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「みおちゃん、大丈夫なのー?」
「大丈夫だにゃ、みおは強い子だにゃん。きっと安静にしてればすぐに良くにゃるにゃ」
「みやも心配……卵焼きが明日食べられるのか、明後日になるのか!」
「みやちゃーん、みおちゃんの心配はー……?」
みおちゃんは熱を出してしまい、学園を欠席してしまいました。
こんな日に悪い猫少女の襲撃でもあれば大変……ですが、今はみやちゃんも嘗ての正義をかなり取り戻しています。
このタイミングでみやちゃんが暴れる事はない、と言う意味では安心して良いのでしょうか?
「もちろんみおちゃんの心配もしてるよ! でもみや、どうしても卵焼き食べたいんだもーん」
「じゃあさー、自分で作れるようになればいいんじゃないかなー? ばりぼり」
ねこちゃんはココアクッキーをばりぼりしながら、みやちゃんに言いました。
「ねこちゃん、今日はココアクッキーにゃんだね」
「うん、何となく食べたくなっちゃってね」
「ちょこここねちゃんが珍しい事もあるんだね!? そういえばココアクッキーって……あの子も好きだったっけ」
「あの子ってー? ココアクッキー、好きだった知り合いさんでも居るのー? ばりぼり」
「ううん、こっちの話☆ でもここねちゃんって……何処となく気配も性質も似てるんだよねー?」
「ここねちゃんに似ている子でも居たのかにゃ?」
「うん、ちょっとねー? それにしても今日は日差しも心地良くて、何だか眠くなるね!? ……すぴー」
程良い日差しに誘われて、みやちゃんはその場でうとうとして眠りに就いてしまいます。
「みやちゃん寝ちゃったにゃ! よーし、残りのみやちゃんのお弁当、あたしが食べちゃうんだにゃ!」
「たまちゃーん、ダメだよー。そーっと寝かせといてあげようよー。ばりぼり」
みやちゃんは心地良い睡魔に誘われて、眠りに落ちて行きます。
[newpage]
「みやちゃん! こっちに来てくれたんだ!」
「むにゃ……あれ、ここはー?」
「うん、ここだよ! ここ! ここは空想世界だよー」
「お姉ちゃん!? わー、お姉ちゃんだー!」
みやちゃんは「にぱあ」と笑顔を見せ、嬉しそうにここちゃんに飛びつきました。
「えへへ、猫少女達の守り神になっても、みやちゃんはここの可愛い妹のままだね♪」
「お姉ちゃん、会いたかった☆ もう何千年振りかな? かな!?」
「うーん、きっと1万年と2千年振りくらいかもねー?」
「おー、そんなに経ってたんだねー。みやの眠ってる間にかなりの時間が経ってたんだー」
「ま、猫少女の生きる寿命からすれば些細な時間だけどね♪ お姉ちゃんの事はずっと、ここねちゃんの中から見てたよ♪」
「やっぱりお姉ちゃん、ここねちゃんの意識の中に居たんだ!」
「うん、ここねちゃんの発作を抑える役割と、あともう1つ大事な役割があってね。彼女の心を守りながら、役割を果たしているんだ♪」
ここちゃん曰く、猫少女とはかなり長生きする生き物のようですね。
「そういえばにこちゃん、久々に会ったら凄く雰囲気変わってた! 何かあったのかな!?」
「にこちゃんはね、ちょっとね……ここがね……ううん、何でもない」
「そっかー、ところで何だかココアクッキーの匂いがするんだけど、あの子もしかして……」
「うんー、そういえばさっきからそんな匂いが漂ってるねー?」
「みやちゃん! わー、お久し振りだねー! ここちゃんにもやっと気付いてもらえたー!」
ここねちゃんの空想世界に居た、ココアクッキーを食べていた子とは……。
「ねここちゃん! わー、久し振り☆ こんな所で会えるなんて!」
「あの時は本当にお世話になったよー、もう何万年も前の事だけどねー……私を助けてもらって、死んだ後もずっと感謝しているんだよー」
「え、ちょっと待って? ねここちゃん……死んじゃったの!?」
「うんー、ちょっと猫少女の世界で色々あってねー……それで私、気付いたらここに居たんだー」
(死んだねここちゃんがここねちゃんの意識の中に居るって、つまりここねちゃんは……)
みやちゃんは何かを悟って納得したようです。
「まさか、ここねちゃんの意識の中にねここちゃんが居ただなんて……ここ、全然分からなかったよ!?」
