

  「……立は、望くんと、幼馴染なんだよね?」

  「まあ、一応」

  「あのさ……」

  ここで、秋信は踏み止まる。

  最近知り合ったばかりの自分が、ましてや人間ではない自分が、彼等の問題に口を挟んで良いのかと。

  「……秋信さん?」

  しかし、望が立のことに対して、悲しそうな表情を見せ、悩んでいたことが脳裏にこびりついて離れない。

  「……望くんから聞いたんだけど、何故、彼を避けているの?」

  悩んだ結果、取った選択は訊くだった。

  秋信の言葉を聞いた立は、困ったような笑みを浮かべる。

  「あー……まあ、言ってもいいか……望には言わないでくださいね」

  「わかった」

  「じつは……」

  立が話そうとした時、玄関からものすごい音がした。

  [newpage]

  「!?」

  音に驚き、恵奈は目を覚ます。

  「えっ?立くん!?」

  「ああ」

  「秋信ー!たすけてー!」

  玄関の方から、クロの声がする。

  「えっと、僕、玄関の方を見てくるね」

  秋信は二人にそう言い、急いで玄関へと向かった。扉を開けるが、目の前には誰もいない。下の方から気配がし、視線を下に移す。

  そこには、クロ、そして、倒れている望の姿があった。

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