「うん、正直みやも驚きだよ!? ねここちゃんが死んでいて、ここねちゃんの意識の中に居ただなんてね……」
「ねここちゃん、ずっとここねちゃんの意識の中に居たの? ここも入り込んでたんだけど、何で急に認知できるようになったんだろう……?」
「もしかしてみやがここに来たからかな!? みやの能力、猫少女の気配や性質を感じ取れるから。みやの気配の能力でねここちゃんが具現化できたのかも?」
「なるほど、それなら急に認知できたのも納得できるよ。みやちゃんの力は本当に凄いんだね……」
みやちゃんのおかげで、ねここちゃんはみやちゃん達と再開する事ができました。
「私ね、ここねちゃんとは意識が分離されているみたいなの。それに彼女、私が中に居る事には恐らく気付いていないと思うのー」
「でもここねちゃん、さっきココアクッキー食べてたけど……あれ、無意識だったのかな!?」
「私の影響はあるかもねー?」
みやちゃんは人間のここねちゃんと意識が分離されている、と聞いて何かピンと来たようです。
「ところでみや、ここの空想世界に来たって事は何か意味でもあるのかな!?」
「実はねー、私、卵焼きを作るのが得意なんだよー」
「え、そうだったんだ!?」
「みやちゃんが卵焼きを作れるようになればいいんじゃないかなー、と思ってねー。ここねちゃんもそう言ってたよねー。私と意見が一致したみたいだものー」
「なるほど、ねここちゃんがみやちゃんをここに呼んだんだね!」
みやちゃんをここの空想世界に呼んだのは、ねここちゃんでした。
「と言う訳で、みやちゃんには卵焼き界の神を目指してもらうよー」
「みやちゃん、既に神的存在だものね? 良かったねー! 卵焼きの作り方教えてもらえるって!」
「そっかそっか☆ じゃあみやは卵焼き界の神となる!」
話は纏まり、みやちゃんはねここちゃんから卵焼き作りを教わります。
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「えーとね、みおちゃんの卵焼きをベースに私も色々研究したんだー。普段ここねちゃんが食べてるから、味の特徴もバッチリだよー」
「ねここちゃん、ここねちゃんと一心同体なんだね☆」
「うん、ここねちゃんが生まれてからずっと一緒だものー。まー、ここねちゃん側に自覚は無いだろうけどさー」
「なるほどねー、でもこれでアグレッシブ化の謎が解けたよ☆」
「うん、ごめんなさい……彼女、私の能力を引き継いじゃったみたいでねー……私自身はもう落ち着いてるんだけど、ここねちゃんに転嫁しちゃったみたいなんだー……」
「ねここちゃん、心の中でもごめんなさいしてる……苦しかったんだね。ここ、ずっとここに居たのに気付いてあげられなくてごめんね」
「ううん、大丈夫。死んでしまった私に気付けるなんて、そうそうないものねー。でもここちゃん、死んだ人の声も聞こえるんだよねー?」
「うん、昔はそうだったんだけどねー……最近は心の声を聞く能力も制御できるようになってきたから、聞こうとしなければ聞こえないみたいなんだ。それで気付けなかったみたい」
「そうだったんだ……でも良かったね、ここちゃん。能力の制御ができるようになって」
「うん、でもその代わり……あの子の大事な物、奪っちゃったんだけどね……」
ここちゃんは凄くにこにこしながらも、何だか申し訳なさそうに言いました。
「あー……なるほどね、確かにお姉ちゃんからあの子の気配も感じるかな!? そっか、そうだったんだね」
みやちゃんはここちゃんの言った事の意味を理解したようです。
「さて、そろそろ卵焼き作りを始めようかー。昔の思い出にも色々浸りたいけど、みやちゃんはここの空想世界に呼ばれて来たんだものねー。目が覚めたら戻っちゃうだろうからー」
「そっか、時間制限があるんだね!?」
「ここみたいにずっと入り込んでるなら別だけど、みやちゃんはそうもいかないものね? 力を全部取り戻してもらって、猫少女の守り神の務めがあるものね♪」
「うん、そうだね! ただ、みやが力を全て取り戻した時には……きっと、奴が現れる」
「私、奴についてちょっと気掛かりな事があるんだよねー……ここねちゃんが愛しているたまちゃん、あの子の感じ……間違いない。私、忘れる訳ないもの……私の発作のきっかけを作った彼女……」
「やっぱり、みや達が猫少女界で現役時代の頃から特別指名手配されてた奴って……うん、そっか。何だか色々繋がった気がしたよ」
みやちゃんは奴の正体が……恐らくたまちゃんで間違いない、と確信したようです。
「さ、シリアスはこのくらいにして卵焼き教室、始まるよー」
「急に切り替わったねー……うん、でもやるならここも手伝うよ!」
「わーい! 卵焼きの神を目指して頑張る☆ やってトライだね!」
「はい、じゃあまずは卵を割ってー」
「こうかな!?」
みやちゃんはステッキで魔法弾を打ち、卵を粉々に砕きました。
「……みやちゃん、そうじゃないと思う」
「さすがにその割り方は私も予想してなかったねー……」
「やっぱり!? てへぺろ☆」
みやちゃんは根本的に「料理」と言う物を知らないようです。
「そういえばみやちゃんって、お料理は皆ここに任せっきりだったっけ……こっちに来てから1人の時はどうしてたの?」
「基本的に購買とー、あとはみおちゃんの卵焼き☆」
「うん、やっぱり作ってなかったんだね。ここも教えるから頑張ろう」
「まずはねー、卵を粉々にしない程度に優しく硬い所にぶつけるんだよー。コンコンパカッ! って感じでねー」
「そっかそっか☆ こうかな!? こんこんぱか!」
みやちゃんはフライパンに卵をぶつけて、そのまま中へ黄身を落とします。
「わー! これで焼けばいいんだね☆」
「みやちゃん、それじゃあただの目玉焼きだよー!」
「みやちゃーん、ちゃんと教えるから見ててー? 割った卵はボールに入れてねー。そしたら砂糖とかつおダシを入れて良く掻き混ぜるんだよー」
「なーんだ簡単じゃん! ステッキでちょちょいのちょいと掻き混ぜてー……わー! 何か凄いぶくぶく泡立ってきちゃったよ!?」
「みやちゃんそれ混ぜ過ぎー! ステッキの力で混ぜるなんてー……」
「てへぺろ☆」
みやちゃんは相当料理の腕前がアレなようです……。
「てへぺろじゃねえよ。まともに始めなさい!!」
「は、はい……」
ねここちゃんは凄い威圧感でみやちゃんに言いました……。
「みやちゃん、ねここちゃんを怒らせないようにねー……」
「はーい、じゃあそーっとゆーっくりねー、お箸を使って混ぜてみようねー」
「みや、やってみる……そーっと、そーっと、優しく……おお! 混ざる混ぜるー!」
みやちゃんは少しずつコツを掴んできたようです。
「そうそう、その調子だよー」
「みやちゃん上手い!」
「みや、神になれるかな!?」
「神になれるように、最後まで頑張ろうねー」
「うん、頑張る!」
みやちゃんは褒められて調子に乗り、卵を混ぜる手を速めます。
「わーっ! 卵が沢山飛び散るー!?」
「みやちゃん混ぜ過ぎ混ぜ過ぎ! もっとゆっくりゆっくり!」
「ゆっくりだね……あ、飛び散った卵美味しい! ぺろぺろ☆」
みやちゃんは服に飛び散った卵をぺろぺろと。
「みやちゃん、やる気あんの?」
「……ごめんなさい、みやが悪かったです」
「ねここちゃん、怖い……」
「それにしてもみやちゃん、ここまで不器用だったとは……」
「これじゃあ卵焼き界の神は無理かなー? みおちゃんがダウンしている間、美味しい卵焼きもお預けだねー?」
「お預け!? みや、そんなの耐えられない!」
「じゃあ頑張ろうー。ほらー、まだまだ挽回できるよー」
みやちゃんはどうしてもお預けは避けたいようで、再び真面目に頑張る決心をしました。
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「どうにか上手く混ぜられたねー」
「みや、沢山頑張った☆」
「うん、確かに沢山だよね、一体どれ程の卵が犠牲になった事だろう……」
ゴミ箱は凄い量の卵の殻で溢れ返ってます。
「数え切れないねー……」
「でもみやちゃん、段々上手くなってるよ!」
「そうかな!? みや、最後まで頑張る☆」
「ようやく次のステップだねー。解いた卵をー、フライパンに流してねー」
「はーい☆」
みやちゃんは零さないように、そーっと丁寧にフライパンへ流し込みます。
「できた☆」
「おー、みやちゃんできたね!」
「みや、1人でできるもん!」
「クッキングアイドルみたいだね!」
「ほらー、時間が無いから急ぐよー。次はー、流し込んだ卵をフライパンで広げてー」
「うん! 広げたよ☆」
「そしたらー、火を着けてー」
みやちゃんはそう聞いて、ステッキを構え……。
「みやちゃん、絶対そうじゃないから……」
「やっぱり!?」
「いい加減真面目にやれっての」
「ごめんなさい……はい、着けたよ!」
「よーし、後は火加減を調整して焦げないように焼いてねー」
みやちゃんは火加減に気を付けて、いい感じに卵に火を通し……。
「そろそろだねー、巻物みたいにぐるぐる卵を巻いてー、形を作るよー」
「なるほど☆ 巻いたのを切れば卵焼きになるんだね!」
「うんー、後少しだから頑張ろうねー」
みやちゃんは卵焼きと格闘し、試行錯誤をしてああしてこうして……。
「できた☆ 美味しそうだよ!」
「みやちゃん凄い! 良くやり遂げたね! ……でも何でオムレツになってるのだろう」
「何でオムレツが出来たんだろうねー、逆にこっちの方が難しくないかなー?」
「ま、とりあえず食べようよ☆」
「うん、そうだね。あ、でもみやちゃん、そろそろタイムオーバーじゃないかな?」
「そうだねー、ランチタイムのうとうとでそんなに長時間寝ていられないものねー?」
「えー、タイムオーバーなのー!?」
そんな訳でみやちゃんはオムレツを食べそびれてしまい……。
「あー、みやだけ遠ざかって行くー!」
「みやちゃん、現実に戻るんだね。ここねちゃんの事を宜しくね」
「うんー、私からも宜しくだよー。彼女は私自身みたいなものだからー」
「分かったけどー! みやもオムレツ食べたかったー!」
空想世界から引き離されるみやちゃんは、段々と視界がぼやけて行き……。
「むにゃむにゃ……あれ!? みやのオムレツはー!?」
「オムレツー? みやちゃん、起きたそうそう急にどうしたのー?」
「オムレツってにゃんの事にゃ?」
「あ、そっか……空想世界の出来事だったんだ」
みやちゃんは神なので呑み込みも早いようで、さっきまで空想世界に居た事を自覚しました。
「空想世界ー? って、何それー?」
「あー、こっちの話☆ それよりもここねちゃん! みや、ここねちゃんの事をお姉ちゃん達に任されたから☆」
「お姉ちゃん達ー?」
ねこちゃんは良く分からなさそうな反応を返しました。
(お姉ちゃんにもねここちゃんにも託されたんだ……ここねちゃんを、たまちゃんの毒牙に掛ける訳には行かない……みやが守らなきゃ)
猫少女を見守る神的な存在、正義の猫少女みやちゃん。
彼女は悪の猫少女、たまちゃんから皆を守りたいと……決意したのでした。
[newpage]
そして次の日になります。
「やれやれ、何で僕がこんな事を……」
にこちゃんはみやちゃんの代わりに、近所の野良猫達の見回りをしていました。
餌とミルクを上げると、野良猫達が喜んで寄って来ます。
「今度はみやちゃんが熱を出すだなんてね……うん、外で居眠りなんてするから。だから風邪を引くんだよ。猫少女達を見守る神になったのに、抜けてるよね……」
にこちゃんはぶつぶつ文句を言っていました。
「昔のみやちゃん、もうちょっとしっかりしてたんだけどね。やっぱりアレかな、まだ力が完全に戻り切ってないからちょっと抜けてるのかな?」
たまちゃんの中に眠っているみやちゃんの大事な探し物……みやちゃんの正義の心。
きっとこれを取り出せれば、みやちゃんは100%の力を取り戻す事ができるのでしょう。
ただ、それは同時に「奴」……本来の悪のたまちゃんが、完全覚醒する時でもあり……。
「奴を警戒して見張らないとならないのにね……早く済ませちゃおう。おや? 君は確かみおちゃんちの……」
みおちゃんちの猫がにこちゃんに挨拶をしてきました。
「元気にたくましくやってるんだね。うん、大丈夫だよ。君のお母さんはね、みおちゃんの中で生き続けているから」
にこちゃんはこの猫の事を知っているようで、あの時の事を思い返していました。
「思えばこっちの世界に来た始まり、だったっけ……奴の強行、屋上のみおちゃん、そして卵焼き……」
にこちゃんは野良猫のお世話をしながら……初めてみおちゃんに出会った日の事を振り返っていました。
にこちゃんがみおちゃんを特に守りたい理由とは果たして……。
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